PHANTASY STAR ONLINE 2 :A.P.742 作:Begew Garand
「特にどっちが行かなくちゃいけないとかは無いんですけど....どちらも似たような件みたいですから取りあえず自分の方に入った連絡の方を対応しましょうか。」
連絡が入った後、少しの間固まっているとノアの方からはっとしたように口を開いた。
「自分の方にかかって来た方をね、分かったわ。」
自分の無線に入ったものは自分の仕事として割り当てられると思っていたけれど、どうやらその辺りは現場の裁量なのね。
「あ、あと、僕の方のコードを渡しておきますから何かあれば繋げてください。マニュアルだけだと理解しにくい部分もありますから。」
「....ありがとう、受け取っておく。」
私はノアから連絡用コードを貰った。端末の方に通知が入る。
「それと武器は面倒ですけど必要のない場合でも持ち歩くようにして下さい。決まり事なのもありますけど危ないですしね....」
「言われなくとも、是非持ち歩かせて貰いたいものだわ。そうでないと気が知れないもの。」
そう言って私はコンソール台の下からカービン型のライフルを取り出した。やっぱり、間近で見ると古さは否めないわね。強化樹脂で出来た外装部分が黄ばんで劣化しているもの。
「あれ、フィリンさんは拳銃じゃないんですか?」
するとノアが不思議そうにして聞いてきた。
「拳銃じゃないといけなかったかしら....」
私は銃に不備が無いかどうか確認しながら答える。
「い、いや...あんまり見たことが無くてですか。バーンズさんは僕と種類は違いますけど拳銃を使ってますし、他のM.Sの方も基本は拳銃を使ってましたから。あるのは知ってましたけどね。」
「そうなの?意外と居ると思っていたけれど。」
「まあ、取り回しが悪いからじゃないですかね。狭い場所であると使いにくいですし、何よりも持ち歩くのが大変ですからね。」
確かにその言葉は間違ってはいなかった。狭い場所、つまるところ部屋の中であるとライフルのような長物を扱うのは非常に不効率。持ち歩くときにも人であればそれは大変になるものね。
「確かにそれには一理あるわね....でもまあ、持ち歩くことは特に問題は無いわ。こうすれば大丈夫だから。」
そうして私は銃を片手で掴むと腰にある右側のスリットにライフルを滑らせた。特に音は鳴らないけれどしっかりと保持される。
「どう?これで両手も塞がらないし、動くのも簡単でしょ。」
軽く私はその場で回転して見せた。保持されているお陰で腰に取り付けたライフルは微動もしない。
「そんな使い方も....キャストの方は便利なんですね。装甲が付いているのでも十分に凄いと思ってましたけど、これならもっとですか。」
ノアは少し驚いたように私の方を見る。ノアはアークスになったことが無いから珍しく見えるのかもしれない。基本的に一般員のキャストにはこういった物は無いし、見かけることも少なかったんでしょうね。
「まあ、アークスになっているキャストはほとんどがこういうものが備え付けられているわ。直ぐにでも武器を取り出すのは重要なことだしね。覚えておくと便利かもしれないわよ?」
「最近はキャストの鎮圧を行うことが多いですからね、覚えておいた方がですか。」
キャストの鎮圧....やっぱり、C.R.S.Fは確実に進んできているみたい。今はどうにも出来ないことだけれど頭の隅には残しておくほうが良さそうね。
「それ以外にも何かキャストのことで分からないことがあれば、逆に私に連絡をしてくれて構わないわ。」
そう言うとノアは少し困ったような、恥ずかしいというような顔をする。
「で、でも、フィリンさんに連絡なんて迷惑にならないですか....?」
何か複雑な事情でも話すかと思ったけれど、大したことじゃなかったわね。私はそれに対して軽く返した。
「迷惑なんて、大丈夫よ。私こう見えて普段は暇だから。」
軽く手を翻しながらそう答えた。
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「....もう少しで着くわね。」
端末の位置情報を確認しながら連絡にあった現場の位置を確認する。
「それにしてもたかが言い合いでM.Sを呼ぶなんて呑気なものね。」
私は連絡で聞いた話の内容を思い返しながらそう思った。どうやらノアによれば種族間のトラブルらしい。
「彼の方も何もないと良いけど、あの様子なら大丈夫そうね。」
待機室を2人で出る時に少し顔色を見たけれど特に心配をするほどのものではなかった。
『一般区画、Eの4番に到着しました。お気をつけて。』
そうやって考え事に耽っているといつの間にか乗っていたコンベアは目的地に到着していた。到着を知らせるアナウンスが鳴る。
「さて、ここからは遠くは無いはずなんだけど....」
コンベアから降りた後、すかさず端末を取り出して位置を確認する。やっぱり物理端末は難しいわね....
「今居る場所がここならもう少し奥に行った路地、あっちね。」
大体の位置が掴めた私は少し早足で目的の場所へと向かった。一応スラスターはあるけれど、艦内での使用は原則禁止だから使えないわね。
「ここであっていると思うけれど.....あれね。」
それでしばらく歩いていると少し大きい会話が聞こえてきて、その場所である路地が目に入ると2人組が目に入った。私は路地に入っていって近づいた。
「だからお前の方が.....って、ようやく来てくれたか。」
それなりに近くまで行くと片方の男が私が視界に入ったのか反応を返して来た。アークスがこんなところに居るなんて、よっぽど暇なのね。
「楽しいお話のところ悪いわね、M.Sよ。連絡を出したのはどっちの方?」
そう聞くと男の方が反応した。そこまで感情が高ぶっているわけじゃなさそうね。まともな会話が出来そうで安心したわ。
「俺の方だ。こっちの方とまともな会話が出来そうになくてな、それで仲介して貰いたくて呼んだんだ。」
すると男はもう一人の方、女性の方を指して話した。見る限り特に何かするようには見えないけれど.....
「あんたの方は状況を詳しく知らないだろうから説明するが.....俺が歩いていた時だ、もちろんここをだがその時にこの女、この
「ぶつかられて、それでどうしたの?」
ふらふら歩いてきた.....この人の様子を見る限りでは少し疲れているからその様になっていたのは本当みたいね。私は話の続きを促した。
「それで、俺は謝罪しろと言ったんだがこいつは謝りたくないと言い続けるばかりで話にならないんだ。」
男はそう言うと彼女の方に向き直って話を続ける。
「おい、いい加減謝ったらどうなんだ?お前が悪いのは明らかなんだぞ。」
「....私は、何もしていません...断じて。」
声を掛けられた彼女はとても落ち着いた様子で返事を返した。私の主観だけど、そんなことする人にはやっぱり見えないわね。
「...この通りさ。どうにかできないかね?」
「どうって、私はM.Sでそういうのは専門じゃないのよ。」
私は手を軽く上げて意思を示しながら出来ないという旨を伝えた。専門の研究員なら出来るだろうけど、私はあくまでもただのM.Sだから。
「だけど....一つだけ解決させられる方法はあるかもしれないわね?」
そう言うと男は少しだけ機嫌を持ち直したのか期待をするような顔をして私の方を見てきた。
「そいつを待ってたんだ。それで、その方法をするには何をするんだ?」
「大丈夫よ、直ぐに終わるから時間は要らないわ。」
「おお、じゃあやって見せてくれ。俺も忙しいんだ。」
忙しいと言っても本職の方が忙しい訳じゃなさそうだけれど。
「あらそう、なら丁度....良かったわね!」
その言葉を合図に私は思い切り男の腹部に向かって拳をめり込ませた。アークスの制服のお陰でそこまで致命傷にはならないでしょうけど。男は2m程吹き飛ばされた。
「....貴方、大丈夫?あれに何かされたんでしょ。」
体制を戻した私は彼女の方に向いて声を掛けた。すると下を向いていた顔を上げて驚いたような表情を私に向けた。
「へ、あ、はい...」
震えたような様子の声色で私に返事をしてくれた。もしかしてやり過ぎたのかしら....
「...ごめんなさい、怖かったわよね。でも貴方には危害は加えないわ。安心して。」
私は肩に手をやって落ち着かせるように働かせた。私の手は暖かくないけれど....
「...こ、この、やりやがったな!」
するとさっきの男は持ち直したのか既に立ち上がっていた。意外と早いわね。
「やりやがったも何も私は彼女の代わりをしただけよ、何も悪いことはしていないと思うけれど。」
「ふざけるな!たく、こうなったら仕方ないな....お前にも同じ目になって貰う!」
そう言うと男は
「はああああああああ!」
「!」
次にどう動くか、そう考えていると男は何の前触れも無く突っ込んできた。
「くそ、次は当ててやる!」
「紳士的じゃないのね、不意打ちするとろくなことにならないわよ!」
直ぐに動くことが出来なくて、少しだけ胴体部の装甲板を撫でるように大剣が通った。
「そっちが先に始めたんだから、容赦しないからね。」
取りあえず私はそこで今の今まで抜けていなかったカービンライフルを腰のスリットから外した。保持が外れて私の手に納まる。
「さっきから言わせておけば、この!」
男はそう言葉を吐き捨てるともう一度向き直って切りかかって来た。今度は距離が近くて直ぐに行動が始まっていた。
「隙が、多いわね!」
次に来た一振りはかなり上を狙ったものだった。そこで私は少し体を屈めてから伏せるようにして交わして、すれ違いざまに後ろ足で蹴りを入れた。
「ぐっ....この...」
「中々に、身体だけは硬いみたいね、キャストの硬い蹴りを喰らってもこんなだなんて。常人なら肋骨が軽く砕けてるわよ。」
アークスの制服の性能の高さは相変わらずみたいね。私はキャストだから着たことは無いけど。
「うるさい、うるさいぞ!M.Sの癖に、ああああ!」
すると男は今までで一番大振りに大剣を振りながら切りかかって来た。避けるのも簡単じゃないのよ!
「もう、怪我しても知らないんだから!」
そうして私は瞬時に安全装置を外すと切りかかる男に向かって、胴体と右腕に集中して弾を放つ。狭い路地に軽い破裂音が数回響いた。