PHANTASY STAR ONLINE 2 :A.P.742   作:Begew Garand

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E-23 「対処」

 「....うん、まだ生きてるわね。」

 

 短い揉み合いの後、武器をスリットに戻した私は音の容態を確認していた。

 

 「全く、これだけやっても痣だけなんて腐ってもアークスはアークスか。」

 

 吹き飛んで消失した制服の部分から肌が見えるけれど、目視で確認できる限りでは何処からも出血はしていないようだった。

 

 「取りあえず連絡の方を通してこの男は移送ね。そうなると後はこっちか....」

 

 私は傍にいた彼女(デューマン)と同じ目線になるようにその場でしゃがんだ。

 

 「ごめんね、身体の状態を見せて貰っても良いかしら。」

 

 「え、ええ....」

 

 聞くと彼女は少し動揺しながらも着ていた上着を脱いで状態が確認しやすいように動いてくれた。それにしても彼女もアークスだったのね。

 

 「....ありがとう。」

 

 そうして私は服をはけながら身体の程度を確認すると最初の内は特に何も問題は無さそうに見えた。腕とか足みたいに直ぐに見える場所から確認をしたけれど痣のような外部の怪我は見受けられなかったしね。

 

 「これなら精密検査を受けて、身体の中の方に異常が無いかどうか確認をすれば問題な...い.....」

 

 けれど、それが服に隠れて見えていなかった部分に差し掛かると今まで見えていた部分とは全く違う状態になっていることに気が付いてしまったの。

 

 上着がはけられて見えるようになった部分を見終わった後、少し詳しく見るために服の一部分を更にはけるとそこには大きな痣がいくつも残っていた。

 

 「....そこまではしていないだろうと思っていたけど、まさかここまでとはね。私も想定していなかったわ...こんなの。」

 

 「...私の方もこんなことは初めてでした。」

 

 私がそう言うと彼女の方も顔を少し歪めながらもそう答えてくれた。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 「じゃあ、ここに至るまでに一体何があったのかを教えて貰える?一応そういう手順があるからなるべくそうしたいけど.....嫌であるなら話さなくても大丈夫よ、これは尋問じゃないから。」

 

 取りあえず大きく痣になっている部分に対して軽い応急処置を施しながら私は彼女から詳しい状況を聞こうとしていた。形だけではあるけれど一応報告書は作成しなければならないそうだしね、出来れば聞きたいところだけどこれは強要するものじゃないから聞けるかどうかは分からないか。

 

 「い、いえ...拒否するほどの事ではないですから。大丈夫です、お話しできます。」

 

 ...そう思っていたけれど杞憂だったみたいね。

 

 「まあ、それでも深く込み入ったところまでは聞かないわ。概要的に現場を理解できればいいから。」

 

 「はい...」

 

 「それじゃ、取りあえずこの男に遭遇したところから始めましょうか。」

 

 私は引き続き彼女の痣の部分を処置しながらも話を聞く。

 

 「...あれは数分前のことでした。今から大体20分前でしょうか。」

 

 すると彼女は路地を抜けた先の方を見つめながら話を続ける。

 

 「普段通りに同じ帰り道を通って、それで自分の部屋に戻るところだったんです。今日の仕事が丁度終わったところでしたから。」

 

 そう言うと彼女はホログラムタイプの端末を目の前の虚空に映し出して、今日の任務記録の情報を見せてくれた。確かに任務が終了した時刻は今から数十分前になっていた。

 

 「それで普段通る場所でもあるこの路地の付近を通った時に男の方....この方が肩からぶつかって来て、それでですか。」

 

 まあ、大体予想はついていたけれど手を出したのは向こうの方が先だったみたいね。

 

 「最初の内は私からではないと反論したりしましたが、最終的には路地に連れ込まれて一方的に....」

 

 そこで彼女の話は終わった。まあ、この男が見る限りであまり頭が冴えていないことを考えればこれ以上のことは起きてなんかいやしないだろうからこれで十分か。少しでも考えるところがあればわざわざM.Sなんて呼ばないだろうし。

 

 「....そう、酷い目にあったものね。」

 

 私は彼女の傍に寄って落ち着けるようになだめた。

 

 「でも、安心して。このことに関してはM.Sが対処するから同じようなことが起こることも少なくなるはずよ。」

 

 片腕でなだめながらも私は開いている手で通信機の電源を入れる。

 

 「もし、ノア?こっちの方の処置が終わったのだけれど怪我人が居るわ、勿論対象もね。それでここからどうすれば良いかしら。」

 

 連絡の接続先はノアだった。先程貰ったコードを入力し終えて回線が繋がる。

 

 『えーっと、支部のコードとメディカルセンターのコードが端末に入っているはずです。確認してもらえますか?』

 

 聞いた私は物理端末を取り出して、ノアの言う通り登録されているコードの一覧を確認した。確かに今言った2つは最初から登録してあるわね。

 

 「大丈夫よ、しっかり入ってる。」

 

 『なら良かったです。後はそのコードの方に連絡を掛ければすぐに車両が来ますから、そのまま待機してください。番号の方はM.Sが使うと自動的にそう言った方の通常回線でない方に掛かりますから細かな説明は無くて大丈夫です。』

 

 そう聞いた私は早速2つのコードに連絡を送った。すると回線が繋がった音というよりも短い電子音が鳴って自動的に接続が切れた。これで大丈夫なのかしらね。

 

 『では後は向こうからの指示通りにしてください。僕の方は自分の方に戻りますけどまた何かあれば。』

 

 そうしてノアとの連絡は終了した。

 

 「今、車両を手配したわ。数分程度で来るでしょうからそれまで我慢してね。」

 

 「....はい。」

 

 私はそれからも引き続き彼女に寄り添った。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 「...あ、来たわ。」

 

 連絡をしてから数分後、それなりな時間で両車両が到着した。M.Sの移送用車両は見たことが無かったけれどメディカルセンターの車両は私の時と同じみたいね。何だかあの時のことを思い出すと車両からナースのリエが下りてきそうな気がして....

 

 「あれ?フィリンさんじゃないですか!」

 

 ....そう思っていると本当にリエが車両から出てきた。もしかしてリエは車両の補助要員としての役割の方が多いのかしらね。

 

 「処罰だと聞いてどうなってしまったのか心配で心配で......ですけど大丈夫そうですね。」

 

 リエはあらかた私の立ち姿を見てそう言った。

 

 「まあ、処罰としてはM.Sに転属することになったわ。私としてはまさかとは思ったけれど。その証拠がこのマークね。」

 

 私はリエに右肩が良く見えるようにした。これを見れば分かるわよね。

 

 「M.S、ですか。大変な仕事だとは聞いていますけど....なるべくお怪我の無いようにされてくださいね?」

 

 「大丈夫よ、そこまで大変な訳じゃないから。今日だってこの一件で終わりそうなんだもの。」

 

 両腕を上にあげながらも今日のことについて軽く触れた。

 

 「....って、今日はフィリンさんじゃなかったですね。運ばれる方は何処にいらっしゃいますか?」

 

 「ここに居るけれど.....少し説明しておくわ。」

 

 そうしてリエとの会話を一旦区切った私は足元に座り込んでいる彼女を手で指した。

 

 「状態としては出血が無いけれど、打撲が酷いわね。今確認しただけでもかなりの数よ。ここだと限度があるから精密検査で良く見てあげて。」

 

 私はさっきまでで確認することが出来た彼女の容態をリエに伝えた。これで少しは良くなるのが早くなれば良いんだけど。

 

 「そうですか....では、メディカルセンターの方でもっと良く診てみますね。」

 

 そう言うとリエは彼女の傍へ行って、立ち上がれるように補助を行っていた。

 

 「んしょ、そう言えばお名前は何という方なんですか?一応確認しなければいけませんから。」

 

 リエがそう言う。そう言えばまだ名前を聞いていなかったな。

 

 「ごめんなさい、お名前を聞いても良いかしら。」

 

 私がそう聞くと彼女は特に嫌そうな素振りを見せることも無く教えてくれた。

 

 「私はエリシア....エリシアです。デューマンの。」

 

 エリシア。残念だけど聞いたことは無いわね。私がアークスだった時でも会っていないということはきっと普段の担当の範囲が違ったのかしら。

 

 「エリシアさんですね、分かりました。後で登録をしておくので取りあえずセンターの方に行きましょうか。」

 

 そうしてリエは無事に彼女、エリシアを無事に車内に運び込み終わると軽く会釈をしてから出発して行った。

 

 「...さて、後はこの男を移送するだけね。こういう時はキャストで良かったと思うわ。」

 

 私は少し力むと床で気絶して倒れ込んでいる男を両手で軽く持ち上げて車両の方へ収容した。運転手は居たけれど顔を知らなかったから特に話をすることも無く終わったわ。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 「今日の仕事、どうでしたか?」

 

 「どうしたも...はあ、無いわよ。」

 

 「?」

 

 自分に割り当てられた仕事を終えて、駐在所へ戻ろうとコンベアに乗っていると偶然にも同時期に仕事を終わらせたノアと鉢合わせた。それで今日の仕事、初めての仕事はどうだったかという話になっていた。

 

 「M.Sは鎮圧もするとは聞いていたけれど、まさか話し合いの仲介で終わりそうな件で銃を使わされるとは思わなかったわ....」

 

 そう、私が担当した仕事は連絡された時点では話し合いの仲介と言うだけで攻撃を伴うとまでは聞いてなんかいなかったもの。確かに用心をすると言って銃を持ったけれど、ここまでになるとは思わなかったのよ。

 

 「え、発砲したんですか?少し揉み合いになった位だと思ってましたけど。」

 

 ノアは気が抜けたように言う。そうね、何も伝えてないものね...

 

 「発砲したわ、それも数十発もね。対象がしぶとかったのよ。」

 

 一応は無力化をすることを優先して攻撃を加えたけれど、それにしたって生身の人間相手には少しやり過ぎた位だって言うのにあの軽傷は呆れるわ。

 

 「しぶといって、そんなにですか?」

 

 「相当な位ね。終わった後に身体の確認をしたけれど血の一滴どころか痣の一つもなかったわ。」

 

 まあ、制服は限界に近かったみたいだから後しばらく続けていればそれなりに致命傷だったでしょうね。あれはフォトンを通すことで防御能力を高めるものだから綻びが出れば満足には発揮出来ないだろうし。

 

 「やっぱり、キャストの方よりもヒューマンやニューマン、デューマンの方の方がフォトンの使用効率は遥かに良いですからね。もっとも僕は基本的にキャストが対象の仕事が多くて実感がないですけど....」

 

 ....確かにノアの言うことは教本通りね。キャストは生体部分が基本的に脳しかない影響で満足にフォトンの力を使うことが出来なくて、それでヒューマンと比べれば当然差が出る。勿論私もキャストだからフォトンの扱いなんて皆無よ。守ってくれるのは基本この装甲板だけ。

 

 「そのうちヒューマンが対象の仕事が来れば分かるわよ。かなりやり方も変わってくるから気をつけられれば良いけどね。」

 

 「は、はあ....」

 

 「....最近だと、種族間の言い合いが多いみたいだから出番は多いんじゃない?貴方が1番多く関わっているのがC.R.S.Fってだけで案外キャスト以外の種族同士も良い関係じゃないからね、特にニューマンとかデューマンは標的にされやすいから。」

 

 「.....デューマン、ですか。」

 

 そうして会話しているといつの間にかコンベアの到着を知らせるアナウンスが鳴っていた。

 

 

 

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