PHANTASY STAR ONLINE 2 :A.P.742 作:Begew Garand
「.....ここでも駄目か。」
ワタシはコンソールへの接続を切りながら1人呟いた。
「まあ、予想はしていたけれどローカルネットワークにそんな仰々しいデータが乗っている訳ないわね。そもそもある確証が無い物なんだから。」
コンソールへの接続が完全に切れたことを確認したワタシはそれからまた別のコンソール....もとい、艦内に設置されている機器の元へ足を向けた。
「はあ.....もう一人のワタシには任せられないからもう一人の方のワタシに任せて出てきてはいるけれど効果があるかどうかね。ワタシ達で話し合ったときにはこう決めたけど、やっぱり駄目なのかしら。」
少し前、数日前だけれどワタシ達はM.Sという組織の男、バーンズからの頼みでイレノアと言う人物を探すことになった。それでまずは何か手掛かりを得るためにこの艦にあるデータベースにアクセスを試みることになったのだけれど、中々にそれは上手くいかなかった。
この艦でバーンズの言っていた計画が行われていたのなら記録は残っていないにしろワタシ達と同じで本来は必要のない
「逆に考えて
そう、このワタシ達の考えはバーンズの言っていた計画がここで行われていないのであれば全くの無意味になるということだった。いくら考えを張り巡らせても始点が駄目になればそれまでだわ。
「....仕方ないか。今出来ることをするしか、ないものね。」
けれど、そうは言ったところでこの艦から別の艦に移動をすることは出来ないしね。精々アークスでも一般員でもないワタシ達に出来るのはこれぐらいのことか。
「それこそ目立ったことをして面倒なことになるぐらいならまだこの方が良いのかもしれないか。結果はあまり良くないとは思うけど....」
そうして次のポイントに着いたワタシは再び端末を起動して機器に接続を始めた。こういったことは元から得意ではなかったからかなり手間取るけど。
「良くないことだけれど、人助けになるのならね。」
自室で打ち込んで作成したプログラムを機器の中で起動させる。....それにしてもワタシが作成できるような物で突破出来るなんて少し不安だけど。
「よし、これで中を見れるわ。」
無事にそれが終わるとモニターに小さいメニューが表示される。ここから接続することの出来る限りのデータの一覧が出て、フォルダーの名称から見当を付けて探し当てようって訳よ。
...だけど、ここの機器で接続できるデータの数は少なくてあったとしても関係のないようなインフラ関連のデータばかりでめぼしい物は無かった。
「....まあ、思っていた通りだけどやっぱり駄目ね。自室に戻って考え直した方が良いかもしれないわ。」
そしてその考えに落ち着いたワタシは機器からの接続を解除して足早にそこから離れることにした。
「こんな場所に長居したら何が.....」
だけど、振り返って元来た道を見た時だった。少し気味の悪い男が視界に入ったのは。
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「.....何よ、貴方。」
そう聞くとその男は表情を変えずにまとわりつくような声で返事を返して来た。
「ん、僕がどうかしたかい?」
男は飾り気のないような灰色のアークスの制服を着用していて、短く切りそろえた黒い髪の間から出るニューマン特有の耳が嫌でも主張していた。
「人が何かをしているところを後ろから見るなんて、何かなければしないことでしょ。」
一目見た時に一般員か、それともM.Sの人間に見られたかと思ったけれど....どうやらそれらとは全く違う何かみたいね。
アークスの制服を着用しているからアークスなことには変わりは無いと思う。だけど、この人物が持っている雰囲気は何かが違う気がするわ。はっきり言って異質よ。
「そうだね、確かにそうだ。何かなければ後ろから見たりなんかしない。」
男は話を続けながらこちらの方に歩み寄ってくる。武器があれば取り出していたけれど、今のワタシにはそんなものは無かった。
「じゃあこうしよう、僕は君の行動に興味があったから観察をしていた....こうすれば何もおかしくは無いだろう?」
まあ、あったとしてもこの男から感じる異質さの圧力で取り出すことすら出来ないと思うけれど。
「.....だとして、ワタシに何の用がある訳よ。顔も知らない貴方と関わるいわれは無いわ。」
ワタシは薄々と感じ始めて来ていた恐怖からか顔の表情を硬くして男にそう言い放った。すると男は駄目だとも言うように首を横に振りながら返して来る。
「うん....駄目だなあ、君のような人がその様な顔をするものじゃない。それに怖がらなくて構わないよ?この通り僕は丸腰だ。」
そう言い放つと手を横に広げながら何も持っていないということを主張してくる。ワタシは言葉を発することなく表情をさらに硬くした。
「....まあ、確かに君の言う通り関わるいわれはないね。僕と君が。」
「そ、そうよ、貴方とは関わるいわれも、理由も無いわ。」
緊張して少し声が震えた。ある意味、ここまで怖さを感じたのは久しぶりのことかもしれないわね。
「では、僕はここで失礼するよ。すまなかったね。」
「......」
男はそう言うと興味の無くなったものを放り出すような態度で踵を返して行った。振り向きざまに言葉を1つ残して。
「そうだ、身の回りには気を付けると良いよ。近頃は何が起こるか分からないからね.....」
そうして気が付いた時にはその男は消え去っていた。元からそこに居なかったように。
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「....今戻ったわ。」
あの男と遭遇した後、ワタシは一目散に自室のある区画に向かって走った。
途中躓きそうにもなったけれど、そんなことなんて気にせずに走り続けた。
「そ、そんなに慌てられてどうされたんですか?」
もう一人の方のワタシが驚いた様子で自室のドアを開けた私の方に駆け寄ってくる。
「戻るのが遅かったですから少し気に掛かっていましたが、何かあったんですか。」
気が付いたワタシは自室の壁に取り付けられた電子表示の時計を見た。確かにかなりの時間が過ぎてしまっていた。
「いや....特には無いけど、変なのに会っただけでそれ以外は。」
「変なの?」
そう、変なの.....最後に確認した機器の場所で遭遇したあの異質なニューマンの男のことだ。
「アークス、の制服を着ていたから多分そうなんだろうけど、ニューマンの変な男にね。」
「それって、大丈夫なんでしょうか.....」
もう一人の方のワタシが心配そうな顔をして言う。
確かにワタシも遭遇した時にはそういったことを心配していたけれど、あれはそんなものとは全く無縁で.....何か違うものだと本能で感じられた。
「...最初は私もそう思っていたけど、そんなものじゃなかった。もっとこう...別の物だわ。」
「別の物、ですか。」
でも、まだあの男が何なのかすら分かっても居ない状態で深く考えたところで意味も無いか。余計な心配事を増やしても仕方が無いし、話題を変えるしかないわね。
そこでワタシは話の方向を変えて別の話をすることにした。
「そう言えばもう一人のワタシの方は大丈夫?少しの間離れてたから。」
「...そちらの方なら、大丈夫ですよ。今奥の方の簡易ベッドでスリープに入っています。」
言われた通りに暗い室内の奥の方を見るとそこには目を閉じて落ち着いた様子のワタシの顔が見えた。まあ、キャストだから寝ていても胸は上下しないから分かりづらいのだけれど。
「ワタシの方もしばらく休んでて良いわよ。ずっと付きっ切りだっただろうから交代するわ。」
そう言うとワタシは少し考えた後にはいと答えた。
「分かりました、お願いしますね。」
そうしてワタシはさっきまでもう一人の方のワタシが座っていた椅子に入れ替わりで座って、引き続き待機状態を維持した。
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「ふう.....全く、同じ人物に同じようなことを起こされるとはな。一般員とはいえ
新しく配属になった元C.R.S.Fのフィリンを迎えて、その後直ぐに来た仕事を普段通り済ませた俺は最寄りのコンベアに向かって歩みを進めながら愚痴を漏らしていた。
確かに最近ではアークスに対する教育、再指導は相も変わらず厳格に行われているが一般員に対してのそれらはかなり軽視されているように感じた。まあ、
「取りあえず、早いところ帰って報告書を書き上げるのが最優先だな.....?」
そうしてコンベアまで辿り着いた時、不意に端末に通知が入った。テキスト文じゃなくて通話回線の通知か。
「どれ、移動中はすることも無いからな、出ておくか。」
通知を確認して、俺は回線を向こう側....送って来た方と繋げた。最初に少しノイズが走った後安定した音が入って来る。
『....バーンズ、で合ってるわね。回線は繋がってる?』
「ん?ああ、無事に繋がっているぞ。」
まず入って来た声はこの間の施設の件で関わったミィーンさんの声だった。と、言っても口調は別人だったが。
「もしかしてメインの方じゃない方の君か?最初に会った時と少し違うが。」
『ええ、貴方の話したことのある方ではなくてもう一人の方のワタシよ。説明が遅れたわ。』
「いや、何となく分かっていたから大丈夫だ。」
それにしてもあれからして初めてこのコードに連絡が掛かってきたな。....もしかしてだがイレノアのことで何か分かったことでもあるんだろうか。俺は少しだけ期待しながら話の続きを聞いた。
『....それで、本題に入るわね。イレノアさんのことだけれど、何処の艦で計画をやったかは覚えている?』
計画を何処の艦で行ったかか、そう言えばあの時には言っていなかったな。
「計画を行っていたのは俺が元々居た場所、第182番艦のアークスシップ
そう、まだイレノアが居た頃に俺がアークスとして活動していた艦、シークマーカー。ここのフェルノートとはほとんど同型で内部もそこまで差が無かったのは良く覚えている。
『そう....良いことを聞けたわ、ありがとう。また何か分かれば連絡を繋げるわ。』
少し期待はしていたが、まあそんなに上手くいくはずが無いよな。俺は普通に挨拶を返して通話を閉じた。その頃には駐在所も見える頃合いになっていた。
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「お、先に戻っていたか。」
待機室の入り口をくぐるとそこには既にノア君とフィリンが居た。どうやら俺の方が手間取っていたみたいだな。
「先に、と言っても数分前なんですけどね。仕事が終わった後の移動で合流出来たので一緒に戻ったんですよ。」
なるほどな、それで戻ってきているのが同じくらいのタイミングだったのか。
「ノア君の方は普段通りだっただろうから良いとして....フィリン、そっちの方は大丈夫だったか?」
「.....まあ、怪我はしなかったわ。私はね。」
俺がフィリンの方を向いてそう聞くと右手をひらひらとさせながら答えた。
「自分は....と言うことは対象がか。」
「ええ、勿論。だけど血が出る程じゃなかったから大丈夫だと思うわ、アークスだったもの。」
何となく嫌な予想はしていたが、まさか本当に最初の仕事から撃ち合いか。
「まあ、手順通り対象の移送と被害者のメディカルセンターへの搬送、基本はこなせているからな、これからもよろしく頼むぞ。」
「言われなくとも宜しく願うわ。」
そうして俺はフィリンと手を交わした。
「さて、取りあえず報告書の作成だな。2人とも出来上がったら俺の方に出してくれ。目を通しておく。」
そう言うとノア君とフィリンはほぼ同じタイミングで返事を返して来た。