PHANTASY STAR ONLINE 2 :A.P.742   作:Begew Garand

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E-25 「虚夢」

 「じゃあ、また明日お願いします。」

 

 「ええ、私が言うことでもないけれど気を付けてね。」

 

 僕が振り向きざまに挨拶をするとフィリンさんは少しほくそ笑んで返事を返してくれた。

 

 「大丈夫ですよ、僕を襲ったところで何にもならないですからね。」

 

 服のポケットから識別カードを取り出しながらそう答えるとフィリンさんは呆れたような表情をした。

 

 「違うわよ....貴方がM,Sだから言ってるの。ただでさえ問題が発生しやすい時勢なのよ?」

 

 前にバーンズさんが言っていたように自室に変えるまでの間に遭遇したり....無いと良いけど。

 

 カードを持っている手とは逆の手で腰に身に着けている(P1A2)を叩きながらフィリンさんに言葉を返した。

 

 「分かってますよ、変な心配させてごめんなさい。」

 

 「...はあ、なら良いけど。それじゃあね。」

 

 そうしてお互いにコンベアのカードスロットに識別カードを差し込んだ。

 

 「はい、また明日。」

 

 その言葉を最後にコンベアは何事も無く低い音を立てながら動き始めた。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 「....今日はすんなり開くんだな。」

 

 自室の扉に付いているスロットに識別カードを通すと普段は中々開かない扉がスムーズにスライドした。特に何か良い日でもないんだけど...

 

 「まあ、気にしても仕方が無いか。」

 

 僕は扉横にあるスイッチを押して部屋の電気を付けた。特に何も変哲の無い部屋が薄暗く照らされる。

 

 特に拘りがある訳じゃないけど部屋にはM.Sの仕事場で使っている物よりも古いコンソール台、それと作業用の机とそれなりにクッションの利いたベッドをこしらえておいてある。もっとも、これを揃えたのを最後に特に何も弄ってはいないから全く様変わりしないんだけどね。

 

 「...あ、買っておいた精製水、これで最後か。追加で買っておかないと。」

 

 ふと、普段通りに冷蔵庫から精製水を取り出そうとするとそれが最後の予備だということに気が付いた。ただでさえ何も入ることのない冷蔵庫から物が消えて、見晴らしがやけに良くなっていた。

 

 最近は仕事が忙しい状態にあるせいで自室に戻って来てはすぐに寝てしまうから簡単に分かることにも気が付けなくなっていたのかもしれないな。

 

 「うん、いつも通りの味だな。代わり映えないや。」

 

 精製水のボトルを開けてそれを口に含むと安心感のあるいつもの味が口に広がって、そして体に回った。

 

 普段食べる...というよりも飲んでいる携行食があるけれど、僕はあれと比べてこの精製水の方が飲むならまだ好きかな。携行食は何と言うか、味の押し付けが強いというか雑というか....まあ、そんな理由で僕は携行食は好きじゃなかった。それよりも精製水を飲んでおけば口に残る嫌な味も忘れられるしね。

 

 「ん....?」

 

 そうして水を飲んで気持ちを落ち着けていると、突然端末からメールの受信を知らせる電子音が短く鳴った。

 

 こんな時間に誰だろう.....そう思いながら僕は端末の画面に指を走らせた。

 

 「えっと、差出人はリピカちゃんか......レピカちゃん!?」

 

 差出人の項目を見た僕は驚きのあまり二度見してしまった。こんなに遅い時間に連絡って、一体何なんだろう。そう思ったときには既にメールの文章の羅列に視線が行っていた。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 「....何だ、そういうことか。」

 

 何事かと思って焦りながらも全文を、というよりも最初の文を読んだところで僕は肩をなで下ろした。どうやら最初の文を見る限り急ぎの用じゃないみたいだしね。この時間に連絡をしてきたのは何故なのかは分からないけど。

 

 「えっと、指定教育....勉強についてか。何か嫌なことでもあったのかな。」

 

 あまりまとまりのない拙い文章で可愛らしく愚痴?のようなものが長く書かれていた。

 

 先生の事、講義の事、友達の事、最近あった出来事....最後にメールを送ってくれた日から少し期間が空いていたけれどこんなことがあったということを文章から知ることが出来た。

 

 「勉強が苦手なのはやっぱりか.....」

 

 その文章の中でもやはり際立っているのは勉強のことについてだった。

 

 最初にレピカちゃんに出会ったときに聞いたけれどあの様子だと....今度分かるところだけでも時間のある時に教えてあげたほうが良さそうかな。一応だけど普通の教育レベルの過程は済ませたから特別なことじゃなければ教えられるしね。

 

 「仕方ない、僕だっていつも楽しい話をしたいけど....これもレピカちゃんが立派なアークスになるにはか。この時間にメールを送って来るのもあれだからそれについても書いておかないとな。」

 

 そうして文章を、レピカちゃんのメールの全文を無事に読み終えた僕は新しいメールの作成をし始めることにした。

 

 ちょっと遅い時間だけど朝には時間が無いからこういう時にしか返信できないからね。

 

 「えっと、文の作成はここで良いんだよな。」

 

 一旦メールの文章を閉じてからレピカちゃんに教えて貰った通りに項目を処理していく。

 

 それで画面が幾度か切り替わると宛先、件名、差出人の表示。文章入力欄の画面に辿り着くことが出来た。

 

 「ふう....やっぱり普段から使っておかないと頭から使い方が抜けてるな。忘れないように気を付けないと。」

 

 そんなことを口から漏らしつつ、僕は文章を打ち込んでいった。

 

 文章を送ってくれたことに関して、勉強について、友達について.....そうして色々と書いた後にあまり夜更かしをしてはいけないという旨を伝える文章を打ち残した。メールを送って来てくれるのは嬉しいけど、レピカちゃんの年頃であんまり夜更かしはいけないしね。次の日にも響いてしまうだろうからね。

 

 「....こんなところかな、うん。明日の暇な時間にでも読んでくれると良いけど。」

 

 それで数分ぐらいだったかな。文章をあらかた入力することが出来たのは。

 

 打つことは決まっていたけれど一応読みやすいように調整が必要だからね、手間になるけど別に苦になるほどではないか。

 

 「宛先がここで件名は....当たり障りが無いようにこれで良いか。」

 

 そうして最後に宛名の指定と件名を入力した後、送信を押してレピカちゃんとのやり取りは無事に終わった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 「...あ、もうこんな時間か。僕の方もそろそろ寝ないとな。」

 

 メールの作成を済ませた後、精製水を飲みながらくつろいでいる時にふと視界に時計が入るとかなり遅い時間になっていることに気が付いた。

 

 「前に遅刻しかけたことはあったけど、ペナルティは無いにしろ遅刻は駄目だからね。ただでさえ人手が足りないし。」

 

 そうして僕は着ていた一般員用のジャケットを脱いでそれを椅子に掛けるとベッドにもう一度座る。

 

 それから腰に付けていた銃を取り外して、それの安全装置が作動していることを確認してベッドの横にあるサイドテーブルに置いてからベッドに横になった。

 

 「はあ、今日も疲れたな。こんな風にしていたら直ぐに寝てしまい、そうだ.....」

 

 そんなことを言っていると数回瞼が閉じたかと思えば既に意識は何処かに飛んでしまっていた。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 ......あれ?何処だろう、ここ。

 

 気が付くと、僕は記憶の無い場所に立っていた。

 

 

 えっと、僕はさっきまで何をして......部屋で寝ていたんだっけ。

 

 何だか記憶のぼけていた僕は最後にしていたことを思い出そうとしていた。

 

 

 それにしても明るい場所....と言うよりかは真っ白?なのかな。

 

 そこが何処であるかを確認しようとすると辺りはとにかく真っ白で、その場を形容できるものが存在しなかった。

 

 ....そうして困り果てていると何処からか何かの音が聞こえてきて、それは段々と近づいてきた。

 

 

 ?なんだろう、この音。

 

 それで、その正体を探ろうとした時だった。それが飛んできたのは。

 

 

 !

 

 最初に飛んできたのは何処かの天井だった。そう、何処でも見たことのないような。

 

 それが大きな音を立てて....この音も今まで聞いたことのないようなものだった。そうして白い空間のそれがあるべき場所に固定される。

 

 次には外壁が、床が、様々なものが飛んできて自らがあるべき場所へ固定されていって、それは1つの場所になった。

 

 

 ここは.....何処かで見たような気がする。僕自身が直接赴いた記憶は無いけど、何処かで...

 

 そうして出来上がった1つの場所に覚えが何故かあった僕はそれを必死に思い出そうとしていると、今度は聞き覚えのある音...そう、激しく金属がぶつかり合うような音が聞こえた。

 

 そこで僕はようやく思い出した。

 

 

 あの剣を持っている人、前に夢で見た人....?

 

 音の響く方に目を向けるとそこには以前夢の中で見た男の人?が居た。アークスの少し古いスーツを着た、あの人だった。

 

 「......!」

 

 攻撃をしながらも何かを話しているみたいだったけれど、何故か僕にはその声は聞こえなかった。その部分にだけノイズを走らせたみたいに何も。

 

 「.......、.....。」

 

 聞こえないのはその人声だけじゃなかった。前にこの人が出てきた時に側にいた杖のような見た目の武器を持った女の人の声もだった。

 

 あの時はあまり気にしてはいなかったけど、女の人が着ている服はやっぱり不思議な物でアークスで作られたような量産品とは違う雰囲気で....だとしたら、アークスでないとしたのならこの人は一体何なんだろう。

 

 

 「......、.......?」

 

 そうして聞こえてくるノイズはその女の人の声もそうだけど、何よりもその目の前にある何かからも発せられていた。

 

 それは男の人?や女の人とは違って姿自体にもやが掛かっていて形すら見ることが出来ない。それが人であるかすらも分からない。

 

 ただ1つ分かることはそれがこの人達と敵対しているということだった。

 

 

 でも、どうして僕が夢....夢なのかも分からないけど、この光景を見ているんだろう。夢には経験したことしか出てこないって言うのはやっぱり嘘だったのかな。

 

 夢は経験したことから構築されるものであって経験をしていない範囲外のものは描かれることはない。何処かで聞いた話だけれどこれが正しいのか正しくないのか....というよりもこれ自体が夢じゃないんじゃ?

 

 そう考えている間にも目の前の時間は確実に進んでいた。

 

 

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