PHANTASY STAR ONLINE 2 :A.P.742   作:Begew Garand

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E-27 「戦闘用艦」

 「そういえばですけど、別の艦に退避をした後はどうするんですか?」

 

 ヘルメットと着ていたジャケットの襟の部分の接続を整えながらフィリンさんに聞いた。

 

 自分の部屋から出てきた直後は慌てていたから聞くことが出来なかったけれど、まだ肝心なことを聞いていなかったからね。

 

 「私の知るところでは一応だけれどアークスの規定におおむね沿って動くはずだから....そうね、無事が確認でき次第戻るんじゃないかしら。今回の事が想定の範囲内の出来事で済むのならだけれど。」

 

 「想定の範囲、ですか。」

 

 フィリンさんは僕と違ってアークスであったからその辺りの匙加減については良く分かっているのかもしれないな。僕に今のところ分かることと言えばダーカーがいかに凶悪であるかと言うこと位で、それ以外のことは聞いた言葉だけでさっぱりだから。

 

 ....でも、限りなく今のダーカーと言うのには昔のような勢いは無いということだけは何となく分かる。アークスの人達が昔の時ほど忙しくないのを見れば残党狩り程度なのも理解できるからね。

 

 「そうよ、これは想定の範囲ならの話。出る被害が酷ければ戻れないどころかもっと酷いかもしれないわ。ただでさえ私達みたいな辺境にあるような旧型艦(余剰人員)の人間の扱いは()()()()()なんだから、気が気じゃないわよ。」

 

 フィリンさんはため息交じりに言葉を吐き捨てた。

 

 「もっと酷い、ですか。仮にそうなったとしてフィリンさんはどうなると思います?」

 

 そう聞くと少し難しい顔をして、それからフィリンさんは話を続ける。

 

 「どうなるか、ね。一番最悪の事態を想定するのならこの(フェルノート)が今回の襲撃でそれなりの被害を受けたとして、しばらくの間はここには戻れないでしょ?だけど、そうなったとしても自分達の艦に戻らなくちゃいけないの。一時的には別の艦に留まれるかもしれないけど、それはあくまでも一時的なものでずっとではないわ。」

 

 「で、でも、被害を受けて普通じゃない状態の艦に戻れって言うんですか?」

 

 少し戸惑いながらそう言うとあっさりと言葉が返って来た。

 

 「そうよ、規定通りなら原状復帰で戻ることになってる.....けど、実際にはそんなこと無理なのは分かるわよね。

 

 「...はい。」

 

 「退避先の艦に残ることはできない、かといって元の(フェルノート)に戻って平常通りに戻すことも難しい。この状況から割り出せることと言えば大体決まってるけど、どうかしらね?」

 

 そう言ってフィリンさんが頭の後ろで手を組みながら通路を進み始めた時、横から声を掛けられた。

 

 「なんだ、ここに居たのか。随分探したんだぞ?」

 

 そこには僕と同じく一般員用の服を着たバーンズさんが居た。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 「連絡が来ないものだから気になって仕方が無かったんだぞ?今となってはどうでも良いことだが。」

 

 それを聞いた僕とフィリンさんははっとしてそれぞれ持っている端末の電源を入れて連絡を忘れたかどうか確認した。勿論のこと最後の送信履歴は数時間前で止まったままだった。

 

 「....まあ、今回は良かったが似たようなことがあれば連絡は怠らないようにしてくれ。とにかく何時でも重要なのは情報なんだからな、忘れないでくれよ。」

 

 「すみません、わかりました...」

 

 僕は申し訳なくバーンズさんに頭を少し低くした。

 

 「...と、俺が話したかったことはこれじゃなかったな。本当に話したいことがあるというのに無駄話とは俺も駄目かもしれないな。」

 

 そう言うと少し照れくさいような顔をしながら目的であろう場所をバーンズさんは人差し指で指す。

 

 「あっちの方がどうかしたんですか?」

 

 「ん?....ああ、暗くて良く見えなかったか。もっと良く目を凝らして見てみろ。」

 

 「....?」

 

 そう言われた僕は目をすぼめてそこにある物を見ようとする。

 

 最初の内は建物か何かの一部かと思った、中々に全貌が見えなかったからね。それで段々と暗所に慣れてきた目でそこにある物を特定しようとしているとその輪郭から浮き彫りになり始めて、とうとう全貌が確認できたところでそれが何なのかを知ることが出来た。

 

 「もしかして船....ですか?何処となく姿は似ているような気がしますけど。」

 

 見えたのは船だった。それも普通のではなくて戦闘用の兵器が装備されているような、アークスで使うような見た目の物だった。

 

 「そうだ、かなり旧型だが退避に使うのは十分過ぎる位だ。心配なところもあるが....まあ、大丈夫だろう。」

 

 ほんの少しだけ影のかかったような顔をしてバーンズさんは言った。

 

 僕からすれば特に何も、旧型だって言うこと以外には特に問題になりそうなところは無いように見えるけど何処かに問題があるのかな。そう思ったときには既に口から言葉が出ていた。

 

 「何処かに問題があるんですか?心配になりそうなところは無さそうな気がしますけど.....」

 

 そう聞くとバーンズさんは不思議そうに聞き返して来た。

 

 「直ぐに分かると思うんだがな......もしかしてノア君はアークスの戦闘用艦を見たことが無かったか?」

 

 戦闘用艦、それを聞いても何のことなのか分からなかった。

 

 指定教育では一応アークスについては勉強するけど、まあそれはあくまでも一部分だけであってあまり詳しくはやらないからね。当然使っている物もあんまり良く分かっていないんだ。

 

 「それはそうですよ。僕はアークスに居たことが無いですし、こういった物もあんまりですか。」

 

 言うとバーンズさんは少し納得したように答えた後、船の内部への通行用ハッチの一部を指で指していた。

 

 「見たことも聞いたことも無いのならそう言うことになるか。.....まあ良い、取りあえず乗り込むぞ。これの管理者には既に連絡を取ってあるからな、乗ってくれ。」

 

 「....ほら、行くわよ。」

 

 そうして僕はまたもフィリンさんに手を引かれる形で連れられて行った。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 「...ん、バーンズか。例の奴らは見つけられたのか?それならもうここを出るが。」

 

 俺が船の甲板に上がると調整作業を続けている男の姿が目に入った。年齢は俺に近い。

 

 「ああ、偶然に近いがすぐ近くの通路の方でな。もう大丈夫だ、いつでも出してくれ。」

 

 そう言うと作業の手を止めてから男は機体収容庫の方へ向かって行く。

 

 「何やってるんだ?もう出発だぞ。」

 

 「んあ、分かってるさグレイド。俺も行く。」

 

 そうしてグレイドについて行く形で俺はノア君とフィリンと同じく船内へと入っていった。

 

 「それにしてもそっちから連絡してくるなんて何かあるとは思ったが、まさかこんなことになってるとはな。想像してなかったぞ?」

 

 「グレイドお前、艦内放送聞いてなかったのか?」

 

 グレイドに向かってそう聞くとそうだと言わんばかりに返事を返して来た。

 

 「それはそうさ、こちとら寝ていたんだからな。寝ているときになんかあんな音量の小さい放送聞けるわけないだろ?」

 

 「それは、そうだが.....まあ起きられてここまで来れたのなら良いか。」

 

 そこで俺は話を転換する。さっきまでノア君に言っていた心配な部分についての確認だ。

 

 「ところでグレイド。動きそうか?これは。」

 

 そう聞くとグレイドは最初の内はそれなりに元気に答えていたが段々と自信のないような声色になっていた。やはり問題があるか。

 

 「少し前に大部分は改修できた....つもりだが、やっぱり不安要素が強いな。船を出せるかに関しては問題ないだろうが、本当に問題になるのは空域に出てからだな。」

 

 グレイドはそう言いながら器用にポケットから端末を取り出して不安要素を説明してくれた。簡単なことなら俺でも分かるが専門知識は専門の技師の方が上だからな。こうしてもらった方が分かりやすいな。

 

 「空域に出てから、か。グレイドは宙域に出てから戦闘が起こると思うか?」

 

 聞くとグレイドは特に驚くこと無く返事をしてくれた。

 

 「当然と言うか、そうなるだろうな間違いなく。アークスでなくとも感で分かるもんだぜ?こういうのって」

 

 「....まあ、俺もそんなところか。」

 

 俺は少し鼻で笑いながら答えを返した。グレイドは数学的な男かと思えば以外とこういったところもある奴だからな、嫌いになれんな。

 

 「それにしても間に合わせの物だけで良くここまで復帰させられたな、この巡洋艦クラス(戦闘用艦)。右横から見ればこれが動いていた頃と変わらないんじゃないのか?」

 

 そう聞くと少し悩んだようにしてグレイドは言葉を捻り出す。

 

 「性能面では当時よりもそれなりに補えて、傍から見れば俺もそう言いたい....ところだったが問題が多くてな。まあ外側から見れば分かるだろ?何がいけないか。」

 

 「....強引にやり過ぎたような形だものな、これは。」

 

 グレイドの端末の画面に映るこの船の全体図を眺めながら言葉を言い放つ。確かにこの船は俺が言ったように正面から見て右側から見ればあまり変わっていないように見えるが、左側から見れば酷いものだった。

 

 まず、大前提としてこの艦は前から見た左側部が大きく破損している。その為にこの戦闘用艦の特徴でもある艦橋横に設置された2つの機体収容庫が片方しかなく、勿論のことその収納庫から伸びているはずのカタパルト部もその大部分が欠損している。

 

 それを補うために同じ形式の戦闘用艦で、なおかつ巡洋艦クラスのロケットエンジンを欠損部位に追加して船の重量均一を保たせてはいるが....勿論、想定の範囲外のやり方の所為もあって強度が無いことが1つ、動作不良を起こす可能性もまた1つということらしい。

 

 「まあ仕方が無いさ。これをしなかったらこいつは傾いちまうし、まともに動かなくなる。選択としては正しい選択をしたつもりだが.....安心はできないか、この状態。」

 

 グレイドはまた少し不安を顔に浮かべながらそう言った。

 

 一番良い選択をすることが最適、なのかもしれないがそれにそれなりの欠点が生まれないとも言い切れないことがあるということだろうな。

 

 「なに、今回運んでもらえるだけでも十分にこいつは役に立つさ。最悪の事態....襲われることは考えられることだが必ず起こることじゃないからな。適度に肩の力でも抜いておこうぜ、な?」

 

 「....そうだな、そうしておくか。」

 

 そうしてその話題になった頃には俺達は既に艦橋に着いていた。

 

 

 

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