PHANTASY STAR ONLINE 2 :A.P.742 作:Begew Garand
「結構暗いんだな.....」
フィリンさんに連れられてアークスの旧型戦闘用艦に乗り込んだ僕は船内の通路を歩いていた。
けれど通路は電気が通っていないようで薄暗く足元に気を配りながら歩かないと怪我でもしてしまいそうだった。
「多分だけどまだ電源が入っていないんじゃないかしら。」
僕が口から言葉を漏らしているとフィリンさんが話しかけてきた。確かに外から見た時も照明が点いていなくて、それでこの船の外観すら良く分からなかったことから考えればそうなのかもしれない。
「そうだとしたら....この船は動いていないんですね。駆動部と言うか心臓部がですか。」
フィリンさんは僕の先導をしながら声を返す。
「正直なところ、私も貴方と同じでこういった戦闘用艦には乗ったことが無いから文面で知っていることしか分からないけれど純粋に考えればそうなるわね。」
「フィリンさんは乗ったことが無いんですか?」
「無いわ。だけどバーンズならあるんじゃないかしら?あの人、結構実戦経験ありそうだから。」
「そうなんですかね...」
僕は考えるようにして言葉を返す。
まあ、恐らくと言うよりもバーンズさんなら乗ったことがあってもおかしくは無さそうな気がするな。....今のところそれを証明できるほどの根拠がある訳じゃないんだけど。強いて言えば雰囲気、なのかな。
「私なんて入って数年程度しか経っていないような人材よ。おまけに辺境のアークスシップに所属のアークスなんかにそんなものに乗れる機会なんて更々ないわ。ほら、乗って。」
「あ、はい!」
呼ばれた僕はフィリンさんと一緒に小型の昇降機に乗り込んだ。これは船の主電源とは違う電源が付いているみたいで電機は点いていないけれど重い音と軋むような音を立てながら動き出した。
「....それにしても、ノアがどうして最初からM.Sに配属になったのかは分からないものね。」
ぼうっとして昇降機の壁を見ているとそう言われた。
「それは僕だって分からないですよ、実際に判定した人間じゃないんですから。」
「そうだけど.....普通じゃあんまりないことよ、最初からって。検査機が何処か壊れてたりでもしていたんじゃないかしらね。」
フィリンさんはため息をつきながら言う。
何だかバーンズさんと同じ話をしたような気もするけど、そうであるなら後から連絡でもなんなりが来て取り消しになるはずだからやっぱりそういうのは無いのかな。今もこうしてM.Sに居るわけだしね。
「そうだとしたら今頃は僕はここに居ませんよ。」
「まあ、それもそうね。」
そうして話をしていると気が付いた時には昇降機は目的の階に到着した。
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「....取りあえずここで待機するように言われているけど、休めるような場所じゃないわね。」
昇降機から降りた後、道なりに細い通路を進むと少しだけ開けた場所に出た。暗いせいで全体は良く見えないけど。
「この部屋、何なんでしょうか?」
そう聞くとフィリンさんは少し考えた後に答えてくれた。
「そうね....まあ、構造からして休憩室か何かでしょうけど物が無いから詳しくは分からないところよ。」
「暗くて良く見えないですけど、確かに何もないですね....」
暗所に慣れてきた目を何度もすぼめてもう一度部屋を見てみると確かに構造では休憩室のようになっているけど、椅子とか机とか....そういった物が一切無くて元々の部屋としての機能はほぼ死んでいるようだった。
「でも、ここで待たなくちゃいけないんですよね?」
「ええ、バーンズから聞いている話ではそうよ。この部屋で待って居ろって。」
フィリンさんはそう話しながら首を部屋全体に動かした後、更に続ける。
「....でも、やっぱり無理があるわよね。この状態じゃ。」
そう言うと部屋の奥の方へ進んで行った。歩いて行ったところだけ埃が舞って無くなっていて、水に濡れた足で床を歩いたようになっている。
どうやらまだ何かあるかどうか探しているみたいだ。
「やっぱり何も無いですか?」
「....そうね、椅子の1つでもあれば良いと思っていたけど駄目だわ。」
フィリンさんは振り向きながらそう言った。
「そうですね.....?」
それでフィリンさんが振り向くのを見て、それから僕も見える範囲で使える物が無いか探していた時だった。部屋の奥の方の通路に人影が見えたのは。
「ノア、さん?」
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「ミィーンさん?ミィーンさんじゃないですか!」
薄暗い通路から出てきたのは暗めの灰色に赤いラインが入っている装甲板....もとい、ミィーンさんの姿が見えた。暗い室内で外装の溝を走るラインが赤々と鈍く光っていた。
「ん、知り合い?」
最初は少し不思議そうにしていたフィリンさんは僕の方を向いて聞いてくる。そうか、フィリンさんはミィーンさんと面識が無かったんだっけ。
「ええまあ、一応ですけど知り合い?になるんですかね。」
「なるほど....珍しいこともあるのね。」
そう言うとフィリンさんはゆっくりとミィーンさんの方へ歩み寄っていった。
「以前僕が担当した仕事でお会いした方なんですよ。」
「そう、ミィーンさんね。私はフィリン、宜しく。」
「フィリンさん、こちらこそ、ですか。」
そうして2人は手を交わした。
「....あ、そう言えば他のミィーンさんはどうされているんですか?今は居ないみたいですけど。」
一旦握手も終わってひと段落した後、周りを見渡してみて違和感を感じた僕はミィーンさんに聞いた。
見てみればもう2人のミィーンさんが居ないことに気が付いたからだ。
「残りの私は、別室ですか。待機を伝えられて、部屋を割り当てられて、ですね。」
「そうでしたか....まあ、無事に退避できているみたいで良かったです。」
聞くところによればこことは違う部屋に待機させているみたいだ。やっぱり同時に動くのにはそれなりに精神を摩耗させるのかな。
「あの方に、教えて貰って、ここに。」
「もしかしてですけど、それってバーンズさんですか?」
そう僕が言うとミィーンさんは軽く頷いた。
まあ、ドックがあんな調子じゃバーンズさんも思うところがあったんだろうな。
「取りあえず、出発までの間ここで休みましょうか。いつ頃に出るのか分かりませんから.....」
すると僕がその言葉を口にした瞬間、部屋の中....というよりも船全体に電子ブザー音が鳴り響いた。続けて男性の低い声が聞こえてくる。
『あー.....聞こえているな。』
バーンズさんと思ったけれど、良く聞いてみると全然違う声だった。もう少しそれよりも低いような...そんな感じだ。
『出る準備が整った、それなりに強い衝撃が来るだろうから他の搭乗者は何処か安定して掴まれるところか座れる場所に居てくれ。発艦直前にはもう一度連絡する。』
「何処に掴まれって言うのよ、もう....」
フィリンさんの言う通り、ここには掴まるところさえなかった。唯一掴まれるなら....壁くらい?
「あの....良ければ、ですが。私達が居る部屋、あそこなら大丈夫....」
僕がどうしようかとフィリンさんに聞こうとしたときには既にミィーンさんが話し始めていた。
他のミィーンさんが待機している部屋、少し迷惑かもしれないけど掴まる程度の物ならありそうなのかな。
「だけど、良いのかしら。貴方に割り当てられた部屋なのに私達が行くのは。」
「良いんです、減る物ではないですから....」
そう言うとミィーンさんは来た道を振り返って、その部屋の方を手で指した。
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「おいグレイド、お前掃除とかしてないだろ。」
艦橋にあるコンソール台を操作しようとした俺はグレイドに向かってそう言った。
「仕方が無いだろ....第一に俺はこれの管理を任されているだけで維持は頼まれていないんだ。大体追加の担当だってよこしやしないのにこんなでかい船の掃除出来る訳ないだろ、まったく。」
「それはそうだがな...」
試しにコンソール台の上に指を走らせると深く積み重なった埃が抉れていった。どれだけ掃除していなければこんなことになるんだ?
「....はあ、まあいい。これが動きさえすればそんなことも関係ないからな。準備の方はどうだよ。」
俺は指に着いた埃を払うと横のコンソールを調整するグレイドに向かって確認を取った。
「準備ならいつでも出来てるさ、問題は動くかどうかだな。バーンズ、そっちのコンソールも電源を入れてくれ。」
「分かった。」
そうして俺はコンソールの電源を入れた。幸いにも普段駐在所で使っている物に近い構造だったこともあってすぐに入れることが出来た。
コンソール台のファンが回り始めると正面のスクリーンが起動を始める。
「何処かに主電源の起動用プログラムがある筈だ。探してみてくれないか?」
「何も弄られてないのならすぐに見つけられるだろうが....まあやってみるさ。」
起動が完全に完了すると表記は若干違うものの普通の画面が表示された。画面下部にはアークスのロゴ表記が出ている。
「俺はこいつを引継ぎで管理していただけだから当時のことは分からんが、それなりに被害を受けて使い物にならなくなった物をこの
グレイドは操作をしながらも器用に口を動かす。
「それにしてもここまでの損傷度で使うのは執念に近い気もするが.....まあ、そういうこともあるか。」
そう言うと奴は手を後ろにやって体を伸ばした。
「.....ん、これじゃないか?今見つけられたが。」
そうこうしているうちに俺はコンソールの画面上で起動用のプログラムのようなものを見つけることが出来た。それにしても手間のかかる船だな。
「多分それで合ってると思うぞ、試しに入れてみろ。」
言われた俺はその見つけたファイルを選択して実行のコマンドを選択した。
選択をすると重い駆動音が段々と大きくなり始めて高音になっていく。
「問題なさそうだが.....」
「そうだな。」
しばらくすると安定して電力を供給できるようになったのか艦橋にある照明に火が入り始めた。いくつかは点かないままだったが。
「よし、良いぞ.....このまま安定させてノズルの方にまで回せれば、マニュアルを再確認するから少し任せるぞ。」
「ん、分かった。」
グレイドは席をコンソールから離れると自分の持っている端末でそれを確認し始めた。一応奴はアークスだが整備の役職の人間だからか持っているのは物理端末だった。