PHANTASY STAR ONLINE 2 :A.P.742 作:Begew Garand
「エンジンの方は大丈夫なんだな?」
「ああ、今やってみたが十分なはずだ。試しにやってみろ。」
そう目の前の男の方が言うと小さめの振動が船に響いた。どうやら上手くやれたみたい?
「おいっ、もう少し静かにやれ!怪我人が居るんだからな。」
「難しい注文を後から言うなよ、こっちだって初めてのことでただでさえ手間取ってんだ!」
短い間に複数の怒号が飛び交う。
「うっ.....」
「あ...何処かまた傷が、大丈夫ですか?」
そうして少し考え事をしていると傍で介抱していた患者の人の声を聞いて、ぼうっとしていた私はふと我に返った。
「ごめんなさい、少し響いたものですから....もう気にされなくとも大丈夫ですよ。」
彼女はそう言うと椅子に座り直してからまた落ち着いた様子に戻っていた。
「悪いな、俺達も扱うのは初めてで手際がな....」
男の方は彼女の方を向くと申し訳ないようにして少しかがんだ後、操縦席の方に改めて進んで行った。
「もう出れるか?時間は余裕があるがなるべく早く出た方が良いからな。」
「ちょっと待て....」
どうやらもうじきに出発するようだ。今席に座っている方の男性がコンソールで何かを確認し直しているのが見える。
「エリシアさん、もうすぐまた動きますからこちらの方に。揺れると危ないですから。」
私はこの後に来る衝撃が彼女に響かないようにする為になるべく近くに来るように促した。手で補助できれば少しは抑えられるだろうし。
「すみませんリエさん....」
「別に良いんですよ、仕事ですから!」
少し寄って貰ったエリシアさんを全体的に支えるようにして私は彼女に手を回した。これで大丈夫だろう。
「....よし、安定したな。ドックから出すぞ。」
前の方からそう聞こえると船の中で低い駆動音が響いた後、ゆっくりと浮上を始めた。宙域でも大丈夫なように分厚く加工された小さい窓からその様子が伺える。
「す、凄いですね....」
エリシアさんを補助しながらも窓からの景色を見た私はちょっとだけ驚いていた。段々と
「リエさん....?」
そうして私が小さい子供のように窓から興味津々に外を見ているとエリシアさんが気になったようで私に声を掛けてきた。
「何か、見えるんですか?とても集中されていますけど....」
「へ...あ、いや、特に何も!...ですか。」
後ろから急に声を掛けられたこともあって少し声が裏返ってしまった。ちょっと恥ずかしい...
「その....あんまりこういうのに乗ったことが無いというか、艦から出たことが無くてですか。物珍しくて。」
アークスの人なら普段から宙域に出たり、惑星に降りたり....そう言ったことをするみたいだけれど私はただのナース、そう言った事とは程遠い役職の人間。確かに宙域には居るはずなのに艦の中にずっと居るせいで何処か遠い場所に感じてしまう。それもあってか私には船から見える宇宙が特別に感ぜられた。
「...それにしても急でしたね。退避までには少し時間があったというのに私、道具とか色々と放り出したままで来ちゃいましたから。」
さっきまで覗いていた窓にはしわだらけになったナースの制服が写っていた。
「私のところへは特に連絡が来ていませんが....ダーカー因子の濃度が高くなったということだけで今すぐにも事態が起こる訳ではないですからね。ただ、それが早くなるのか遅くなるのかは分かりませんけど。」
エリシアさんは少し俯いて考えるようにしてそう話した。
「でも今回のような予兆も突拍子も無く、それも数年に一度にしか起こらないようなことが起こる....少し怖いですね。」
そう言う彼女の眼は宇宙の何処か遠い場所を見つめていた。
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「くっ....ここのドアも、中々、このっ。」
「駄目よノア、もう少しこういうのは腰を入れてやるのよ。ちょっと変わりなさい。」
「....すみません、お願いします。」
立て付けの悪いドアを前に苦戦していた僕は呆れるようにして忠告をしてきたフィリンさんと交代をした。
「さっきまでは、大丈夫でしたけど、駄目ですね.....」
後ろから申し訳なさそうにしてミィーンさんが言う。どうやらさっきまでは普通に動いていたみたいだ。さっきまでは。
「ん....あれ、おかしいわね。私の力で押しても開かないなんて、もしかして何か別の物が引っかかってる...?」
「そうなんですよ、立て付けが悪い他にも何か原因があるみたいな。」
そうしてもう一度詳しく見てみようと思ってドアにもう一度近づいた時、それなりに大きい振動が響いた。
「な、なんだ?」
振動で少し動揺しているのもつかの間、低い音が音が響くと通路の電気が一斉に点き始める。もしかして船の主電源が入ったのか?
「多分だけど予備電源が限界だったのね。ほら、普通に開くわよ。」
フィリンさんがそう言ってドアの横に備え付けられたスイッチを押すと問題なく開いた。僕の部屋のドアもこんな風に滑らかに動けばな....
「こっちの方は少ないけれど家具みたいなのはあるわね。」
そう言いながらフィリンさんは部屋の中へ入って行く。僕も続いて入って行った。
「何だか簡易的な自室みたいですね、この配置。」
見渡せるほどの広さは無いけれど見る限りでは僕の自室を少し小さくした感じの大きさで置いてあるものも同じような物だった。
「随分と埃まみれだけど....机に椅子、ベッドがしっかりと備え付けね。」
フィリンさんは更に奥の方に行く。埃まみれだということを聞いてふと部屋に備え付けられている机の上を見てみると埃の所為で真っ白になっていた。何だかずっと放置していたみたいだな。
「それでベットの方にもうお二人が居るというわけね、ベットには.....?」
奥の方に進んだフィリンさんがベットの方を見ると不思議そうな顔をしてそれを見つめていた。
「ミィーンが2人....?」
そう言うとフィリンさんは入り口の方に向き直ってミィーンさんの方を見る。
「いや3人?どういうこと?」
その反応をしているところで僕はようやく気が付くことが出来た。フィリンさんにまだミィーンさんについて詳しく説明をしていなかったことに。
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「なるほど....そういうタイプもあるのね。同じ
「知られなくとも、仕方が無いです。私は、少し違いますから....」
あれから軽く事情を説明するとフィリンさんはすんなりと理解できたようで、その後は普通にミィーンさんと談笑していた。
どうして自らが分離しているのか、今は何故1人だけしか動いていないのか。そう言った事やキャスト同士の話を適当に交わしていた。僕はヒューマンだから何のことだか分からなかったけど....
『....あー、船内各位に連絡する。船各部へのエネルギーの安定供給を確認することが出来た。これより直ちにでも発艦する。もう一度言うが掴まれる場所に掴まるか深く椅子に座ってくれ、以上。』
そうして談笑をしていると突然艦内放送がノイズ交じりに響いたかと思えば伝えることだけを言うとまたすぐに放送は切れてしまった。船内各位って僕ら以外にも搭乗している人が....まあ当然だけど居るはずだよね、少なからず。
それを聞いた僕はまだ立ったままだったので適当に開いているスペースを探してそこに座り込んだ。
「それ程激しくなければ良いんですけど......!」
それ程発艦の時の衝撃が激しくなければ、なんて言おうとした時にはそれなりに激しく船全体が大きく揺れた。危なかった、あと少しで舌を噛むところだった。
「大丈夫ですか....?」
心配そうな顔をしてミィーンさんが声を掛けてきた。
「大丈夫ですよ、ちょっと体制を崩しちゃって....安定?してきたので問題ないですよ。」
そう僕が言うと少し安心したようにしてミィーンさんは表情を緩めた。
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「....グレイド、少し強すぎたな。お陰で吹っ飛んじまったぞ。」
「お前がしっかり掴まっておかないのがいけないんだろ?ほら、手貸すぞ。」
「悪いな...」
座りが甘いせいで椅子から転げ落ちた俺はグレイドに手を貸してもらって起き上がる。
「少し強めに、吹かしすぎたな。同じ規格とは言え別物のエンジンなのがあだになったか。」
取りあえず無事に....まあ船を動かすということは達成できた。見つかった問題も多くあるが急を要するものではないしひとまずのところか。
「それでも十分にお前は良くやってるよ。動かすの、初めてだったんだろ?」
「ま、まあな....」
「なら上出来だよ、このまま頼むぜ。」
「ああ。」
そういうと奴はもう一度コンソールに向き直って船の舵を握り直した。
最初の衝撃はそれなりにあったが、宙域に出てからは比較的安定し始めたようで船は通常通りの動きを見せている。このまま無事だと良いんだがな....
「良し、サブカメラをフェルノート側に向けよう。頼めるか?」
そう聞くとグレイドは特に気に障ることも無く返事を返してくる。
「いつでも状況を把握できるようにした方が良いからな、いつ事態が発生するか分からん。」
けれど俺がそう言うと今度は少し不安げな表情を浮かべた。
「確かにそうだが.....ちなみにダーカーが予定通り出現する場合にはどうするつもりだ?この通り人材不足だが。
グレイドは少し首を回して艦橋を見渡すような仕草をして見せる。
「一応この船には主砲があるにはあるが....あくまでも対艦用の奴だし、おまけに出力不足で上手く撃ちだせない問題もある。だとしたら必然的に船に標準配備されている対空砲やら機銃なんなりを使うしか安定は無理な訳だが、俺は勿論のことながら非戦闘員だからあてにしないでくれよ。」
そういうとグレイドは両腕を上げて降参と言った様子を伝えてきた。
「分かってるさ、第一お前には舵を切って貰う責務があるからな。」
「じゃあ、お前1人で銃座に座るのか?」
そうして冗談交じりの言葉を言われた俺は口角を少しだけ上げた。
「俺だけじゃないさ.....まあ、出来れば使いたくはない人材だが。」
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「....?」
「ん、ノア?どうかした?」
「い、いや、特に何も....何だか呼ばれたような呼ばれていないような。」
「何よ、はっきりしないわね。」
フェルノートを発ってからしばらく経った後、僕たちは
....といっても特にすることがあるわけではないから外の風景を部屋の壁に映し出して、それを眺めていた。
「....それにしても宙域から見る宇宙は何だか違うわね。」
ホログラムの窓に改めて向き直ったフィリンさんはそう言った。確かにさっき僕もその窓から外を見た時には普段艦に居る時に見ている宇宙とは何かが違う気がした。
何だろう、普段とは違うから怖さは勿論あるけど、何処か不思議な感覚で....難しくて言葉にし辛いな。
「....私にも分かります。この、不思議な感覚、難しいですね。」
どうやらミィーンさんも感じていたようだった。
「...まあ、単純に物珍しいからってことで良いんじゃないかしらね?普段私たちが見ているものが違って見えるだなんてそれだけで一大事だもの。」
確かに、フィリンさんの言うことも間違ってはいないな。普段見ているものが違って見える.....不思議な現象だな。
「これがまだ落ち着けるような平時ならもっと良かったけれど....そんな都合良くことは進まないわね、まったく。」
そう言うとフィリンさんは窓から離れるともう一度椅子に座り直した。
「でも、想定外とはいえ少しの間は休めますから.....少し長い休憩だと思ってこの時だけは気楽にした方が良いのかもしれませんね。次に動くときには中々休めないかもしれませんから。」
「.....途中までは良いアドバイスだけれど最後のはちょっと余計だったわね。」
フィリンさんは少し不服そうな顔をしていた。こういうことは少しでも前向きに言った方が良かったかな.....次からは気を付けよう。
「はあ、少し長い休憩ね.....」
そう言うと彼女は座っている椅子の背もたれで遊びながら暇を持て余し始めた。