PHANTASY STAR ONLINE 2 :A.P.742 作:Begew Garand
「....ノアさん。少し、良いですか?」
することもとうとう無くなってただ床に座るだけになっていると不意にミィーンさんが声を掛けてきた。
「別に構わないですけど....どうかしました?」
返事をするついでに僕は首を回してミィーンさんの方を向く。するとそこには困ったような、心配しているような普段の表情ではなくて程度の違う別の顔があった。何かあったんだろうか。
「何だか、空気に.....いえ、周囲に違和感を、感じて、ですか。」
彼女は椅子からおもむろに立ち上がって、それで部屋の壁の奥に行くとホログラムの窓の電源を点けながらそう答えた。
窓?窓から何か見えるのかな。
「僕は特に何も.....僕が鈍いだけかもしれませんが特にはですか。」
そう言って僕も座っていた床から立ち上がってミィーンさんの方に向かった。
「いえ...私は通常よりも、普通よりも少し、感覚が敏感なだけ、ですから。」
僕がそう言うとよそよそしい風にして彼女は答えた。
「私に搭載されている...以前使用した、レーダー系統は時々、本来の役割ではない別の.....別の何か、それを捉えて、感じてしまうことが、ですか。」
「レーダー系統って、以前初めてお会いした時に使っていたやつですか?」
ミィーンさんは静かに頷く......レーダー系統。それを聞いた僕は以前ミィーンさんに初めて出会った時に周囲の索敵をしていた時のことを思い出していた。
そこから更に聞くところによればそのレーダー系統の装備の追加によって副作用的に生まれてきてしまった物だという。その装置が単なるレーダー機能の付いた機械じゃないかららしいけど....あまり詳しいことまでは分からなかった。
「そのせいで変な物、そういった物がですか。」
そう言うと窓の方を指で指した。
見てみるとどうやらフェルノートの方を今度はホログラムが映していた。遠目ではあるけれどそこにははっきりと古びた艦の全体が映っている。
「もうこんなところにまで.....」
「どうやら現在、艦橋?の方で、使用中の、ようですから。こちらに繋ぎました。」
ミィーンさんが言うにはこの映像は艦橋?が使っているサブカメラの映像を回して来たものらしい。と言うことはバーンズさんが見ているのかな。
「ダーカー因子の濃度、それなのかも、しれません。」
彼女は首を回すと窓の方を見た。僕も続けて視線を窓の方に向ける。
「少し、色が違く、見えませんか?」
そう言われた僕はホログラムを良く目を凝らして見てみる。
「....赤い?」
赤、血のような赤。さっきまで黒一色だった宙域が染められたようにその色に変わっていた。
「そう、これが因子、ですか。」
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「来たな。」
サブカメラの映像をモニターで確認していた俺は隣に居たグレイドに向かってそう言った。
けれど、返事がすぐに帰って来なかったことから俺は隣を見た。
「お、お前は見たことある...んだったな。」
そこにはかなり驚いた様子のグレイドが居た。
「どうしたグレイド。」
そう言うとしばらくしてからはっとしたようにして奴は俺の方を向いて会話を続けた。
「...悪い、あんまり見たことが無くてな。こんな風になるのか?」
グレイドは指でモニターを指しながら言う。指の先にはフェルノートの周辺があった。
もしかしてダーカー因子の濃度が濃くなるのを見たことが無いのか?そう聞くと奴は2度続けて頷く。
「俺も、似たような事には遭遇したことがあるがここまでの規模のものには遭遇したことが無いか。拡大してみるぞ。」
そうして俺はサブカメラの拡大率をさらに引き上げてフェルノート周域を詳しく見ることにした。
「.....今のところは特に何も無しか。グレイドも良く見ておいてくれ。」
「...ああ。」
けれど、事態はそこまで動いていないようなのか因子の濃度が濃くなっているということだけが確認できた。
それでしばらく観察していると最後の船?がフェルノートから発つところが見えた。
「今のところは何もないみたいだな....」
隣で同じ映像を見ていたグレイドはそう言う。
「後は何時動き出すかどうかか....」
冷静に状況を確認して俺がそう言うと少し心配な様子でグレイドは声を掛けてきた。
「シークマーカーに辿り着くまでに何も無いと良いんだが、バーンズはどう見るよ?」
奴は生き荒げに軽く舌打ちをしながらそう言う。
そう言われてもな...正直なところはそう言った心境だった。俺はこういうことが起こるというのを軽く知っているだけで予言まがいなことはできないからな。....けれど、少し落ち着かせるためにでまかせでもと思って言葉を出した。
「大丈夫だ、そこまで心配することは無い筈だぞ。」
「本当か....?」
グレイドは疑惑の目を俺の方へ向ける。
「そうだろうよ、まあ心配するなって。」
俺がそう言っている時にはモニターには応援の
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「い、いつ来るんだろう....」
隣の同じくらいの年の奴が話しかけてくる。
「...俺にも分からないよ。」
そう返すとあまり落ち着かない様子だった。
「だって、大人の人達は命令を伝えるだけ伝えて先に退避しちゃったんだもん。いつ来るかまでは聞いて無いから....」
命令。俺達は大人の、正規のアークスの人達にここで待機をして何かあれば戦うように伝えられていた。
「僕らまだ訓練の最中なのに、大丈夫なのかな。」
「.....大丈夫だよ。」
正直なところ、自分自身も不安だったけれど不安感を出さないためにもそう答えるしかなかった。
「ねえ、あれなんだろう。」
さっきまで話していた奴とは別のがそう言う。気になった自分はその指し示す方を良く見てみた。
「......?」
「何だあれ。」
その得体のしれない何かを見つけると僕ら訓練生はざわめき始めた。
そうしてしばらくの間全員が固まっていると、ある1人の奴が何かに気が付いた。
「おい、近づいてきてないか?あれ。」
言われた俺はもう一度見てみる。
すると、そこにはそれなりのスピードで近づく何かの姿があった。
「どけ!攻撃するんだ!」
後ろからそう聞こえると手でどつかれて、俺は取りあえず正面からはけた。
続けてそれなりに戦うことに自信のある奴が前に出た。
「この!」
それで準備が出来たのか体と同じくらいあるだろう銃を構えた奴が一発目を撃った。小さい破裂音が響く。
「わ、私も。」
それに続いてテクニックも使われ始めた。発動時の音が破裂音に紛れて聞こえる。
「は...早い!」
銃を撃った奴がそう言い始める。どうやら標的が早すぎて当たらないみたいだ。
続けて破裂音が何度も響くけれど、明らかに手ごたえは無かった。
「おい!来るぞ!」
状況に付いていけずにぼうっとしているとそう言われた。はっとした俺は手に構えていた訓練用の大剣を強く握る。
「や、やってやる!」
そうして俺はその近づいてきたそれに向かって飛び掛かった。
「うああああああああああ!」
標的に向かって、それに向かって全力で重い剣を振り下ろす。
「!?」
けれど、それは空を切って床に突き刺さることになった。相手の動きが早いんだ!
「しゃがめ!」
銃を構えていた奴にそう言われる。俺は咄嗟に床に伏せた。
「このっ、このっ!」
狙いを絞って撃っているけれど、やはり相手が早いせいか弾は当たらないようだった。
「だ、駄目っ!下がって!」
何かを感じたのかさっきまでテクニックを使っていた女の子がそいつに向かって言う。
「な、何が.....」
その瞬間だった。それがそいつに飛び掛かったのは。
「やめろ!この....くそ!」
それまでは遠くから見たり、動きが早すぎるせいで上手くその姿を見ることが出来ていなかったけれどその時にそれの正体を見ることが出来た。
「ば、化け物....」
それは全身が黒くて、足が何本もある奴だった。人の形はしていなくて恐ろしいような....
「あああああああっ!」
そうして、しばらくもみ合っているのをただ立ち尽くして見ることしか出来ないでいるとそいつの断末魔が聞こえた。
「あっ....お、俺は何やってるんだ!」
状況に気が付いた俺は銃を持っていた奴を助けるために急いで駆け寄る。もう一度剣を強く握った。
「このおおおおお!喰らえっ!」
間合いを近づけて当たる場所にまで近づけたことを確認して、俺はもう一度剣を振った。
「くそ、またか!?」
けれどそれは素早く剣を避けて見せた。どれだけ素早いんだ...?
「ああ、ああああ....」
「きゃあああああああ!!」
女の子の悲鳴が聞こえて驚いた僕は何事かと思った。
「君!、彼が.....」
最初に話していた奴が震える手で何処かを指している、まさか。
「えっ?」
そこにはシャワーのように首から血を噴き出して倒れているあいつが居た。あたり一面が赤黒く染まっていく。
「しま....!」
突然のことが起こり過ぎていて処理しきれずにいると、今度は俺が倒される形で横から激突される。
「痛っ....」
制服のお陰で痛みは少なかった、けれどその一撃でかなりやられてしまっているようだった。一部が剥がれている。
「早く立ち上がって!奴らはまだ来て....」
最初に話していた奴が俺に向かって忠告していると、次の瞬間消えてしまっていた。
...いや、消えたんじゃない。後ろにまでとんでもない速さで吹き飛ばされたんだ!
「この....うぐっ。」
とにかくどうにかして立ち上がった俺は混乱してパニック状態になっている女の子の手を無理矢理引っ掴む。それから出来うる限り早く走って吹き飛ばされた八の物に向かった。
「おい!大丈夫か、おい!」
気にしている時間が無いからか俺は焦りから胸倉を掴んで奴を呼んだ。けれど。
「.......」
「おい、気絶してるのか?おい!」
そいつは目を開けたまま息をしていなかった。
「気絶しているだけならまだ......」
そう思って俺は奴の身体を急いで確認した。
...するともう一度俺はあれを見てしまった。
「血が....くそおおおっ!!」
そいつはただ気絶しているんじゃなかった。打ち所が悪かっただけで、死んだ。
「あ、あは、あはははははは、あはははははははははははは!」
どうやら女の子の方は限界を迎えてしまって、終始笑い続けていた。
「何処に行くんだ!」
そうして様子がおかしくなった女の子は俺の手を振りほどいて訳の分からない方へ走って行った。
「待て!戻れ!」
けれど、そう呼びかけた時には女の子は首を吹き飛ばされていた。首だけが宙に舞ったと思えば残った体が首から血を流しながら変な動きをして倒れる。
「...何なんだよ、どういうことなんだよ。」
俺は頭が痛くなって、そのうち走るのを止めた。もうどうにでもなってしまえって思った。
気が付くと目の前にはさっきとは違う何か黒いものが来て、それで......