PHANTASY STAR ONLINE 2 :A.P.742 作:Begew Garand
『....繰り返します。緊急退避令発令中、緊急退避命令発令中。フェルノート全艦の一般員、及びアークスは直ちに艦から離脱し安全宙域にまで退避してください。.....繰り返します。』
「...おい、こいつはどういうことだ?」
足元から臭う強烈な臭いが嫌でも鼻にやって来る。
「見りゃ分かんだろ、死んでんのさ。」
返事を返して来た奴、急ぎで編成された応援部隊の奴だが....そいつと共にこの
名前も知らないそいつは少し息をのむと目の前に転がっているガキの死体を足でひっくり返す。
「うへぇ...ひっでえの。」
持っている大剣を地面に突き立てながらかがんでそれを見る。ここからでもそれなりに容態が見えるが酷いものだった。
ちなみにそいつが見ていたのはハンタークラスの訓練生のようで訓練用の安っぽい作りの大剣が血塗れの状態で転がっていた。
「それにしてもさっきからガキの死体ばっかりだな。もっとまともなのが戦闘をしている最中だと思ってたんだが....」
確かに、ここに来るまでの間に見たのは歳の低い訓練生の死体だけで正規のアークスの姿は何処にも見えなかった。お陰でここに到着をしたときにも艦内放送が鳴り響いているだけで現地での俺達への指示は何一つとして伝えられずにいる。
「逃げだしたんだろどうせ、怖くなってよ。こんなところに配属になってるアークスなんて肝が知れてるからな。」
俺は考え事にふけっているそいつに向かってそう言った。
「....まあ、そう考えるのが妥当か。今回の事も上の方は重く捉えてはいないみたいだしな。」
そう、艦の役割上そこまで重要でないと判断をしたのかそこまでの人員は今回の任務で多くは回されていなかった。自分の所属の艦から出発をする時にもそこまで多くは見えなかったからな。
そうしてあらかた確認し終わったのかそいつは地面に突き立てていた大剣を元の通りに握り直した後、軽く膝を手で払うと俺を呼んでから再び歩き始める。
「おっと、そうだった。さっきの奴が持ってたスペアだ。」
少し歩くと奴は思い出したように銃の弾倉を取り出すとそれを俺に見せた。
ハンタークラスの奴が何で弾を?そうやって変な顔をしながら奴に言うと鼻で笑いながら言葉を返された。
「馬鹿、俺じゃねえよ.....お前が銃使うだろ?ほら。」
そう言うと雑に弾倉を投げ渡して来た。渋々手に取って確認をすると弾の口径だけは合っているようだった。
「....それにしてもやけに静かだな。」
「...ああ。」
弾を渡し終えるとそいつは何かの違和感を訴えてきた。やけに静か、その言葉は俺の頭にも既に浮かんでいた。
「何かしら騒いでる音が聞こえないってことは....他の部隊も同じく戦闘になってないってか。死体はこれだけあるのにな。」
さっきとは違う訓練生の身体に目をやりながら奴は話を続けた。傷の程度は若干違うが同じような大きさで鋭いものに割かれたようになっている。
「全く、呼ぶなら呼ぶでそれなりに仕事は用意し.....」
そうして、両腕を伸ばしてそいつがあくびをした時だった。
「....おい、見つけたかもしれねえな。」
奴は何かを見つけたようで話を途中で切って俺の肩を叩く。一体何だって言うんだ?
そう言うと手に持ってるので見れるだろうが、と呆れながら言われ俺は即座にライフルに取り付けたスコープを覗き込んだ。
「あれは....昔何処かで見たことあるな。」
恐る恐るスコープを覗き込むとそこには小さい多脚型の.....つまるところダーカーが居た。どうやら今は単独で行動しているようで周りには仲間は居ないようだった。
俺は引き続けてそれの様子を確認し続ける。
「俺も詳しくは覚えていないが....砂漠型の地形の星だったかで目撃例のある奴、だったか?」
そいつもスコープと同じような単眼鏡でそれを見ているようだった。時々報告をしてくる特徴が俺の見ているものと同じだ。
「悪い、俺も詳しいことは.....?」
そうして奴の方を向いて今見えたダーカーについては知らない....そう答えようとした時、そいつの後ろに黒い影を見た。
「ばっ、避けろ!」
「うおっ!?」
声を掛けたとしても間に合わない。そう思った時には既に俺の体は動いていた。
手にしていたライフルを慌てて近場に放り投げた後、迷わずに立ったままの状態の奴の体に向かって飛び込む。すると奴は単眼鏡を手に握り締めたまま押した方向に倒れ込んだ。
「....てめえ、何しやがる!」
「そんなこと言える状況か!周りを見ろ周りを!」
そう俺が言った時には艦内に満遍無く広がっていくダーカーの姿が見えた。くそっ、今まで何処に隠れてたんだ?気配なんてただの1つも感じなかったのに。
「何だこれ.....」
唖然とした顔を浮かべたそいつは俺と同じく口を開けてその光景を眺めていた。こんな量のダーカーには遭遇したことが無かったからだ。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「....少し不味いかもしれないな。」
最初にモニターでフェルノートの周域を確認してから数十分後、俺は引き続き状況を確認し続けていた。
...だが、その数十分で特に何も動きが見られないことから俺は少しずつ不安を募らせ始めて来ていた。
「バーンズは何か感じるのか?」
不意に呟いてしまった言葉にグレイドが言葉を返して来る。その声は少しだけ震えていた。
「俺はそう言うの分からないけどよ、お前なら何となく分かるんじゃねえかと思ってさ。」
俺なら分かるか、正直なところ俺にはそんな力は無いんだがな....今までの経験から大体推測できるに近いか。
「...詳細までは分からんが好ましくない状況なのは確かだな。」
そう言ってから俺は自分の持つ端末で時刻を確認した。
「なあグレイド。」
「何だ?」
「少し前にアークスのキャンプシップがフェルノートに向かったよな、あれからどれ位時間が経った?」
聞くとグレイドは俺と同じく端末を取り出してから少し考えた後、再び話し始める。
「....かなり経ってるが、これがどうかしたのか?」
そうして疑問を顔に浮かべるグレイドに対して俺は説明をし始める。どうしてキャンプシップがフェルノートに向かってから時間が大幅に経過すると、それがどういうことを指すのかを。
「...これは基本的にの話だがこういった事態になった時、事態の収拾度によっては一部のアークスは自らの艦に帰還するようになっているんだ。」
事態の収拾度。今回であれば指定宙域内のダーカー因子の低下度のことを表している。それが事態の収束具合によっては割かれる人材も変わって、更には少なくなるわけだ。
「それが遅れている、と言うより1機も折り返して来ていないということは....つまりどういうことだか大体分かるな?」
そう聞くとグレイドは顔を少ししかめてから悩み始める。それから数分後には奴もようやく理解することが出来たのか分かった声が聞こえてきた。
「バーンズが話す通りなら今さっき見たキャンプシップの奴らは未だに苦戦しているってことか。」
一旦出したままだった端末をしまいながら奴は俺にそう言った。まあ、結果として同じ考えに行き着いたみたいだな。
「そう言うことになる。だから、そう考えるとなるとこっちの方にも多少なりとも何か起こるんじゃないかと思ってか。」
あのキャンプシップに乗っているだろう奴らがどれだけの強さなのか、それが推し量れないことから良くは分からない。が、基準で考えても良いのなら長すぎると言ったところか。
そこで俺も出して手に持ったままだった端末をジャケットにしまい込んだ。
「....ちなみに、シークマーカーにまでは後いくつぐらいだ?大体で良いんだが。」
「少し待ってくれ、値を出してみる。」
俺がそう聞くとさしあたりの無いように返事をした後、グレイドはコンソールに向き直ると少し手順の省いた計算で大体の時間を量り始め出した。
「...よし、出たぞ。予測経路も含めて見てくれ。」
「分かった、今行く。」
そうして少しの間待っていると演算が終了したのかグレイドは俺の方を向いて自分側のコンソールへと呼んできた。それに応じて椅子から立ち上がる。
「もう一度走り直させるから良く見てくれ。雑にやったが良い程度に自動修正されてる。」
奴はそう言うとコンソールが自動的に作成した再現プログラムをモニター上で走らせた。
まず、黒い画面上にこの船の識別番号が明るい青色で表示される。
「悪い、少し分かりにくいかもしれんが我慢してくれ。取り敢えずこの位置がこの船の現在地だと思ってくれよ。」
そう言いながらグレイドはモニターのその位置を人差し指の関節で軽く叩いた。
「大丈夫さ、一応この船の識別番号はさっきあっちのコンソールで確認したからな。続けてくれ。」
「そうか、じゃあ続けるぞ。」
俺が大丈夫だと伝えるとグレイドはプログラムを再開させて行く。
そうすると次に明るい赤で別の識別番号が表示される。頭文字の後ろには182という数字が出ている、恐らくシークマーカーか。
「まあ、この番号だがシークマーカーのだ。かなり大雑把だがここからここまでだな。」
奴はモニターにやっていた手をもう一度動かしてこの船の識別番号からシークマーカーの識別番号へと指を引いた。
「それで大体の到着時間がざっとこんなもんだ、見てくれ。」
そう言って次にプログラムを進行させると
「....少し遅くないか?」
プログラムが走り終わった画面を眺めながら俺はそうグレイドに告げる。確かに積んでいるエンジンの性能で見れば普通の出力もしていないようだった。何かあるんだろうか。
「あー.....悪い、説明してなかったな。今画面を変える。」
そう説明すると奴は画面を今走らせていたプログラムの画面からこの船の各部状況を映した図を出した。
「これがどうかしたのか?俺もさっきまで見ていたが。」
「まあ、待てって。」
疑問を浮かべる俺に対してグレイドは落ち着いてエンジン部分の数値を指で指す。最大出力値?
「あんまりお前にはピンとこない来ないかもしれないが...この出力値のエンジンをこの短い区間で少しでも強く吹かせばシークマーカーに一直線、突っ込んじまうのさ。」
そういうと次にエンジンの前方部位の方を指で指した。ブレーキに使う逆噴射用のノズルか。
「だがブレーキを掛けてどうにかできるんじゃないか、なんて俺も思っていたがこの部分だけやけに出力が低いんだ。」
そう言われて見てみると確かにエンジンの出力とは不釣り合いな程度のレベルの数値しかそこには無かった。
「なんだ、故障してたのか?」
俺がそういうと奴は首を横に振った、違うのか。
「違う、俺の調整ミスだ。メインエンジンの方ばかり見ていたせいだな、悪い。」
「...いや、別に良いんだ。過ぎた事を考えても仕方が無いからな、続けてくれ。」
この船の1番の問題であったのは左側部の方の欠損部分であったから基本的な部分が少し抜けていたんだろうな。まあ、気にしたところで仕方のない事は思わないようにするか。
「....取り敢えず総括して言えることはこの船では速度は出せないって事だ。だから出せるとしてもこのプログラムでの最大速度が限界だ。」
グレイドはそういうと画面を元に戻してから画面に出ていた予測時間の数値の下にある最大速度の部分を指した。
「...少し不安だが、出来ない訳じゃない。想像はあんまりしたくないが有事には俺と連れがどうにかするさ。」
「悪い、その時は...頼む。」
そうして俺はそう言うとグレイドの肩を軽く叩いてから元のコンソール台に戻った。