PHANTASY STAR ONLINE 2 :A.P.742   作:Begew Garand

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E-32 「実地」

 「...只今戻りました。」

 

 機械類の駆動音が静かに鳴る部屋に低めの男の声が響く。

 

 「ああ、君か。良く戻って来てくれた。」

 

 振り返って声の聞こえた方向へ視線を向けて、それを確認してから僕は軽く礼を述べた。

 

 彼には新しく開発をした()()()()の実地テストをしてもらう為に現場へ向かって貰い、騒ぎに紛れて帰還して貰ったところだった。

 

 「どうだったかい、僕の作った玩具(試作品)は。予想通り...だったかな?」

 

 「はい、計算上と同程度の効力は出せているとはですか。退避後に行った数分間の観測ではその様に見えました。」

 

 そう言うと彼は着ていたジャケットから端末を取り出して僕に差し出した。

 

 「分かった、後でゆっくり確認させてもらうよ。」

 

 僕はそれを受け取ると先程まで体を向けていたコンソール台に向き直って適当な場所に端末を置いた。

 

 ちなみに、これは記録映像の回収の目的で出発前に彼に渡したものだ。現地にまで赴かなければ具体的な結果は得られないからね...

 

 「....その、少し良いでしょうか?」

 

 そうして僕が端末からのデータを取り出すために準備を始めていると先程の彼が少し困惑したような顔をして話しかけてきた。何だろうか。

 

 「ん、何だい?」

 

 コンソールに集中しながら言葉だけを彼に向かって返す。

 

 「い、いえ....今更ですがあれ程の規模の事をして上層部の方へは大丈夫なのかと...」

 

 彼は困ったような顔をしてその様なことを言った。僕は特に驚く素振りも見せずに作業を続けながら話をする。

 

 「何だ、そんなことを気にしていたのかい?」

 

 特に変わったところも無く、面白みも無い質問に対して鼻で笑いながら話を続ける。こういったことは想定済みだからね。

 

 「多少なりとも既に手は回してあるし、今回テストをした場所は言うまでも無く重要度の低い僻地だ。そんな場所が1つ消えようと上層部(彼ら)にとってはどうでも良いことだろう?」

 

 「は、はあ....」

 

 彼は僕の言葉を聞くとさっきまでとは打って変わって苦笑いのような....まあ、中途半端な表情をしていたよ。

 

 「ま、そういうことさ。部屋に戻って休んでくると良いよ。」

 

 「...分かりました。」

 

 そうして言葉を掛けると彼は特に何も言うこと無く部屋から出て行った。....ん、彼は少しマークしておいた方が良いか。

 

 「さて、どんな光景が広がっているのかな?」

 

 端末からのデータ取得の準備が整ったことを確認すると僕はコンソール台に放った例の端末をもう一度手に取って、こちら側との接続を開始させる。数分後には接続が完全に完了したことを告げる短い機械音が鳴った。

 

 しばらくすると画面上にも映像データのファイル名が表示される。

 

 「....」

 

 この部屋のコンソールでも閲覧が出来るようにデータの変換を始めだす。全く、これだから企画は合わせろと言っているんだが....

 

 「よし、これで開けるな。どれ....」

 

 そうして無事に変換が完了すると僕はすぐさまそのファイルを開いた。画面には再生のタブが表示される。

 

 一瞬だけ黒い映像が挟んだ後に先程の彼の声で記録前の説明が流れる。どうやら試作品を設置し終えた所からの記録みたいだ。

 

 「無事に起動は出来ているみたいだな.....少し映像を巻くか。」

 

 そのことの確認が出来た僕は映像の再生を早めた。その最中は避難準備をしているようだった。

 

 しばらくするともう一度画面が一瞬暗くなって暗転すると少し時間が経った後の映像が流れ出す。

 

 「.....因子濃度の上昇率には問題は無いな。おおよそ演算通りか。」

 

 画面上に映る計測器の数値を見ながらダーカー因子の上昇率を彼の端末に入っているレポートを参照しながら細かく確認していく。何処かで()()があると困るからね。

 

 「アナウンスが鳴ったか.....そろそろだな。」

 

 それでしばらく映像を流し見ていると次に艦内放送が聞こえ始めた。反応が遅れると思っていたが、この部分のシステムはまだ生きているみたいだね。

 

 映像は走る映像に切り替わる。ドッグに向かっているのかな?

 

 「それにしても退避命令1つでこの慌てよう、相当な平和ボケだなあ.....全く、落ちたものだ。」

 

 それから撮影者である彼が適当な船に乗って避難をし始めるとそこからは彼が艦内に仕掛けた定点カメラの映像に切り替わる。回線の都合でかなり荒いが観測には十分に堪えるものだった。

 

 「うん.....なるほど、もう少し増強の余地はあるな。これでも当時と同程度の強さにはなってはいるが....」

 

 その中で僕が観測を行っていたのはダーカーだった。というよりもこれが本題と言っても良い。

 

 今回僕が作成をしたもの、それはダーカー因子の誘発....及び濃度の強化を行うものだ。

 

 「対人性能も問題ないか、もっとも()()()()()が観測対象ではあまり良い結果とは言えないが結果があるだけ良いとしよう。」

 

 それからしばらく観測を続けているとそこで回線の接続が切れたのか映像は途切れ、再び真っ黒な画面に切り替わった。

 

 僕はそのタブを閉じると接続していた端末を外して適当な場所にそれをまた放った。また新しい物を回収しなくてはな。

 

 「ふう....まあ、今回はこんなものか。次はどうするか....」

 

 僕は画面に映る次の試作品の図面を見ながら次の展開を考える。

 

 「...それにしてもこの前の彼女、どうも気に食わないなあ。」

 

 ふと思考の最中の頭の中に1人の(キャスト)が浮かんだ。この前あの僻地に偵察を兼ねて言った時のことだ。

 

 「いくらデータを漁り返しても何処にもあれのデータが存在しない、どういうことだ?」

 

 出会った時には適当にあしらったが、帰還後には直ぐにでもアクセスの出来る範囲でデータを探した....が、彼女を特定できるようなものは1つも存在しなかった。

 

 「あれはいつか別の脅威になりうる....警戒は必要だな。」

 

 隠していた撮影器具で撮影をした彼女の写真を眺めながら再び僕はコンソールに向き直った。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 『警告、後方準索敵範囲内に敵影を確認。各部担当員は直ちに配置に着くことを推奨。警告、後方準索敵範囲内に....』

 

 今後どうなるのか、そう身構えてしばらくの間コンソール台で待機をしているとそれは突然鳴り響いた。

 

 最初は突然のことで固まってはいたが2回目のアナウンスで事に気が付いた俺はグレイドに向かって叫ぶようにして声を掛けた。

 

 「グレイド!レーダー図を出せ!」

 

 そう言うとグレイドは何も言わずに素早くコンソールに手を伸ばした。俺の方も別の準備を始める。

 

 しばらくすると中央にある一番大きなモニターにそれが写された。

 

 「....それなりに不味いな。」

 

 画面を見ると船の識別番号を中心にレーダーが展開されていてその少し離れた準索敵範囲に識別不能表示が出ていた。

 

 基本的にこの船のシステムではレーダーで対象が発見されるとその対象へ電波が送られ、対象からの折り返しで送られてくる電波を受信することでそれを識別できるようになっている....が、それが行われないということはだ。

 

 「まさかとは思ったが本当に来るとはな....結構な数のダーカーだぞ。」

 

 それがつまり敵、ダーカーだということだ。

 

 「....」

 

 『警告、後方準索敵範囲内に敵影を確認。各部担当員は直ちに配置に着くことを推奨。警告、後方準索敵範囲内に....』

 

 「...バーンズ、俺はここで引き続き船の舵を取る。戦闘の方はお前に一任する。」

 

 グレイドは1つ乗り越えたような顔をして俺に向かってそう言う。警告のアナウンスが鳴り響く中でその会話だけはやけに冷静だった。

 

 「....分かった、気を付けてくれよ。」

 

 ここで変に返してはいけないと思った俺は軽く返事をするだけでその場を後にした。早急に配置につかなければ。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 「いきなり来るって....そんなことある訳?」

 

 「仕方が無いですよ、予兆は何となくあったんですから。」

 

 警告のアナウンスを聞いた僕らは驚きもあったけれど何時かは起こるだろうと思っていたお陰で特に慌てることも無かった。

 

 「予兆?そんなものあったかしら。」

 

 「あれですよ、フィリンさんがスリープモードにしている間にホログラムで確認出来たんです。」

 

 置いていた荷物を拾いながら話を続ける。そうは言っても銃と端末ぐらいしかないけど...

 

 「まあ良いわ、とにかく迎撃をどうするか考えないと。全く応援に行ったアークスは何やってるのよ....」

 

 フィリンさんは呆れながらそう答えた。確かに、応援に行っているアークスの人達は一体どうしているんだ?

 

 『....接続状態の確認終了。No.01、No.02、No03を接続。スリープを解除します。』

 

 「....ミィーンさんの方も準備が出来そうですね。」

 

 聞き覚えのあるアナウンスが鳴る方を見るとミィーンさんが自分同士を接続している最中だった。ゆっくりと残りの2人が起き上がる。

 

 「こちらの方は、大丈夫です。」

 

 メインの方のミィーンさんからそう声を掛けられる。精神状態にも問題は無さそうだな。

 

 「じゃあ、取りあえず艦橋の方まで行きましょう。バーンズさんが居ますから何かしらの指示は受けられるはず....!」

 

 そうして僕は扉を開いて通路に出ようとした....が、なぜかそこには既にバーンズさんが居た。

 

 「やっぱりここに居たか。」

 

 「バーンズさんじゃないですか。上の方は大丈夫なんです?」

 

 そう聞くと少し考えるような素振りをした後に首を縦に振った。

 

 「ああ、知り合いに任せてある。俺も迎撃に当たるつもりだ。」

 

 どうやらバーンズさんも下で戦うみたいだ。

 

 「準備はあまり順調とは言えないが.....やるしかない。取りあえず着いて来てくれ。ノア君はヘルメットを着けるのを忘れるなよ。」

 

 「は、はい!」

 

 僕は存在を忘れかけていたヘルメットをもう一度付け直した。

 

 「それとフィリンとミィーンは左舷側の格納庫に向かって欲しい、説明は後からする。とにかく急いでくれ。」

 

 「...分かったわ、気を付けてね。」

 

 そこでフィリンさんとミィーンさん、僕とバーンズさんとで一旦分かれることになった。恐らく役割が違うんだろう。

 

 若干引きずられつつも手を振ると僕はバーンズさんについて行った。

 

 

 

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