PHANTASY STAR ONLINE 2 :A.P.742   作:Begew Garand

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E-36 「連絡」

 「くそ、数が増えて来てるんじゃないのか...?このっ!」

 

 照準器越しに見える宙域の状態を確認しながらそんな言葉が出る。確かに最初の時よりもその個体数は跳ね上がっているように見えた。

 

 ...考えたくはないがフェルノート内部で殺すべき相手(アークス)を粗方始末し終えて、それで新しい目標を探すために艦内から出て来たのか?だとしたら辻褄は合うが。

 

 「残弾は後....厳しいな。」

 

 照準器の中に出ている残段数を一瞬確認して見る。どうやら既に折り返し地点はとうに越えていたようだ。不味いぞ。

 

 「ノア君の方はどうなった.....ノア君!」

 

 攻撃に付きっ切りで少し忘れかけていたがふと俺の頭をノア君の顔がよぎった。しまった、何も無ければ良いんだが....

 

 俺は既に握っていた機銃のレバーのグリップをより強く握り締め、それからヘルメットの回線を点けた。スイッチを入れると短くノイズが走る。

 

 『ノア君、右舷側の状況は、どうだ?』

 

 ダーカーの方にも神経を使いながらも俺は声を口から出して聞く。

 

 ...最初の内はそのまま沈黙が続いたが数秒置いて彼の声が、若干慌て気味にも回線越しに聞こえてきた。

 

 『す、すみません、手が離せなくて....こちらの右舷側の状況はっ、少し厳しくなってきたところです。ダーカーの索敵範囲内への侵入数も大分、ですか。』

 

 少し厳しくなり始めた、どうやら左舷側とは少し状況が違うようだ。もう少し詳しく聞きたいが....今はとにかく情報の量だ、質じゃない。

 

 そうして俺は次の話に内容を移した。

 

 『そうか、弾の方はどうだ?』

 

 『弾....残弾数ですね。丁度半分辺りになったところです。』

 

 弾は少しだけノア君の方が余裕がある状態か。...そうは言っても大した差異は無いが。

 

 俺はその調子で話を続ける。

 

 『ん、少し厳しいかもしれない....が、シークマーカには着実に、近づいているぞ。最初に居た地点の座標からかなり進んでいるからな。』

 

 試しにもう一度照準器のレーダー図下部、座標の数値だが.....それは確かに最初の時よりも目的地(シークマーカー)に近づいていた。まあ、数値だとあまり実感が湧き辛いが。

 

 『後どれ位とか、時間とか何とか....そう言ったのも分かりますか?』

 

 『悪い、そこまではか。』

 

 『....そうですか。』

 

 もう少しでも詳しく話したいところだが、攻撃の手を緩めてやるというのも中々できない。落ち着けるのならちょっとした計算で割り出せるんだがな。....今は、目前の敵が最優先だ。

 

 『そういえば、ですか。』

 

 『ん、どうした?』

 

 回線の接続を切ろうとしてヘルメットのスイッチを切ろうとした時だった。どうやらノア君の方からも何かあるらしい。

 

 『そちらの方からはフィリンさんかミィーンさん見えますか?』

 

 『ああ、あっちの方か。』

 

 『右舷側からはミィーンさんの内1人が見えるんですけどね....』

 

 そう言われた俺は照準器の倍率を下げてフィリン達の方を探しながら援護を続けた。

 

 しばらくしてそれを続けていると黒いボディが一瞬目に入った。あれは....

 

 『こっちの方からは....フィリンが見えるぞ。あまり派手に動き回っていないな。』

 

 『そうですか...まだ被弾もしていないみたいですか?』

 

 被害の状況。それを聞いた俺は再び照準器の倍率を高めて短い間で目視にはなるが確認を行なう。破損状況は、無しだな。

 

 『ああ、特に目立ったのもな....大丈夫だと思うぞ。』

 

 今の状況は正面、後方、右舷側がミィーン達。左舷側がフィリンで展開しているみたいだな。もっとも、グレイドがどんな指示を出しているのかは分からんが。

 

 ....取りあえず、現段階で分かることと言えばまだ戦えるってところか。

 

 『悪い、戦闘中に俺の方から連絡なんてな。気にしないでそっちの方に戻ってくれ。』

 

 『は、はあ...分かりました。回線の方、引き続き待機中にします。』

 

 『ん、分かった。』

 

 そこで俺は再びヘルメットの同じ位置を触ってスイッチを切った。

 

 艦橋の方にも連絡を入れたいところだが....こちら側もあちら側も今じゃ無理だろうな。

 

 「グレイドの方と少しでも連絡が取れれば、まだ状況は分かるんだがな。くそ、さっきよりも増えてるんじゃないのか?」

 

 照準器を見ていれば嫌でもダーカーが目に入って来る。....おかしい話だ。初動から普通じゃないとは分かってはいたがこんなにでもダーカーが活発になるなんて今まで起こらなかったことだぞ?それがどうしてこんな辺鄙な時に。

 

 まるであれだ、話に聞いた昔の話。5()0()0()()()()()とほぼ同じ状態なんじゃないのか、この状況は。

 

 「...そこだな!」

 

 照準器で目標を捉えてレバーのスイッチを引く。ヘルメットの中には補助音源が響き宙域にはいくつかの閃光が走る。

 

 それは目標に達すると溶かすようにしてダーカーに害を与える。大部分を失うとダーカーは霧状になって宙域に消えていく。

 

 「個体によって強さが違う、のか?感覚ではそう感じるが....」

 

 確かに、不安定と言うかまばらと言うか....まるで不良品の割合が多いような敵の性能、強さが攻撃をする度にどことなく感じ始めて来ていた。ダーカーってのはそれなりに強さは同じだと体感的に感じてはいたがこれは少し違うようだ。

 

 「これはシークマーカーに辿り着いてからでも動く余地は、ある問題になりはしそうだな。」

 

 突発的な事象、変異的なダーカーの違い.....色々とあるか。

 

 ...とにかく、今は辿り着くことが最優先だ。頭の片隅に追いやって守ることに専念しないとな。

 

 「頼むからまだ耐えてくれよ...後少しなんだ。」

 

 そうして続けて敵に攻撃をし続ける内に再び意識は機銃の方に吸い込まれていった。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 1人しか居なくなった艦橋に静かにコンソールの駆動音が響く。

 

 「.....状況は悪くも良くも無いか。」

 

 正面のレーダ図、手元のコンソール....何処の情報を見てもそれ以下でもそれ以上でもないとしか言えない状況だった。

 

 ...まあ、ある意味では平凡で一番良い状況なのかもしれないが。

 

 「それにしてもキャストの人方が心配だな。さっきからモニターの方で確認は取ってるが....」

 

 キャストの人達が気になる。そう思った時には既に手がコンソールの操作をしていた。まだカメラが使えれば良いが。

 

 「....駄目だ、カメラの追尾をもう少し見ておくべきだったな。」

 

 映像の方は確かに出力されていた。けれど、追尾機能が死んでいるせいなのかその画面にはあまり良くその姿は映っていなかった。

 

 「何も無ければいいんだが.....」

 

 そうして俺はコンソールの映像タブを閉じた。

 

 「...俺も少しは戦えれば良かったなあ。」

 

 深く椅子に座り直しながら俺はそう思った。そう、俺にはある意味才能と言っても良いのかもしれないが武器の扱いは全くだった。

 

 「船の操縦ならそこそこだが戦うことも出来ないと駄目か。」

 

 一応、アークスの試験は受けたには受けたが結果は散々だったしな。お陰で今はこんなのの管理者か。

 

 「...駄目だ、今は戦闘中なんだ。こんなこと言ってられないか。」

 

 それらの気持ちを振り払うようにして頭を横に振って気を紛らわせる。....少しはましになったか。

 

 「そう言えば距離はどうなってるんだ?もう少しでシークマーカーが見えても良い頃合いなんだが....」

 

 そう言って俺は少しだけ身を乗り出してみて宙域の方を見てみる。けれどまだその姿は確認できなかった。

 

 「....駄目だ、赤い霧?の所為で拡大しても映らないな。」

 

 確かに普通であるなら倍率を高めでもすれば見ることは出来る距離だが、それもこの霧のようなもので上手く見えなくなっていた。

 

 ダーカー因子。講習とか話では聞いたことがあったが実際に見たのは今回が初めてだった。...まあ、俺は基本的に後方の人間だからな。

 

 「バーンズの方とも確認を取りたいが今は無理だろうしな、かといって俺の方も手を抜けないし....難しいな。」

 

 一応船の方はあれからオートに変えて俺は舵以外のシステム諸々を見ている訳だが、緊張感は常にある。今の状況だといつ何が起こるか分からないのもあるな。

 

 「....取りあえずシークマーカーの方と連絡が取れるかやってみるか。」

 

 そう思った俺はコンソールの方に手をやって、シークマーカーの使用周波数で回線を繋げようとした。一応、各アークスシップごとに既定の周波数が決まっているからな。

 

 早速機能を立ち上げた後、すぐさまシークマーカーの周波数を設定する。繋がれば良いが...

 

 『こちらフェルノート配属巡洋艦ブリュンヒルデ、応答願います。こちらフェルノート配属巡洋艦ブリュンヒルデ、応答願います。』

 

 呼び出し時の文を読み上げながらブザー音を同時に飛ばす。声の方が聞こえなくともブザー音で気が付いてもらえる可能性が高くなるからだ。

 

 それから十数回ほど呼び出しを続けた。

 

 『....こちらフェルノート配属巡洋艦ブリュンヒルデ、応答願います.....駄目か。』

 

 だが、こちら側の呼び出しに対して何も応答、反応は無くこちら側のセンサー類も何も捉えてはいないようだった。要するに距離がいけないんだろう。....まあ、今の状況で考えるのならこの因子の霧の所為で繋がりにくくなっているって考え方もありだな。

 

 「今、俺に出来ることは攻撃に当たっている彼らを信じるしかないみたいだな。ここから使える武器なんて主砲程度しか無いしな....おまけにエネルギー不足、管理しているのが俺だから強くは言えないがこんなものを使わなきゃいけない状況なのかねアークスは。」

 

 正面の方に見える宙域を見ながら俺は息を漏らした。

 

 

 

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