PHANTASY STAR ONLINE 2 :A.P.742 作:Begew Garand
「そ、それって本当なのか!?」
今しがた聞いたことに驚いて大きな声を出してしまう。それの所為か一瞬自分の周りが静かになる。
少ししてそれが自分の原因で起こっていることに気が付いて恥ずかしくなった。やっちゃった...
「あ、う...そ、その。」
「ばっ、お前でかい声出すなって。」
見知った顔の相方に軽く頭を叩かれる。だっていきなり凄いこと言うんだもんな....
「ほら、先行くぞ。急ぎで呼び出しかかってるんだからな。」
「あ!待てって!」
今知ったことと軽く打たれたショックで放心状態だったところを急いで足を動かす。
...それにしても、それにしてもそんなことって。
「はあ....それで、あの話噂じゃないのか?
そう、今聞いて驚いたのは他でもないダーカーのことだ。
覚えてる限りでは数回アークスの任務で小規模の残党狩りをしたことくらいであんまり詳しいことは知らないんだけどね、ダーカー。
その中でもただ一つ知ってることと言えば今のダーカーは弱いってことか。一応指定教育で軽く触れたからさ。
「ああ、聞いたところによればだが...今フェルノートの方で起きてることでアークスから応援部隊が出たってのは知ってるだろ?」
「うん、数時間前に一部のアークスに呼びかけが出てたやつだろ?知ってるさ。」
「それがよ、それなりに数が出てたのが4割壊滅したらしいぜ。それなりに強い奴らで編成されてたはずなんだが....」
また大きな声が出そうになった口を今度は両手で咄嗟に塞ぐ。...危なかった。
....4割?
「それでその連絡を受け付けてたやつの近くにいたのが相当な慌て振りだったのを見て聞いて、それが今噂になって駆け巡ってる訳....何してんだ?」
「....いやなんでも。」
そこで口を抑えていた手を凝視されているのに気が付いて手を引っ込めた。
「...まあ、だからダーカーが何かしら活発になってやりたい放題してるってのが予想されてるってとこだな。そうでなきゃ大半が壊滅する理由が無いぜ。」
「なるほど....」
確かに少し考えてみればそうだ。艦の上の人間が急ぎでも選んだ人材がやられるんだもんな....何かが起こってるってのは間違いじゃなさそうだ。
「....でもさ、ダーカーはかなり昔に勢いが劇的に弱まって今の今までそういう変異的?なことは起こらなかったんだろ。だとしたらなんで今になって活発になるのさ。」
「そんなこと今の俺が知るかよ。....でもまあ、これから分かるんじゃないのか?」
そうして乗り込んだ昇降機のスイッチに手をやりながら返して来る。現状だと無理も無いか....
「そうだと良いんだけど.....ん、押して良いよ。」
「分かった。」
そう言うと昇降機が動き出す。
「.....そう言えばさ。」
狭い昇降機の中で声を掛ける。話していて忘れちゃったけど....
「僕ら何で呼ばれたんだっけ?」
その瞬間破裂音のような音が鳴った。彼が噴き出すように口から音を立てたからだ。
それから少し間をおいて彼が話を続けた。
「あのなあ.....はあ、俺らはそれなりに射撃の命中精度に心得があるだろ?それを知ってか対空要員に回されてここに来た、ここまで良いか?」
「うん....驚くことが多かったから少し抜けちゃってさ。」
「全くやめてくれよ....」
色々と短時間で起きた所為で所々記憶が....まあ思い出せたから良いか。
「....ほら着いたぞ。」
そう言うと出口に近い方の彼から昇降機から降りていく。僕もそれに続いて行った。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「ここの...じゃないな。やっぱり向こうの方か?」
自分が割り当てられた番号とその場所の番号を比較しながら狭い通路を進んでいく。この辺りのはずなんだけどな.....
「弱ったな、早く探さないと。」
そうして自分の端末に目を落として番号をもう一度確認してみる.....と、呼ばれる声が聞こえて来た。彼だ。
何かを手に持ちながらこっちの方に向かってくる。何だろうあれ。
「おい、ようやく見つけられたぞ。あっちの方だ。」
そう言って僕の進んでいた方の少し先の方の通路を指で指した。なんだ、後少しだったのか。
「分かった。じゃあ、先に行....」
「まあ待てよ、ほら。これ。」
「?」
差された銃座に向かうために通路を進もうとすると肩に手を置かれて足を止められる。
「これ被っておかないといけないだろ?通路の方から持ってきておいた。」
そう言うとヘルメットを投げて来た。あの手に持ってる何かはヘルメットだったのか。
「ありがとう。これも何処にあるのか分からなかったんだ。ん...」
今しがた貰った特殊なヘルメットを早速頭から被る。少しすると着ている服の襟の部分とヘルメットの縁の部分が接続された。
これで宙域に投げ出されても.....いや、想像したくは無いな。
「.....?」
被り終わった後、話しかけようとすると声がヘルメットの中に響く。....そうだ、バイザーが閉まったままだった。
それに気が付いた自分はバイザーの開閉スイッチを入れた。すると素早くバイザー部分が滑るように開いた。これで大丈夫だな。
「...あ、そうだ。」
「どうした?」
「回線、まだ繋いでなかったね。一応緊急時用に必要だろ?」
ヘルメットの無線の接続状態を端末を使って設定し直す。種類によるけどこれはそういう接続の形式みたいだ。彼の方も僕の言葉で気が付いたのか思い出したような素振りで端末を出して設定をする。
しばらくすると接続の完了を表す表記が出て、接続は無事に終わった。
「よし、じゃあ行こうか。」
「おう。足元手元、気をつけろよ。」
そうして僕たちは他に通路を歩く人を避けながら奥の方へと進んでいく。....機能の面でしか考えてない構造なのは仕方が無いけど、それにしたってちょっと狭い気がするな。この通路。
時折軽い重力の所為で体が投げ出されそうになるのを壁を使ったりして対処しながら進んで行く。
「ん、これかあ。」
それから少しの間進み続けるとさっき彼が指で指した場所に着くことが出来た。やっぱりそんなに遠くなかったな。
「確かにこれなら俺達でも扱えるな。かなり前に講習で教えられたことあるやつだ....んしょ。」
「そうだね、これ。」
特に座るな....というよりか待機しろってことだったから僕らは直ぐに銃座の座席に腰を下ろした。席のベルトも忘れないように着ける。
「...それにしたって事前のミーティングもまともにないとはちょっと余裕が無い様子みたいだな。」
「でも、一応電子メールで端末の方に詳細の連絡は来てたからそうでもないんじゃないか?」
「そうだと良いんだが....基本は何をするにしても事前の話し合いをするくらいはあるんだが。少し心配だな。」
確かにそうかもしれないな。ちょっと違和感かもしれない。だけど....
「大丈夫だよ....ほら、僕たちの任務がそこまで難しくないものだから逆にそう言うのが要らなかったって考え方もあるだろ?」
「確かにそうだけどよ....普段と違うってのはちょっと来るな。」
「それは、分からなくもないけど....少しは明るく考えた方が良いと思ってさ。そうじゃない?」
「.....ま、分からなくもないな。」
そう言うと彼は銃座の補助システムの電源を入れ始めた。僕も合わせて調整の為に電源を入れる。
電源を入れると目の前のコンソールが起動して画面が表示されて、その他諸々の機銃の情報が出てくる。勿論レーダーの情報もあるけど。
「そっちの方も問題ないか?」
彼が聞いてきた。やっぱり自分よりも少し手慣れてるみたいだ。
「うん、特に何も無いよ。」
「そうか。」
取りあえずコンソールの確認を終えて、次に自分は照準器の確認をすることにした。
ヘルメットのバイザーの少し上の部分にあるレール部分に繋がっている箱状の物をその為に目の部分にまで滑らせる。すると箱状の物、照準器の中にあるモニターが見えた。
「ん....こっちの方もちゃんと起動してるな。後はこっちとか。」
少しだけ外が見えるようにして銃座のコンソールを操作する。これでこのヘルメットの物と接続できるはず。
....そうして接続を開始させて数分程待っていると照準器の小さいモニターの黒い画面が切り替わって別の画面になる。恐らく上手くいってるならこれで外側のカメラと繋がったはずだけど。
「....なんだこれ。」
一応、倍率の確認の為に外の方の物でテストしておこう、なんて気持ちで照準器から外を見てみた。
するとそこには今まで見たことのない光景があった。
「赤い霧...?ダーカーを倒したときに出てくる霧状のやつに似ている気がするけど....」
赤い霧、それは以前自分も倒したこともあるダーカーが消滅する時に出す霧。それと同じ色をしていた。もしかしてこれが因子?なのかな。
「この辺りの宙域でこんなもの見たことない.....やっぱり何かあったのかな。」
今まで見たことが無いことが起きている....異常を察知するのにはそれは十分すぎるくらいだった。
「....ん?」
そうしてしばらくの間赤い霧の立ち込める宙域を観察し続けていた。最初のうちは特に霧の向こう側に何も見えなかったんだけど....
「何だろう、青いな。」
突然霧の中から現れるようにして出て来た青色の何かに僕の視線は向かった。敵,,,,,じゃなくて何か物、船?のようにも感じるけど。
「....ね、ねえ、君もあれ見えるかい?」
同じくして照準器を見ていた彼に向かって声を掛けてみる。
「ん?なんだ?」
どうやら外は見ているけどあれは見えていないみたいだ。
「ちょっと待って.....こっちの方角かな。」
そうして彼にその方向を教える。見えてるのが自分だけなんてことは無いと思うけど....
「....あー、確かに何か見えるな。もしかしてだけど
彼は話を続けながらそれを観察しているようだった。自分も方向を伝え終わったのを確認して照準器を改めて覗き込む。
そうしていると段々とこちら側に向かってきているのかその全貌が見えてきた。
「....何だか随分古い船みたいだ。」
「ああ、相当使い込んでる?みたいだな。あの様子だと。」
それはかなり古いタイプの船、アークスの船だったんだけど実物は見た記憶が無いものだった。教材か何かの写真で見たことがあった気もするけど....とにかくそれくらいの物だったんだ。
「何だか随分やられたみたいな様子だね。結構改造?してあるみたいだし。」
確かにその船を良く見てみると左側の本来あった部分が完全に無くなっているようで別のパーツ、エンジン?のようなもので補填されていた。それ以外にも何処かで被弾したのか塗装の剥げも酷い。
「アークスに予算が無いって噂もあれにアークスが乗ってるんならこの状況だと信じたくなっちまうな.....っと、連絡が来たな。」
「こっちも、ちょっと確認しようか。」
そうしてその古い船を観察していると新しい連絡が送られて来た。内容を見てみる。
「.....なるほど、あれは敵じゃないから撃つなってか。それぐらい分かってるんだがな。」
まあ、短くまとめるとそんなような内容だった。
「一応じゃない?動揺して間違えて撃っちゃう人も居るかもしれないからさ。」
「ば、そんな奴に援護なんて勤まるかよ。」
「僕らも間違えて当てないようにしないと....何だか一撃でも当たったら大変そうだし。」
そんなこんなで予定の時間が近づいてきたことを確認した自分は銃座のグリップを握り締めた。
....あれに当たらないと良いけど。