PHANTASY STAR ONLINE 2 :A.P.742   作:Begew Garand

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E-04 「たいせつなもの」

 「....何時ものことだがすることが無い。なあ?ノア君。案外この仕事大変でもないだろ。」

 

 コンソールの冷却用ファンが回る音だけが響く中、バーンズさんが呼びかけてきた。

 

 「そ、そうですね....僕の勝手な想像ではもっと忙しくなるものだと思っていましたけどよほどの緊急時にならなければ出ることもですか。」

 

 倉庫から戻った僕とバーンズさんは今のところ、というよりも常時義務付けられている待機状態を続けていた。けれど、特に何かが起こることも無かったけどね。

 

 「そう、まあ一応ここは区分分けで言うならBの第2部隊だろ?うちが管理しなくちゃならないこの艦船(アークスシップ)は旧型で乗っている乗員も他の艦と比べれば少ない。だが、だからと言って管理にかかる人員の多さは大して変わらない訳で....こうして各艦に配置した支部を拠点として各区画に駐在所を置いて、そこに少人数待機させると。まあ、それもあってか危険度の違いがかなり目立つな。」

 

 「そう考えるとここに配属になった僕はまだ運がついてる方なんですかね....?」

 

 「他の場所と比べるのならそういうことになるな。」

 

 「....なら少しは頑張る気には、ですか。」

 

 「なに、俺はノアくんには期待してるさ。明日もしっかりと出勤してくれるだろうし何よりも腕が立つ.....ような顔つきだからな。」

 

 「は、はあ。」

 

 そう言われた僕はまた検査の時のことを思い出して情けない気持ちになった。期待されるほどでもないのにな....

 

 「今まで連続して新人育成は失敗続きだったからなあ....これだけの良い人材が来るのが嬉しくない訳が無いぜ?」

 

 「失敗続き?何かあったんですか....?」

 

 そう聞くとバーンズさんは顔の眉を微かにしかめてから話し始めた。

 

 「ああそうさ、あれは酷いもんだった.....大抵は2日もせずに何処かに消えちまうんだよ。初日には面倒くさそうに話もまともに聞かないわ指定の制服も着てこない、コンソールまわりだってあの有様さ。」

 

 そう言うとバーンズさんは僕が最初にこの部屋に入ってきたときに目に入った私物と一般員用の簡易携行食のゴミが散らかっていた机を呆れたように指で指した。

 

 「でも、乗員は基本的に任じられた役職をせずに逃れるなんてことは出来ないはずですよ。指定教育でもそう言ったことは教えてもらいましたし僕でも流石に知ってます。」

 

 バーンズさんは新人職員が失踪したって言っているけれどそれはアークス組織全体で決まっている規則にのっとれば出来ないことなんだ。だからこの(アークスシップ)に生まれたら最後、必ずアークスの何かの役職に就くことになっているんだ。そしてそれを放棄することは当然できない。だからそういうことがあったとしても捜索が行われて、見つかり次第()()が施されてから帰ってくるんだ。だけど....

 

 「そうだ、確かに規則ではその様に決まっていて俺も支部に届け出てからここの地区も捜索をしたさ。だけどな、不思議なことに奴はいくら探しても見つかることは無くて今でも消息が分からないままだ。」

 

 バーンズさんが言うにはその新人の人は艦を捜索しても見つからなかったらしい。大体の場合は何かしらの施設、道にある自販機なんかを利用しても履歴が残るからそれから辿れるんだけどね。

 

 「そんなことって、僕の経験が浅いだけなのかもしれませんけどそんなことは聞いたことが無いですよ。だってそんな消息不明(ロスト)するなんて船外に出て逃亡するとかそんな自殺じみたこと...」

 

 「....そうだな、その見方が一番正しい。ここの支部も同じような判断を事実上出して捜索を打ち切ったようなもんだ。」

 

 「そうですか....」

 

 「まあ、M.Sだって暇な訳じゃない。一人程度の人員が減ったところで追加で補填を行えば良いだけだからな。そいつがどうなろうと知ったことじゃないって訳だ、消息不明の場合には特に。」

 

 「....」

 

 「あー.....悪い、話を変えようか。ほら、携行食だ。」

 

 そう言うとバーンズさんは簡易携行食のパックを渡してくれた。

 

 「この時間だけどまだ飯食ってないだろ?今日の仕事分で余分に買ってたのが余ってるからよ、あげるさ。」

 

 「ありがとうございます。」

 

 「それはM.S用の携行食だから少しだけ味は濃いぜ、普段は薄いもんだろうから少しは美味しいだろうよ。飲んでみな。」

 

 そう言われた僕はパックからストローを取り外して中身を飲んでみることにした。微かにだけど匂いはちょっと違うかも。

 

 「....あんまり変わらない気がしますけどちょっとだけ濃いですか。」

 

 「M.S用とは言うものの規定摂取カロリー数に合わせて作ってるだけだからな....はあ、俺もアークスだった頃は天然素材の....いや、何でもない。」

 

 「そ、そうですか。」

 

 そうして携行食を食べ終えた後、数時間程度また待機を行っていたけれど先程と特に変わらず何も起きることが無くて気が付いた時には終業のアナウンスが部屋に響いていた。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 「?ノア君、銃は置いて行かなくて良いぞ。」

 

 仕事が終わった後、僕とバーンズさんはロッカールームで着替えをして自室に帰るところだった。

 

 「へ?置いて行かないんですか?」

 

 ロッカーに先程渡された(P1A2)を置こうとしたときに不意にバーンズさんに声をかけられた。

 

 「ああ、俺らの待機勤務は今日のところはここで終わりだが勤務外でM.Sが関わらなきゃいけない事態が発生したときに使えるように一応持っておくことになってる。普段は艦内のロックが掛かってるから撃てないが許可が下りれば使えるからな。」

 

 「はあ、バーンズさんはそういうことあったんですか?何か急を要するような事とか....」

 

 それを聞いて少し心配になった僕は万一を考えてバーンズさんにそういった前例があるのかどうか聞いてみた。

 

 「まあ、一度だけあったかな。あれは帰っているときに....そうだな、それなりに用心はしておいた方が良いか。」

 

 「あるんですか....」

 

 「だからその銃は持っておいてくれよ。」

 

 「はい。」

 

 そう言われた僕は一般員用の服の上からもう一度付け直そうとした。すると。

 

 「いや、そういうものはなるべく見えない位置に持つ方が良い。もしもの時に相手を警戒させちまうからな....だからノア君なら上に羽織ってる服の下に隠れるように入れるのがか、ここが良いだろう。」

 

 どうやら相手の警戒心を煽るような付け方だったようで、バーンズさんがそれなりの場所に付け直してくれた。

 

 「基本的には許可が下りるまでその銃ははっきり言うとただの玩具だ。それを相手に見られてみろ、撃たれると思って逃げ出すか焦って攻撃してくるかもしれないしな、そうなったら最後だ。だから今言ったのも覚えておいてくれ。」

 

 「わかりました。」

 

 「良し、ここまでできればM.Sとしてはほぼ問題はない...はずだ。まあ明日からも頑張ろうか。」

 

 「そうですね....」

 

 明日のことを想像しながら重く返事を返した。

 

 「じゃあ、先に帰りますね。お疲れさまでした。」

 

 「ああ、気を付けて戻れよ。」

 

 そうして僕は駐在所を後にして、自室のある区画行きのコンベアに向かった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 「......イレノア、お前は何処に行っちまったんだ...?」

 

 自分以外誰も居なくなったロッカールームで古い日付の写真を見ながらバーンズは一人言葉を漏らした。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 「駐在所からは少しかかるんだな....」

 

 あれからコンベアに乗った僕は特に何もなく自室にまで戻ることが出来た。腰の銃には一度も触れていない。

 

 「まあ、前みたいに遅刻することが無ければ大丈夫か。取りあえず今日はもう休もう....」

 

 そうして僕はカードをドア横のスロットに通してドアを開けようとした。

 

 「.....開かないな、もしかしてまた立て付けが悪くなったのか....?」

 

 何かが突っかかる音が連続して聞こえてくる。

 

 「修理してもらえないのが辛いな....っと力を入れて押して、開いてくれよ.....!」

 

 両手でドアを強く押し続けると、それに答えるようにして大きい金属音が鳴った後に普段通りスムーズにドアが開いた。

 

 「はあ、帰ってきた後にこれじゃ体が持たないな。」

 

 誰にも聞こえない文句を漏らしながらもようやく自室に辿り着いた。

 

 「....取りあえず水でも飲もう。」

 

 冷蔵庫から飲みかけの精製水を取り出してから椅子に座って少し休むことにした。

 

 まあ、さっきドアの立て付けが悪くなったようにここは新しく作られた場所じゃないんだ。アークスがまだ分離化される以前から運用されている艦で施設自体も使いまわし....それでこの僕の部屋はアークスの自室(マイルーム)として使われていたものを一般員用に改修したものなんだ。

 

 普通なら新造艦を作って旧型艦なんて破棄してしまえば良いじゃないか、なんて思うけどもコストがそれだと掛かりすぎてしまうからね。だけど、大して大きな事も起こらなくなった時代で人員が嫌でも増えてきているからやむを得ずに新型艦をまれに作ることもあるんだけど....

 

 「はあ...」

 

 ...それにしてもこの部屋は酷いけどね。部屋の壁の塗装は雑で擦り傷だらけ、照明も薄暗くて使い物にならない。別の艦に移動したいものだけどそれには申請しなきゃいけないし、それ相応の理由(適当な言い訳)が無ければ生活どころか移動さえ認められない。

 

 「....取りあえずもう寝よう。考えても何も出来ないや。」

 

 そうして寝ることにした僕は銃をサイドテーブルに置いてからベッドに適当に横になった。また、悪い夢でも見なければ良いけど...

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 「....ちゃん、レピカちゃん、そろそろ起きないと先生にみつかっちゃうよ。」

 

 「ん.....まだ、まだだいじょうぶ....ねむい....」

 

 「はやく起きないとほんとうに.....ひっ!?」

 

 「レピカさん、起きてください。まだ講義中ですよ?」

 

 「?」

 

 わたしがねているとあたまを何かでたたかれて、それで気になってうえを向いてみたんだ。そしたら....

 

 「とても、とても、とても良い心掛けですねレピカさん。講義中に居眠りとはですね....今日は残っていただきましょうか。」

 

 「ひぃぃ....」

 

 そういうとこわい笑顔をしながらせんせいは画面をさす棒をつよく手のひらで叩いていたんだ。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 「むう....せんせいのことわたしきらい...」

 

 「だって起こしても起きないんだもん。レピカのじごーじとくってやつよ。」

 

 「そんなあ....」

 

 こうぎがおわった後、わたしはともだちのメリッサといっしょにパックのたべものを飲みながらおはなししていたの。

 

 「ちゃんとべんきょうしないとアークスにはなれないっていつもせんせいが言ってるじゃん。」

 

 「そうだけど....ねむいのはしかたないもの、アークスのひとだってねるでしょ?」

 

 「そういうもんだいじゃないんだけどなあ....」

 

 メリッサはこまったような顔してる。なにかへんなこといったかな?

 

 「まあいいや、またあしたね。きょうはしっかりねるんだよ!」

 

 「はーい。」

 

 そういうと飲んでたパックをゴミ箱にすててからメリッサは帰っていった。

 

 「わたしもかえろっと。」

 

 わたしもはなすあいてがいなくなったから帰ることにした。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 「~♪」

 

 わたしはともだちとおはなしするのも大好きだけど、こうしてさんぽしながら帰るのも好きなの。

 

 お部屋はべんきょうするところの近くにあるけどわたしの足だとちょっと遠いから時間がかかるけど、この時間はきらいじゃないからいいかもしれない。

 

 「あっ、そろそろ橋だ!きょうはなにがみえるかな....」

 

 そうして歩いているといつもとおる橋が見えてきたんだ。この橋からはこのばしょを見渡せるばしょだからいつも眺めてからいくの。それでいつもちこくしちゃうんだけどね....

 

 「ひとがたくさん歩いてて....あっ、あのくるま速いなあ。」

 

 こうして遠くからみているとじぶんがおっきくなったみたいでなんだかたのしいんだ。それで、きょうはちょっと前にあたまをいつもより橋から出してみていたんだ。そうしたら。

 

 「!あっ、わたしのぼうしっ.....」

 

 そのときにつよいかぜが後ろからふいてきてぼうしがとんでっちゃったんだ。

 

 「....ど、どうしよう。さがしにいかなきゃ!」

 

 とんでいくところは見ていたからそれをおいかけるようにしてはしりだしたんだ。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 「......ここ、どこ?」

 

 あれからぼうしをおいかけてはしってきたけど、気が付いたときには知らないばしょにきちゃったみたい。

 

 「うう....たんまつの使い方おぼえておけばよかった.....」

 

 せんせいが地図があればまいごになってもだいじょうぶだっていってたけど見方が分かんなかった。

 

 「こうなったらみつけるまで帰らないんだからっ!」

 

 いろいろあってイライラしていたわたしはやけになってみつけるまでかえらないことにしたの。

 

 ぼうし、あのぼうしはおかあさんからもらっただいじなものだから....なくすのはいや。

 

 「でも、さっきとんでいったところはこのあたりなんだけどなあ。地面におちていたらすぐにみつかるけど、まさかだれかにもっていかれちゃったりして.....」

 

 ちょっといやなことが頭にうかんだ。

 

 「....うんうん、そんなことない。きっと、きっとどこかにあるはず。」

 

 だけど、そうしたらここまで来たいみが無くなっちゃう。そう思ってさっきよりももっとくわしくさがすことにしたの。

 

 

 

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