PHANTASY STAR ONLINE 2 :A.P.742 作:Begew Garand
「....何だ、バーンズ。もう戻ってたのか。」
「ああ、丁度さ。」
艦橋へ入ると少しして足音に気が付いたのかグレイドが声を掛けてくる。コンソールで突っ伏していたから寝ていると思ったが違ったみたいだ。
「特に何も無かったか?機銃もそうだがお前の身体の方も。」
試しに自分の身体を見下ろしてみる。...特に問題ないみすぼらしいジャケットだ。
「大丈夫だ、俺の方は慣れてる。機銃の方も別に問題なかったぞ。」
「そうか、なら良いんだが....」
少し悩むようにして奴は言う。まあ、機銃の部分の整備にもあまり自信が無かったんだろうな。
「どうかしたのか?」
「....いや、お前に言うほどのことじゃないよ。それよりも
悩んでいたのをやめてグレイドは横にあるコンソールのモニターに向き直って話を続ける。
「そうだな、さっきまでに聞いたことよりも詳しくな。頼む。」
「分かった。少し時間が掛かるからさっきまで座ってた椅子にでも座って休んでくれ。」
そう言われた俺は首で返事を返してコンソールに備え付けてある椅子に座った。そうすると艦橋の窓から外の宙域の様子が見える。
....それにしてもシークマーカー側からの防御攻撃の勢いが凄いな。音が聞こえない所為でただの映像にも見えるが.....何だかこっちが敵みたいに感じるぞ。
「かなり激しいな....」
グレイドに聞こえるようにしてそう呟く。
「シークマーカー側からの対空防御か?」
「ああ、あっち側にも事の重要度が分かってるみたいだ。出した応援部隊が帰って来ないことで気が付いたか。」
ダーカーへの攻撃を始める前にフェルノートに向かって飛んで行った数機のキャンプシップが脳裏を過った。あれからしばらく辺りのことは索敵してはいたが一つもキャンプシップの機影は見えなかったからな、艦の方にもまだ戻れていないんだろう。
「多分な、俺の方からも一応伝えたが既に準備段階だった。連絡で飛んできた文章も少し端折ってあって焦ってるみたいだったしな、ほら。」
そう言うとグレイドはコンソールの処理が丁度終わったのか手でモニターを指して自分の所のコンソールのモニターを見るように伝えてきた。俺は窓から視線を下ろしてそれを見てみる。
「....確かにそうだな。定型文すら省くなんて相当だぞ。」
文章は急ぎで作られたおかげで2、3行程度の短い文章で直ぐに読み終えることが出来た。
「さっきまで宙域の方で迎撃に当たって貰ってたキャストの人方の1人がどうやら連絡してくれたみたいでな。俺の方は最初に数回呼び出しをしてから諦めてたんだけどな....」
キャストの内1人....その中で呼び出しを出来る奴と言ったら恐らくはフィリンがやったんだろうな。元々アークスだった時の経験がしっかり根付いてる証拠だ。
「....まあ、その呼び出しを受け取ったシークマーカー側がこっちの船の方に直接連絡を送り返して来たってところだ。ありがたいことだな。」
「そうだな、後で奴には伝えておくよ。」
「ああ、お前は名前知ってるんだったな。宜しく言っておいてくれ。」
「分かったよ。」
それからは船の状態の確認をもう一度し直したり、この後の行動をどうするべきかを考えながら船がシークマーカーに到着するまでの間体を休めた。
....それにしてもまた、戻って来ちまったな。ここに。
その時の俺の眼には大きな船体が映っていた。
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『C-12番ドッグ。エアロック作動中。作業員は退避線まで下がり安全を確認してください。現在エアロック作動中。.....』
「艦内に完全に入ったみたいですね。ここからだと良く分からないですけど....」
浅い眠りについていた僕は船内に響いていた入港のアナウンスで今さっき起こされて、それで今はホログラムの窓からドッグの様子を見ていた。
....まあ、画角が狭い所為で良くは見えないんだけど。
「ようやく安心して休めるわね。」
そう言っているとフィリンさんが立ち上がって窓の方に来た。
「宙域って言うのはどうにも落ち着かなくて....やっぱり地に足が付く方が良いわ。」
「そうなんですか?」
「....そうね、私はこっちの方が好きよ。精神が擦り減って仕方が無いもの。」
「は、はあ....」
どうやらフィリンさんはあんまり宙域が好きじゃないみたいだ。ただまあ、バーンズさんから聞いた限りでは苦手ではないみたいだけど。
ヒューマンの僕には縁の無いことだしな....空を飛び回れるってどんな気分なんだろ。
「到着、したんですか?」
そうしてフィリンさんと話していると部屋のベッドの方、ミィーンさんから声を掛けられた。さっきまで休んでいたから僕と同じでアナウンスで気が付いたのかな。
「今丁度入港し終わったところです。エアロックの作動中?みたいですから後少しだと思いますよ。」
「...そうですか。」
今はもう既に接続を切っているのかベッドに横になっているミィーンさん達はスリープ状態になっていた。....それにしても同じ顔が並んでいると凄いな。
「体調.....いや、精神状態はそれなりに休められました?さっきまでは戦闘でしたから負担が多いと思って。」
少し苦しそうな様子のミィーンさんを見て僕はそう聞いてみた。
ミィーンさん、特にオリジナルに近いフィリンさんは彼女の中でも一番精神力があまり強くないからね。
「一応それなりに、ですか。続けて戦闘があるなら、難しいですが...」
「なら、大丈夫ですよ。続けて戦闘は今の状態だとしないですから。」
そう伝えると少しだけミィーンさんのこわばった表情が柔らかくなった気がした。少しでも安心させられたのなら良いんだけど...
「....そう、ですよね。なら私、大丈夫です。」
ミィーンさんはそう言うとそのままの安心した表情でもう一度目を閉じた。
「...あ、そうだ。」
「?」
「フィリンさん、少し聞いても良いですか?」
「ん、良いわよ。何かしら。」
ふとあることを思い出した僕は突然ではあるけれどフィリンさんに話を振った。今、ゆっくりして気持ちに余裕が出来たからこそのことなんだけど....
「この後ことなんですけど、船を降りてから....降りれるかは分からないですけどこれからどうしますか?」
そう、この後のことだ。
今はこうして退避の名目でこの船に乗っていられて更には別のアークスシップに居ることが許されているけど、これはあくまでも特殊な状況だからだ。つまりそれが無くなれば以前言われたように原状復帰でフェルノートに戻らないといけない。....だけど、それが今すぐに出来ることだとは思えないよね。
「...ごめんなさい、それは私も聞きたいことよ。」
「フィリンさんもですか。」
やっぱりフィリンさんにもこの先のことは見通しが無いみたいだった。....まあ、僕と同じでフィリンさんにも特殊な権限がある訳じゃないからね。
「さっきまではダーカーを倒すことだけを考えていれば良かったから気が変に紛れて忘れていたけれど、私達にはこの後があるのよね。」
そう言うとフィリンさんは椅子に倒れるようにして座った後、埃の積もった机の上で人差し指を回し始めた。
「原状復帰....貴方も想像は付いていると思うけどこの状況じゃ無理よ。冗談でもね。」
「....そうですよね、あんな状況じゃ。」
その辺りについては僕もフィリンさんも同じような考えだった。原状復帰は無謀だということ。
「今のところ、詳しい情報を知ることが出来なくてフェルノート側の具体的な被害状況が測れないから予測しにくいのもあるけれど....そこまで考えなくてもどんな状況か想像が付くところよ。」
確かに、詳しい状況が把握できていない今の状況でもあのダーカーがフェルノート側にはもっと複数現れていたことくらい分かる。そんなのが市街地なんかに降りたとしたら、それなりの規模の甚大な被害だろう。
そうだとするなら時折あったC.R.S.Fの鎮圧の過程で起こる被害なんかとは比べ物にならないだろうな。あれなら区画の狭い範囲で済んでいたけど、今回のは自然発生?だからね。
「....まあ、正直なことを言えば私達にはこのままここに居ればその内何かしら連絡が来るわ。それがM.Sからなのかアークスからになるのかは分からないけれど。」
「連絡....こっちの方からしなくても良いんですか?」
連絡が来るということを聞いてさっきまで連絡をしようと思っていたことを思い出す。そう言うのもマニュアルに書いてたのか?
「それはそうよ。こっちの方は退避の名目で何も事前の手続きをしないでここのドッグに入って来ているんだから、事情を聴くために何かしら来るはず。」
フィリンさんは椅子の向きを変えて窓の方をまた眺めながらそう言う。
「....ともかく、休んでいればその内にでもそれが来ると思うわ。端末を良く確認することね。」
「...そうですね。」
言われた僕は取りあえずジャケットのポケットから端末を取り出した。一応何かしら通知が来ていないかどうか確認してみる。
画面の方に連絡は.....今のところないみたいだ。
「まあ、もう少し休んでいると良いわよ。今すぐ動くわけではないだろうし貴方は私とは違って肉体疲労が出るんだから。」
フィリンさんは僕の方を見ながら言う。...確かに少し腕が痛いかもしれないな。
「...取りあえず、私の方も休ませてもらうわ。何かあったら教えて頂戴。」
「分かりました、何かあった時には教え....もう聞いてないか。」
そう言い残すと椅子に座っている状態で彼女はスリープ状態に入っていた。
「....確かに休めるのなら休んでいた方が良いか。」
僕は窓側に立っていたのを少しずれて床に座り込んだ。何だか今は体が何かに支えられるだけで楽だな。
「時々連絡を確認して....あ。」
そうして数分おきに連絡の通知が来たかどうかを確認しているときにあることを思い出した。
「レピカちゃんから何かメールが来てるんじゃないのか?」
そう考えた僕は端末を操作してメールの表示画面に切り替えて確認することにした。