PHANTASY STAR ONLINE 2 :A.P.742 作:Begew Garand
端末の文章の入力をする手を止めて、もう一度打ち込んだ文章を上から確認して見る。....うん、特に問題なさそうだな。
送る側の相手、レピカちゃんでもしっかりと読めるようになっているのを確認してから僕はメールの送信をした。
「レピカちゃんも無事に退避できたみたいだし、確認できて良かったな。」
さっき確認した文章には落ち着いた調子で船に乗れた旨が書かれていてそれを知ることが出来た。
どうやら講義のクラスに居た時に退避令が出たみたいで同じ特別指定教育レベルの友達とそれなりに早く出れたみたいだ。まあ、あんなに小さい子供でもあの指定教育レベルの子は半分アークスみたいなものだからその辺りは大丈夫か。
「....それにしても急にすることが無くなると退屈だな。」
端末をポケットにしまい込んだ後、僕はホログラムの窓からドッグの内壁を眺めていた。特に面白味の無い壁があるだけだけど。
「そうだ、銃はちゃんと持ってるよな。」
ぼうっとしていた状態で突然はっとした僕はそんなことが気になった。持っては来ていたけどここに来るまでの間で1度も使わなかったからね。
「良かった、ちゃんと付いてる。」
腰の銃のパックを確認して見るとロックが外れすに
することも無かった僕はパックから銃を取り出した。軽く整備しておいた方が良さそうだからね。
「えっと、シリンダーはここで外れるんだったよな。」
記憶の通りにシリンダーの下部にあるロックを指で滑らせてから押して開放する。すると普段の定位置から大きくずれる形でそれは外れた。
外れたそれを銃を握っていない方の手の平の上に乗せて良く見てみる。
「特に傷も汚れも....弾もしっかりと入ってるな。」
シリンダーの薬室には弾が昨日の仕事を終わらせた時と同じ数残ったままだ。連発弾が2発と実弾が2発で半々入れてある。
少し前までは弾の入れ方はばらつきがあったんだけど、最近のこの頃は半々で入れるのが基本になってるかな。
「道具が無いし...後は照準のずれくらいか。」
あらかたシリンダーを確認した僕はシリンダーを元の通りに軸に嵌め込んで、それからロックを掛けた。
小さい駆動音が鳴ってロックがより硬く締められる。一応使っているときに不注意でシリンダーを落とさないようにする為に2重ロックになっているんだ。
「ん....最後に調整した時より少しずれてるな。船が揺れた時になったのか?」
シリンダーのロックを確認出来た後に照準を除いてみると少しだけ普段の調整位置からずれていた。多分だけどこの船が最初に動き出したときに喰らった振動でなったみたいだ。
「普段の位置だから、こうか。」
銃の上部に付いた小さい照準を指先で上手い具合に揃える。これをしないと正確に狙えないからね。
それからしばらく調整をして、ようやく普段の位置に合わせられた。2度、3度覗いてみても特に何も無かった。
「うん、これで何かあっても大丈夫そうだな。後はもう少し休んで....?」
銃の簡単な整備を終わらせた僕はそれを元の通りに腰のパックに滑らせて、そのまままた休もうとした時だった。
『良し、繋がったな。.....おい、起きてるか?』
さっきまで外を移していたホログラムの窓の画が切り替わって人物を映し出していた。バーンズさんだ。
「...あ、はい。僕は起きてますよ。」
座っていた床から立ち上がってホログラムの写っている壁に近づきながら話す。少し画質が悪いけどしっかりと向こう側と回線が繋がっているみたいだ。
『ノア君か、少し話す知らせがあるから全員....ミィーンはオリジナルだけ起こして艦橋まで来てくれ。』
話すこと....これからのことについて知れるのかな。
「分かりました。出来次第すぐに行きますね。」
『ああ、急がなくても大丈夫だからな。』
そこで連絡が切れたのかホログラムの画は変わって元の通りの外を映し出していた。
....さて、フィリンさんとミィーンさんを起こさないとな。
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「傷の程度は、どうですか?」
点滴のパックを付け直しながらベッドで横になる彼女に声を掛ける。
「...ありがとう、今は大分安定したわ。」
彼女、エリシアさんは顔だけ私の方に向けて微笑で言葉を返してきてくれた。
表情にも問題が無いから症状が良くなっているみたい。...あんまり信憑性は無いかもだけど。
「それにしてもここの艦のメディカルセンター、病床に空きがあって良かったですよ。」
パックの付け替えが終わった私はベッドの傍に寄った。ここだと部屋の窓の光も遮らなくて良いですから。
「最初は経験....こんなことを経験したことが無くて一時期は病床が圧迫するような事態になっていると思っていましたけど、それなりに傷の程度の悪い怪我人は少なかったみたいです。」
そう、最初に退避をし始めた時には何が何だか分からなくて....それで相当な被害になってるって誤解してたんだっけ。
「今回は敵、ダーカーの出現は完全に艦内の人間が全員退避が出来た後に起き始めたことだからこそ被害が少なかったんでしょうね。」
エリシアさんは窓のある方を少し目を細めながら見てそう話す。
「もっと早くから出現していたら.....酷かったでしょう。」
そう続けると視線を窓から戻した。
「....取りあえず、ここにはしばらく居られることになりましたから早いとこ治しちゃいましょう!」
私がそうして両脇をしめてポーズを取りながら言うとエリシアさんは軽く笑ってくれた。それにしても綺麗な人だなあ....
「そうですね、私も早く治せるように頑張ってみます。ね?リエさん。」
「は、はい.......って、あ!」
「?」
名前を呼ばれて少し浮いているのもつかの間、あることを思い出した。癖で声が出てしまう。
「食事の方、お渡しするの忘れてました....」
そう、
「ちょっとだけほんの少しだけ待っててください!」
慌てて私は通路の方に置いたままにしていたエリシアさんの食事を取りに部屋を出た。折角ちゃんとこなせると思ってたのに....
「リエさん、そんなに急がれなくとも大丈夫ですよ。」
部屋の方からエリシアさんの声が聞こえてくる。
「い、いえ、私が居ないと、手が使えないエリシアさんが、食事出来ないじゃないですか。」
直ぐに食べられるように準備を軽くしてから食事の乗ったトレーを部屋の中に運ぶ。固形じゃないから零れやすいな。
「これが私の仕事ですから。しっかりやらないと...」
一旦持ってきたトレーをベッド横の小さい机に乗せて、それからそのトレーの上から1つ小さいお椀を手に取った。
「...はい!準備が出来ましたから食べられるタイミングで言ってください。」
「....ありがとう、リエさん。」
エリシアさんはそう言うと目をお椀から私の顔の方に、目の方に向けてそう言ってくれた。
あの人の時もそうだったけど、お礼を言われるのも悪くないなあ....
「じゃあ、それから頂こうかしら。」
「え、あ...はい!じゃあ、お口の方を開けてくださいね!」
声を掛けられてはっとした私は既に手に持っていたお椀を中身が零れないようにベッドに近づけていく。
そうして私はお椀から薄い白濁色のスープをひと掬い取った。
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「....何だか凄いことになりましたね。」
一緒にコンベアに乗っているフィリンさんに声を掛けてみる。
「私も整理がついてないわ...」
どうやらフィリンさんも僕と同じ状態みたいだ。
...まあ、今こうして普段乗っているコンベアに乗っている訳なんだけどそれにはある理由があるんだ。
「僕もそうですね....現状復帰が難しい状況であるから待機をしろ、って言うのならまだ分かるんですけど。その間にもこの艦で継続してM.Sとして仕事をするなんてですか。」
そう、船の中のあの部屋で休んでいた時にバーンズさんに呼び出されて艦橋で聞いた話がこの通りだった。
どうやらバーンズさん自身もこんな経験は無いみたいで少し困惑していたのを覚えている。
「それで、その間の活動場所は何処にするのか...なんて聞いたけれど即答だったわね。」
「...船を拠点にして活動をするように、ですか。」
退避用に乗って来た船、この船を主な拠点....つまり僕達の臨時の駐在所として使うように指示が出たんだ。
ともかく今はその準備の為にシークマーカーにあるM.Sの支部にコンベアで向かっている。
「まあ、私達は今のところ指示を淡々と聞くしかないわね。....はあ。」
そう言うとフィリンさんは話すのをやめて元の位置に座り直した。...まだあんまり休めてないみたいだからこの後時間が取れればいいけど。
ちなみにミィーンさんは僕らと違ってM.Sじゃないからこのコンベアには居ない。同じく居ないバーンズさんが船の方で彼女の手続きをしているみたいで僕とミィーンさんとは別行動だ。
それからしばらくの間コンベアに揺られ続けていると特に何も無く目的地で停止した。
『特別区画、M.S支部Aブロックに到着しました。お気をつけて。』
フェルノートの時と同じアナウンスがトンネルの中で鳴る。構造もほぼ同じみたいだ...
「ほら、早いところ用を済ませて船に戻りましょ。」
そう言うとフィリンさんは僕よりも先にコンベアから降りていた。
「同じ場所なのに違う場所って言うのも気持ちが悪いしね、こういうのは早く済ませた方が良いわ。トラブルを避けるのにも効果的よ?」
「....確かにそうかも、しれませんね。」
僕も続けてコンベアから降りてフィリンさんに続く形で支部の入り口ゲートに向かう。
「あれ、何だか人が多くないですか?」
ゲートに着いた時、気が付いたことがそれだった。
「確かにそうだけど....多分、私達と同じで退避したM.Sが集まってるんじゃないかしら。ジャケットを良く見てみて。」
「ジャケット?」
「そこを見ればM.Sかどうか分かるでしょ?貴方と同じで私服のも居るだろうけど。」
フィリンさんに言われた僕はゲート周辺の人達の服を良く見てみた。.....確かにM,Sのジャケットを着ている人の割合が多い気がする。
「と言うことはフェルノートのM.Sは基本的にシークマーカー側で一時的にでも仮所属?になるんですかね。」
服のポケットから識別カードを取り出しながら言う。
「恐らくは、ね。私達だけ特別扱いなんてある筈が無いもの。」
フィリンさんは鼻で笑いながらそう言った。確かに何の功績も無いような僕達には特別扱いなんて無くて当たり前だしな。
「....取りあえず早めに済ませましょうか。」
そうしてフィリンさんと僕は施設の自動ドアを抜けて施設の中へ入って行った。