PHANTASY STAR ONLINE 2 :A.P.742   作:Begew Garand

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E-42 「甲板」

 「.....変わり映えしないもんだな。」

 

 特に目的も無く辺りを見る。....面白味も無い壁だな。

 

 「もう少し気の落ち着くような物でもあれば気分も....ここはそう言う場所じゃなかったか。」

 

 一瞬そんな贅沢な考えが頭を過ったが、それもここがそんな場所ではないという事実が思い浮かんだ時にはとうに搔き消えていた。

 

 ま、こんなところ(ドッグ)を落ち着く空間にしたところで何にもならんだろうしな。ある条件下の場合を除いて、だが。

 

 「...こんなところに長期間も居ないといけない状態じゃ精神的にやられるな、これは。」

 

 そう、本来であれば原状復帰の為に所属の艦に戻るはずだったんだが...今回はそんなちゃちな規則のレベルの話じゃなくなったってことだ。

 

 フェルノートからシークマーカーへ退避する間に間接的にではあるがダーカーと戦いを交えて、何となくだがその時の手ごたえからして何かが違ったんだ、あれは。

 

 あの時に使った対空用機銃。まあ、この旧型に積んであるちょっとしたお古な訳だが....火力の観点で見るなら今のアークスで使っているのと大して変わらない代物だ。機能面では劣っていてもフォトン弾のシステムは変わらないしな。

 

 それを以てして俺とノア君は戦っていたんだが、機銃の照準器越しに見た所では....どうもあれは俺の知っているダーカーとは違うようだ。

 

 「....ふぅ。」

 

 ...だが正直な所俺にはその違和感を根拠立てて()()()()に説明できる自信なんて無い。ただの思い過ごしだった、気の所為だった、見間違いだった、ぼけてた.....その可能性もある訳だしな。

 

 大体、こんなこと分かったところでアークスじゃないM.Sの俺が何処に報告すんだか....

 

 「.....変な気分だな、疲れてるのか?多分そうだ。」

 

 ともかく、あまり良い気持ちではなくなってきた俺は甲板に来る時に一服しようと持ってきた携行食をストローから吸った。

 

 なんでも規定摂取カロリー数を満たしていない退避者を対象に急ぎで支給されて来た代物らしい。グレイドから手渡されたもので詳しくは知らんが....

 

 「...不味いな。」

 

 とてつもなくそれは不味かった。普段の物を数十倍にして煮詰めたような....そんな物だった。

 

 「やっぱりここだったか、ちょっと探したぜ。」

 

 そうしていると後ろの方、格納庫の方から声が飛んで来る。

 

 「何だ、再調整で忙しかったんじゃないのか?」

 

 頭だけを横に回してグレイドの方を向く。そこには少しだけ服を煤で汚した奴が居た。

 

 問題のあったエンジン回りでもやったか、まあそんなところだろうな。

 

 「だってもう時間が....」

 

 そう言うとグレイドは辺りを見渡すが言葉を切らす。

 

 「時間が?」

 

 「....そうだ!端末で時間見てみろ。」

 

 「?」

 

 端末を見るように催促された俺はジャケットに手を入れて、少し探った後にそれを取り出して電源を点けた。

 

 「あー、もう昼なのか。」

 

 「そう言うことだよ。ここだと、天板が見えなくて時間が分かりづらいからな。隣良いか?」

 

 「別に良いぞ。」

 

 グレイドはそれから少し歩いて俺の横へ来るとそのまま座った。

 

 それから、しばらくの間特にお互い喋ることも無くドッグの中を吹き抜ける少し温い風に当たっていた。

 

 「.....そう言えば、また連絡があったんだ。」

 

 少し呆けていると沈黙を破ってグレイドが話し始める。珍しいこともあるもんだ。

 

 「シークマーカーの、上の方からか?」

 

 座る体制を少し変えてからもう一度奴の方に向き直る。

 

 連絡、1回目の時には現在進行形でしている駐在を通達されたわけだが...今度は何だ?

 

 「そうさ、少し読んでみたんだがこういうことみたいでな....」

 

 グレイドは自らが持っている端末を見えやすいように俺の方に向けてくる。

 

 「どれ、少し読むぞ。」

 

 そうして俺は普段仕事でするように上から流すようにして記載のされた文章に目を通していく。こういう慣れは意外と役に立つこともあるんだな。

 

 「.....補充員?」

 

 補充員、文の内容を要約するとそういった旨が伝えられている。

 

 気になった俺は詳しく聞いてみることにした。

 

 「この船に補充員か?」

 

 「ん、そうだってよ。書いてあるだろ?」

 

 「それはそうだが....」

 

 もう一度目線を下げて端末の画面を見てみる。....確かにアークスの戦闘管轄から送られてくるみたいだな。

 

 「来るのは普通のアークスじゃなくて俺と同じ整備系統の奴らしくてな。詳しい情報はまだ来てないが非常の際にこの船を使うかもしれない。だから整備を効率良く行えるように見合った人員を....ということらしい。」

 

 「はあ、なるほどな。」

 

 俺がそう言うとグレイドは端末を戻した。

 

 「....シークマーカーには戦闘可能な船があまり無いからかもしれないな。わざわざこいつを使いたいって言うんだから。」

 

 そう言うと奴はこの船の艦橋の辺りを指で指す。

 

 ...まあ、この辺りの宙域じゃ元々戦闘が少ないからな。元々配備されている数も少ないからだろう。

 

 使えるものは使う。コストを減らすには便利なことだな。

 

 「....正直な話耐久力に関しては何とも言えないが、火力に関しては問題は無いと思うぞ?」

 

 そう言ってみるとやはり奴は疑問の残る声色で返して来た。

 

 「そうか?」

 

 「基本的な構造は変わらんだろうし...実際に使えているのをお前も自分の目で見ただろ?あの時。」

 

 俺が聞くとグレイドはゆっくり頷いた。

 

 「...だけど、確かに構造的には違いが無いかもしれないけど実際に使ってみて、比較してみての違いがあった時は駄目じゃないか。特にバーンズなら武器の弱さは自分で多少補えるだろ?だからだよ。」

 

 そう言うとグレイドはそのまま立ち上がった。そろそろ作業に戻るんだろう。

 

 「じゃあ、今度もう1人の使用者にも聞いてみれば良いんじゃないか?」

 

 「一応視野には入れておくよ。」

 

 グレイドはそこで言葉を切るとこの場から離れる前に持っていた携行食....俺と同じ物を思い切り息を吸い込むようにそれを飲んだ。

 

 「...今更だがそれ、かなり濃いぞ。」

 

 「....そういうのは早く言えよ。」

 

 そう奴は軽くえずきながら言葉を捨て吐くと格納庫の方に向かって行った。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 「...以上の物が消耗品の支給になります。次回以降は通常通りとなるので消耗品の補給が必要な場合には支部に連絡を繋げてください。」

 

 「分かりました。」

 

 僕はハイキャストさんに返事をすると確認をした物品を見慣れた箱の中に入れていく。隣ではフィリンさんも箱詰めしているところだ。

 

 「結構、色々と入ってますね。」

 

 作業を続けながらフィリンさんに話を振ってみる。

 

 「まあ、これぐらいないと補給の頻度が増えて仕方が無いもの。当然と言ったら当然の量よ。」

 

 そうして話を時々交えながらも箱詰めをしていく。弾薬、予備電源、ライト、応急処置パック.....しばらくすると諸々の物は入れ終わっていた。

 

 「では、もう1度最後に確認を行いますが宜しいでしょうか?」

 

 箱詰めが終わると同時にハイキャストさんが声を掛けてくる。恐らく箱詰めが終わったのが分かったんだろう。

 

 僕は返事をして頷いた。

 

 「再度確認を行いますが第184番艦フェルノートM.SのB第2部隊はあくまでも補助として第182番艦シークマーカーM.Sに仮所属となります。その為、応援の必要があれば連絡のあった現場へ向かってください。」

 

 そう言うと今まで前に出していたホログラムタイプの端末を消して元の体勢に戻った。

 

 「それでは、また....」

 

 「あ、少し待ってくれる?」

 

 「何でしょう?」

 

 こうして、用事が済んだと思って踵を返して支部から出ようとするとフィリンさんが口を開いた。何だろう?

 

 「彼、実のところ制服を置いたままで退避して来ちゃったのよ。それで代わりのが欲しいのだけれど予備の制服はある?」

 

 フィリンさんはそう言うと僕の方を見ながらハイキャストさんに話していた。

 

 ...確かに着の身着のままで急に退避することになった所為で僕が着ているのはまだ一般員用の服だった。

 

 ここだと少しは僕と同じで一般員の服を着ている人が居るから良いけど、それでも制服を着ている人の方が多いから...何か恥ずかしいな。

 

 「制服の支給ですね。消耗品ですから確認をさせて頂ければ直ぐに用意が出来ます。少しお待ちください。」

 

 「分かったわ。」

 

 するとハイキャストさんはそう言い残すと制服を取りに行く為に奥の通路の方に歩いて行く。

 

 最初のうちは後ろ姿がまだ見えていたけど、人が多いのもあってすぐに見失ってしまうほどだった。

 

 「凄いな...この人混みを少し掻き分けるだけで進めるのか。」

 

 そうしてそれから少しの間待っていると最初に進んで行った道を戻って来るような形で戻って来た。勿論、手には折り畳まれた制服を持って。

 

 「お待たせしました。確認が出来ましたのでデータ上にあるノアさんの適用サイズをお持ちしました。」

 

 そう言うと手に持っていた制服を僕の方に向けて差し出して来る。

 

 「ただ、データとの若干の違いを考慮して実際に1度着られることを推奨します。どうしますか?」

 

 サイズの確認か。....まあ、データ通りなら多分大丈夫だろうな。

 

 取りあえず僕は差し出されたそれを受け取った。

 

 「いや、その、このサイズで大丈夫です。多分あってるでしょうから。」

 

 「そうですか?....分かりました。」

 

 手に取ったそれを軽く見てみる。確かに少し綺麗なだけでいつも着ているのと変わらない物だった。

 

 「では、駐在所の方へ戻り準備の方を進めてください。連絡はこれで以上です。お疲れ様でした。」

 

 「分かりました。」

 

 そう言うと今度こそは別の要件の為になのか別の場所へ歩いて行って。そのうちに見えなくなった。

 

 「じゃ、戻りましょ。要件が無いなら無理して居る場所じゃないわ。」

 

 「...そうですね、バーンズさんも待っているでしょうし。早く行きましょうか。」

 

 そうして僕とフィリンさんはもう1度通って来た入り口を抜けて施設から出た。

 

 

 

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