PHANTASY STAR ONLINE 2 :A.P.742 作:Begew Garand
「....ふう、こんなところかな?」
今しがた話しかけた男がしっかりと角を曲がっていくのを確認してから被っていたフードを外す。
「全く暑苦しくて酷いデザインの服だ、二度と着たくないものだね。」
元居た場所から少し路地に入ったところで今まで着ていた一般員用の服を全て脱ぎ捨てて、それから普段の制服に戻す。この辺りなら服が一着落ちていようが問題ないからね....
そうして当初の目的を果たすことが出来た僕は来た道を戻ってコンベアに向かった。
「...それにしても簡単だったな。」
することを終えて、まず最初に口から出た言葉はそれだった。...簡単だった。
今の計画の段階だとまず初めに行った184番艦でのテスト結果、それに更に肉付けをするための次のテストに向けて仕込みを僕はしているわけだ。こうして自分自身も行動を起こしながらね。
まあ、実のところ試作品は既に出来が整っているから後は
「組織としてある程度まで整備されていることは事前の情報で分かっているから...そうだ、彼の言葉を当てにしてみるか。」
僕はそう思い立つと歩きながら端末を空に表示させて入力を進めていく。
一応
「あの聞き方なら恐らくこう動くだろうか....」
情報を伝えた時に良く聞かれた日付、時刻を参考に予測できる行動を記し隣の方でこちら側の動きを決めていく。
まだ組織としてはキャストのC.R.S.Fの連中と比べればお遊びみたいなものだが集団であることには変わりはない。だとするのなら数人規模で話の整合性が取れればそれなりの信憑性が出るだろうしね。
「...今のところはこんなものかな。後は現地調整か。」
そうして大体のデータを作り上げると僕はそれを機械室の方の人間に送る。数学的に比較的高い確率の高い候補を選んだつもりだけど....それなら後2日程度で事が動くね。
「ん、乗り込むか。」
そうこうしていると既にコンベアが着いていることに気が付く。思考を巡らせると周りが見えないものだね。
乗り込んだ僕は普段と同じようにシートに座りベルトを締める。
「....この船は果たしてどこまで持つかな?」
動き始めたコンベアから艦の市街地を横目で見ながらそう呟く。
一応、最初にテストを行った184番艦とほぼ同じ状況下でそれを行いたかったから
今回ので結果として得られるのを期待したいのは安定力と言ったところで前回のテストで分かった問題点だった安定力の改善か。
確かに、目標としていた拡散力があの試作品にはあったわけだけど安定力が無い影響で発生するダーカーにばらつきが出てしまった。これは誤差として最初は処理をしていたけれど、こうも結果が出ると無視も出来ないしね.....この部分は早急に解消が必要だ。
「これで上手く出ればほとんど完成品。駄目なら鉄屑。賭けに近い感覚だねこれは。」
状況をみてそんなことを呟いてみる。まあ、賭けになったとしても勝率は8割だと思うけどね。
「...ともかく、早く進めないとね。」
その時に今進めている計画と同時に進行させている計画のタブを端末に開いて確認する。
ちなみにもう一方の計画にはこう題を設けた。.....『
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「あ、おはようございます。」
朝のいつもの時間になって起きた後、着替えてから部屋を出ると角を少し曲がったところでバーンズさんに会った。
僕は少し枯れた声でバーンズさんに挨拶を返す。
「奇遇だなノア君。おはよう。」
どうやら僕と同じ時間に起きたみたいでバーンズさんも少し声が枯れていた。どうしても寝起きは空調で喉がやられるんだよね....
「そう言えば新しい服の支給、貰えたんだな。」
「この間の時にですね。元々持っていたのは置き去りにしてきましたから交渉してみたんですよ。」
支給品を受け取りに行った時のことが頭を過る。あの時に貰えてよかったな。
「流石に仕事をする時に一般員の服装じゃ信用して貰えないからな、良かったよ。」
そう言うと体を伸ばしながら待機室の方に進んで行った。僕も追いかけるようにしてバーンズさんに付いて行く。
....それにしても部屋の設備が悪いとかではないけど、埃っぽいのはどうにもならなかったな。かなりやったつもりだったけど眠りにつけるまでの間に何度もむせたし。
昨日は仮の駐在所の設置と割り当てられた部屋の掃除で疲れ切っていたけど、その所為で寝れなかったしね。
「あ、おはようです!」
「ん?どうしたんだルイス。」
そうして寝起きで疲れている体を動かして待機室の椅子に何とか座るとそこにはルイスが来ていた。
おかしいな、今日は朝まで管理者の人の手伝いに回るって聞いてたんだけど。
「グレイドさんにこれを持って行けって、それで持って来たんです。」
「?」
そう説明すると空いていた机から箱を手に取って、そこから1つパックを渡して来た。
「なんだ、朝食用の携行食を持って来てくれたのか。ありがとう。」
僕はそうお礼を述べるとルイスからそのパックを貰った。....良かった、昨日の酷いのとは違うみたいだ。
「仕事ですから気にしないでくださいよ。後のはここに置いておきますから。」
「ん、じゃあまた数時間後に。」
そう僕が言うと軽く挨拶をしてルイスは昇降機に乗って行った。
「お、朝の分か。」
ルイスが行ったのを見届けているとバーンズさんが携行食に気が付いたのか声を掛けて来た。僕はすかさず箱からパックを1つ取ってそれを渡す。
「今さっきですけどルイスが持って来てくれたんです。ここの空き机に置いておきますね。」
「分かった。フィリンが来たら渡してやってくれよ。」
「勿論ですよ。」
そうして僕はパックにストローを刺して中身を飲んだ。やっぱり普通のが一番良いね。
...さて、これから普段通り待機だな。
「なんだ、先に起きてたのね。」
「...あ、フィリンさんおはようございます。」
と、思っていると次にはフィリンさんが起きて来ていた。フィリンさんの方は特に眠い様子は無くて平時と変わらない様子で疲れを見た目から感じなかった。
「....何だか酷そうね。眠れなかったの?」
「埃と空調が酷くてですね。ずっとむせてましたよ。」
そう僕が言うとフィリンさんは気まずい様な微妙な表情を浮かべる。そんな顔をされたって手は尽くしたんだからどうしようもないじゃないか。
「もう少し手入れが必要みたいね、でないと今日も寝れなくなるわよ?」
「分かってはいますけどね....中々綺麗にならなくて。」
「...じゃあ、昼辺りに手が空いたら付き合ってあげるから。それなら良いでしょ?」
腰に片手を当てながら手をひらひらとさせてフィリンさんは話を続ける。追加で掃除か....
「良いんですか?フィリンさんの割り当てじゃないのに。」
「急を要する事態、なんだから当然でしょ?寝不足でミスを起こされる身になって欲しいわね。」
「は、はあ....」
「ともかく昼辺りになったら声を掛けるから、じゃあね。」
フィリンさんはそう言うと自分の机の方に体を向けて進み始めた。...けれど僕はそこで呼び止めた。
「...あ、そうだ。フィリンさん!」
「何?」
「これ、渡し忘れてましたよ。どうぞ。」
そう、フィリンさんに携行食を渡し忘れていたことに気が付いたんだ。
それで僕は1つパックを取ると何時ものようにそれを手渡す。
「少し前にルイスが運んできてくれたんですよ、味の方も昨日よりは大丈夫ですし。」
「....そう、受け取っておくわ。」
そう言うとフィリンさんは差し出していたパックを受け取って、それから自分に割り当てられた机の椅子に向かうとそれに座った。
...まあ、今のところ特にする作業も無いから今までと同じで待機するだけなんだけどね。
取りあえずそれから数時間ほど僕は待機を続けた。