PHANTASY STAR ONLINE 2 :A.P.742   作:Begew Garand

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E-51 「F-4」

 「ノア?どうしたの?」

 

 「あ、いやその、ごみが服から取れなくて....」

 

 「はあ...何処に?」

 

 「すみません、ここなんですけど....」

 

 僕はそう言いながら背中をフィリンさんに向けて手を後ろに回してから指でその場所を指す。後少しで取れそうなのに肩が硬いからな....

 

 「これ?今取ったわよ。」

 

 フィリンさんがそう言うと何だかさっきまでの不快感が嘘のように消えた。大したものじゃないはずなんだけど...どうしてこんなに?

 

 不思議に思った僕は直ぐに元の通りの位置に向き直る。

 

 「ああ、これだったんですね。ありがとうございます。」

 

 「別に良いのよ。それよりもほら、早く行くわよ。」

 

 そう手をコンベアの方に指しながら言うとフィリンさんはゆっくりとそれに向かって歩いて行く。僕もそれに遅れないように取って貰ったごみ、もとい埃の塊を近くのごみ箱に放ってから後を追った。

 

 「あ、今日はもう停まってるのか。珍しいこともあるんだな。」

 

 最寄りの中継地点に辿り着くと既にコンベアが着いていたようでフィリンさんは既に乗り込んでいた。いつもは待つばかりで直ぐに乗れるなんて無かったからね。

 

 「ほら、もう動くから座りなさい。」

 

 ともかく、呼ばれた僕は近くの方のシートに腰を掛けて急いで乗り込んだ。まもなくすると何事も無くコンベアが動き始める。

 

 ...何だかフェルノートよりも設備の維持管理が行き届いているようにも感じるな。シークマーカーのコンベアは異音もせずに速度にもばらつきが無い。同型に近い艦同士でもここまで変わるもんなんだな。

 

 「...ふう。とにかく、確認しておこう。」

 

 そうして目的地、Fの4番格納庫方面に到着するまでの間時間の出来た僕は今日の仕事で必要になるデータを確認する為に端末をポケットから取り出した。

 

 本当なら朝の支度が終わった段階で確認しようと思っていたんだけど思っていたよりも時間が掛かって.....まあ、服に付いた埃が何よりも証拠なんだけども軽く掃除をしようとしたらこの有様だよ。唯一の利点として今日はゆっくりとしっかりと寝られるのが救いなのかな。

 

 ...取り敢えず過ぎてしまったことは別に良いんだ。今は仕事が最優先だし、こっちの方に集中しないとね。

 

 「.....」

 

 とにかく気持ちを切り替えることがそれなりに出来た僕は朝方にバーンズさんから送られて来たデータファイルを端末の画面上で展開する。5秒程そのままで待っているとそれが終わったのか別のウィンドウが画面上に表示された。

 

 「今日も昨日とあんまり変わらない....いや、少し違うな。」

 

 上から順にそのウィンドウに表示されたデータを流すように見ていくと最初の内は無意識で見ていた所為で気が付かなかったけれど微妙にデータの数値が変わっていることに気が付いた。

 

 多分だけど何回かに分けて運び出す兼ね合いなのか昨日の時点で運び出す積み荷の量が少なかった格納庫の方が僕らの担当の場所よりも多くなっているしね、そういうことなんだと思う。

 

 「フィリンさん。」

 

 「ん...どうかした?」

 

 「今日はあんまり忙しくないみたいですね、データ見ましたけど。」

 

 「確かに、今日はそうかもしれないわね。.....だけど、それで気を抜かないようにしてよ?」

 

 「大丈夫ですよ、少しは見通しが付いている方が良いと思って。それだけですよ。」

 

 「なら良いけど....もうすぐ着くわよ。」

 

 そう聞いた僕はコンベアから目的地の方を軽く見てみると確かに少し行った先に目的地があるのが確認できた。それを知った僕は端末を急いで制服のポケットの方にしまい込む。

 

 ...それにしても、後少しデータ位見られると思っていたけど意外とドッグから格納庫までは遠くないみたいだな。下りた後にでも続きを見ておかないと、まだ6割読めたかどうかなんだから。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 「...よし、着いたぞ。」

 

 変な様に見られてはいないかどうか目だけを軽く動かして辺りを観察する。....問題なさそうだな。

 

 そうして安全を確認できた俺は首にある通信機の電源を素早く入れた。

 

 『おい、こっちの方は初期予定地点に着いたぞ。近くので他の奴は状況、どうだ。』

 

 そう回線に通して言い放つと6~7秒程度しばらくの沈黙があった後にノイズが鳴るとそれに添うように言葉が帰って来る。

 

 『F側4番付近、こちらも到着だ。今から合流の方をするから指示通りに待機。』

 

 回線越しにその言葉を聞いた俺はその場から動き始める。ここに来る前に設定した合流地点に向かう為だ。

 

 ゆっくりと確実に格納庫の方に近づいて行く。今回は前回と違って正面からは行かないからな。脇の方に少し逸れた道の外れ、目立たない位置に向かって進む。

 

 既に明るい時間にはなっているが場所が場所なだけに人通りはかなり少ない。この辺りには居住区じゃないのも要因なのか格納庫に用のある人間しか居ないように見える。M.Sもか。

 

 「この姿の偽装なら前回と変わらず問題はか.....ん。」

 

 合流地点の方に到着してから1分程そこで待っていると自分と同じくらいの男が近づいてくる気配がした。恐らく他の場所の奴だ。

 

 しばらくして気配だけでなく近づいてくると合図の右腕の手首を叩く動作が自分の手に伝わって来る。それが分かった俺はそれに対して同じように返事を返した。

 

 「.....」

 

 そのまま振り向いてもう一人の方の男と合流した俺は合流地点の場所にある格納庫の非常用ハッチの方に近づいて行く。するとそこには普段は要る筈の警備の人間が居なかった。

 

 ....確かに、あいつが言っていたように普段は警備が付いているはずのこの場所に警備が居なく扉があるだけだった。

 

 「おい、俺はこっちの方を。そっちの方を頼む。」

 

 そう言って俺はハッチを開けるために扉の右側に取り付く。同時にもう一人の方の男も俺と同じような動き方で扉の左側に取り付いた。

 

 「行くぞ...」

 

 手でハッチを少し開きながらそう呟く。そうして視線が届くぎりぎりにまで開いたのを確認してから格納庫の中の方を目視で確認する。

 

 「....」

 

 通路の突き当りの所為なのかここにも人は居ないようで視線の先には何も入らなかった。あるのは薄暗い通路だけで使うことも出来ないような代物が転がっている程度だ。

 

 「よし、入るぞ。」

 

 もう1人の方の男にそう声を掛けると俺に続くような形でハッチを通っていく。最後の最後まで周囲を確認して、それを終えてからハッチを元の通りに閉めた。

 

 ....さて、始めるか。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 「....ん、問題ないわ。通って。」

 

 そう言うとフィリンさんは識別カードをカードリーダーから取り出して作業員の人に返却をする。僕の方はそれに合わせてゲートのバーを手で引き上げた。

 

 ほどなくして作業員の人は忙しそうにして中の方に入って行った。

 

 「フィリンさん、今日はもうあの人で最後みたいですね。」

 

 ゲートバーを元の位置に戻しながらフィリンさんに声を掛けてみる。確か、端末で最後に確認した時には時間帯も合わせてそうだったような....

 

 「ええ、そうね。多分あの人で最後よ。後は出る時にもう一度手続きすれば良いだけよ。」

 

 そう言うとフィリンさんは近くにある簡易椅子に腰を下ろした。

 

 「今日は荷物もほとんどないですから特別何かなければ大丈夫そうですね。」

 

 「そういうこともあるのよ。要は有人の監視が必要なだけだから。」

 

 するとフィリンさんは手を上に上げて体を伸ばしているようだった。それなりに疲れているんだろうな。

 

 「よし、僕も椅子に.....?」

 

 そうして自分もフィリンさんと同じようにして椅子に座ろうとした時だった。格納庫の方の通路から何か物音が聞こえる。

 

 「あれ....作業員の人かな。それにしてもあんな暗いところで何をしてるんだ?」

 

 気になった僕は口よりも先に体の方が動いていた。ポールの下を潜り抜けてから音の聞こえる通路の方に進んでいく。

 

 確かに通路にも色々と置いてあるみたいだけど....どれも今回ので使いそうな気がしないな。バーンズさんが言っていたように対空兵器の関連の補給をする為にしているみたいだし。

 

 「あの、何かありましたか?」

 

 気になった僕は思い切って作業員?の人に声を掛けてみることにした。聞いてみるのが一番早いしね。

 

 そうして少し間を置くとその作業員の人が話し始めた。

 

 「...いや、特に何もありませんよ。ここでの作業があっただけですから。」

 

 「は、はあ....でも、ここでの作業は特に決まっていないみたいですよ?」

 

 そう僕が言うとその人は一歩前に出て話を続けた。少し話すのが遠かったのかな?

 

 「いや、それがですね急にここの仕事が増えちゃって....追記しておいてもらえます?」

 

 「追記?なら、一応メモしてはおきますけど....」

 

 そうして僕は端末をポケットから取り出そうとして視線を下の方に向けた。その時だった。

 

 突然腹部の方に痛みを感じて視界が更に暗転する。

 

 「......、....?」

 

 「......。」

 

 目の前が何も見えない状況でも何かを話す声が聞こえる。でも、僕が話していたのは1人だけだったような....

 

 そんなことを考えている内に僕は意識が保てなくなってきて、そのまま本当にその場で気絶してしまった。

 

 

 

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