PHANTASY STAR ONLINE 2 :A.P.742   作:Begew Garand

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E-55 「機動」

 「...良し、通って良いぞ。」

 

 カードリーダーに映った小さい画面表示を見て判断をすると俺はカードを目前の男にそのまま返却した。

 

 男の方もそれを受け取ると去り際に少し会釈する程度で特に会話することも無くゲートを過ぎていった。...まあ、俺の知り合いで艦の格納庫の担当になっている奴で顔の知っているのなんて居ないからな。仕方が無いと言えば当然だが。

 

 「なあ、今の奴で最後だったんじゃないか?」

 

 そうして一時的にすることが無くなって椅子に腰を掛けようとすると臨時で来た相方の男が声を掛けて来た。俺は少し遅れて顔だけを向けるような形で反応を返す。

 

 ノア君と比べると少し歳を重ねたような奴だが....グレイドと考えればまだ青臭いな。それにしてもグレイドの奴はあのルイスとは上手くやれてるんだろうか。何だかこの前は船の格納庫から発砲音がしたような気がしたんだが、気のせいだよな?

 

 「そうだな。今まで通った人数と今日分の予定通行人数が良いように合うはずだからな....軽く休んでも良いぞ?休憩時間は取れるだけとっておいた方が良いからな。いつ何が起こるか分かったもんじゃない。」

 

 「怖いこと言うな....まあ、休ませてもらうよ。」

 

 そう言うと俺の座っている物と同じ簡易椅子に深く腰を掛けて、それからおもむろにジャケットから端末を取り出すとそれを弄り始めた。

 

 ...恐らくだがあっちの方もこちらと同じに人数が余ったが故の編成だからな。休んでいる間くらいは仲間と連絡の取り合いか。機能も同じようにしていたしな。

 

 「....俺も少し連絡でも入れて状況の確認でもしておこうか。」

 

 そう思った俺は彼と同じくにジャケットのポケットに手を入れると中にある端末に指を....

 

 「...?」

 

 端末から不意に呼び出し音が掛かる。....突然のことで最初のうちは動きが固まっていたが、とにかく出ないといけないという普段の習慣の動きで俺は端末を取り出した。

 

 相手は....フィリンか。

 

 「...あー、悪い。少し話して来るからここ、任せられるか?」

 

 「ん、別に良いけどよ。何かあったのか?」

 

 「いや、うちの仲間の方から急に回線がな....悪いな、直ぐに戻る。」

 

 「?」

 

 そうして軽く事情を説明してから俺は端末を手に持ちながらゲートから少し離れた場所に歩いて行く。

 

 今の所何が何なのか見当もつかないが、あのフィリンのことだ。きっと何かしらあったことには変わりなさそうなんだがな。とにかく事情を聞かないとことが始まらない....俺は端末を操作して回線を接続した。

 

 『あー.....フィリンか?』

 

 回線を接続したての時に発生するノイズが鳴り終わって安定し始めたところで相手の名前を呼ぶ。

 

 そうして相手の返答を端末越しに待っていると軽いノイズに交じって荒めの息遣いが聞こえ始めた。....おかしいな。フィリンはキャストで息が上がるなんてことは無い筈なんだが。

 

 『......』

 

 『....まあ、なんだ。急に回線を回してきてどうしたんだ?』

 

 そのように質問をして、それから少し間を開けて言葉を待っているとどうやら落ち着けたのかまともな返事が返って来た。...まあ、俺もこの後直ぐにでも言葉を失うことになるんだが。

 

 『....バーンズ?聞こえてる?』

 

 『ああ、さっきから聞いてるさ。それでどうした?』

 

 『かなり不味いことになったの。さっきノアの方が軽く格納庫の侵入者にやられたのだけれど....まあこの事は詳しく後で話すわ。...とにかく、今起きてること、伝えたいことを端的に言うわね。』

 

 『...それは何だ?』

 

 『その件の侵入者に格納庫内のAISを奪われたわ。今確認したのは1機だけだけれど、他が分からないわ。とにかく応援を急....』

 

 そこで急に大きなノイズが走る。最後の部分が上手く聞き取れなかった俺はもう一度フィリンに聞き返してみたが....

 

 『フィリン?最後の部分が上手く聞こえなかったんだが.....フィリン?』

 

 『.....』

 

 その時にはまだラグの所為で遅延しているのかと思って待っていた。が、返答が戻って来ることは無く端末の画面にも回線を切断したことを表すシステムメッセージが表示される。

 

 ....これは、不味いな。

 

 まだ全体は掴みきれてはいないが事態の大きさを微弱にも感じ取った俺は急いでゲートにまで戻った。走り込むようにしてゲート前に辿り着いた俺を見ると驚いたようにして男が口を開く。

 

 「ど、どうしたんだ?何かあったのか?」

 

 「大変なことになった。格納庫内部でAISが....とにかく君は急いで支部の方に連絡を。俺は仲間の方を見てくる。」

 

 それに対して俺は焦った口調で一言だけ伝えるとノアとフィリンの担当になっている付近に向かう為にゲートから格納庫内へ入った。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 「......」

 

 ふと気が付いて辺りを見回して見ると一面に粉塵が舞っていて上手く状況を把握できない。

 

 「う.....さっきまで、何を...」

 

 色々と短時間で出来事が起き過ぎた所為で混乱している頭を一度整理し直してみる。確か、ノアを発見してから一緒に行動をして、それでAISの格納庫で侵入者に遭遇して、それから.....

 

 「...ノア!ノアは何処に行ったの!?」

 

 ようやく現状を理解したところで今の状況のおかしいところに気が付く。そう、ここまでで一緒に居たノアが居ない。

 

 「駄目...何も見えないわ。」

 

 視界が不明瞭なお陰で今自分の居る位置すらも分からない。とにかくそれを把握する為に一番近くの壁を目指して覚束ない足取りで粉塵によって出来た霧の中を進んでいく。

 

 ....どうやら足の関節のパーツをやったみたいね。何で吹き飛んだのかが分からないから破損個所の特定は難しいだろうけど。こういう時に痛いところで怪我の個所が分かる生体は何だか羨ましいわね。

 

 「ん...ここで壁ね。位置情報と合わせれば。」

 

 そうして歩いていると壁に突き当たる。そこで私は一の称号の為に端末を取り出して通路の外壁の位置番号を頼りに現在地を探し当てる。ここは...格納庫から近くではあるけれどそれなりに飛ばされてるわね。

 

 最初にノアが指で機体を指した時には確か武器は何も持っていなかったはずだけど、だとしたら一体何を使って....

 

 「!」

 

 思考を張り巡らせていた私はそこで足を止める。ある音が聞こえたからだ。

 

 私は聞き間違えでないかを確認する為に少しだけ耳のマイクの収音率と音量を高めて、それから続けて聞く。

 

 「......」

 

 シリンダーが収縮する音、床と金属がわずかに擦れて響くノイズとも取れるような音が聞こえる。これに値するような大型の機械....考えられるのならAISしかない。

 

 「こっちは駄目ね。武器も無いんだから。」

 

 それなりに現状を把握出来た私はそこでマイクを元に戻すと例の音の発生源からは遠ざかるような形で出口を目指しながらノアを探すことにした。

 

 端末で回線を接続して探す....というのはしたかったところだけれど今は音を出すのが不都合だから無理だしね。こうなったら十分に対抗策を用意した上でやらないとこっちまでやられるわ。銃も何処かに飛ばされたものね。

 

 「......?」

 

 それからしばらくの間壁伝いに進み続けていると耳の方で通知音が小さく鳴った。

 

 ノアかもしれないと思ってとっさに端末を取り出して相手を確認する。....バーンズからだった。

 

 「...まあ、こっちの方が今は良いのかしらね。」

 

 ともかくひとつ前の通信が強制終了したのもあって混乱をさせないようにする為にも私は直ぐに回線を接続させた。瞬時に短くノイズが走る。

 

 『....フィリンか?』

 

 『大丈夫、聞こえてるわ。声が小さいだろうけど気にしないで。』

 

 『分かった。ちなみにノアの方はどうなんだ?』

 

 『...ごめんなさい。さっきの攻撃ではぐれたわ。探そうとはしたけれど近くにAISが。』

 

 『いや良いんだ。無駄に被害を増やすよりかはその方が良い。とにかく、応援の方は直に来る。合流できるか?』

 

 『足のパーツが...いえ、行けるわ。場所をお願い。』

 

 そう言うと直ぐに私の端末の方にバーンズの位置が送られてくる。...少し距離があるわね、この状態だと。

 

 『俺の方からも早く進めるよう努力はする。言うまでもないと思うが見つからないように動くように。じゃあ後でな。』

 

 『そっちの方も気を付けて。特に音にはね。』

 

 『分かった。』

 

 そうしてその言葉が聞こえてから数秒後。回線はしっかりと切断された。

 

 ....さて、私も上手く動かないと。壁に加える力を強めながらそう念じた。

 

 

 

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