PHANTASY STAR ONLINE 2 :A.P.742   作:Begew Garand

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E-58 「合流」

 「この辺りにまで来れば発信源の近くのはずなんだが...」

 

 通路を走る足を一旦止めてジャケットから端末を取り出す。これだけ走っても数分掛かるとは、参ったな。

 

 少しだけ荒れる息を整えながらも冷静に操作をして画面に現在地を出してみる。...良かった、道は幸い間違ってない。

 

 「そうだとするともうすぐ近くにか、受信強度を。」

 

 そこで俺はフィリン側の端末からの周波数の受信度を引き上げた。画面上の反応がより細かい物になる。これぐらいの距離ならそれほど誤差も無いだろう。

 

 「道は、こっちの方か。」

 

 位置を確認しながら通路をなるべく音を立てないようにして進んでいく。フィリンに近づくということは例のAISにも近づいていることになるからな。戦闘が不利な状況で対象と遭遇するのは避けたい。

 

 そうしてしばらく歩いた後にある角を曲がろうとした時、左側から聞き慣れた声で名前を呼ばれた。

 

 「バーンズ....?」

 

 突然のことで驚いた俺は神経反射の勢いで声のした方に首を向ける。

 

 そこには脚部を軽くやられたような状態で壁に寄りかかっているフィリンが居た。

 

 「大丈夫なのか?回線越しで上手く分からなかったが。」

 

 俺はフィリンの傍にすかさず駆け寄ると自分の方に腕を預けられるような形で抱えた。いつまでも壁に寄りかかったままだとパーツへの負担が大きいだろうからな。

 

 ともかく、開けた場所に居続けるのは不味いと思ってフィリンを支えながらも狭い通路側に避けるように進む。

 

 「大きくやられている訳じゃないから道具さえあれば少しは融通が利くところかしらね。この部分、関節だから壊れやすいのよ。」

 

 「それは良く分かってるが....」

 

 ...そうやって次の言葉を出そうとした時だった。聞き慣れた金属音が離れた位置から聞こえてきたのは。

 

 「ちょっと待て。」

 

 普段よりも少し小さい声でフィリンに向かって歩くのをやめるように伝えると今度は影に入り込める形で通路の壁に張り付く。

 

 「何?どうしたの。」

 

 「良いからこっちだ。」

 

 どういうことなのか聞こうとするフィリンを手で静止しながら動かないようにする。この音は....あいつに違いない。嫌になるほど聞いたんだからな。

 

 そのままの状態をとにかく維持し続けて、数分程度待ち続けている最中にもその音は大きさを強めていく。やっぱり近くに居たのか。

 

 「...なるほどね。気が紛れて聞こえて無かったわ。」

 

 「後少し遅かったら、酷かっただろうな。」

 

 「そうね。」

 

 それから適当に話を切り上げていると直ぐ横にまで来たのか金属音がより鮮明になって聞こえてくる。試しに首だけ横に向けて通って来た道の先、最初に居た通路の方を見てみるとタイミングが重なったのかそいつが通って行くところを見ることが出来た。

 

 「.....」

 

 あの形.....代は変わっても基礎的な部分は変わっていないか。足回りはそれなりに改修してあるみたいだが、やっぱり陸上用の足を作るのはいつになっても苦手みたいだな。

 

 もう少し詳しく見たかったが、今の一瞬じゃこれが精一杯か。

 

 「....行ったみたいだな。」

 

 音が遠ざかって行ったのを確認すると口から言葉が漏れる。フィリンの方にももう問題が無いことを伝えようとして声を掛けると少しだけ様子がおかしいことに気が付いた。何だ?

 

 「どうしたんだ?様子がおかしいが。」

 

 「....さっきの機体(AIS)、違ったの。」

 

 「違ったって何が。」

 

 「機体のナンバーが違ったのよ....私が遭遇して攻撃を受けた物とね。確認した番号より若かったはずよ。」

 

 機体のナンバーが違う?あの時に報告をした機体とは違うのか?だとするなら....

 

 「....複数人でやっているのか?」

 

 「そう考えた方が良いわ。最初の時には単独だと思っていたのに.....とにかく支部の方にもう一度連絡を回してみて。このままじゃ事態が大きくなる。」

 

 「分かった、少しそこに腰を下ろしておいてくれ。回線を回してみる。」

 

 そこで俺は自分から支部の方へ再度連絡をする為に一度しまった端末を取り出し直した。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 「凄いな....窓越しにでも近くで見ると迫力が違うや。」

 

 僕は窓越しにライトをその機会に当てて少しの間観察していた。....確かにこんなのに攻撃なんてされたら鉄板でも吹き飛びそうだな。

 

 でも、よく見てみると吹き飛ばされる前に見たのと何処か違うような気がするな。何だかまだ作りかけみたいで完成しているようにも見えないし....一体何なんだろ。

 

 「同じ物だとしてもさっきの場所じゃ無くて閉鎖されてるようなところにわざわざ置いてあるってことは何かが違うんだろうけど、ここからじゃいまいちだな。」

 

 どうにかして向こう側の部屋に入れないかと思って首を回すと部屋全体を1周見直してみる。

 

 けれど、あるのはコンソール系統の機械と椅子ばかりでどうにも向こう側には通じていないようだった。もしかしたらこの部屋に入って来る前に居た通路のドアのどれからか入れるのかもしれないけど、電源が入ってないんじゃ仕方が無いよね....

 

 「仕方が無い、引き返そうか.....」

 

 そうして僕はその部屋から元居た通路に戻ろうとして...踵を返した時だった。

 

 「...!?」

 

 さっきまでは静かで何事も無かった部屋全体が大きく縦に揺れ始める。突然のことで反応が遅れた僕はそのまま部屋に胴体から倒れ込んでしまった。一体何だって言うんだ?

 

 どうにかして最初の振動が過ぎたと思えば断続的に細かい振動が来る。室内の天井からは埃も含めて小さいごみがまばらに落ちてくる状態で今にも天井の板が外れそうな勢いだった。

 

 「困ったな、こういうことになるのならヘルメットの1つでも着けて来たのに、これじゃあ頭に大きな物でも落ちてきたら.....?」

 

 そうやって今更考えても仕方の無いことを床に伏せながら考えていると部屋の中でそれなりに重いものが落ちる音が聞こえた。

 

 この音だと、天井とかが崩れた音じゃなくて....どちらかと言えば棚から物が落ちたみたいな?気になった僕は音のした方を探し当てて遠くの方から何が落ちたのかを見てみた。

 

 「何だろ、丸い見た目だけど。」

 

 ここまで来たら手に取って確認しようと考えて振動のタイミングを見計らうと腰を低くした状態でその物のある場所に小走りで進んで行った。そうして丁度進み終わったと思ったところで次の振動が来る。こういうのは思い切りが大事だな。

 

 とにかく、無事に移動が出来た僕はその床に落ちた物にライトを向けながら手に取って確認してみることにした。

 

 「んー....ヘルメット?なのかな。」

 

 片手で上手いように回しながら手に取った物を観察して見ると少し特殊な形をしたヘルメットのような物だというのが分かった。...丁度良いから間に合わせで被っておくかな。

 

 そこまで程度が酷くないことを確認してから付いた埃を袖で拭うとそのままそのヘルメットを頭から被った。

 

 「それにしても変なヘルメットだな.....別に良いけど。」

 

 振動が続く中でヘルメットの緒を調整しながら言葉が漏れる。それから今の振動が止まったらこの部屋から出ようと、そう動こうとした時その振動が段々と強まっているような気がした。

 

 今度は何だ?そう考えている間に足元から突き上げるような強い振動が部屋を襲った。

 

 

 

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