PHANTASY STAR ONLINE 2 :A.P.742   作:Begew Garand

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E-59 「作戦」

 「事を大きくしたくなかったが....こうなったら最後までやり切るしか無いよな。」

 

 さっきまでの一瞬の出来事を思い起こしてみると今しがた起こっている失敗をしないで済むような行動がいくつか浮かんでは来る。が、そんなことはその時が過ぎた後で考えたところで無駄にしかならない。

 

 今の俺に出来ることは過ぎた反省よりも今出来る最善の行動をすることだ。...早いところ合流をして立て直さないとな。状況が変わり過ぎてる。

 

 そうして考えがとにかく1つに絞れた俺はAISを突き当りの見通しの悪い場所で一時停止させて、それから無線機を付けると回線をそのまま仲間の方に繋げた。

 

 「......行けるな。」

 

 数秒程して安定接続に切り替わったのを確認して、それから音声を繋ぐ。すると突然つんざくような音が無線機越しに飛んできた。

 

 『...おい、聞こえてるからとにかく静かにしてくれ。俺の鼓膜が持たないんだが。』

 

 そう注意してみるとはっとしたような声の調子で普段通りのあいつの声が聞こえてくる。最初からそうして欲しいんだが...言っても無駄だな。

 

 『ご、ごめんなさい。その....報告を聞いて、心配だったから。』

 

 『別に死んだとは言ってないんだからそこまで気にすることでもないだろうに。そんなにか?』

 

 『それでも心配なのは変わらないでしょ?命に問題は無くても怪我とか、その、あるかもしれないし....とにかくそういうことなの!』

 

 『分かった分かったよ、その話は十二分に良く分かった。取りあえず詳しい話はまた後でだ、後ろに多分居るんだろ?そっちの方と話があるから今は変わってくれ。』

 

 『...分かった。今代わるね。』

 

 そう言うと一旦向こう側から無線機を耳元から離したような音が聞こえて、少しすると奴が手に取ったのか耳元に寄せる音が再度聞こえて来た。

 

 『悪い、俺が取る前に彼女に取られてな。』

 

 『いや良いんだその事は。あいつに関しては後で話をつけておくから大丈夫だ。....それで、話の続きの方を頼めるか?あんまり時間に悠長になれるような状況じゃないんでね。』

 

 そう俺が説明すると奴の方は少し悩むような唸りを漏らすと上手く飲み込めたのか普段通りの調子に戻る。こういう場面と普段の所でしっかりと切り替えが出来る辺り、頼れるんだがな。

 

 『ん...分かった。じゃあ、短くまとめて言うから良く聞いてくれよ。』

 

 『頼んだ。』

 

 話を続けながらも周囲に反応が出ないかを確認する。...あのM.S、連絡が遅れていれば助かるんだが。あそこまでやっておけば十分に時間は稼げただろう。

 

 あの時、今からほんの少し前のことだがこいつ(AIS)のアーム部分で通路ごと吹き飛ばしておいたことを思い起こしてみるとなおのこと信憑性が湧いて出て来た。

 

 『...それじゃ伝える。今、確認できている現場からの連絡。勿論お前の連絡を含めての統計データから察するにほぼ全員がお前と同じようにAISを稼働させたと見ていいな。』

 

 『他の連中もなのか?』

 

 そこで少し俺は驚いた。なにせあんな事態に遭遇したのは自分だけだと思ったからな。道中でも同じような挙動のAIS...というよも動いているAIS自体を1つも見なかったし。

 

 『ああ、一部はまだ何かしら手こずっているようだがほとんどお前と状況は変わらないだろうな。』

 

 『なるほど....頭に入れておく。』

 

 ...とにかく、何か困った時にはどうにかして貰えそうか。頼りにはしない方が勿論良いんだろうが数は多い方が良いからな。

 

 そんなことを考えながら話を更に続けて聞いて行く。

 

 『...それでその事なんだが、ここからが重要な部分だぞ。』

 

 『何だ?』

 

 『ん。一応、俺だけじゃなく他の連中にも同じような物が出でいるんだが簡単なことだよ。説明すれば道中で味方を発見できた場合には救助を行う。それが出来ない場合でも脱出を最優先にする。......な?理解するまでもないだろ。』

 

 『確かにな。だが、武器がこいつには無いんだ。それこそ標準で付いているような物すらな。さっきは少し急ぎで何とか戦えたが....それも回収をしても良いか?』

 

 AISの内部にあるいくつかの画面表示から装備中の装備関連の表記を見てみると当然のごとくほとんどが信号無しの状態になっている。あの時に一緒に回収できていれば少しは違ったんだろうが....今からにでもどうにかすれば良いか。

 

 俺は向こう側から伝えられたことに対してそれを補えるようにする為に言葉を足して伝えた。

 

 『.....分かった。というよりも何も無い状態でお前がその機体を持ち帰ってきたところで使い道が少なくてはどうしようもないからな。出来ればで良いからその部分に関しては宜しく頼む。』

 

 『分かった。少し時間が掛かりそうだが、この状態なら死にはしないだろうよ。安心してくれ。』

 

 『だと良いんだがな。取りあえず引き続き作戦を継続してくれ。....頑張ってくれよ。』

 

 『分かってるさ....あいつにも心配させないように頼むぞ。』

 

 『ああ、俺達も動けるようになれば直ぐに援護できるようにする。それまで頼んだ。』

 

 そうするとその言葉を最後に向こう側との回線の接続は切れた。無線機越しにあちら側から切断をされた時の短いノイズが耳に走る。

 

 ....とにかく、こいつを人並に使えるようにするか。俺は無線機の電源を落とすともう一度グリップを握り直した。

 

 

 


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