PHANTASY STAR ONLINE 2 :A.P.742   作:Begew Garand

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E-06 「急行」

 「ここの部屋で間違いないかい?」

 

 扉の前に立った僕は隣に居るレピカちゃんに確認を取った。

 

 「うん、ここでまちがってないよ。わたしの部屋。」

 

 「....そっか。じゃあ、今日のところは部屋でゆっくりと休んでね。明日も勉強あるんだろう?」

 

 「...うん、あんまりしたくないけど明日もあるの。」

 

 さっきまでの調子とは変わって何だか落ち込んでしまっているようだった。返事もうつむいたままだ。

 

 「....もしかして勉強が嫌いなのか?」

 

 そう聞くとうつむいたまま上目で返事をしてくれた。勉強かあ....

 

 「べんきょうしているときも寝ちゃったりしていつもせんせいに怒られて....もううんざり。」

 

 「でも、今の今まで途中で諦めたりしないで行けていたんだろう?」

 

 「....それは、おかあさんとやくそくしたから。」

 

 その時のレピカちゃんの顔を見てみると同年代の子ではしないような神妙な顔つきになっていた。

 

 「約束って、嫌なら良いんだけど.....良かったらさ、どんな約束をしたのか教えてくれるかい?」

 

 そうすると小さい、消えそうな声で話し始めてくれた。

 

 「りっぱなアークスになるって、そうやくそくしたの。そのときにこのぼうしをもらって....」

 

 頭から外した帽子を手に持って摩っている。あの帽子はそういうことだったのか。なら、あそこまで躍起になって探すのも無理ないか....

 

 「じゃあ、お母さんの為にも頑張ってアークスにならないとな。....僕はなれなかったけど、レピカちゃんならきっとなれるよ。」

 

 「ほんとうに....?」

 

 レピカちゃんはさっきまでうつむいていた顔を少し上げてそう返事した。

 

 「ああ、だからちゃんと勉強をして立派なアークスになるんだ。お母さんもそう願ってるはず。」

 

 「.....うん、わかった。」

 

 するとレピカちゃんは顔を上げてしっかりと返事を返してくれた。これならこれからも大丈夫そうだ。

 

 「よし、そろそろ僕は仕事に戻らなきゃな.....」

 

 時間を確認すると駐在所から出てからそれなりに時間が経っていた。早めに戻らないとバーンズさんに迷惑になるしな....

 

 「おにいちゃん、もういっちゃうの....?」

 

 「ごめんよ、仕事だからね。また何処かで会えたらその時は話の続きでもしようか。」

 

 そうして僕が来た道を戻ろうとするとレピカちゃんが焦ったように話しかけてきた。

 

 「ま、まっておにいちゃん。わたしのコード、おにいちゃんにあげるからメールでこれからもお話しない?」

 

 「メール?僕なんかとで良いのなら良いけど....実のところ話す人が居なくてあんまり使ったことが無いんだよね。」

 

 僕は気が合う友達とか、そういう縁が無かったからメールの機能は受信ぐらいしか使ったことが無かった。それもあってコード交換で連絡しあえることも忘れていたよ....

 

 「ふふっ、今度はわたしがおにいちゃんに使いかた教えてあげるっ!」

 

 そう言ったときのレピカちゃんの顔はとても明るかった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 「....おっ、ノアくん戻ったか。」

 

 「すみません、少し遅れました。取りあえずさっきの女の子は無事に届けましたよ。」

 

 あれからレピカちゃんを送り届けられた僕は彼女からコードを貰った後、手短に説明をしてもらってから直ぐに駐在所に戻った。....それにしても楽しい会話っていうのはつい時間を忘れちゃうな、ほんとに。

 

 「そうか。取りあえず出勤早々お疲れ様だったな、まあ休んでくれ。」

 

 「はい...」

 

 そう言われた僕は自分の椅子に座って、備え付けのコンソールに端末を接続した。折角メールの機能を思い出したしね....どうせだから調整しておいた方が良いだろうな、これから使うんだし。そうして僕は作業を始めた。

 

 「...そういえばあれから何か連絡はありました?少しだけ時間が経ちましたけど。」

 

 作業の片手間に気になっていたことを聞いてみた。レピカちゃんを送り届けるのに少し時間が経ったしね。

 

 「いや、連絡は特に入ってないさ。平常通りに待機状態のままだぜ。」

 

 けれどバーンズさんは特に動じることも無く返事を返してくれた。

 

 「そうですか....まあ、何もないことに越したことは無いですね。」

 

 「実際のところは何かは起きていると思うんだが.....こっちの駐在所に要請が回ってきていないだけさ。」

 

 バーンズさんは背を伸ばしながらそう言った。この間も言っていたけど僕は不幸中の幸いというのに遭遇したのかもしれないな...

 

 「....何か飲み物でも持ってくるか。」

 

 体を伸ばしきったバーンズさんは振り向きざまにそう聞いてきた。

 

 「ノア君は何が良いよ?今持ってくるぜ。まあ規定摂取カロリーの範囲でだがな、ははは。」

 

 「僕は水で大丈夫ですよ....」

 

 「...分かった、直ぐに持ってくる。」

 

 そうして椅子からバーンズさんが立ち上がって、普段通り待機室から出ようとした時だった。聞いたことのないアナウンスと電子音が鳴ったのは。

 

 『一般区画、Eの8番で事態発生。一般区画、Eの8番で事態発生。暴走状態にあるアークス複数人に対し鎮圧を速やかに行ってください。出動部隊はB第2部隊、直ちに急行を。繰り返します。一般区画.....』

 

 何があったんだ?と僕が思考を巡らせているとバーンズさんがすぐさま倉庫へ向かって走り出して行った。僕も無理矢理思考を中断して動き出す。

 

 「ノア君!現場急行だ!取りあえず倉庫に来てくれ、早く!」

 

 呼ばれる声に煽られて、意識がようやく戻って来た。僕は足先を倉庫へ向ける。

 

 「...わ、わかりました今行きます!」

 

 その時でも相変わらずアナウンスは鳴り続けていた。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 「取りあえずブーツの紐と服のベルトを確認しなおして、後それからジャケットを着たら教えてくれ。装甲板(アーマー)の着け方を教える。」

 

 「わ、分かりました、急いでやります。」

 

 部屋に入るとバーンズさんも慌ただしく準備を進めていた。僕もそれに合わせるようにして準備を進める。

 

 「バーンズさん!指示通り出来ましたよ!」

 

 取りあえずバーンズさんが言った通りにズボンのベルトを強めに締めてからジャケットを着て、その上からピストルベルトを追加で締めた。二重でベルトを巻いているから少し苦しいけど実用性だ実用性.....

 

 「良し、じゃあ今から俺が着けるから良く見ててくれ。難しくはないから大丈夫だ。」

 

 そう言うとバーンズさんは様々な形の装甲板?をロッカーの中で並べた。

 

 「取りあえず肩からだ。ほら、こっちがノア君の分だぞ。」

 

 バーンズさんが収納箱から装甲板を取り出して渡してくれた。

 

 「分かりました。それでどう着けるんです?何となく嵌まるところは分かるんですけど.....」

 

 「まあよく見ててくれ。まずこれを肩に乗せるようにして着けるんだ。そうしたらもう一つのそれとかみ合う装甲板がある。それを合わせてからスイッチを押すだけだ。」

 

 僕は指示通りに肩に乗せられる形の物を肩に乗せてからもう片方の装甲板を嵌め合わせてからスイッチを押した。すると装甲板同士がロックして、それから空気が自動で入って隙間が無く安定するようになった。

 

 「装甲板の方も問題ないな。じゃあ後の装甲板も同じように着けてみてくれ、後は脛当てと胸当て部分だ。その間に他の物も準備するから...」

 

 「これで大丈夫ですか?もう着終わりましたけど....」

 

 「は、早いなノア君....まあ、付け方は大丈夫だ。それと渡し忘れていたがこれも着けてくれ。胸当ての部分に穴があるだろう?」

 

 「胸当ての部分、ここですね。」

 

 僕は少し大きめなくらいのバッチ状の物を胸当てに嵌め込んだ。

 

 「説明したいところだが事態が事態だ。外で車を出すから銃とヘルメットを着けたら出てきてくれ、じゃあまた後でな!」

 

 そう言うとバーンズさんは部屋に入って来た時と同じ速さで部屋から出て行った。僕も銃を収め直し、ロッカーに掛けてあったヘルメットを被った後緒を急いで締めてからバーンズさんを追うようにして部屋から走った。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 「思ったよりも事態が深刻みたいだな.....ノア君!急いで助手席に乗ってくれ!」

 

 外に出ると運転席の窓から顔を出す形で僕に向かって叫んでいた。車って装甲車のことだったのか。

 

 「すみませんバーンズさん!これどうやって開けるんですか!?」

 

 「ノブを引き出してから回すんだ、強く回さなくても開くぞ。」

 

 装甲車に乗るなんて初めてのことだからドアの開け方すら分からなかった。やっぱり普通の車両じゃないからか簡単には開かないみたいだ。

 

 「良し、乗ったな。飛ばすからその辺りにあるグリップを掴んでおいてくれ。行くぞ!」

 

 「わ、分かりました。」

 

 そうバーンズさんが言うと電源がエンジンに入る音がした後、アクセルをべた踏みして急発進した。

 

 「...そういえばノア君、まださっき渡したものについて説明していなかったな。取りあえず用法について説明しておくぞ。」

 

 道を曲がりながらも器用にバーンズさんは言う。さっき渡したって....この小さいやつかな?僕はそれを手のひらに出して良く見てみた。

 

 「それはフラッシュバッチって言ってな、相手に危害を加えることなく強力な発光で無力化できる優れものだ。使うのもボタン一つで使える。」

 

 僕はバッチを見ながら話しの続きを聞く。こんなに小さいのに....

 

 「ただ、そいつには決定的な欠点があって一度使うともう一度チャージするまでに時間が掛かるんだ。だからあまり無暗に使わないように気を付けてくれ。分かったか?」

 

 「分かりました。....ちなみに、これはどれぐらいの範囲で使えるんですか?」

 

 「まあ....正直なところ、至近距離じゃないと大して効果は無いな。だからそういうことも頭に入れておいてくれ。」

 

 そうして駐在所から出て数分も経たないうちに車が止まった。

 

 「...到着したんですか?」

 

 「.....ああ、現場に到着した。直ぐに出るから銃の確認を最後にしておいてくれ。」

 

 「わ、分かりました。」

 

 僕は緊張しながらも腰から銃を取って弾薬の確認をした。連発弾が2発、実弾が2発だ。直ぐに使い切らないようにしなきゃな。

 

 「弾は共有だ、何かあれば言ってくれ。じゃあ行くぞ!」

 

 バーンズさんの掛け声で僕も装甲車から飛び出て鎮圧に向かった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 「良いか!キャスト以外は殺せ、確実に仕留めろよ!」

 

 合成されたような男性の声が現場に、人通りの多い大通りに響いている。声からしてキャストの男の人みたいだ。

 

 「分かっていますよ、全てはC.R.S.Fの思想通りに....ふふふ。」

 

 続いて女性のタイプの声が響いた。相手は2人何だろうか....

 

 「そこのアークス!M.Sだ、武器を破棄して直ちに投降しろ!繰り返す、武器を捨てて投降しろ!」

 

 どんなものか偵察していると不意にバーンズさんが物陰から出て、拡声器で警告をそのアークスに向かってし始めた。凄いや....僕じゃ緊張して出来ないな。

 

 「はっ、なんだ。何が来たと思えば役立たず(M.S)じゃないか。何の用だよ....?」

 

 けれど相手のアークスには警告は全く効いていないみたいだ。M.Sはこういう相手に脅威になるはずじゃなかったのか....?

 

 「お前らの暴走を止めるためだ、そんなこと自分達でも分かるだろう!」

 

 「暴走....?そっちこそ何を言っているんだ。これはそんな野蛮なものではなくて思想に基づいた粛清だ、お前たちのような者に邪魔されるべきことではない!」

 

 「バーンズさん伏せてください!構えてます!来ますよ!」

 

 「へ!?」

 

 キャストの男がバーンズさんに理由を述べているときに僕には密かに何かを準備しているのが見えた。バーンズさんの体を掴んで無理矢理伏せさせる。

 

 「くそっ、外したか。酷く勘の良いやつだ。」

 

 伏せた瞬間それなりの大きさの爆発音が聞こえた後、頭の上をフォトン弾が飛んで行った。

 

 「バーンズさんあれは話の通じる相手じゃないですよ!思想が何だか分からないですけどこれは実力を行使するしか....」

 

 先程から見て聞いていて簡単に判断したことをバーンズさんに伝えた。すると少し苦しい顔をしてから僕に返事した。

 

 「....仕方ないな。リスクが高いがノア君の通り実力行使しかないみたいだ。」

 

 先程と同じ爆発音がもう一度響いた。

 

 「畜生、時間が無い。取りあえず散開して合間を見計らってから攻撃するぞ!ノア君はあそこの残骸に移動してもう一人の(女性キャスト)の相手をしてくれ!」

 

 「わ、分かりまひた!」

 

 緊張から返事が上手くできない。

 

 「M.Sに用はないが....我々の目的はキャスト以外の殲滅だ、勿論お前らも含まれている。予定には無かったが丁度良い、ここで厄介者も始末しておく、行くぞ!」

 

 その言葉の瞬間ホバーを吹かすような音が聞こえてきた。そしてそれを合図に僕とバーンズさんは分かれて鎮圧にあたる。

 

 「逃がすか!」

 

 「うわっ!」

 

 僕が分かれた後に車の残骸に向かって走っていると男のキャストから機銃を撃たれた。さっきまで走っていた場所がどんどん穴だらけになる。

 

 「?やけに小さいM.Sだな....最近はガキでも編入しないとやってられないってか?」

 

 何かまた言っているみたいだけど緊張から何を言っているのかさっぱりだ。荒い呼吸が自分でも分かる。

 

 「おい!よそ見とは良い心掛けだな!お望み通り吹っ飛ばしてやる!」

 

 「何!?」

 

 するとさっき分かれたバーンズさんの声が聞こえてきて、同時に小さい爆発音、発砲音が聞こえてきた。

 

 「うっ!....生意気なあ!」

 

 命中はしたらしい。けど、跳ね返ったみたいであんまり効いてないみたいだ。僕が適性検査の時に間違えて壁を撃った時と同じ音だ。

 

 「ば、バーンズさんは凄いや.....」

 

 僕の方はというと半ば腰が抜けかけていた。足に若干力が入らなくなってる。

 

 「って、僕の相手はあの(男性キャスト)じゃなかったんだ!」

 

 そう思い出した僕は急いで周りを確認して女性のキャストを探そうとした、すると。

 

 「貴方もよそ見はいけないですよ....じゃないとこうしちゃいますよ?」

 

 「あっ!」

 

 突然後ろの方から声がして、背後から首を絞められた。

 

 「生身というのは脆い....殺してもつまらないですね。」

 

 「はっ、はっ、あがっ.....」

 

 首の気道が狭くなって上手く息が出来ない。苦しい。

 

 「けれど私達の目的は、思想はそれが目的ではない.....ふふふ。なるべく苦しまないように殺して差し上げますよ....?」

 

 駄目だ、まだ、死んだら....そう考えた時、気づいて当然のことに気が付いた。なんだ、()()()()自由じゃないか!

 

 「.....ふっ!」

 

 そのことに気が付いた僕は残っている力を出し切る勢いで女性キャストを思い切り蹴り飛ばした。あまり威力は無かったみたいだけど、取りあえず拘束は解けた。

 

 「.....手を抜きすぎましたね、油断しました。」

 

 距離を詰められたらさっきみたいになる....そう覚えた僕はさっきの痛みに耐えながらも走って別の物陰に逃げた。

 

 「はあ、はあ....に、逃げなきゃ!」

 

 

 

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