PHANTASY STAR ONLINE 2 :A.P.742   作:Begew Garand

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E-08 「改革」

 「....まあ、形式はこんなもんで大丈夫だろ。文章はそれで大丈夫だから次からはマニュアル無しで出来るようにな?」

 

 「ぜ、善処します。」

 

 仕事の後、マニュアルの再説明....無駄話もやや含めてバーンズさんに手伝ってもらいながらも報告書をどうにかして作成することが出来た。

 

 「送信はこのファイルで....良し、これで作業は終わりですね。」

 

 あらかた作業を終わらせることが出来た僕はデータの送信後、コンソールの画面に表示されていたタブを複数個閉じてスタンバイ状態にした。

 

 「ああ、一応は仕事が入った時は今回のような順序で事態を処理することになる。基本的なことでお節介かもしれないが忘れずにそういうこともしっかり頭に入れておいてくれ。それで効率が良くなって、お互いに悪いことは無いからな。」

 

 「そうですね....まだ僕も慣れないですけど経験して直します。」

 

 「そこまで硬くならなくても良いさ、分からないことがあれば直ぐに答えられるからな。人っていうのは1回慣れちまうとそこからは早いもんだぜ。」

 

 「はあ、慣れですか....」

 

 「そう、慣れだ。まあ時としてその慣れが危険を呼ぶこともあるんだがな.....いや?こういうことは言わない方が良かったか、ははは。」

 

 バーンズさんは右手で頭を少し掻きながら失笑気味に話してくれた。確かに慣れは怖くもあるね...

 

 「ふぅ....やっぱり俺は教官とかそういう教育育成は向いてないみたいだ、全く。」

 

 「そ、そんなことないですよ!バーンズさんは教えること、下手ではないと思いますよ。今回も以前も教えてもらったときには直ぐに違和感なく言葉が呑み込めましたから。こんな要領の悪い僕でもですか...」

 

 「俺もノア君に言われたら信じたいとは思うが...機械の判断に基本的に間違いはない。悔しくもあるがああいうのは人間の素質、適性なんかは生きてる人間よりも正確に判断出来るんだからな。君も適性確認テストは受けただろう?あれは凄まじい精度だぜ。」

 

 そう言われて自分が適性確認テストを受けた時のことを思い出した。確かにあのシステムは的確に僕の詳細を数値化していたような気がする。実際自分でも自覚できるほど得意だと思ったり下手だと思ったりするもの同士は数値の差が歴然だった。

 

 「確かにそうですけど.....機械でも弾き出せないデータはあるはずですよ、ちょっとした誤差だったりして。」

 

 「....そう信じたいもんだなあ。俺だって機械に自分の限界を勝手に決められるなんて、そいつは癪に障らない訳が無いぞ?」

 

 それからバーンズさんは深いため息を吐くと席から立ち上がって軽く背伸びをした。

 

 「ふう.....さて、仕事のせいでさっきは飲み物飲みそびれちまったな。今度こそ持ってくるぜ。」

 

 そう言うと待機室のドアを潜り抜けて行った。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 「おい!こっちに行ったはずだ!」

 

 低い男の声が狭い路地に冷たく響く。どうやらまだあいつらを撒けていないみたいだ。

 

 「くっ、無駄に追いかけることだけは得意なんだから....」

 

 私は男たちに見つからないよう音を殺して歩き続けた。尚もやつらの会話が聞こえる。

 

 「畜生あのアマ、金を払う前提で摘発せずに容認しておいてやると言ったものを....M.Sを舐めた真似しやがって。見つけたら身ぐるみ剥いで金だけは回収してやる。」

 

 「ああ。あのパーツは市場(闇市)で出せばそれなりに価値が出るタイプのやつだからな。とっ捕まえたら直ぐにばらすぞ。」

 

 金のことしか頭にないような連中ね、呆れしかないわ....

 

 「.....扉はこの辺りだったかしら。」

 

 私は何の変哲もない壁に手をかざしながら扉へのアクセスポイントを探す。ただでさえミスが多いのにこれ以上のミスは....

 

 「....!」

 

 そうして手で扉のアクセスポイントを探しているとようやく発見することが出来た。音を立てることなくスライドドアが開く。

 

 「今度からは忘れないように、か。」

 

 周りに追手(M.S)が来ていないことをもう一度確認してから私は隠れ家に入った。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 「...只今戻りました、現地の方は異常ありません。計画なら問題なく出来ます。」

 

 建物に入った私は中に居る仲間に偵察を行ってきた結果を伝えていた。ちなみにまだこの組織に入ってから私は2回目の仕事だった。

 

 「了解しました。その様に本部に伝えます。」

 

 彼女の方はオペレーター職員に偽装する為に職員の制服スーツを身にまとっている。情報収集にはこれが良いのだとか。

 

 「....それとフィリンさん。今度からはあれ(M.S)に見つからないようにしてくださいね。ここはかなり本部から離れている艦で賄賂に割けるほどの資金は受けられないんですから。」

 

 「分かっているわ。今度からは気を付ける。」

 

 そうして報告を終えた私は通信室から出て待機室に向かった。この場所は狭い場所だけれど機能面では困ることは無い。私達が使う武装も虚偽の報告を管理者にでっち上げてアークスの格納庫からせしめてきたものなの。

 

 「お帰りフィリン、少し遅かったんじゃない?」

 

 同じ部隊の仲間が声をかけてきた。やっぱり遅くなってしまったのかもしれない。

 

 「...別に、偵察に手間取った訳じゃないわ。M.Sの連中が追いかけまわして来たのよ。」

 

 「まあ、ここが見つかっていなければ特に拘らないけれど....今度からは気を付けてね。」

 

 「そのつもりよ。それなりのリスクを承知でこっちだってやってるんだから。」

 

 椅子に腰を掛けながらも話を続ける。

 

 「それに、この後は作戦なんだからそっちも気を引き締めてよ。それこそ失敗は許されないんだから。」

 

 「分かってる。武器の準備も並行してやってるわ。」

 

 そう言うと彼女は手の加えたライフルを持ち上げて答えた。

 

 「.....今回の作戦、上手くいくと思う?」

 

 私はそこで話を変えて不安に思っていることを聞いた。最初のうちは組織の思想を聞いて心を躍らせていたけれど、自分がそれを行うことを考えるとその気持ちも薄れてきて自信が無くなっていたんだ。

 

 「恐らくは、ね。結局のところイレギュラーが起こらないとも言えないしそのところは完全には言えないけど成功はすると思う。」

 

 彼女は何処か遠い場所を見つめながら言った。確かにイレギュラーが無ければか....

 

 「まあ私達は思想を達成できればそれで良いのよ。C().()R().()S().()F()の名の下に粛清をね。」

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 「...以上で作戦の指示は終了です。何かご意見があればどうぞ。」

 

 「......大丈夫よ。」

 

 あれからしばらく経った後、私の居る部隊は会議室で作戦の打ち合わせをしていた。

 

 「そうですか、なら後はお伝えすることはありません。以上の通りフウリンカ部隊は作戦を的確に実行してください、以上です。」

 

 作戦と言っても内容は簡単でキャスト以外の殺害、粛清を行うということ。

 

 「....はあ。」

 

 だけど私には出来ないようなことなのは明白だった。勿論のこと武器を、銃を味方に向けることなんて一度もしたことが無いし...ましてや一般員を殺すなんてことは私には出来そうにない。

 

 「フィリン?どうかした?」

 

 「い、いや。何でもないの、気にしないで。」

 

 確かに最初のうちは良い思想だと思ったわ。現にアークスの上層部、ひいては内部のシステムは腐敗し続けているし全体的な治安も悪くなる一方で.....そういった環境で事態を変えようという改革の思想を聞いた時にはそれは素晴らしいと思った。でも、粛清....人殺しで解決するような過激なものだとはその時には気がつけなかった。

 

 「....今更抜けるなんて言えないわ。」

 

 誰も居なくなった会議室でつい言葉が漏れた。今はまだどうにかなっているけれど近いうちに早く手を打たないとこのままじゃ....

 

 『定刻です。急いで配置についてください。数分後に開始です。』

 

 「....行かなくちゃ。」

 

 色々と思考しようとしていたけれどそれはアナウンスによって遮られてしまった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 重い金属音が建物の中に響く。シャッターがゆっくりと上がっていって隙間から光が漏れてくる。

 

 「もう最終確認は済ませてあるから余計なことは言わないわ、私が出たらそれに続いて来て。」

 

 「分かったわ。」

 

 全員が銃を正しい位置に構え直して態勢を整えた。レッグパーツのスラスターにも十分にエネルギーが行ってる。

 

 「カウント、行くよ。10、9、8、7、6」

 

 ....作戦行動中、私は粛清をしない。防衛兵器を破壊するだけにすれば殺さなくとも済む。

 

 「5、4、3」

 

 私は、人殺しじゃない。

 

 「2、1、0!スラスターを最大で吹かして、行くよっ!」

 

 先頭の掛け声で脚部のスラスターの出力を最大にした。勢い良くエアーが噴き出る。そうして出力が一定まで安定させてから私も続いて市街地の方へと向かっていった。

 

 「確かこの辺りには防衛用のタレットが埋まっていたはず....」

 

 警戒をしながらも事前に偵察しておいた防衛兵器を見つけては破壊していった。床下からせり出す仕掛けになってはいるが見つけにくいわけではない。

 

 「旧式のがらくたの癖にまだ弾が撃ちだせるの....!?」

 

 勿論、防衛兵器であるからかどれだけ長い月日の間眠っていたとしてもその機能は正常に作動していた。撃ちだせる限りの弾を吐き出し続けている。

 

 「なるべく直ぐに処理しないと......っ!」

 

 焦りから注意が散漫になっていた私は遅れて背部から出てきたタレットに気が付くことが出来ずに数発弾を喰らってしまった。ボディパーツの装甲の一部が吹き飛んだ。

 

 「このっ!」

 

 銃では破壊するのに時間が掛かると判断した私は少ない手持ちの衝撃信管の手榴弾をタレットにすかさず投げ当てた。タレットにそれが当たると数秒もせずにそれなりの音を立てて爆発した。

 

 「.....やられた。」

 

 心なしか損傷を受けてから出力が落ちてきている気がする。

 

 『非常事態発生中、非常事態発生中。このアナウンスが放送されている区画の一般員は退避してさい。繰り返します....』

 

 「システムの方もようやく異常を発見したようね。」

 

 作戦が始まってから数10分程経過したところで区画に避難用のアナウンスが流れ始めた。このアナウンスが鳴るとM.Sが足早にやって来るはずだ。

 

 「後残っている防衛兵器はあの辺りのはず.....って、危ない!」

 

 「!」

 

 そうして残りのタレットを破壊しようと移動を続けていると突然黒い影が飛び込んできて、慌てて回避を行ったせいなのか私は態勢を崩して不時着してしまった。頭から地面に突っ込む形で床を転がった。地面と体のパーツが激しく削れあう音が火花とともに散る。

 

 「っ.....小さい破損が響いたわね。」

 

 幸いキャストなお陰で怪我という怪我にはならなかった。ただ引き換えにパーツは擦り傷だらけだ。

 

 「全く何が飛び出して来たの.....?」

 

 そうして自分の身が大丈夫かを手短に確認してからあの横切った黒い物は何なのか辺りを見回してみた、すると思ったよりも原因は直ぐ傍に居た。

 

 「.....一般員の子供か。」

 

 その証拠に私が態勢を崩した場所で倒れ込んでいる。当たってはいないはずだから気絶だけだと思いたい。

 

 「......普通のC.R.S.Fならここで殺すのよね。」

 

 撃つわけではないけれど持っている銃を小さい男の子に向けた。銃口がその子の頭に向かう。

 

 「...無理よ、こんなの。」

 

 そこで嫌気がさした私はその辺りに銃を放って男の子に駆け寄った。傷は無いからせめて安全な所に....

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 「.....ここなら大丈夫ね。区画からも外れているし直ぐに見つけて貰えるだろうから。」

 

 あれから男の子を抱えながら移動していた私はようやく安全な場所を見つけることが出来た。

 

 「....やっぱりこんなこと間違ってるよね。」

 

 男の子を退避させることが出来た私は引き続き作戦に戻った。

 

 「....っ、やっぱり損傷が激しいみたい。」

 

 けれどさっきからの出来事のせいで全体的なパーツの破損度が高くなっているのかスラスターの出力が上手く安定しない。安定して浮上できなくて時々足を地面に擦ってしまう。

 

 「こんな時に何かなければ良いんだけど....」

 

 そう思った瞬間、想像しうる最悪の事態が起きた。

 

 「あっ!居たぞ!C.R.S.Fの連中の片割れだ!」

 

 「....こんな時にM.Sに遭遇するなんて!くそっ!」

 

 「全員撃てっ!殺しても構わん!早くしろ!」

 

 気が付くのが遅くなってしまったけれど私は急いでM.Sが居る方とは逆の方向にスラスターを出来る限り一杯に吹かして逃げようとした。

 

 「お願い、お願いだから当たらないで.....っ!」

 

 けれど出力が不十分なせいでまともに弾をよけることが出来なかった。

 

 「ああああああああああっ!!」

 

 後方から雨のように弾丸が飛んでくる。装甲板はあっという間に貫通、もしくは砕け散ってその下にあるパーツをことごとく貫通していった。

 

 「良いぞ!そのままぶっ殺しちまえ!弾ならいくらでもある、成果を一つでも何でも良いから出すんだ!」

 

 その掛け声が聞こえると更に弾の勢いは増して行った。パーツに力が入らなくなって行く。ただ分かることは体が粉々になっていくこと。

 

 「あ....ああ...」

 

 「.....もう良い!それ以上撃っても無駄弾になる!」

 

 機能が生きている片方の耳が何とか声を聞き取った。発砲を止めた.....?

 

 「おい、ちょっと確認してこい。確認が取れたらそいつはその辺に転がしておいて後の奴らも仕留めるぞ。」

 

 「分かりました。」

 

 何かのやり取りがあった後、何かが近づいてきて私の体を転がした。

 

 「おい、多分だけど死んでるよな?」

 

 「俺あんまりキャストは詳しくないんだよ....まあ、適当に死んでるとでも言っておけば良いだろ。」

 

 もう一度転がされた。

 

 「そうだな、あの人そういうの気にしなさそうだし。そうするか。」

 

 そうしてそのやり取りが終わると足音は遠ざかっていって、それと同時に私の意識も限界に近づいていた。

 

 「.......」

 

 それから数秒だったか、数分だったかは分からないけれど私は強制的に気絶(スリープ)した。

 

 

 

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