どうやら大洗の戦車に男がいるらしい   作:第六位

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普通に忘れていた部分があったので書きました
それとご報告
近日中にこの小説の1,2,3話を大きく書き替えることにします。
理由は読みにくすぎるのと、原作をほとんど知らない人にでも楽しんでもらいたいためです。
今後ともよろしくお願いします


第10.5話 結束です!

 サンダース戦が終わり、挨拶の後西住がサンダースの隊長と話しているのを横から見ていた。さっさと帰って変装解きたい……。

 

「シャーマンに勝てるなんて感激です!」

 

 本当にその通りだよ。一回戦で当たる敵じゃねえわ。

 

「Exciting!こんな試合が出来るとは思わなかったわ!」

「う……うう」

 

 西住がサンダースの隊長、確かケイさんか。彼女に抱き着かれていた。それに西住が固まっている。誰だってそうなる。俺だってそーする。

 

「あのティーガーに乗っていた人ってどの子なの?」

「えっと……」

 

 西住が「ごめん」と言いたげな表情でこちらを見てくる。はぁ……。

 

「お……私です」

 

 あっぶね。素で間違えそうになってしまった。

 

「凄かったわ! まさかナオミと撃ち勝つなんて!」

 

 そう言ってケイさんが飛びかかってきた。西住とのやりとりを見ていたからか、それに反射的に受け身を取ろうとしてしまい、ケイさんの体を後ろに流してしまいそうになったが、寸でのところで気が付き、手を伸ばしてケイさんを抱きかかえる形になった。所謂社交ダンスでよくある男性が片腕で女性の片腕を掴み、もう片腕で女性の背中を抱えるヤツだ。

 更にバランスを保とうとそのポーズのまま揺れ動いていたら、俺の被っていた帽子が落ちてしまう。女装した変態金髪ツインテの登場だ。

 

「あ」

「えーと」

「ご、ごめんなさい!」

 

 3秒程見つめ合ってしまった……。みるみるうちにケイさんの顔も赤くなっていたが、俺も多分そんな風になっていたであろう。だって恥ずかしいもん。

 俺は引っ張ってケイさんを立たせた。

 

「貴方身長凄く高いのね。ノンナよりも高いのかしら?」

「ノンナ? ああ、プラウダでブリザードのノンナとか言われている人ですか。身長高いんですかあの人は」

「そうなのよ。しかも貴方と似て、凄く上手い砲手なの! このまま順調に行けば貴方とノンナの戦いが見れるかもね!」

「その人は……ナオミさんよりも強いんですか?」

「うーん。どうだのかしら? 見る感じナオミの方が技術は上だけど今のノンナを私は知らないからわかんない!」

 

 ナオミよりも強かったら経験値的にも追いつけるかどうか……。どうか弱くあってくれ。

 「それと」と、ケイさんは咳を一度した後に続けて言った。

 

「盗み聞きなんかして悪かったわね、あなたの言った通り、フェアプレイじゃなかったのはうちの方だったわ」

「いえ……おかげで勝てたところもありますし。それに」

 

 西住が俺の方を見て、その続きを言うのをやめた。大方俺が予知能力を予想していたことを言おうとしたのだろう。

 

「いえ……。それより、5両しか来なかったのは?」

「ああ、それ? 貴方達と同じ数だけ使ったの。でも結局待機させてた戦車は全部この人にやられてしまったけどね」

 

 ケイさんが笑いながら言う。ラフな人だなあ。

 

「……どうして?」

「That`s戦車道!これは戦争じゃない、道を外れたら戦車が泣くでしょ?」

 

 戦車が泣く、か。その通りなのか。第二次世界大戦が終わり、戦車道が競技として広まったこの時代。戦争の道具であった戦車を使うからこそ、美学が大切になっているのだろう。

 なるほど。爺さんがやけに俺に勧めてきたのは、爺さん自体がこういう考えを持って戦車道に携わっており、俺の固定概念を無くそうとしたからだったのかもしれない。

 ケイさんも、爺さんもこういうところにカリスマがあったのだろう。

 

「あ、あの…隊長、そろそろ撤収の準備を」

 

 ケイさんともう一人の茶髪の女性が近づいてきた。俺は落ちた帽子を再び深く被る。茶髪の女性は妙におどおどしている所をみると、多分この人が盗聴していたのだろう。そいや開始の時にケイさんが「戦いはフェアプレイ」とか言ってたっけ。すっかり忘れていたけど、ケイさん自体は本当にそう思っていたんだろうな。だからこそ、この茶髪の人は引け目を感じている。

 俺が事前に予測していた通り、出世狙いだったのか。それとも貢献して褒められたかっただけなのか。それの答えを聞くことは出来ない。しかしどちらにせよケイさんのことを思っての行動だったには違いない。

 ケイさんは茶髪の女性の肩に手を置いて言った。

 

「反省会するから」

「ヒッ!」

 

 とても冷たい声だった。それを聞き、茶髪の女性はぐにゃあと文字が見えそうな感じに倒れこんだ。それを見てナオミが優しい顔をしていた。この女性の気持ちも分かるし、ケイさんの気持ちも分かるって感じか。

 そうしてナオミを見ていると、目が合ってしまった。しまった。

 

「げ」

「げ、とは酷いですね」

 

 ナオミは苦笑いをする。

 

「」 

 

 

 

 

 

 

「」 

 

 

 

 

 

 

 

 サンダース戦が終わった後、俺は女装を解いて私服に着替えた。バレないように結構工夫していたので戻すのに時間がかかった。皆の場所に戻ると

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてアンコウチームの皆の下に向かうと、何やら雰囲気が重くなっていた。

 

「どうしたんだ?」

「下田君! あのね!」

「泳いで行く……」

「おいおいいきなり服を脱ぎだすとは何事」

「それがね。麻子さんのおばあちゃんが倒れたってさっき電話がかかって……」

「……冷泉。お前のおばあさんの近くにいつも誰かいるか?」

「いない」

 

 夕焼けで照らされていたからであろうか。その表情はとてもという言葉では表せないほど悲しい顔をしていた。

 

「なんとかならないかな?」

「取り合えず通報があったってことはもう既に救急車に連絡が言ってるってことだろうから大丈夫とは思うけど、万が一のこともある。その時は冷泉が近くにいてやらないといけない。向かう方法は――――」

 

 考えろ。学園艦が来るまでもう少し時間がかかる。サンダースはとにかく規模がデカい。ならばボートの一つや二つあるんじゃないか?

 

「ケイさんの所に行ってくr」

「私たちが乗ってきたヘリを使って」

 

 俺が最後まで言い切る前に声がかかった。聞きなれた声、だが聴きなれてない声。

 西住流後継者、西住まほ、その人だ。

 

「え……」

 

 戸惑う西住(みほ)に、「急いで」と言う。その表情からは一切の感情が読み取れない。

 

「隊長! こんな子達にヘリを貸すなんて」

「……これも戦車道よ」

「お姉ちゃん……」

 

 西住まほの隣にいた女子生徒の意見も最もだ。だが、それに対しての西住まほさんの台詞。ケイさんも言っていたが戦車道とは一体何なんだ。礼儀を尽くしてこそ、フェアプレイを尽くしてこそ戦車道なのか? 今回はそれに甘えるしかない。

 

「操縦頼んだわね」

「はい……」

「私も乗る!」

 

 武部も同行するらしい。西住まほさんの隣の女子生徒はヘリには乗ったが、まだノリ気じゃないらしい。

 

「ありがとう……」

 

 西住みほの言葉に反応することなく、西住まほさんは通り過ぎて行った。こと後彼女はどうするのであろうか。彼女は黒森峰の隊長だ。他の生徒と一緒に来たのか、と思ったが、あのヘリの大きさを見るにそこまで多くの人間とは来れてないだろう。それに私達が乗って来た、て。どうやって帰るんだ。もう夕方だし、次ヘリが来るのは相当後になるだろう。

 俺は西住みほ達の方を見た。彼女達は冷泉の事を心配してるようだ。なら余裕がある俺が行くべきだろう。

 

「あの!」

「ん? 君は……」

「大洗学園、西住と同じ学校の生徒です。今回はありがとうございました」

「そうか。大洗女子学園は共学になったのだな」

「はい。といっても男子生徒は俺だけですけどね」

「君はみほと親しい仲のように見えた。みほは人見知りのはずなのだが」

 

 あの一瞬で俺と西住が仲いいと判断したのか。 

 

「君はみほにとっての何だ?」

「なんだ、興味津々じゃないですか。てっきりさっき西住がありがとうと言ったのに無視してたから完全に冷めているかと思いましたよ」

「そう、なのか?」

「え?」

「みほがそんなことを言ったのか。聞こえなかった……」

「ええ……」

 

 西住まほさんよりも離れていた俺でも聞こえたのだが。もしかして緊張とかして周りの音が聞こえなかったりしたのか?

 

「取り合えず、どこかで座って話しませんか。あのヘリがここに帰ってくるのに結構時間かかるでしょう?」

「……そうだな」

「いい店を知ってます。そこで話しましょう」

 

 俺が潜入調査した時、少しだけ寄った店だ。雰囲気が良く、価格も安い物が多かったので丁度いいと言えるだろう。

 

 

 

 

「今回試合を見に来たのは西住の試合が気になったからですよね?」

「……お母さまは西住流から逃げたみほを許していない。だから代わりに私が見届けに来た」

「でも、結果としては大洗の勝利だった。途中で色々ありましたけどね。あんな戦いは邪道だと思いますか?」

「あの戦いは西住流のそれではない。だが、それが勝利へと繋いだのは事実だ」

「そうですね。全くもってその通りだと思います。西住の戦い方は西住流の動きとは違いますが、それでも勝ち切るだけの力は持っている」

「これはさっきも言ったことだが……そういう君はみほの何だ?」

「ただのクラスメイト、と言いたいところですがもう少し親しい仲です」

「君はみほの戦車道が好きなのか?」

「好き嫌いとか、そういうものじゃないですよ」

「? なら何故君はここに来ている」

 

 戦車道に関してそこまで詳しいわけじゃないし、西住まほさんの考える戦車道がどんなのかも分からない。だが、ここで「なんだって良いじゃないですか」と答えるのは何か違う気がした。

 

「求められたから、ですかね」

「……君の名前を聞いても良いか?」

 

 そう、俺は求められたから来ている。そこに噓偽りはない。だが、俺が戦車に乗っていたことまで話す必要はないだろう。

 

「下田平野です」

「下田……もしかして君は――さんの親戚か?」

 

 姉の名前が出てきた。姉貴は戦車道をやっているようだが、それで交流があったのだろうか。

 

「まあ、そんな感じです」

「そうか、君が」

「え?」

「あのティーガーに乗っていたのは君だな?」

「ん? 何のことですか?」

 

 俺はとぼけてみる。それに加え、注文ボタンを押し、空気を換えようと試みた。

 

「隠す必要はない。私はきっと君が、――さんの弟が戦車道をやると知っていた」

「おかしいことを言いますね。普通に考えて戦車道を男がやるわけないじゃないですか」

「確かにそこに疑問は少々残る。だが、あのレベルの射撃技術。相当限られた人間にしか出来ない。私の高校にも恐らくあのレベルのはいない」

「……もしかして姉貴が俺の話をしたんですか?」

「そうだ。私は下田家の人間にお世話になったことがある。それにしても……こんなところで出会うとは」

「はあ。もう確信してるようですしいいか。そうです。俺があのティーガーを動かしてました」

 

 遅れてやってきた店員さんに俺は適当に注文をした。

 

「これまでに戦車道経験は?」

「少しだけです」

「……なるほど。流石はあの人の弟といったところか。素晴らしい才能を持っているのだな君は」

「俺は俺に出来ることだけを絞った結果、射撃の技術が上がっただけです。総合力でいったら西住の10分の1にもなりません」

「戦車道は団体競技だ。必ずしも総合力が高い人間が勝つわけではない」

「だが、定石を知っている人間とそうでない人間とでは天と地ほどの差がある。そうでしょ?」

 

 戦車道という競技に流派が存在するのはそういうことだろう。先人たちが積み上げてきた理論を使うことで勝率を上げている。

 

「少し俺からも質問したいんですけど、姉貴ってどんなことを戦車道ではやっているんですか?」

「あの人はメディア露出を極力好まない。だからあの人の技術を知っている人も少ない」

「そうですね。だから調べても全然出てきませんでした」

 

 そもそもどこの大学に所属しているのか。

 

「あの人は今、戦車道の日本代表チームの一員となっている。そして」

 

 心なしか今まで表情が変わらなかったその顔に変化が起きたように見えた。自然と身構えてしまう。

 

「私が知る限り、あの人の実力は歴代最高だ」

「え?」

「あの人は操縦主をやっている。その技術は並外れており、何度もチームの危機を救ってきた」

「そんな選手なら猶更隠し切れないと思うのですが」

「全部他の人の手柄にしているんだよ。そして、それをチームの誰も止めない。君の姉上が本気を出せば、味方を含む全車両を倒すことが出来る実力があるからだ」

「なんだそれ。実力があるからって手柄を黙って受け取る理由にはならないでしょう」

「なるんだよ。彼女と一緒のチームになった人間は全員知っている。いつも飄々としている彼女が一番自由になった時、大量破壊を楽しむ化け物になることを。それを見た者は全員何も言えなくなるのだ」

 

 俺の全く知らない姉の顔。俺は弟でありながら、戦車道を受け入れてなかったためか、そんなことをしていたなんて全然知らなかった。二面性があるなんて一緒に住んでいた頃には気づかなかった。

 

「例えば……そうだな。これは本当の話なのだが、フラッグ車に乗っていた君の姉上は自軍の残りが自分たちだけになった時、全ての敵の戦車の攻撃をかいくぐり、敵フラッグ車を撃破した。それも、一定以上の知識がないと理解できないような技術で」

「へえ……」

「あの人が一番その強さを発揮するのは一人になった時だ。本来は団体行動など得意ではない。現在日本代表の隊長をしている島田流の時期家元候補もその実力を引き出すことに成功していない。同じ車両に乗っている人間は度々自信を無くし、交代をするとも聞いている」

「ええ……」

「そして、君の姉上が唯一自分のパートナーに成り得る人間として選んだのが、下田平野、君だ」

「俺!?」

「そうだ。君の姉上は君の才能を誰よりも認めていた。そして、正に今日、君は私が予想してた通りの実力を見せた」

「……姉貴も見る目が無いですね。俺なんかよりも凄い人なんて幾らでもいる。あの人は俺が敗北してきた回数を知らないんですよきっと」

「断言する。私達と君達、当たるなら決勝戦だ。その時には一番の脅威は君となるだろう。今の君は君の姉上から聞いた弱点は既に消えている部分もあるようだしな」

「そうですか。期待してくれているのは嬉しいですけど、そもそも決勝戦までいけますかね」

「私達は相手になった者達を倒す。それだけだ。君が敗北した相手も、倒してみせる」

「……そうですか」

 

 俺は注文した物がやってきたタイミングで姉貴にメッセージを送っておいた。俺はもっと姉貴について知る必要があるらしい。

 

「……君は随分と知り合いが多いのだな」

「え? ああ、これですか」

 

 別に覗き込んだわけではなさそうだが、俺のスマホの画面が見えていたらしい。

 

「中学までの友人とか、今の戦車道のメンバーとかくらいですけどね。西住さんこそ有名人なわけですし、俺なんかよりも沢山連絡先持ってるでしょう?」

「……ない」

「え?」

 

 よく聞こえなかった。

 

「持って、ない」

「ん?」

「みほの連絡先でさえ、持ってない。黒森峰の人間とも……エリカくらいか」

「エリカ? ああ、さっきまで一緒にいた人ですか。って、ええ!?」

「……」

 

 もしかしてこの人友達自体少ないんじゃ? それにさっきからちらちらと期待を込めたような顔でこちらを見てくる。

 

「連絡先交換、しますか?」

「……ああ!」

 

 バイクに乗っている決闘者のような言い方だ。実際に乗ってるのは戦車なわけだが。いきなりティーガーⅡをシンクロ召喚とかするのだろうか。

 丁度好感したタイミングで西住さんのスマホに連絡が一通。

 

『隊長、今着きました』

「……どうやらここでお別れのようだ。代金は私が払おう」

「いや、普通に自分の自分で払いますよ」

「心配することはない。私達は連絡先を交換した仲だしな」

「でってう」

 

 重い! 重いよ!

 

「あの……西住の連絡先も教えましょうか?」

「……ちょっと気まずい」

「ですよねー」

「あと、紛らわしいから私のことは下の名前で呼んでくれ」

「分かりました西住さん」

「……」

「冗談ですよまほさん」

 

 この人感情が分かりやすいのか分かりにくいのかよく分からない。いつか西住姉妹の仲が良くなるといいのだが。

 

「今回は助かった」

「いえ。お気を付けて」

 

 俺はまほさんを見送った後、西住達と合流しようとしたのだが。何故かまほさんが俺の元へ戻って来た。

 

「どうしたんですか?」

「……エリカが着いたのは大洗の病院だったらしい」

「は? だったら今からこっちに来るってことですか?」

「うん」

 

 なんじゃそれ。




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