どうやら大洗の戦車に男がいるらしい   作:第六位

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誤字指摘ありがとうございます。

あと、杏の一人称を「私」から「あたし」に統一することにしました。何となくアニメではそうだった気がするので……。
あと小山さんの喋り方が難しすぎる。
設定は調べながらやっておりますので結構ミスとか出てると思います。
変な点あれば感想欄にて教えてくださると助かります。


第1話 反省会です!

 一度だけ戦車に乗ったことがある。何もかもが初体験。知識だけじゃ感覚までは分からない。

 操縦してみた。弾を装填してみた。動いてる戦車から顔を出して周りを見渡してみた。通信もやってみた。どれも初心者らしくぎこちないものだった。ただ一つの技術を覗いては。

 

 

 

 

 

「それで、下田君ならあの試合どうやって勝つの?」

 

 

「――します」

 

 

 

「何やってるんだ?」

 

 きっかけはこの言葉だった。

 俺は現在大洗学園の戦車倉庫に来ている。昼休みになっており、西住、武部、五十鈴の3人が食堂に行ったのを確認(正確には3人が食堂に行くという内容の会話をしていたのを盗み聞きしただけなのだが)し、彼女たちが教室から出て数分経った後に俺は戦車庫へ向かった。

 別に特段理由があるわけではない。少しだけ気になったことがあるだけだ。

 

「……流石にⅣ号の履帯はだめになってるか」

 

 そんなことを呟いてた。その時に()()に遭遇したのだ。

 

「何やってるんだ?」

「……えっと、君は確か……冷泉さんだっけ?」

「ああ、それであってるが」

「おう。よかった」

 

 そう言うと俺は他の戦車を一つ一つ見ていく。

 フム。どれもザ・売れ残りというか微妙な性能のばっかだな。強いて言えばⅢ突が他と比べて強い。というか八九式とかこれどう見ても戦車道向きじゃないだろ。攻撃力と機動力の低さに定評のある機体だぞ。これで敵戦車倒すには一苦労ってレベルじゃないだろうな。

 いや、本当に微妙なのか? 俺は有名どころの戦いくらいしか見てないからその戦車が基準になっている。しかし全国大会に出るチームは大体が「全て○○製」といった感じで校風から見て取れるもっともその高校に影響を与えたであろう国の戦車しか使わないという統一感を持たせている……のだが、しょうがないことであるのは間違いないけど大洗(うち)はばらけて居るなあ。

 いやしかし、だからこそでき――

 

「おい。私はお前に何をやっているんだと聞いたはずだが」

「え、ああすまない。別に怪しいことをするわけじゃないからそっとしておいてくれ」

「今のお前の行動が完全に怪しいのだが。というかなんでこの高校に男がいる」

「大洗高校は2年前から共学になっているらしいぞ。俺しか男子いないみたいだけど!」

「知らなかった……」

「普通に学校来てたら悪い意味で俺の噂はよく聞くだろうけど。出来るだけ問題とみなされる行為は起こさないようにしているが、どうしても学園唯一の男子という肩書は色んな効果を持つらしい」

「なるほど。私がお前のことを知らない理由がよく分かった」

「ほう。そしてその答えは」

「私は不登校だからだ」

「わお。戦車の上で寝転がる不登校少女、どう考えても君も怪しい人間じゃん」

「なんでだ。私はその戦車の操縦手だぞ。ここに居て何が悪い」

 

 冷泉はぴょんと身軽に38(t)戦車から降りるとⅣ号戦車を指さした。

 

「え、マジで?」

「マジだ」

「君がⅣ号の履帯壊しちゃったの?」

「西住さんに許可は取ってある」

「まあ、あの動きをしたらこうなるのもしょうがないな。それにしてもよく西住はお前にその許可を出した、いや、そういう動きをするように指示したな。よほど信頼されてないとできないことだ。昔に戦車道やってた経験があるのか?」

「一度だけ校内戦である。その時マニュアル見て憶えた」

「何言ってんのこの人」

 

 戦車の動かし方をマニュアル見てすぐに動かせるなんて聞いたことないぞ。戦車動かして2回目であの操縦テクニックは異常だ。もしかしたら今の冷泉のレベルは既に黒森峰と比較しても差異ないのかもしれない。しかしあそこはそもそもそういう動きをして試合で勝つとこじゃないはずだ。少なくとも「西住流」の戦いはそうじゃない。

 撃てば必中 守りは固く 進む姿は乱れ無し 鉄の掟 鋼の心とは誰の言葉だっただろうか。統制された陣形で、圧倒的な火力を用いて短期決戦で敵と決着をつける単純かつ強力な戦術、要は課金装備でやる究極のごり押しだ。それで勝ってしまうのだから不思議だ。実際の戦争ならば爆弾等を陣形に投げ込まれてゲームセットだが、この戦術は戦車道を極めていく上で出来たものなのだろう。現に戦車道の流派といえば「島田流」か「西住流」と言われるほどまでに強力なものだ。

 しかし大洗(うち)の西住も西住流を使えそうなものだが、これでは流石に無理があったか。というかこの前の戦いは西住流のそれとは全くの逆で臨機応変に戦う戦法を取っていたように見えた。西住は本当はそっちの方が適正あるのか? しかしそんなことを考えても仕方ない。実際に西住流の戦いが出来る装備を手に入れないと分からないからだ。

 

「うーん、これで全国か……。完全に西住次第って感じだな。それじゃ」

「おい待て。いきなり来ておいて名前を名乗らずに出て行くのかこの不審者」

「あー別に名乗ってもいいんだが、一つだけ約束してもらえるか?」

「条件次第では呑む」

「西住と武部、五十鈴には俺がここに来た事黙ってほしい。あいつら同じクラスメイトなんだよ。教室で戦車道の話をしたくない」

「戦車道が嫌いなのか? その割には結構楽しそうだったぞ」

「嫌いじゃない。でも好きでもない」

 

 俺は冷泉の方を見て言った。

 

「下田、下田平野だ。次会うのがいつか分からないがよろしく」

「下田……、ん? どこかで聞いたことがあるような」

「だから俺の噂はどこでもされているからそれを聞いたんだろうよ、不登校だったから俺の噂をあまり聞いてこなかっただけで」

「噂じゃない気がするが……。まあいい、これ以上昼から考え事してしまうと私は持たない。そもそも朝苦手なのに沙織が無理やり……」

「おい大丈夫か!?」

「じゃない……眠……い」

 

 途中で意識がこと切れる冷泉に急いで駆けつけて体を受け止めた。そして元々冷泉が乗ってたⅣ号の上にそっと寝させた。

 かっる……。身長低いのもあると思うけどここまで軽いのは正直びっくりした。こいつの身体空気だけで出来ているんじゃないか?

 

「さてと、アイツらが来る前にトンズラするか」

 

 足先を校舎に向けた。

 

『二年A組、下田平野、西住みほ。至急生徒会室に来るように。繰り返す。二年A組、下田平野、西住みほ。至急生徒会室に来るように』

 

 ?????????????

 

 

 

「俺なんで呼ばれたんだよ」

 

 生徒会室前に来てはみたものの入りづらい。ここに来る途中も結構恥ずかしかった。でも俺より恥ずかしがり屋の西住の方が大変だっただろうな。

 うーん。どうしよう。このままバックレる……ってのは無しか。でもなあ

 そうやって扉の前で一人頭悩ませていた。

 

「入っていいよー」

 

 生徒会室から角谷会長の声が聞こえてきた。どうしてわかったんだ。

 覚悟を決め扉を開く。中には生徒会の3人に加え、西住が既に来ていた。

 

「おい! 貴様遅いぞ!」

「すいません」

 

 川嶋広報は平常運転のようだ。今日もキレッキレ☆それを見て俺はイラッイラッ☆

 

「二人ともどうして呼ばれたのか分かる?」

「え、大喜利ですかそれ」

「わ、分からないです……」

 

 小山副会長がゆっくりと諭すように俺たちに問う。えーと、本当に呼ばれた理由が分からないんだけど。もしかしたら戦車庫に監視カメラがついてて俺が侵入したのを見て怪しいと思ったから呼び出したのか? だとしたら西住は別件なのか。

 

「西住は何か心当たりは?」

「私は特に何もしてないはずだけど……」

「だよなあ。西住が変な問題起こすようなタイプには見えないし」

「いいからいいから。取り敢えずなんで呼ばれたか考えて言ってみ」

 

 角谷会長は楽しそうに言った。更に干し芋を一かじり。いつでも食べてるなこの人。そんなに美味しいのか?

 

「……空き巣ですかね」

「えぇ!? 私そんなことしてないよ!」

「いや、これは俺の話だ。そもそも理由が同じって言われたわけじゃないだろ」

「あ、そうか。でも私分からないよ」

「一応二人とも同じ用件なんだけどね。でも何か問題起こしたから呼んだってわけじゃないよ。だからさっき下田君が言ったことは初めて知ったわ」

「下田! 空き巣とはどういうことだ!」

「あはははやっぱ面白いねー君たち」

 

 どこがだよ。そもそも空き巣といっても戦車庫とその戦車は一応大洗高校の物であって戦車道選択者の物ではないはずなので茶道選択の俺が見に行っても悪くないと思う。小山副会長は素であの言い方したのか。完全に尋問する時のセリフだろ。それとも会長の指示なのか? 駄目だ。この人たち癖が強すぎて全くわからん。小山副会長だけは常識人であってくれ。

 

「それで答えは何ですか会長」

「いいよ教えたげる」

 

 ビクッと西住の方が震えた。そこまで怖がらなくていいだろうに。さっきからずっとソワソワしてるけど一応西住と生徒会の人間は共に戦ったメンバーなわけでそんなに話すときに緊張することは無いと思うんだが。それかむしろ原因は西住自身にあるのか? 例えば「西住流」関係で家元とこんな状況になったことが何度もあるとか、そういう嫌な既視感が出てきたのかもしれない。

 

「この前の聖グロ戦は下田君も見てたでしょ? どうだった?」

「どう、と言われても」

「んじゃ考えといてね。西住ちゃんはどう思った?」

「ご、ごめんなさい! 私の判断が悪くて負けました!」

「うわピックりした!」

 

 物凄い勢いで頭を下げ、それと負けず劣らずの声を張り上げる西住に俺は動揺を隠しきれなかった。

 

「別に謝ってほしいわけじゃないんだよ」

「でも私のせいで会長たちまであんこう踊りをする羽目に……」

「あれはあたし達が勝手にしたいって言っただけでしょ? しかも結構楽しかったよ。ね、川嶋」

「全然楽しくありませんでした!」

「あははは……」

 

 小山副会長の目が死んでる! だめだ。この人を怒らせてはいけない。これ以上刺激してはいけないと俺の脳内警報機が初期微動している。角谷会長が小悪魔だとしたら小山副会長は天使の顔をした閻魔だ。地獄に落とされないようにしなければ。川嶋広報? ラージャン……ですかねぇ……。

 

「単純にさ、二人にどう思ったか聞きたいんだよ。こうすれば良かったーとかね」

「なるほど。俺一応部外者なわけだから当事者であり、全国大会でも隊長を務めることになる西住が先に言ってくれ」

「分かったよ」

 

 西住が頷くと小山副会長は棚から今回の戦闘地の地図といくつかのコマを取り出した。赤色と青色のがあるってことは一方が大洗学園でもう一方が聖グロかな?

 西住はコマと地図を使って本番での大まかな展開をリプレイした。敵戦車の位置は全部分からないので予想を交えて進めていく。

 

「多分もう少し早く路地裏に辿り着いてたら良かったと思います」

「なるほどねー。確かに挽回したのはそっからだもんね」

「うう、私があの時当てていれば……」

「桃ちゃんあまり気にしないで」

「桃ちゃん言うなあ!」

「下田君はどこが駄目だったと思う?」

「別に特段目立ったのは無い、わけじゃないな。寧ろ出すぎた杭は打たれない論を実践してるくらいツッコミどころが多い。川嶋副会長の近距離外しは置いておくとして、先に高台を取ったのに全然敵を撃破してないのはどうなのかと思うぞ。攻撃力のない戦車はそれ同士で挟み込めば撃破されても回収班が来るまでその戦車はどかせないんだから上から撃ち放題で撃破された数の倍以上の敵を倒せたと思う」

「うわー中々えげつないこと言うね下田君」

「むしろ正々堂々やって1対1に持ち込めたのが異常なんですよ。普通こういう裏道使ってようやく成しえる奇跡です。よって西住、お前の非はどこにもない」

「そんな……ありがとう!」

 

 相手の隊長、確か田尻さんだっけ。その人が西住のことをどう評価したのか分からないが少なくとも西住みほの戦い方は「西住流」らしいものではない。しかしそれとは別に光る強さがある。それは今回のような圧倒的な戦力差を覆しうる強力な武器だ。

 

「でもこれ見ると明らかに西住の乗った戦車だけオーバースペックなんだよな。戦車の性能ってよりも乗ってる人間が強すぎる。操縦手……たしか冷泉だったっけか。よくこんなルートを運転することが出来たな」

「うん。麻子さんは凄いよ。麻子さんがいなかったら絶対にすぐ負けてた」

「これでついこの前まで戦車道未経験なんだろ? 天才かよ。確かマニュアル読んだだけで憶えたとか言ってたし」

「うんうん。うん? それ麻子さんから聞いたの?」

「そうだよ」

「いつ?」

「あー、えー、ノーコメントで」

 

 あっぶねえ。ついうっかり喋りそうだった。確か俺は戦車庫に入ったと言ってなかったな。バレて戦車庫に見守りが配属されたらちょっとだけ困る。別に乗りたいわけじゃないがたまに見に行きくなることがあるかもしれない。だから、うん。このことは黙っておこう。

 

「私とはまだまともに喋ってないのに……」

「ええ……」

 

 俺なんかと喋るよりずっと喋ってて楽しい人間がもういるだろ。それに冷泉は不登校故に俺と親しくしててもまだ影響が少ないが西住はただでさえ今注目を浴びつつあるんだからそんな人が学校唯一の男子と親しくしてたら変な噂が立つだろ。主に近くにいる脳内恋愛サトウキビ畑のせいで。

 

「じゃあさー」

 

 停滞していた空気を断ち切るように角谷会長が口を開いた。

 

「さっき君が言った戦法が使えないとして」

「はい」

「それで、下田君ならあの試合どうやって勝つの?」

「そうですね……」

 

 所詮俺は戦車道は見る専問。実践の事なんて何一つ分からない。だから西住の本当の凄さなんて正しく理解できてないのだろう。俺がつらつらと意見をそれらしく述べていたがあんなの理想論だ。

 しかしそんな俺でも一回だけ戦車に乗ったことがあるのだ。何年前だったか忘れたけど当時からそこそこ戦車道の知識はあったと思う。でもやっぱり実際に動いた戦車に乗る時の感覚は形容し難く、思い通りにいかないほど何かをすることが困難だ。

 でもどうやら俺には一つだけ才能があるらしかった。単騎で敵戦車十五輌抜き、十二時間に渡る激闘の一騎打ちとかいう馬鹿げた実績を持った蝶野亜美さんが言ってくれたんだから多分本当にそうなんだろう。……そういえば蝶野さんが大洗高校来たって話だけど本当なのか?

 

「もしもあの場に俺がいて、戦車を動かしていたならば」

 

 存在しないifの世界の話。その世界で実際に勝ててたかは微妙だ。大体良くて8割の確率だろう。

 

「全部狙撃します。フラッグ戦ならばフラッグ車を。殲滅戦ならその全員を。弾の数が許す限り撃ち続けて、たとえ撃破出来なかったとしてもより良い条件で西住につなぎます」

「ひゃー凄いこと言うね下田君」

「あとそもそも近距離射撃の練習を皆にさせてます。川嶋広報に限らず撃ち漏らしが多いと感じました」

 

 懐かしいな。爺さんに無理やり連れてこられてやって来た先が戦車道体験施設。蝶野さんはその時の俺の担当をしていた。もしあの感覚、敵が撤退の判断をする間もなく撃破する時の高揚感をずっと感じれるのなら――

 いや、違うだろ。そもそも俺は男だし、それに敵の動きによっては俺は全く役に立たない。考えること自体が無意味だ。

 

「とまあ、そんな感じで。でも正しいアドバイスを聞きたいんなら蝶野さんとかにでも聞いた方がいいと思いますよ」

「いやーでもあの人は適当だからどうだろうなー」

「そうじゃん。そうだった」

 

 言い訳をするが俺が射撃以外全くダメだった理由の3割くらいは教え方だと思うの。

 

 

 

 

 

「二人ともありがとねー」

 

 俺と西住は生徒会室を後にした。あんの会長人に色々聞いておいて「実は自分は戦車の中で芋食ってるだけでした」そりゃねえよ。しかもそのスタンスは続けるっぽいし。自分の分の穴を俺に埋めてもらいたいんじゃなかろうか。残念無念そうはいかないんだわ。というわけでグッドラック西住!

 

「じゃ、俺はこれで」

「あ、待って!」

 

 喉が渇いたためジュースを買いに行こうと思い、西住と別れるとこだったが、西住から待ったがかけられた。

 

「放課後、一緒に帰れないかな? できたら二人で」

 

 ?????????????

 俺なんで呼ばれるんだよ。あ、これデジャヴ。

 




大学に入ったばかりで投稿頻度が安定しません。
いずれ安定すると思うので……。

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