この小説を書くにあたってアニメをもう1周したのですがあと3回はしないとだめみたいですね……。
「老舗のアンコウ料理店」と書かれた看板が端に見える路地裏のような場所。三枚目の写真から読み取れる情報だ。
昨日行った店とは雰囲気が違う。昨日のは昔から続いてはいるようだが、何度かにわたってリフォームしたように感じた。そもそもこんな看板どこにも見つからなかったしな。
さて、今日はどうやって探そうか。人を呼ぶのは見つかってからでもいいかな? でも昨日みたいに誰かといることで出来たこともあるわけだし。
「でもそもそも俺大洗の人間の連絡先あんまり知らねえ……」
でもこれだけはっきりした特徴あるならネットで調べれば出てくるかもな。
スマホの電源を付ける。
付ける。
……付ける。
「付かねえ……。ならパソコンを……。え? マジで言ってる? 付かないんだけど!?」
我が家はネット環境を失いました。
「そうだ。西住に……って暫く都合が悪いんだったっけか。どうすればいいんだ」
そもそも何故付かない? 配線を見る。確か昨日はスマホの電池がギリギリだったから充電器に繋いで寝たはずだ。なのにスマホが付かない、恐らく充電切れになっているのだろうが……。それにパソコンも……。
パソコンの配線とスマホの充電器のコードのどちらとも千切れていた。なんで?
問 得られる情報源が近くにありません。どうすればいいでしょう。
選択肢その1 歩いてなんとか探す。
選択肢その2 ネカフェに行く。
選択肢その3 大洗をよく知る人に尋ねる。
「……取り合えず外出てみるか」
答 行動に出てみる。
家を出る際、窓が開いていることに気づいた。ん? もしかして昨夜開けたまま寝てしまったのか。我ながら不用心だな。
一旦靴を脱いで窓を閉めに戻る。その時だった。
「うわっ!」
何かが目の前に飛び込んできた。咄嗟にそれを抱える。ってこれ……。
「猫!?」
問 取り合えず行動に出てみた結果何になったか。
「そう、貴方も私と同じ迷子なのね」
「違わないけど違います」
解 旅行者と迷子友達になる。
「えっと、田尻さんですよね? 聖グロリアーナ女学院の戦車道隊長をやってる」
「……ダージリンと呼んでくださる?」
「初手であだ名呼びさせてくる人初めて見ましたよ」
「万物において躊躇うものは敗れる運命なのよ」
「何に敗北するんですか……」
「それにしてもその猫、随分と貴方になついているのね。飼い猫なのかしら?」
「違いますよ。朝起きたら家に侵入していた泥棒猫ならぬ強盗猫です。何も盗んでないですけど」
ネカフェがあるなら街の方だろうと思って歩いていたのだが、疲れたので休憩をしていると隣に金髪の女性が座ってきた。うっかり独り言をこぼしていたらしい。彼女は俺を迷子だと思っているらしく、共感したかのように頷いていた。あと何故か猫を外に出したのだが、俺にどこまでもついてきている。
最初ダージリンさんと会った時はいきなり話しかけられてなんだこの人と思ったけど、いや今でも若干思ってるのだけれど、他校の学園の人間と話すことになるとは。しかもこの人結構有名人だぞ。
「ダージリンさんはどうして大洗の学園艦に訪れたんですか? しかも制服で」
「あらご存じでないのかしら? 今日はここで全国から集まった紅茶の販売会があるのよ」
「知りませんでした。でも一人で来たんですか?」
「いえ、本当は3人ほど……いえ、1人は含めれないようなものなので2人ね。一緒に来たのだけれど」
「はい」
「はぐれてしまったの」
「そりゃまたなんで」
「あら? 迷子になるのに理由がいるのかしら」
「意図的に迷子になる人間はいないでしょうね。でも原因とかあるんじゃないんですか?」
「こんな格言を知っている? 失敗は、成功を引き立たせるための調味料だ」
「知りません。食べ物の匂いに釣られたとか? なんてことはないか」
俺は学校ではテストの範囲をひたすら頭に詰め込んで本番に臨んでいるだけなので、テストが終わると大抵の場合直ぐに忘れる。自分が頭が他の人より悪い自覚は持っている。また、学校で勉強してない知識はほとんど持ち合わせていないので格言等はさっぱりなのだ。
「……少し行っただけなのよ。皆がお手洗いに行った時に少し廻ってたらどこか分からなくなって、頑張って戻ってきても皆いないし……」
「あー、なるほど。確かにこの学園艦って道が複雑なところ多いですからね。だからこそ大洗と聖グロはそこそこ戦えたわけで。あれ? もしかして大洗に来るの初めてじゃない?」
「あの時は楽しく回るつもりなんてなかったのよ。だから道は覚えてすら無かったわ。恥ずかしいことにね」
「なるほど。で、迷子になったのに一緒に来た人たちに連絡は取らないんですか?」
「……置いてきてしまったのよ」
「え?」
「ローズヒップは直ぐにどこかへ飛んでいく性格なのだから携帯電話を渡しておけばいつでも呼べると思って」
ローズヒップって誰だよ。ダージリンさんみたいに人のあだ名なことはなんとなく予想つくが。
「本人が迷子になっては元も子もないじゃないですか。因みにその販売会ってのはどこであるのかわかりますか?」
「確か街の方だったはずよ」
「なら俺と同じ方角ですね。案内しますよ。そこまでは分かります」
携帯電話を無くしているのに紅茶とティーカップは携帯しているのには敢えてツッコまないでおく。俺とダージリンさんは同じく街に用事があるようなので一緒に行くことにした。街といっても他より少し賑わっているだけだけどな。大洗の観光品は大体そこで買っていく人が多いらしい。知らんけど。俺の場合はネットさえあれば直ぐに見つかりそうだし、少し長めに付き合っても大丈夫かな。一応ほら、大洗高校がお世話になった学校の隊長なわけだし。困っていたら何かお礼替わりにしたいものだ。
「ここら辺ですかね」
「そうね。それとさっきから気になっていたのだけれど……重くないの?」
ダージリンさんが気にしているのはきっと俺の頭の上に乗っている猫のことだろう。下に降ろしても懲りずに何度もよじ登ってくる。その度に爪が服に食い込んで痛いので諦めた。周りの目が気になるが意外にも俺の方を見る人は少なかった。
「奇跡的なバランスで落ちないんですよこの猫。見た目以上に楽ですよ」
「そうなの……」
ダージリンさんと俺with猫は少し賑わっている中を巡っていると「全国紅茶祭」の看板が見えたのでそこへ向かう。
「財布は持っているんですよね?」
「ええ。その心配はないわ」
「分かりました。どうしようかな。飯も売ってるとこあるしここで昼飯済ませるか。ダージリンさんはあのら辺にしか行かないんですよね?」
「ええ。本当だったらお土産の一つでも買いたいところだけどね。それは後にするわ」
「そうですか。俺はそこら辺の屋台で食べ物買って食べとくんで後から見つけに来ます。結構時間かかるでしょ?」
「そうね。聖グロリアーナ女学院の代表生として恥ずかしくないものを選ばないといけないから」
「そういえばそんな話でしたね。他に一緒に来ている人がいるならその人たちもここに来ているかも」
「確かにその通りね。ローズヒップはともかくアッサムとペコは来るでしょう」
俺とダージリンさんは一旦分かれて別行動をすることになった。えーと鮭弁当とかないかな?
「お、ラッキー。すぐに見つかった。滅茶苦茶良い匂いするな」
1周するまでもなくすぐに見つかった。しかしそこそこ時間がかかるらしい。クーラーボックスみたいなのに入ってる鮭を捌くとこから始まるようで、他の一緒に入っている料理も中々凝っているのが原因のようだ。別にそこまで腹が減っているわけじゃないから素直に待つことにした。
にゃーんと猫が鳴く。頭から膝上に降ろし、猫の体を撫でていると大人しくなった。実家ではペット等は飼ったことが無かったので新鮮な気持ちだ。確か今の俺の家もペット禁止では無かった気がする。でも正直餌代とか病気をした時の費用とかが積み重なると馬鹿にならないので飼うつもりはない。俺みたいな奴にも懐くということは人慣れをしていて、他の人にも懐くのだろう。
そんなことを考えていると、あることに気づいた。あれ、この首輪のマークってダージリンさんが着ていた制服に描かれていたものと同じじゃないか? ということは聖グロリアーナの学園艦から遥々俺の家までやって来て侵入してきたことになるのか。なんでそうなるホワーイ。
「お、出来たか」
完成したようなので、屋台から料理を受け取る。美味しそうだ。再び猫が鳴いた。はいはい分かってるよ。
「猫舌って言葉があるくらいだし焼きたての鮭はまずいよな。ちょっと待ってろ」
俺は焼き鮭の半分だけを細かく分けると、一緒についてきた容器の蓋に置く。猫が食べてはいけないので膝上に固定した。
「いただきます。……美味い」
味は絶品の一言。大洗に来て二番目に美味しいと感じたかもしれない。付け合わせの高菜やひじき和えも美味しい。バランスの取れたザ・和食って感じの料理だ。これで500円はお得すぎるな。今度俺もこんな感じの味付けで作ってみるか。試食はまあ、西住にでもしてもらおう。コンビニ弁当よりは体に良いだろう。
「ほれ、冷めたぞ。食って良し」
俺が膝から猫を降ろすと猫は真っ先に冷ました焼き鮭に食いついた。しかしまだ猫には熱かったようで何度かに分けてちまちまと食べている。俺と猫が食べ終えたのはほぼ同時だった。「食べ終えた容器はここへ」と書かれていたのでそこに捨てに行った。勿論猫を俺の頭に乗っけて。
「え? もしかしてあれって」
俺が捨てに行った時、その少し先にある路地裏のような場所に古びた看板を見つけた。えーと、何々? 「老舗のアンコウ料理店」かな。・・・・・・え。
「今回は予想より早くミッションコンプリートしそうだな。と思ったけど前回はここからが遠かったのか」
どうしようか。取り合えず路地裏に面している店の人に尋ねてみようか。
「すみません」
「はい! 一名様でしょうか?」
「あ、その自分はここの店長に用がありまして、今ここにいらっしゃいますか?」
「あー、すいません。今は店長は外の販売会の周りで屋台開いているんです」
「何という名前の店ですか?」
「『干し芋じゃらん』ですよ。あそこの中心より奥側に店を建ててます。恐らくそこにいると思いますよ」
「ありがとうございます」
さて、前回は大将に聞いたら教えてくれたけど暗号ありきだったな。今回はそのようなものは見つけていない。何にせよ取り合えず行ってみるしかないか。
俺が店を出る前に店員から話しかけられた。
「あの、良かったらこれどうぞ。その猫さんが気に入ってくれれば良いんですけど」
「かつお節ですか。えーと、これいくらですか?」
「いえいえ量も少ないですしただでいいですよ」
「そういえばナチュラルにペットを店内に連れてきてましたね。すいません。頂けるのならありがたく頂戴します」
「はい。私実は家で猫3匹飼っていて、このかつお節が好物なんですよ」
「なるほど。ありがとうございます」
思わぬ収穫(猫にとっての)があった。しかし、さっき食べたばかりなので一旦時間を置くとする。最悪ダージリンさんに渡しておけば後から学園艦で食べるだろう。
俺は言われた通りの場所へ向かった。
「いらっしゃい」
「すみません。あそこにある店の店長さんで間違いないでしょうか」
「ん? 俺に用があるのかい?」
「はい。実はこの写真なんですけど」
俺は例の写真「老舗のアンコウ料理店」と書かれた看板が路地裏に置いてある写真を見せた。
「この写真の場所がどうやら店長さんの開いている店の隣の路地裏っぽいんですよね。それで、何か戦車に関わる情報をお持ちではないでしょうか。ティーガーとかの」
「……君は大洗学園の生徒なのか?」
「そうです。名前は下田平野といいます」
「下田……もしかして君下田さんの孫さんか!?」
「多分そうですね。それで、何かご存じですか?」
「ああ知ってるとも。でも、あー。すまないな。下田さんから戦車の履帯を昔預かっていたんだが……」
「はい」
「今はそこの販売会の中心にある戦車像の履帯にしてるんだ。丁度履帯のパーツが一昨日に無くなってな。急遽使わせてもらったってわけだ。だから販売会が終わったら持って行っていいぞ」
「そうなんですか。ありがとうございます。でもそんなりすんなり渡してくれていいんですか?」
「いいさ。それに俺はこの前の大洗学園の試合で大興奮したんだよ。多分戦車道で使うんだろう?」
「そうです」
「なら断る理由がないってもんだ。それに下田さんの御孫さんとくればいよいよだな」
「店長さんも俺の爺さんと関係があるんですか?」
「まーそんなこった。俺は元々戦車道が好きでな。昔下田さんが大洗学園の講師をやっていた時、その試合が大好きだったんだよ。何回か話もしたことがある。大洗学園で戦車道が廃止されるって決まった時にゃ俺はがっくり来たもんだよ。でも、その時に下田さんからあの履帯を預かったんだ。『いつかこれを受け取りに来る人間がいるから持っといてください』ってな」
「そうなんですか」
俺の爺さんは色んな人に尊敬されていたんだな。俺もいつか何かを極めて、誰かに尊敬される日が来るのかな。そんなことを考えつつ、店長さんに別れを告げると、ダージリンさんを探し始めた。
「お、いたいた」
金髪にあの制服。すぐに見つけれた。
「色々俺の用事は終わりましたよ」
「あら、下田さん。ごめんなさいね。まだこちらは終わりそうにないわ。それと」
「こんにちわですわ。この度はダージリンさんがお世話になりました。感謝します」
茶髪の低身長の女の子がその場にいた。制服がダージリンさんと同じってことは聖グロの人か。あと金髪の人とピンクの髪の人もいるな。恐らくこのピンク髪の人がローズヒップさんだろう。もう雰囲気が猪突猛進って感じだ。
「私からもありがとうございます、ですわ!」
「ローズヒップ、大声を出さないで頂戴」
「分かりました、ですわ!」
「下田様、私からも感謝の言葉を言わせてください。それとダージリン、私のデータによると右から2番目の紅茶が良いかと」
「ありがとう、アッサム」
「皆と合流出来たんですね。それじゃ……君、名前はなんて言うの?」
「私ですか? 私はオレンジペコですわ」
「なるほど」
そういうあだ名なのね。別に本名を知りたいわけでもないしいいけど。
「この猫、多分聖グロで飼われてたやつだと思うので持って行ってもらってもいいですか?」
「あ、この猫私が連れてきた猫ですわ! ありがとうございます、ですわ!」
「ローズヒップ、貴方ね……」
「なんだか忙しそうなので一旦俺は離れておきますね。俺の最後の用事はこの販売会が終わってからありますし」
「その用事とは?」
アッサムと呼ばれた女性が聞いてきた。この人はあれだな、俗にいうデータキャラってやつか。リアルでは初めて見た。
「あの中心にある戦車の履帯なんですけど、あれ大洗学園で使うんで持って帰りたいんですよ」
どうやって運ぶのか。俺を含めて、ダージリンさん、アッサムさん、オレンジペコさん、ローズヒップさんの5人なら運べると思うが、他校の人だしな……。あれはここに保管しておいて、後日大洗の人と運ぶのもありか。
「そう。では最後にあの履帯は私達が運びましょう。今日一日のお礼でしてよ」
「いいんですか? いってはなんですけども他校の人でライバルでもあるわけですし」
「私達はどんな相手にも全力で戦いますの。ここで大洗の戦力が増えたとしても構いません。それに大洗とはもう一度戦いたかったから大洗が勝ち上がる為にも手伝いたいのよ」
「聖グロと大洗って確か反対のブロックでしたっけ。戦うなら決勝戦か準決勝くらいになるって感じですか。確かに今の戦力だったらあれが無いと難しいですよね。ありがとうございます。お言葉に甘えさせてもらいます」
「いえいえ」
ダージリンさんが良い人で助かった。これで一件落着といった感じか。結局俺のパソコンとスマホは使えないままだからどうにかしないといけないのは変わらないけど、一番の用事が終わるのならいいや。
「じゃ、向こうで待ってます。猫は多分邪魔だと思うのでもう少し預かっておきますね」
「ええ。そうしてくれると助かるわ」
「♪~」
「ブリティッシュ・グレナディアーズですか。とても素晴らしい選曲ですね」
「ブリティッシュ……なんて?」
待ってる間猫と戯れていたのだが、無意識に口笛を吹いてたらしい。なんとなく聞いたことある曲を吹いてた、と思うのだが名前は知らなかった。やってきたアッサムさんが曲名を言ったが全然聞き覚えないな。
「ブリティッシュ・グレナディアーズ。イギリスの伝統的な曲ですよ」
「はあ、そうなんですか。そういえば聖グロって全体的にイギリスの雰囲気を取り入れている気がしますけどそれは何故ですか?」
「それも我が校の伝統ですわ」
「一応確認しておきますけど皆さんは日本人なんですよね」
「……」
無言でこれ以上言うなと言われた気がする。
「やっぱり隊長と離れて結構焦ったりしましたか?」
「はい。ですがこれは隊長のせいというよりローズヒップとそれに振り回された私達のせいというか……」
「もしかしたらローズヒップさんを他校の学園艦に連れてきたこと自体が悪手だったのでは?」
「そうですわね……。しかしダージリンはローズヒップのことをたいそう気に入ってるようですので」
「手のかかる子供みたいな感覚なのかな。この猫みたいに」
「ふふっ。確かにそうですわね。それにしても良く懐いているんですね」
「なんでだろう。でもこの猫俺のパソコンとスマホ使えなくした犯人説あるんだよなあ」
「あら? 何かあったのですか?」
「パソコンの配線とスマホの充電器のコードが千切れていたんですよ。だから家でネットを使う手段が無くて、ネカフェに行こうとしてたらダージリンさんに出会ったって感じです」
「なるほど。最初にダージリンを見た時どう思いましたか?」
「癖が強いなあ、と。迷子になってスマホも持ってないのに紅茶とティーカップはちゃんと持ってるのは普通じゃないと思いますよ」
「イギリス人はどんな時も紅茶を手放さないのですよ」
「日本人でしょあなた達……」
「……」
「すみません」
「いえ。それよりもほら、終わったようですよ」
「本当だ。でも思ってたより荷物多いですね。これ履帯運べなくね」
「大丈夫です。私が全て持ちます。ローズヒップとダージリンとペコなら一つは運べるでしょう」
「あと一つは俺か。ま、無理っぽかったらもう一度取りに来るか」
販売会が終わり、中心の戦車像の解体が始まった。俺がそこに行って事情を説明すると、既に話は伝わっていたようで、すんなり渡してくれた。
「お疲れ様でした。早速で申し訳ないんですけど、3人でその履帯一つ運べます?」
「ええ。構いませんことよ」
「がってんですわ!」
「ローズヒップさんは力持ちですから恐らく大丈夫ですよ。あと一つは下田さんが一人で――」
「あれ? 平野じゃん」
オレンジペコさんが俺の負担の心配をしていたところで、どこからか俺を呼ぶ声が聞こえてきた。この声はもしかして――。
「姉貴!?」
「久しぶりね!」
「ここでいいの?」
「ああ。ダージリンさん達も降ろしていいですよ。ちょっと店員さん呼んできます」
まさかのゲリラゲストの姉貴が来たことで俺の負担は一気に軽減された。昔から力が強かった姉貴だが、大学生になった今はさらにパワーアップしていた。
戦車俱楽部に着いた俺達は一旦履帯を降ろし、俺は店員の元へ行った。ここに置いておいてもらうためだ。
姉貴side
「さて、この中で平野のお嫁さん候補は誰かな?」
「「「え?」」」
「あれれ? 平野は大洗で共学のはずなのに男子が自分だけ―とかずっとボッチとか言ってたから平野と仲良くしているってことはそういうことじゃないの?」
「あのー、私達は大洗学園の人間じゃないです……」
「そうなの? ごめんね。勘違いしちゃった! それじゃ、あの紅茶の販売会のために大洗に来た他学園の人達ってことかな?」
「そうです」
「当ててみるよ。……紅茶……聖グロリアーナか!」
「当たりですわ。どうして分かったのですか?」
「私戦車道やってるのよ。紅茶を大事にしている強豪校があったのを思い出したの」
「高校でも戦車道をやっていたのですか?」
「そうよ。継続高校でやっていたわ。ごめんね。本当だったら最初に制服で気づくべきだったわよね」
「いえ。ところで戦車道は今でもやっているんですよね? どんな役職をされているのですか?」
「んー言っちゃう? 言っちゃおうか! 私は操縦主をやっているよ」
「操縦主として、何か気を付けていることとかはありますか?」
「特には無いかな? 私は命令に従って動かしているだけだし。ってこんな話したところで何の役にも立たないよね。ごめん!」
「命令通りに役割をこなせるだけでも凄いと思います。是非貴方様のデータを拝見したいのですけど、よろしいですか?」
「勿論いいけど、本当に役に立たないと思うよ?」
「因みにお名前はなんというのですか?」
「そういう貴方はダージリンさんかな? さっき平野がそう呼んでたけど」
「ええ。私はダージリンといいます。よろしくお願いしますわ」
「ああ、私の名前言ってなかったね。そうだな……君たちあなた達みたいに私の大学内での呼び名で名乗ろうかしら」
ここはかっこよく決めたいね。んんっ……。あ、あ。
発声練習をする。よし、これで決めようかな!
「ミハエルよ。せっかくだから覚えててね!」
僕は決め顔でそう言った。
「何やってるの姉貴……」
戻ってきた弟に引かれた。
「では、私達はこの辺でお暇しまさせていただくわ」
「今日はありがとうございました」
「こちらこそありがとうございました、ですわ」
「ありがとうございました」
聖グロの4人と別れの時間が来た。既に日は落ちており、ひんやりとした空気が肌を触る。
「ペコ、持ってきて」
「はい。ここに」
ダージリンさんが俺に渡してきた袋には縦長の箱と小さい袋があった。
「開けてみて頂戴」
「……ティーカップですか。いいんですかこんなに高そうなのを」
「いいのよ。本来であれば聖グロリアーナは好敵手と認めた者にしか渡さないのだけれど、これは私個人からの贈り物よ」
「ありがとうございます。もう一つ入ってたこの袋に入ってるのは茶葉ですか」
「私のおすすめの茶葉よ。飲むとリラックスできるわ」
「なんて名前の茶葉なんですか?」
「さあ、なんでしょう? それは貴方が色んな紅茶を飲んでいくと分かるかもしれないわね」
「さいですか。勉強に疲れた時とかに飲みますね」
「ええ。是非そうしてちょうだい。これで本当にさよならね」
「はい。今日は色んな意味でお疲れさまでした」
ずっとローズヒップの腕の中にいた猫が別れを察したのか、こちらを見て鳴いた。さっきからずっとローズヒップさんがうるさくしてなかったのは猫の相手をしていたからか。
ダージリンさん達は自分の学園艦に戻っていった。こうしてみると「でっけー
「さて、帰りましょうか!」
「で、姉貴はいつまでいるのさ」
「明後日までは大洗にいるよ。あ、言い忘れてたけど平野の家に泊めてね」
「いいよ。元々使ってなかった小さな部屋あるし」
「ありがとう!」
「抱きつくな……」
宝探し編 完
訂正箇所
ローズヒップは操縦主
アッサムは操縦主
ローズヒップはクルセイダーの車長でしたね……。
アッサムは砲手でした。
本当に申し訳ありませんでした!!!!