どうやら大洗の戦車に男がいるらしい   作:第六位

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3回データ飛びました。すみませんでした。
1回だけならまだしも複数回……。
今後はこういうことがないようにします。


第8話 罰ゲームです!

「三両倒して即油断とは、とんだ間抜けの集まりじゃのう……まあ、車長が車長……それも仕方ねェか……!!」

「……」

「”下田平野”は所詮……先の時代の”()()()”じゃけェ……!!」

「ハァ……ハァ……()()()……?」

「?」

「取り消せよ……今の言葉!」

「取り消すも何もその通りだけどな」

 

 正論だけどさ、ツッコまないでくれよ冷泉さん。

 現在俺は西住チーム&冷泉と姉貴と集まっていた。

 

「えっと、下田君お疲れ」

「ああ。やっぱり西住には勝てなかったな」

「でも3両もやられちゃったし、凄く強かったよ」

「完全に読み勝ったと思ったんだけどな」

「そういえばこれ、何のために使うつもりだったんだ?」

 

 そう言って冷泉が持ってきたのは俺がティーガーに積んでいた発煙筒だ。

 

「ああ、それか。本来はそれを使うつもりだったんだが急遽作戦を変更したから使わなかったんだよ」

「作戦を変更?」

「そうだ。俺が事前に組み立ててた作戦はこうだ」

 

 俺は橋を破壊したことで、次に近い橋を使わずには対岸に渡れない。それよりももっと先に行った場所でならば橋下から渡れなくもないが、俺が橋を破壊するところは相手に見せている。その時に射程に対し不信感を抱かせる。直接橋を狙うにしたら狙いがお粗末であることから俺が狙うなら体を見せる位置で確実にと思うだろう。また、相手が対岸にいることが確定してることから向かうのであれば早めに移動し、質量で押しつぶすことも考えると橋下の道は候補に外れる。西住辺りなら無意識的にここら辺の判断はするだろう。

 橋を渡った後、その先にあるのは聖グロ戦でも通った高台だ。大洗チームが高台から相手を迎え撃ち……何故か戦闘不能になったのは大洗側だったという謎のばしょ。ここから出るなら正しい手順を踏まなければならない。何故か?

 

「そこでコイツが使用されるってわけだ」

 

 俺は高台の更に上にいた。そこから相手戦車を狙うことは不可能だ。しかし出入口は塞ぐことが出来る。簡単だ。壁を壊して戦車が通りにくい地形にすればいいのだ。

 退路が封鎖されると注意は否応なしに後ろに向く。そしてそこは出口が正面しかない場所だ。障害物が一切なく、退路を封鎖するために壁を壊すならまず、正面から狙撃したと思う。だから西住達は動けなくなる。橋を攻撃したみたいに近づかないと当てられないと信じてその場で待つ。

 そこで俺は高台から発煙筒を投げ込む。するとそこは岩場が目立つ坂道だ。完全に身動きは取れなくなる。後は移動した俺達が冷泉と相手戦車の位置の記憶をすり合わせて、元いた位置に撃ちこみ、ゲームセット。その予定だった。

 

「ということは先に高台に登っていたってことなの?」

「いや、途中で引き返してた。なんとなくだが、俺がそこの射撃戦の話を生徒会室でしたこともあり、警戒して行先を変更すると思ったんだ。あとは試合結果の通りだな」

「一つ見落としてない? 平野達を倒したM3リーの行動は?」

「えーと、あれは本当にたまたまというか。一両だけ別行動をさせようってことで、本当にそれだけで……。もしかしたら下田君なら全車両まとまっていたら一気に倒してしまうかもしれないし。それに『西住流』の戦いを良く知ってるならまとまった相手の殲滅方法も分かってるのかなと思ったんだよね」

「え、じゃあ本当に最後遭遇したのはまぐれ?」

 

 俺がそう問いかけると、M3リーに搭乗していた本人たちがやってきた。

 

「なんか射撃音が近くで聞こえるなーと思ったら結構近くに先輩がいて、そしたら何故か私達の横をすり抜けようとしていたから撃ったら当たりました!」

「あの時は装填と狙撃に必死だったからな。周囲に気を配る余裕は無かった。そういうことだったのか」

「結論、やっぱ一両だけじゃどんなに強くても倒しきれないってことねー」

「いやそもそもこちらは2人だけだから。しかも俺初心者だから」

「確かに経験値が足りないってのは一番の弱点ね。大学生選抜の車両なら2人でも倒せたかもね。隊長含む3人なら確実かな」

「そりゃ大学生と比べたらそうだろうよ。年季が違う」

「んー、そう結論付けるのは早計よ。うちの隊長はみほちゃん。貴方よりも戦車道歴は短いよ」

「は?」

 

 そんな奴いるのか? というか姉貴が所属しているチームってどこだよ。まだ教えてもらってないな。

 

「まあ、そんな人もいるって話よ。取り合えずは両チーム共お疲れ様。流石に全国高校大会ではそんな敵いないだろうから気持ちは楽にしていいと思うよ」

「そりゃそうだ。そんな化け物何人もいてたまるか」

 

 俺達は一息を付き、雑談を始めると姉貴が笑顔を俺に向け、近づいてきた。

 

「じゃ、罰ゲームの内容決めよっか」

「は? 何言って」

 

 反論しようとすると姉貴が俺の手を引き寄せ、顔を近づけてきた。

 

「ここで更に距離を詰めるのよ。これくらいの空気は読んでよ」

「別に罰ゲームじゃなくても……」

「こうでもしないと平野は積極的に心の距離詰めていかないでしょ」

「……確かに」

「分かったらよし。闇鍋差し出されたって受け入れな」

「それは嫌だ」

 

 小声での話し合いが終わると女子達が何やら色々企んでいる声が聞こえてきた。特に武部はぶつぶつと呪文のようなものを唱えた後一人で悶絶している。一体彼女は何を企んでいるのか。

 

「あ、あの! 私に提案があります!」

 

 鶴の一声と言うのだろうか、一人の声によって、それまで話し合っていた者たちの声が止む。その声の主は秋山優花里だった。

 

「下田殿を1日だけ貸してもらえないでしょうか?」

「えええ!? ど、どうするつもりなの!?」

「えーと、秘密ですけど……皆さんにとっても必ず良いことになると思います」

「……本当に?」

「はい! 約束しますよ」

「……分かった。他の皆はどうかな?」

 

 西住が確認を取ると誰も手を挙げる者はいなかった。それを確認すると、西住は小さく頷き、秋山優花里に俺の使用権が渡ることになった。

 姉貴もその一連の行動を見て満足そうに頷くと、「それじゃ優花里ちゃんよろしくね」と言い残すと先に俺の家に戻っていったのであった。

 時期にその他の各々も解散していく。そんな中俺は優花里と一緒に話していた。

 

「何をするつもりなんだ?」

「そんなに怖がらなくていいですよ。少し手伝ってもらいたいことがあるだけです」

「それは戦車道関連のことか?」

「はい。下田殿には私と一緒にあるミッションを遂行してもらいます」

「ミッション?」

「サンダースに潜入します!」

 

 

 

「……これ本当に大丈夫か?」

 

 現在俺達は作業員に紛れて全国大会の第一回戦の相手であるサンダースの学園艦に潜入した後、サンダースの制服に着替え終えた所である。

 サンダースには男性もいるようだが、相手戦車等を観察するなら戦車道をやっている女性の方がいいとのことで、俺も女装している。

 

「俺の身長とこの姿はミスマッチだろ……」

「いえいえ、凄く似合ってますし美人に見えますよ!」

 

 身長180近い俺が短めのツインテールをし、頭にベレー帽を被っている姿を自分のスマホで確認する。勿論鬘なわけだが、わざわざここまでやる必要は果たしてあるのだろうか。俺は元々声真似が一発芸のようなものだったので、叫ばなければ怪しまれない程度には女声が出せた。優花里は胸に何か仕込んだ方が良いと言ったのだが、流石にそれは拒否した。

 にしても女性用の服なんて初めてだ。勿論下着はそのまま男性用なのだが、外装は女性用そのものだ。違和感が凄い。

 

「ここら辺で二手に分かれましょう。私は校内の戦車庫を目指します。下田殿は戦車道選手から情報の聞き取りをお願いします」

「あいわかった」

「……にしても凄く美人ですね。お姉さんそっくりです」

「間接的に姉貴の外見をディスってないか」

「いえいえ、本心ですよ」

「まあ、バレないならそれでいいんだが」

「もしかしたら男性から声を掛けられるかもしれないですね」

「別に男性でも情報を持ってたらそれでいいんだけどな」

 

 そうして二手に分かれた後、それらしい女性がいないかうろつきながら捜していると、ある興味深い施設を見つけた。

 

「射撃場……?」

「興味がおありですか?」

「え?」

 

 つい声に出てしまってたらしい、男声に聞こえてただろうか心配だ。そんな俺の声を聞いた近くに居た人間に声を掛けられた。

 えーと、ベリーショートの髪にシュッとした顔立ち。それにどこかクールな雰囲気を感じさせられる。俺ほどではないが身長も高い方だ。ん? もしかしてこの人って。

 

「ええ。興味があります」

「そうですか。私も趣味なんです。もしよければ先輩もやってみませんか」

「いいの?」

「もちろん。大学生でも大丈夫です」

 

 どうやらサンダース大学の生徒と間違えられているらしい。優花里はサンダース大学付属高校の制服だったが、俺みたいな高校生にしては身長が高い人間は高校内でも目立つと判断し、私服にしたのは正解だったようだ。多分だが、この女性は戦車道選手のナオミさんだ。高校3年生のはずなので制服を着ていたら高校内の先輩という言い訳も出来なかっただろう。

 ナオミさんは高校生戦車道の選手の中でも有名な砲手だ。サンダースの主力選手でもある。これはラッキーだ。是非とも情報を引き出したい。

 

「案内、お願いしてもいい?」

「勿論です」

「その、貴方の名前を聞いてもいい?」

「ナオミです。呼び捨てで構いません」

「そう。ナオミね。えーと、私は……ライフです。好きに呼んでもらって構わないよ」

 

 ライフ、ライフルから取った単純な名前だ。でも一時しか使わないであろう名前なのでこんなもんでいいだろう。

 ナオミさんについていくと射撃場の中は結構本格的なものとなっていた。流石に本物の銃弾は使わないようだが。

 

「ナオミは戦車道をやっているの?」

「はい。砲手を務めています」

「そう。ここの射撃場にはよく来るの?」

「そうですね。訓練にもなりますし頻繁に来てます」

「なるほどね。どんな戦車に乗っているの?」

「ファイアフライです。遠距離射撃に秀でた機体です」

「そのファイアフライという戦車は沢山使われているんだね」

「いいえ。もしかしてまだ私達の戦いを見たことが無いんですか?」

「そうなの。戦車道の知識自体そこまで知らないんだよね」

「そうでしたか。今時珍しいですね」

「よく言われる」

 

 一応俺は初心者であり知識も経験も不足していることには変わりない。

 その後もサンダースの戦車関連について聞きながら移動していると、自分たちの順番が回ってきた。最初はナオミがやるらしい。俺はそれを観察した。

 

「まずは拳銃。6発まで撃てます」

 

 ナオミが6発続けて発砲する。やはり本物と違って音はそれほど出ない。ナオミの弾は全て的に命中していた。流石だ。

 

「ではどうぞ」

「意外と重いんだこれ。では、私もやってみるよ」

 

 最初い一発だけ放った。結果は的の真ん中に命中。反動も少ない。これなら余裕だな。

 俺は続けて残りの5発を連続で撃った。

 

「……凄いですね。全弾真ん中に当たるなんて。やっぱり経験があったんですね」

「やっぱり?」

「いえ、こちらの話ですから気にしないでください。それよりもあの早打ちでこの精度は凄いです」

「ありがとう。他の銃はある?」

 

 サブマシンガンや狙撃銃、色々な銃を試した。久しぶりの射撃は楽しかった。

 

「もしかして射撃大会に出たことあります?」

「ないよ。ただの趣味だし」

「……戦車道で砲手、やってみませんか」

「あー、止めておく。興味はあったから。一つ聞きたいんだけど、ナオミは戦車道やってて楽しい?」

「楽しいですよ凄く。ケイ(マム)もいますし」

「? その人が隊長なの?」

「そうです。凄く明るくて他の高校と比べても断然人数が多い我が校の生徒の指揮官です。カリスマ性とその判断能力に私値は何度も救われました」

「……その人の話をもう少し聞きたい」

「分かりました。では最後にこの銃使ってみてくれませんか。私はまだ使いこなせてないんです。反動が凄くて」

「偽物がそうなら本物は更に凄いんだろうな」

「撃ったことはないですが恐らくは」

 

 ナオミが渡してきたのはAK47に似たような銃だった。あー、確かにこのタイプの銃は狙いを定めることは難しいよな。

 

「それじゃ折角だしあの動いている的を狙おうか」

 

 相談数は3つ。一発撃つと今日使ってきた中で一番反動が大きいと感じた。実際の拳銃はるかに劣るがそれでも結構なものだ。しかし的を外すほどのものではないな。

 

「……凄い」

「どうも。凄く楽しかったよ」

 

 銃を返すと俺達は施設を出た。その時に後からご飯に誘われたのだが遠慮しておいた。

 

「また、私とここで撃ちませんか」

「これでも結構忙しいからね。でも楽しかったし時間があったら来たいな。また戦車道の話も君から聞きたいし」

「結構今日は話したけど……というか話しすぎたんですけど、うちは規模がとにかく大きいからまだまだ色々話せることはあります」

「そう。それは楽しみ」

 

 流石に作戦等は教えてくれなかったが、陣形や出撃させる戦車等色々な情報を得ることが出来た。話し終えると、ナオミは重要な会議があったことを思い出したようで走ってどこかに行ってしまった。優花里が今潜伏しているのはそこだろう。グッドラック。

 

 

 

 

 

 

「ナオミさんとそんなに話したんですか!? 凄すぎます!」

「運が良かっただけだよ」

 

 大洗の学園艦に戻ってきた俺達は優花里の家に向かっていた。先ほど優花里が編集していたビデオを他の皆に見せるためだ。でも俺も優花里も欠席の連絡はしていなかったので心配されるかもしれないな。

 

「2階から侵入します」

「普通に入らないの?」

「親が心配してるかもしれないんで」

「親にも言ってなかったんかい」

 

 身軽な動きで屋根を駆け上がる優花里に続いて俺も上る。そして優花里が窓から勢いよく飛び込んだ後、俺はゆっくりと中へ入っていった。

 

「おじゃまします」

「え、ゆかりん!? それにえ、誰その人」

「ああ、この人は下田殿ですよ。我々はサンダースに潜入して参りました!」

「そういうこと。俺もいつまでこんな服装してるんだ」

「え!? 本当に下田君なの?」

「ああ。本当に変装上手くできてるみたいだな」

「凄く美人で下田さんのお姉さんとはまた少し違った美しさを感じます」

「……似合っているぞ」

「というか何故お前らはここにいる。優花里、もう呼んでたのか?」

「いえ、そういうわけじゃ……」

 

 どうやら優花里を心配して皆来ていたらしい。好都合ではあるな。

 

「サンダースから奪い取った情報が詰まったビデオです。ご覧あれ!」

 

 ビデオが流れる。途中で優花里の着替えシーンが流れたがそこは編集しなかったのな。それと西住こっちを見ない。

 その後は情報共有をした後、少しの作戦会議をして解散となった。

 家に帰るともう既に姉貴の姿は見当たらない。帰ったのだろう。なんとも騒がしい人だ。でも、ありがとうな。

 

「ナオミさんに言われた射撃のコツ、練習で試さないとな」

 

 買ってきたガムを噛みながら呟いた。




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