BattleSpiritsーランチェスターー 作:あ ミロク
まず君の名前を教えてくれ……。
最初に聞こえた言葉に、青年は首を縦に振った。
そうか、なら質問と行こう。……君は明るい性格? それとも暗い性格?
青年は後者を選ぶ。首を横に振った。
君の好きな色は?
“紫”。紫色は姉の好きな花の色だ。青年はそう言う。
紫か……それなら君の色は紫。これだけ覚えていて。
青年は首を縦に振った。
好きな言葉とか、物はあるかい?
格好いい……お酒?
お酒? 君は未成年じゃないのか。
憧れの人がお酒を飲んでいる姿が格好いい。青年の目に光が宿った。
ふふ……。なら、君にぴったりの系統がある。良かったね、空きがあって。それだけで十分だけど、最後にもう一つだけ質問しておこうかな。
なに? 青年は言う。
声の主は笑った気がした。
君はどんな形であれ、人を助けたいかい?
青年は迷うことも無く首を縦に振った。
よろしい。
では、名も無き君。
これから始まる物語はかつてない絶望と欲望に包まれている。
それでも大丈夫かい?
「迷いはない」
……健闘を祈るよ。何があってもずっと君を見守っているから。
****
「それではこれより、バトルスピリッツ大会予選を開催いたします。大会参加者は専用バーコードを読み取り、指定の席に着いてください」
監督者がそう言うと、参加者は一斉に壁に貼られたバーコードの前に立ち、スマホを片手に集まっていた。バーコードを入力すると、自分の対戦相手や席が分かる仕組みだ。
その一人、暁亮(あかつき りょう)はスマホで確認し、指定の席に着くと、既に座っていた対戦相手と向き合った。
「久しぶりだな、初命」
対戦相手は幼馴染の月夜初命(つきよ はじめ)。小中からの知り合いだが、高校で離れ、大学に入ってからも会うことは無かった。だからこうして、趣味で再び会えたこと、亮は嬉しかった。
その嬉しさが伝染したか、初命も微笑み返してきた。
「ああ、久しぶり。元気にしてたか?」
「まだ続けてたなんて思わなかったぜ。なにぜ、俺が進めたからな、バトスピ。俺が居なくて、もうやめたのかなって」
「向こうにも共通の趣味友がいてな。対戦相手には困らんかった。だから飽きも無く、こうして続けてる」
そう言いながら初命がデッキケースからデッキを取り出し、卓上に置いた。スリーブも初命らしい絵柄も無い、一色のシンプルなものだった。
それに応えるように、亮もデッキを置いた。周囲をよく見ると、既に他の参加者も席に着いている。ゲームが開始されるのも時間の問題だった。
いつものように監督者のルール説明を適当に聞きながら、二人は互いの視線を交合わせた。
勝った懸賞品などどうでもいい。
今はただ、こいつと戦いたい。
二人の闘志が燃え上がる。
「なら、お前がどれだけ強くなったか……見せてみろよ」
亮はにやりと笑う。
「当然だ。僕がどれほど強くなったか。今一度、君にあの日の屈辱を返してやる」
互いにデッキをシャッフルし、プレイマットのデッキの位置に置いた。そして、手札を四枚引く。
監督者は参加者へと言葉を上げる。
「それではバトルスピリッツ大会予選。試合を開始します」
亮と初命は声を上げた。
ゲートオープン! 開放!
****
夕方、河原の道を二人は歩いていた。
初命は懸賞品を手に、そのカードの効果を読みながら、歩を進めていた。亮はその隣でぶつぶつと文句と自分のプレイングについて独り言を垂らしている。
「大体、あそこで氷刃結界なんてカード打ってなきゃ俺が勝ってたのに……」
初命は微笑みながら、
「惜しかったよね。僕の手札が完璧すぎた」
「お前のそのスマイルユーモア。どうにかぶん殴りたい」
そう言って、デッキケースから一枚のカードを取り出す。
“爆覇龍エクスプロード・ドラゴン”
転醒スピリットである。
秩序の破壊者、革命の青き号砲。
その名の通り、破壊と革命のXレア。A面では相手のスピリットを殲滅し、B面になると、デッキ破壊を持つ強力なカードだ。
今日は二体も出せて、このままライフを削る作戦に出たが、まんまと打ち止めをされ、初命からのカウンターを喰らってしまった。“白起幻”とは二度と対面したくない、亮はそう思った。
「青と赤を混ぜたデッキか。やっぱ、昔から変わらないね」
「そっちが言うか。お前の方も相変わらず白じゃねぇか」
「そうだね、お互い」
そう言って、二人は笑った。
「そうだ。連絡先交換しねぇか?」
「そうだね。君とはあの日以来、連絡がついてないし」
と、互いにスマホを取り出す……その時だった。
ヒラリ……ヒラリ……。
一枚のカードが空から降った。
そのカードが亮の頭の上に落ちた。
「ん?」
亮は自分の頭に乗ったカードを手に取った。
初命は興味ありそうにそのカードをまじまじと見た。
「何だい、それ」
「さぁ……バトスピの、カードみたいだけど……。なんだぁ、これ? 初めて見るスピリットだ。お前、知ってるか?」
と、亮はカードを初命に見せる。
だが、次の初命の反応に亮は首を傾げた。
「ん、なんか知ってんのか?」
「なぁ、亮。俺には何も見えないぞ」
「は? どうゆう……」
「だから、カードはカードでもスピリットはどこに描かれてるんだって話だよ」
「えっ?」
亮はカードの表面を改めて見る。転醒カードでは無いのは明らかなのだが、初命にはスピリットが見えていないとはどうゆうことだろう。
確かに、そこにスピリットがいるのだ。
赤き龍、エクスプロード・ドラゴンにも劣らない、格好いい……ドラ…………ゴン、が……。
……………………。
吾の力を受け取れ。お前の全てが手に入る。
初命は亮に声を掛けた。
「亮? 何、惚けて……」
亮は俯いたまま、そのカードをじっと見ていた。
初命は亮の肩を持とうとした。
「おい。亮、どうかした……――」
すると、亮は初命の手を払い除ける。
その行動に思わず驚く初命。亮の視線を合わせようと彼の顔を両手に持った。
「おい! 暁亮! 何してる!」
刹那。
「その手を放せ、愚民が」
初命の体が何かにぶつかり、吹き飛ばされる。道の真ん中で何回もバウンドしながら転げ落ちていく。何かにぶつかったのは右腕だ。その右腕を見てみると、爪のようなもので引っ掻かれた跡がついている。その痕から細々と流れる血。これは現実なのか、夢なのか。
初命は神様に祈るほどに夢であることを願った。
「亮! お前、一体何を……ッ‼」
亮はまるで強者の笑みを見せる。
「だから言ったろう。吾の肌に触れた愚民、すなわち貴様を追い払っただけだ。何を簡単なことを言わす」
「お前……誰だよ」
そう言った途端、『知らない亮』は不敵笑みをもう一度見せた。まるで自分を鼓舞するかのように。初命に向けるそれはもはや友達とは違うものだ。
「俺の名はバアルサプレッサー。貴様ら人間が言うスピリットならば、“炎害龍王バアルサプレッサー”。黙示に存在する龍王だ」
初命は目を見開き、ゆっくりと立ち上がる。
「バアル、サプレッサー……」
亮――バアルサプレッサーは初命から落ちたデッキケースを見て、問う。
「貴様もカードバトラーなのか?」
「え? ……あ、ああ」
「この依り代の友が貴様なのだろう。そして先の戦いは貴様が勝ったのか」
「そ、そうだが、なぜ分かった?」
「なぁに依り代の記憶は俺に共有される。何も共有は記憶だけではないぞ」
と、バアルは人差し指を出し、右のこめかみへと当てる。
初命はすぐに何をするか、何故か分かってしまった。
「止めろ‼」
その時、亮の背後に巨大な赤い龍の姿がフェードしたように見えた。幻か、そんなこと関係ない。こめかみに人差し指が刺さってしまう前に……!
だが、その指は寸前で止まった。
「詰まらん反応だ。まるで人間だな。やはり貴様など愚民で十分だ」
バアルの顔は興ざめしている。
初命は考えた。
どうにか亮を連れ戻すことを考えないと。こいつはヤバイ、その勘が現実になってしまう前にだ。
その方法が無いのか?
「……」
初命は地面に落ちた自分のデッキケースを見た。
貴様もカードバトラーなのか?
バアルはそう言っていた。それに依り代とも。
亮が変わってしまった理由、それは何だったか。
空から落ちた一枚のカード、あれからだ。亮がまじまじとカードを見たせいで、ちんちくりんな奴に憑りつかれてしまった。
それならば、一つ考えられる方法があるのではないか?
「……お前、バトルできるのか?」
地面に落ちたデッキケースを拾い、初命はバアルに向き合った。
バアルはむっとして、彼の顔を見つめる。
「ほう。吾に戦いを挑むというのか?」
「お前に勝てば、亮が帰ってくる……なんとなくそんな気がする…………」
初命も不敵な笑みを浮かべた。
ほう、とバアルは感心した。
「んふふふふっ…………。いいだろう、貴様の言いたいことは分かる」
「……」
「お前の思う通りだ。俺を一度でも倒せば、俺の主導権は薄くなり、こいつに権利が移る。しばらくは俺も身を顰める。だが、前提として……俺に勝てるのか?」
「勝つさ。さっきみたいに、ギリギリになってもね」
初命の顔に希望が生まれた瞬間である。
バアルは舌なめずりをした。
「いくぞ」
「ああ!」
ゲートオープン、開放‼
****
誰かがその様子を見ていた。
どうも初めまして。
初めての創作小説を書きます、ミロクです。
バトスピは復帰勢で久々にやって、とても楽しいです。
後先考えずに書いてしまったものなので更新も止まるかもですね。
やる気に満ち満ちず、やる気のない肩を抜く感じで更新していきたいと思います。
では、また次の話にて……。