伏黒甚爾の逆行奇譚   作:ぴーなつ

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・現時点における原作との差異
伏黒甚爾が五条悟から殺された直後に逆行。なので渋谷で復活して戦った記憶はなし。
天内暗殺を請け負ってないので、五条悟VS伏黒甚爾はなし。
天内理子・黒井美里は生存しているものの、夏油傑は結局離反して、その後の話。

話全体として、全力で「純愛」目指します。よろしくお願いします。




2.再会

甚爾は飛行場で借りた車で移動しながら、虚実を織り交ぜ巧みに誘導して五条悟に情報を吐かせた。問い詰めて判明したのは彼は別にただ遊びに来た訳ではなく、天内理子の護衛の為に沖縄に来ていたという事であった。

極秘も極秘だったらしく、高専関係者にも呪術師にもばれないようにしたかったらしい。

 

その話を聞きながら、甚爾は前回の記憶と今回の話のすり合わせを行った。

おそらく天内理子は天元と同化せず、高専に勘付かれないようにひそかに沖縄に逃がされていたのだろう。そうとなると、天内理子の生存を知る人間は非常に限られてくる。誰が敵か大方の予想はついたものの、確信は得られてないので五条相手に更に質問を重ねていく。

 

「恵達を攫ったやつは誰か分かんのか?」

「……おそらく。俺はそれを確かめるために此処に来た。」

「もったいぶんな」

「ついこの前、百人を超える一般人を呪殺した最悪の呪詛師……夏油傑。俺の親友で、昔、天内の護衛と…あと()()を一緒に行った元呪術師。」

「へえ、術式は?」

「呪霊操術。おい、っていうかもっと他に突っ込む所あっただろ。」

「俺に関係ねぇ話をわざわざ深堀りする趣味なんぞねぇよ。それにありふれた悲劇だろ。理想と現実の狭間で折り合いを付けられず、術師をやめる、呪詛師に落ちる。よく聞く話だ。」

 

甚爾の予想は当たっていた。前回、殺しかけた呪霊操術の使い手がまさか呪詛師になっているとは予想はしなかったものの、敵が誰かははっきりした。

 

呪術師という奴らは、頭のイかれた連中が多い。逆に言うと、まともで真面目でお優しい人間はやっていけない。そんな奴らの多くは、理想とはほど遠い非道な現実に潰され絶望し、いずれ限界が来る。もしくはクソったれた奴らに利用されるだけされてその心が擦り切れてしまうのだ。

そこで100人呪殺し高専を出奔した例は初めて聞いたが、大方我慢の限界が来たのだろうと甚爾は考えた。

 

「…アンタ、マジで何者?呪力0のゴリラな事しか分かんねえんだけど。」

「誰でもいいだろ、今回の利害は一致してんだ。そろそろ本題に入るぞ。何でその呪詛師はそこの嬢ちゃんたちと恵を狙った?」

「分かんねえ。アイツが何考えてるのか、何をしたいのか、俺は一番近くに居たはずなのに何も。でも、術師の仲間を増やしてるっぽいし、逃げたとはいえ危険な立場の天内に接触してくるだろうってのは分かってたから護衛に来た。多分、恵君は巻き込まれただけだと思う。彼、()()()()側だろ?」

「………ああ、そうだな」

「アイツが攫った術師やその卵をいきなりひどい目にあわせたりはしないと思うから、そこは安心して。ところでさあ、この車どこに向かってんの?」

「誘拐犯どもの所だ」

「残穢なんて見えないけど?」

「匂いを追ってる。人の残痕なんて、残穢以外にもいくらでも残んだよ。」

「何ソレ、やっば。俺が言うのもなんだけどアンタ人間やめてね?天与呪縛のフィジカルギフテッドにしたって限界があんだろ。そんなんなら車なんて使わず走った方が早かったんじゃねえの?」

 

甚爾は五条の言葉に何も返さず、バックミラーを見た。後部座席で、怯えながら静かに泣いている津美紀とそれを懸命に慰めている天内理子が鏡に映る。甚爾の視線がどこに向いているか把握した六眼の男は、甚爾の意図を理解したらしく顔をしかめた。

 

「アンタ、どう見ても子煩悩な親に見えないけど意外と二人を大切にしてんだな。」

「どうだかな。基本は放置で、家に帰るのもぼちぼちだ。」

「前言撤回、やっぱクソ。行動ちぐはぐで意味不明なんだけど、どんな心境?」

「……俺は呪われてんだよ。」

 

そうこうしているうちに、五条の携帯が鳴った。甚爾が横に視線を向けると携帯の画面には馬鹿野郎の文字が浮かんでいた。

親友とは言え虐殺を行った呪詛師の連絡先を消しもしていない五条にも、五条悟を捨てきれず携帯を買い替えもしていない夏油傑にも呆れ、両者とも甘すぎると甚爾は表情をゆがめた。

 

そして聞き耳を立てずとも勝手に耳に入ってくる会話を盗み聞いた。現在の居場所と恵達の無事、そして待っているとだけ告げて夏油傑は電話を切ったようだ。すぐに切れた電話に目に見えて苛々し、両手で頭を掻きむしりながら助手席でうなだれる五条に甚爾は少しの違和感を覚えた。ここまで、この坊ちゃんは精神的に甘ちゃんだったかと。

 

「どうせ聞こえてたんだろ、場所。」

「最初から向かってる所だよ」

「どうする?」

「何が」

「役割分担。アンタも俺も、後ろの二人を守りたい。それと奪還しないといけない人質もいる。合理的に考えればどっちかに専念すんのがセオリーだろ。」

「俺が人質奪還だ。今のオマエにリスクが高い方を任せる気にはなれねえな。それに俺の事は向こうに割れてねえから意表を突ける。」

「……アンタにできんの?相手、特級術師だけど。」

「信じろなんて寒い言葉を吐く気はねぇが、まず間違いなく可能だ。」

「黒井さんに傷一つでも付けてみろ、後でぶっ飛ばす」

「それはこっちのセリフだ」

 

そうして車を飛ばし、夏油に指定された場所に着く。昔栄えていたであろう痕跡が残る、古臭いレタリングでホテル名が書かれた、廃れた観光ホテルだ。海のすぐそばに建ってはいるが、立地条件が良くないのか周りにはその廃墟以外何もない。ホテルの周囲には帳が降りていた。

海風で分かりにくいが血の臭いはしない、ひとまず甚爾は安心しながら車を止めて全員を下ろす。

 

「津美紀、俺のいう事聞けるな?」

「うん。」

「この白髪男と嬢ちゃんの傍を何があっても離れるな。分かったな?」

「わかった。ねえ、お父さん。恵は……」

「大丈夫だ」

 

そうして、気配を限界まで消して甚爾は結界の中に何も無かったかのように侵入し、恵たちがいる方へ向かった。背後で五条が意味わかんねぇという言葉と共に、息を飲む気配がした。この五条悟は伏黒甚爾を知らない、妥当な反応だろう。

 

侵入後、甚爾は廃ホテルの中の最上階へと足を進めた。特に急ぐことなく、ゆっくりと、焦らず冷静に、慣れない事をするのだから常より用心するのに越した事はない。

辿り着いた最上階のオーシャンヴューが素晴らしいスイートと思わしき部屋の中に居たのは、呪霊操術の使い手と数名の術師であった。古くなったドアがきちんと閉まっていなかったので、甚爾は中の状況を把握するためこれ幸いと隙間から様子を盗み見る。

 

恵と黒井は手を縛られた状態でソファに座らされていたが、乱暴された形跡はない。

夏油が自身の仲間になるように黒井を説得していたが、説得されている彼女の顔は険しい。恵も、眉間に皺が寄っている。

 

「理子様と私に貴方がたの仲間になれと言うのですか。」

「その通り。貴女たちの生存を知るのは悟と私しかいない。高専から逃げ隠れている今、危うい立場に居るのは分かっているのでしょう?私なら守れる。だから、理子ちゃんと一緒に来てくれませんか?ああ、もちろん恵君もだ。」

「それで、貴方がたと術師のみの世界を作ると。」

「そうです。呪力も術式も無い者はこの世界にいらない……淘汰されるべきだ。貴女がたも、のうのうと生きる非術師に思う所はあるのでしょう?」

「…折角のお誘いで「ふざけんな!!それなら津美紀はどうなる!誰がお前なんかについて行くか!!」」

 

黒井が話しているのを遮って恵がそう言い切ると、夏油は恵の方へ手を伸ばしはじめた。

その姿を見て、甚爾は二人以外の全員を瞬殺する事も考えた。しかし、今回の最優先事項は人質の奪還である事を思い出しやめた。下手に追い詰めると、窮鼠猫を噛むを地で行く術師は多いのだ。加えて、相手は呪霊操術の使い手。ここは下手なリスクを取るべきではない。

 

それに、格納庫の呪霊を取り出し、武器を取って相手を殺す手間をかけるより二人をさっさと安全圏へ連れていく方が速い。そう判断したや否や、甚爾は一瞬で部屋の中に侵入した。そして、恵に夏油の手が届く前にその左手をへし折りドア近くへと投げ飛ばした。夏油の巨体が吹き飛ばされるのに巻き込まれ、派手な音を立てて高級そうな机が砕ける。

 

「俺相手に二回も生き残るなんて、運が良いな」

「っっ誰だ!!!!」

「そこのガキの親だよ、じゃあな誘拐犯。」

 

夏油含め、そこに居た数名の術師が術式を展開し攻撃してくる前に黒井と恵を担いで窓を蹴り破り、甚爾は最上階のベランダから飛び降りた。

二人は何が起こったか全く分かっていない顔をしていたが、恵は抱きしめられているのが父親の逞しい腕だと気づいて緊張を解いていた。

 

「舌噛むから、暴れんなよ」

「…うん」

「ありがとうございます」

 

そして、車の近くで待機していた五条と天内、そして津美紀のもとへと戻った。あっさりと、時間もかけず無傷で帰還した甚爾と二人に、五条は一瞬安堵の表情を浮かべたものの、すぐに舌を出し顔をしかめていた。何とも態度に本心が出やすい坊ちゃんである。

 

甚爾はまず黒井を地面へとおろし、手の拘束を千切った。その瞬間に、天内の所に駆けていく黒井を見ながら甚爾はどんな皮肉だと思った。

天内理子が泣きながら、安心したという顔で黒井を抱きしめている。前回、目の前の光景を完膚なきまで壊したのは自分であり、失敗したが守ろうとしたのは夏油傑であった。何の因果か、まるで前回と立場が逆だ。

 

その光景を見届けた後に恵の拘束を解いたが、肝心の恵は甚爾の服を握りしめ動けないままであったので、甚爾は仕方なく片手で抱き上げた。

そして呆然とこちらを見上げる津美紀の前まで来て、甚爾は恵を抱き込んだまましゃがんで、目線を合わせた。すると、津美紀は安堵で涙腺が決壊したようで、そのまま甚爾の胸に飛び込み、恵に抱きついてきた。

 

「よかった!!恵もお父さんも無事で!!痛いところはない?」

「ない、俺は無事。」

「だから、最初から大丈夫って言ったろ」

「でも、心配だったから…」

 

甚爾は泣きながら、あるいは懸命にそれを我慢しながら自分に抱きつき縋ってくる子供二人を、我ながら柄じゃないと思いつつ宥めた。

この光景を始末屋としての顔で付き合っている孔時雨あたりに見られたら、どうなるだろうか。驚愕され、腹抱えて笑われる気しかしない。

 

そうは思いながらも、伸ばされる手を払う気も起きず、不器用に二人を抱え込んだ。

騒がしいがあたたかい、その温もりに心の奥底に封印していた記憶と感情が蘇りそうになった。思い出したくはない。甚爾は誰も、何もかもがどうでもいいそんな生き方を選んだ。荷物は軽いほうがいい、甚爾は元々何も持っていなかったからそれ自体には慣れている。

だから、凪いだ心に小さく広がる感情を無理やり頭の隅に追いやって、子供たちを突き放そうと試みた。

 

それなのにいつもは自由自在な身体が言う事を聞かず、勝手に抱きしめた腕に力が入る。甚爾を決して裏切らなかった自身の身体が動かないのだ。それならば甚爾はどうしようもない。

だから、これは呪いのせいだと自分に言い聞かせながら、二人を抱き寄せ甚爾は目を瞑った。

 

 

 

 

 

 

「あのーーお取込み中ゴメン。でも、もうそろそろ来るよ。」

「アンタ、デリカシーないってよく言われるだろ。」

「恵君、君かなり毒舌だったりする?でも鼻声で言われても迫力ないよ?」

「はぁ……おい。恵、津美紀、五条の坊から離れるなよ。」

「いや、オッサン。役割交代だ。俺はアイツに聞かなきゃいけない事がある。」

 

先ほどホテルの部屋の前で盗み聞きした様子から、夏油傑が非術師を憎悪している事は分かった。そして術師のために世界を壊そうとしている事も。それは甚爾という存在の否定でもある、いずれ牙を向かれる事は明快なので今ここで殺してしまうかと甚爾は考えた。

しかし、護衛役の五条が役割の交代を言い出した。五条が元親友とやらを前に暴走する事は目に見えている。だから、その提案自体は受け入れてやる事にした。

 

夏油の主義信条的に、津美紀と甚爾以外をそう簡単に殺しにかかるとは思えない、それならば不得意なお守りもこなせるだろうと甚爾は楽観的に考えた。黒井と天内を守る義務なんて無いが、子ども達の手前見捨てる事などできない。やる気はないが、手出しさせないくらいはしてやろうと考えた。

それに決着がつきそうにないのであれば、五条と夏油が戦っている間、隙をついて夏油を殺せばいい。漁夫の利を狙うような戦法こそ甚爾の本来の得意分野である。

 

そうこう甚爾が脳内で戦法を考えているうちに黒い帳が消えていく、その内側から夏油傑はただ一人で甚爾たちの前に現れた。

五条悟と夏油傑が対峙する。こちらに戦力的な足手纏いが居るとはいえ、ここまで閑散とした場所で化け物と真っ向からやりあう気の夏油に、無謀が過ぎると甚爾は訝しんだ。再度の違和感を甚爾は感じた。

 

 

「久しぶり、元気してたかい?悟。」

「……っオマエ何考えてんだ!!説明しろ!!」

「気づかないふりはやめなよ。本当は分かってるんだろ?私は非術師が嫌いだ、憎い。だからあの村の連中も、自分の親ですら殺したんだ。」

「オマエの私情で大量の人間が死んだんだぞ!!本気で、本心で言ってんのか!?」

「私の目指す世界に非術師は必要ない、心からの本音さ。それと、これは私情じゃなくて、大義だよ。」

 

夏油傑が大量の呪霊を出した瞬間、対して五条は青い呪力でホテルの塀を壊し呪霊にぶつけた。

呪力の反応があった瞬間に、甚爾は4人を担いでその場を一瞬にして遠ざかった。甚爾の視界範囲内に五条と夏油が入りはするが、攻撃は届かないだろうという場所まで着くと全員を下ろし、決してその場所を動かないように言った。

夏油には仲間の術師が居たがその気配は近くにない。おそらく戦いに巻き込まれないためにこちらと同じく距離を取っているのだろう。

 

そして周囲を警戒しつつ、因縁の二人の戦いを眺めていた甚爾は再び違和感を覚えた。五条が、青い収束する無限の術式以外を使用していないのだ。非常に動揺している様子の五条を見て、甚爾は弱いと思った。今の自分ならアレを確実に殺せる。

 

甚爾を殺した六眼の化け物は、反転術式を使いこなし、甚爾ですら避けられなかったレベルの不可視の速攻を仕掛けた相手であった。その化け物は死の淵から生還し、甚爾と再会した際、精神的にもハイになっていた。

その姿は何のしがらみにも縛られず、誰より自由に戦っていたように見えた。苦悶な表情を浮かべる今の五条悟とは対照的である。

 

収束する青だけではなく、赤い無限の発散、それらを合わせた紫の攻撃、鮮烈に記憶に残るそれらの色を今の五条悟は魅せる事ができない。

化け物と戦った記憶も経験も甚爾は憶えている。甚爾の身体は特別性だ、心や頭に残る記憶だけではなく、その経験すら過去に戻ったこの身体に刻まれていた。だからこそ眼前の五条悟に違和感を感じるのだ。

 

周囲に刺客は居ない。五条達の決着も中々つきそうにもない、さっさとこの事態を終わらせホテルに帰りたい甚爾は動くことにした。沖縄まで来て、なぜ他人のいざこざに巻き込まれなければならないのかとイラついてきたというのもある。

口から武器庫の呪霊を出し、身体に巻き付けた。再度4人に決して動くなと言い含め、思いっきり地面を蹴った。砂埃が舞うより前に、甚爾は空中に躍り出る。そして、一瞬にして夏油とその周囲を固める呪霊との距離をつめた。目にも止まらぬスピードで、格納庫から刀を出し、夏油の出した呪霊を次々に切り刻む。

 

甚爾のあまりの速さを警戒した夏油が空を飛べる呪霊に乗って、海の上へと避難した。しかし、それは悪手だ。甚爾には意味が無い。

そのまま刀を突きさし、切り刻み、呪霊の数を着実に減らしながら、文字通り海面を走り夏油の目の前へと躍り出た。甚爾が刀の柄を握る力を強くし振り被ると、相手は本能的に死の危険を間近に感じ取ったのか五条に割いていた力全てを甚爾へと向けた。

夏油の手持ちの中で一番固く、強いと思われる呪霊が夏油と甚爾の間に数体現れる、その時だった。

 

五条の術式が目の前の呪霊を破壊した、威力が強く視界が遮られたので態勢の立て直しのために甚爾は陸へと跳んで戻った。ついでにお守り対象の4人に意識を向けたが、特に支障はなさそうであった。

 

「ここは引かせてもらう!!」

「待て!!傑!!!」

 

夏油は甚爾と五条を同時に相手にするのは分が悪いと判断し、逃げの一手に走った。仲間の術師にその道のプロがいたのか、一瞬にして気配が消える。甚爾を騙せるレベルの隠蔽能力か、もしくは転送術式か、どちらかであろう。

元々底辺だったやる気を完全に失った甚爾は、深く深く溜め息を吐きながら刀の汚れを落とすように二三回、振るって武器庫の中になおした。そして、近くまで走ってきた五条を馬鹿にしたような目で見つめた。

 

「なんで助けた」

「誰がアンタなんか好きで助けるかよ。恵君たちが悲しむでしょ」

「勘違いすんな、オマエが助けたのは俺じゃなくて呪詛師の方だ。オマエが何もしなかったら、俺は間違いなくアイツを殺せた……なんだ、無自覚か?」

「………」

「弱いな。」

「はぁ!?誰に向かってそんな事言ってんのか分かってんのか?」

「精神も、術も、全て俺の知る化け物には程遠い。なんだ、坊。最強になり損ねたのか………はっははははは!!笑える!!!」

 

甚爾はいい気味だと思った。甚爾を認めなかった呪術界の、その頂点に君臨する男は、自分なしでは誰の追随も許さない唯一無二、孤高の座にはつけなかった。甚爾以外の誰もそこまで五条悟を追い詰める事が出来なかった証左だ。

夏油傑が最強(バケモノ)を知らなかったのであれば、こんな場所で仕掛けてきた理由も理解できた。そうでなければ、他に巻き込める一般人の多い場所で再会を目論むはずだ。文字通り肉壁になる。

 

「何言ってんだオマエ、ふざけたこと抜かすんならここで次はアンタとやりあってもいいんだけど?」

「赫も茈も使えない奴に負けはしねえよ。」

「前者はともかく、後者は五条家の中でも限られた人間しか知らねえはずだ。何で知ってる?」

()()()()()()()()()、それだけだ。くだらねえ問答をするつもりはねぇぞ。ただ、俺は最強を憶えている。今の俺は、前の俺より数段強えぞ?覚悟してかかれよ、坊。」

 

気が立っている五条は、甚爾を挑発してきた。色々と不完全燃焼なのだろう、心の整理もついてない。

一方、甚爾はいつになく気分がいい。ガキどもにもう危険が無いのも分かっているので、五条の憂さ晴らしに付き合ってやることにした。理由もないので、本気の殺し合いはしないが軽い手合わせくらいはしてやろう。

 

死の淵から蘇った事で覚醒した、自分を殺せた化け物に甚爾は少しだけ会いたくなった。殺されてしまったのは癪だが、あれほど楽しめた戦いもない。ここでソレを目覚めさせる程、五条を追い詰める事はしない。だが、揺さぶりをかけるくらいはできるだろう。

何より、自分を殺した男をもう一度真っ正面からボコれるチャンスが廻って来たのだ、甚爾は凶悪な笑みを浮かべながら、こちらを真っ直ぐと睨みつけてくる五条と相対した。

 

 

 

 

 

 

 

──────────

 

 

 

 

 

 

 

 

「よお、久しぶり」

「よく分かったな、此処が」

「そりゃ、家の権力フルに使ってアンタの事調べまくったからな。禪院甚爾。見覚えがあるはずだ。小さい頃、俺はアンタと会ったことがある。」

「男のストーカーして住所特定するなんて奇特な事をするもんだな」

「キモイ事言ってんじゃねえよ、俺はアンタに用がある。分かってんだろ。」

「それは始末屋としての俺にか?」

「そう、ソレ。やめろよ。マジでキャラじゃなくて笑うけど、アンタ家族大事なんだろ?そんな稼ぎ方やめろ、その代わり俺が倍の値段で雇う。」

「へえ……それで俺に何させる気だ?」

「俺は呪術界を変える。アンタも恨みあるだろ、腐りきって古臭い凝り固まった考えしかできない奴ら……禪院に。奴らを見下しながら目の前で嗤ってやれるよ。だから俺に協力してくれ、伏黒甚爾。」

「……協力?金で下につけって意味かと思ってたが違うのか?」

「俺にアンタが御せる訳ないだろ」

「坊は俺を随分と買ってくれているみたいだな」

「当たり前だろ、だってアンタ強いじゃん。弱ってたとはいえ、俺を一方的にボコボコにできたくらい。性格は終わってるけど……って何笑ってんだよ」

「……ははははは!!!笑うしかねえだろ!ザマァねえな禪院のやつら!俺が犬猿の仲の五条の天才児と組み始めたなんて知ったら、あいつらがどんな顔するか見たくなってきた。いいぜ、その話乗ってやる。給料は弾めよ?」

「うっせー、分かってるよ。あと、一つ約束しろ。夏油傑を見つけたらすぐに俺に連絡してくれ。」

「そんくらい構いはしねぇが、理由は何だ?」

「アイツ殺すのは俺だ。俺以外がやるとかあり得ねえ。」

「……そういう事ね。くだらねぇ、が、その条件飲んでやるよ。その代わりこっちも色々要求させてもらう」

「例えば?」

「恵の事だ。アイツの術式は禪院相伝、そろそろ家のクソどもが横槍入れてきてもおかしくない」

「それくらいはお安い御用、もともとそのつもりだったしね。何だ、やっぱりいい父親やってんじゃん」

「仕方ねえだろ、呪われてんだ俺は。」

「誰に?アンタ呪うってどんな化け物だよ、術師?」

「恵の母親。術師ではないな。」

「へえ、愛の呪いってやつ?クッサ。でもおかしくない?呪力もない人間にそんな事できるなんて思えないけど。」

「さあな、でも俺はその呪いに()()()()()()()

「……フィジカルギフテッドの天与呪縛は本来備わった筈の呪術の才を代償に、高い身体能力を得るものだ。アンタの場合、呪力が完全に無い代わりに化け物レベルの身体能力を手に入れてる。原理的には、その肉体に課せられた縛りさえなければ呪力は使える。条件クリアが厳しいけど、もしかしてその呪いって……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




原作の怒涛の展開についていけないんだが……。情報量多すぎい!
矛盾点でたら容赦なく改稿します。何なら既に出てる気もしなくはない。
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