雪山山山さばいばぁ~ 作:だら
雪は断熱材らしいよ。
どっかで聞いたことある。
「どうもおはよう、私だ!」
私は雪に挑まれる高き壁。
そう!
言うなれば高嶺の花?憧れの的?
我こそはと名乗りを上げた雪達は、
風を使い高みに至り、私の体に乗っかり覆い、そして高らかに勝利を宣言。
乗っかれなかった雪は、私を掠めて遥か彼方へさよならバイバイ。
ハイリスク・ハイリターン。
勝つか負けるか。
だけどけれども、雪は負けを恐れて引くことはしない。
だって勝ちを宣言してるのだって、自分とおんなじ雪じゃない?
このさむいさむいマウンテンで、私を守るのは自分なんだ~っていう、あつあつの想いを胸に、ひとかけら、またひとかけらと風を使って私の体に乗っかり覆っていく。
そんな感じで寝て起きたら自分が積んだより明らかに高い高い壁が出来上がり。
多分このおかげで助かったんだよね。
「こりゃツイてるね。
正直、夢のが良かったんだけど。良かったんだけど!」
ただただ、ひと~つ問題アリ。
雪はちょっとというか結構硬い。
おんなじとこから動いてないから、体と他の雪の重みで圧縮されて固まったんだろうね。
嗚呼、たった二日乗っかってないだけなのに、オフトゥンがすごい恋しい。
だって、本当はずっと一緒のつもりだった。
離れてから分かる、あの柔らかさ。快適さ。暖かさ。
夢を見てないときでも、夢見心地。
あの幸せをもう一度!
だけども、ここじゃ夢見れない。
夢見心地にもブラジルくらい遠い。
ならばどうするこうすると!
動くしかないでしょうと!
「父親~、私をここの麓まで運んで~!」
……返事はない。
もちろん、分かってはいた。
慣れないといけない。
さて、自分が生きていた喜びから異常に上がっていたテンションが落ち着いたところで、認識した事実が一つ。
この山にいるか分からないけど、年齢=雪山暮らし歴のニホンザル先輩に続かないとな。
厳し目の自然の中で生き残れるのは、そこで糧を得られる子だけ。
「だから、早くボス猿になって、
子分に食料分けてもらわないとね。」
ここに来てまさかの他力本願。
自分でもびっくりだよね。
そもそも私、猿じゃないのよ。
手とか顔とか体とか、普通に人間なのだよ!
それで猿の仲間に入れてもらえるかって、まず見た目が違い過ぎるよね。
雪を保護色にしたいのか、やたらめったら体白いもん。
あれ?でも、雪まみれの今の私ならもしかしていける?
じゃあ見つけたら突撃してみようか?
だがしかし、ここで嫌なことに気づいちゃった。
コミュニケーション取るために、猿語も学ばないといけない。
面倒だね。
やっぱなしで。
――グゥゥ~~
その時、急に低い唸り声みたいなのが聞こえてきた。
これは急展開。
私食べられちゃうのかあ。
恐る、恐れる、だって雪山。
ここは無敵の要塞、我が家にあらずなのだから。
冷や汗をたらりだらりと下ろしながら、ゆっくりと音のした所に目をフォーカス!✦キラン!
「う~ん、腹がへったな。」
そこはかわいいかわいい私のお腹でした。
へこみ、ぺっこり、凹む腹。
父親呼んでも来ないから。母親呼ぶも、待ち人こず。
確か、今年のネットおみくじでも、待ち人こずだった。
つまり、私の手でなんとかしなくちゃいけないのだ。
「手軽なところで樹の実を探しますか。」
ここは雪山。
野草の類には、期待できない。
動物は己よりも遥かに強いだろう。
となれば、この環境でも強く生きている木から恵みを得るほかあるまい。
「いや、そうは言ってもだるいよ~。」
とはいえ、このままじゃご飯も食べれないし、足は冷たい。頭も回らなくなる。そしたら死んじゃう。いやだな。疲れるんだろうな。そんなことを思ったけど、仕方ないものは仕方がない。だから、おとなしく足を動かすことにした。
……。
最初に雪山に来たときとおんなじこと考えた気がする。
すごい、流石私!一ミリも成長してないじゃん。ウケる。
ウケないけど。
一歩、二歩、三歩。
下らない思考とは裏腹に、今回は着実に歩みを進めていく。
飢えが正直、初日の比じゃないのよ。
初日みたいに景色変わらないから疲れたとかそんな次元の話は終わった。
そう、気分は冬眠前のハムスター。
生きる糧を頬袋に蓄えるべく、必死なのだ。
「あ、あの木の下、なんか丸っこいの落ちてる!」
視界の端に映った、茶色っぽい丸い物体。
かなり毛が生えているから、きのみなら割って食べるタイプのものだろう。
そういうのって中身に栄養凝縮される分、他より美味しいんじゃない?みたいなことを思いながら近づいていく。
まぁ薄々、気づいてはいた。
「ヒョコッ!ピコッ!」
頑張って葉っぱの中に、リスが埋まっていたものの、吹雪で周りが吹き飛ばされた。
そんな感じだったようだ。
残った僅かな葉っぱの敷物の上に丸まって、寒さに耐えているのが見える。
あと、単純に人間を見慣れてないのかすごい怯えてる。
「期待しないほうがいいって思ってはいたけど、
やっぱりいざこういう結果に終わるとすごい虚しいよね。」
落胆からか、すごい声が低くなったのが自分でも分かる。
とっとと、次を探すか。
そんなことを思っていると、葉っぱの一部に不自然に盛り上がっているところが見えた。
「あ。」
リスを一瞥すると、素早い動きで葉っぱをめくった。
赤い樹の実が5つ。小さいけど、間違いない!食べ物だ!
リスが食べるくらいだから、有毒性は多分ないでしょ。
急いで樹の実を掴み、口の中に放り込む。
「甘くないけど、食えなくはない!」
味についてはすごい渋いとか全然あり得たと思うし、これは嬉しい。
久々の食べ物だからか、これくらいの味でもすごい多幸感だ。
目の前に樹の実を集めた本人がいることなど、もはや意識の外。
それくらい夢中で、樹の実を食べていた。
あの音が鳴るまでは。
それは、一粒一粒を口の中で丁寧に噛み潰しながら、うっとりしていると突然耳に入ってきた。
チャックを開閉する際に鳴る低めの音みたいなの。
とっさにどこだどこだと音の素を探る。今回は、明らかに私のお腹から出る音ではない。
パッと、リスのいた方を見る。
先程まで怯えた様子を見せていたのに、食べ物が奪われた怒りからかすごい唸ってこちらを睨んでいる。
瞬間、脳を過ぎった。
「やばい、噛まれるかも」
野生動物はなんの菌を持っているかわからない。感染症の管理もされていない。
そんな中、彼ら彼女らはそれを武器にしないということをわざわざ選択してくれるのか。
しないのだ。
ここからは、生存するための争い。
勝ちは無傷、負けは一度でも噛まれること。
VSリスにおいて、ノーミスクリアを果たして成し遂げられるのか。
そんなことを考えるより先に、私は左手に雪を掴んでリスに投げつけた。
目くらましだ。当たったか効いたかなんてしらない。
なぜなら私には恥も外聞も戦意もない。
結果を見るよりも先に、山から降り始めていたからだ。
……いや、この言い方だと語弊があるかもしれない。
「ちょっ、足首挫いて止まれないんだけど~~~~!!!」
逃げようと踏み出した一歩目でバランスを崩して、山から転げ落ち始めてしまったのだ。
拝啓
父親氏、母親氏、よくも雪山に放り込んでくれやがったな。帰ったら覚悟しろよ。
お元気でしょうか。
もし、お元気であれば早くこき使わせてください。お助けください。
雪山に放り込まれたあなた達の本当にかわいいかわいい娘は、
たった今、野生動物に追われて大変危険な状態にあります。
娘のピンチに手を貸さないなんて親失格ですよ。
今ならまだ間に合います。
いやほんとマジで謝るし、引き籠りやめて働くし、
給料の一部家にも入れてあげるから助けて!
もう、雪山とか懲り懲りよ!!!
敬具
娘より
p.s. 拝啓と敬具ってつけるとすごい手紙感増すよね。
p.s. p.s.ってなんかカッコいいよね。
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