アルティメットスぺちゃん爆誕【実況プレイ風動画】   作:サイリウム(夕宙リウム)

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PART33

【サイレンススズカ視点】

 

 

「スズカ先輩、足は大丈夫なんですか?」

 

 

今日は秋の天皇賞、アメリカに留学するのが正式に決まったので、日本で走ることは当分ないだろう。そんなことを思いながら、朝の自室で気を引き締めていた時、スぺちゃんからそんなことを言われた。

 

アメリカに留学するといった時のこんなに驚くのか、というすごい顔とは打って変わって、何かこれから悪いことが起きるのではないか、それに対しておびえている顔だった。

 

 

 

「大丈夫よ、スぺちゃん。最近はタイムもいいし、体の調子はバッチリ。そんなに心配しなくてもいいわ。」

 

 

 

彼女の実力は抜きんでている。だが、実力以外にも不思議なことがあり、なにか未来を知っているかのような動きをしていることがある。ウオッカやスカーレットが入部してきたとき、私は自分で入っておきながら『そのチラシで入ってきていいのか?』なんて思っていたが彼女は驚かなかった。マックイーンがゴールドシップに無理やり連れてこられた時もそれをなぜか知っているようだったし、テイオーの時もそんな感じだった。

 

日常生活の中でもまるでその先を知っているかのような、必ず自分の力になるようにしている節があった。

 

 

 

たぶん今日もそんな風に先を見てしまったのだろう。

 

それで、この先、私がレースに出れば、何か起こるのだろう。

 

 

 

 

 

彼女にとっても、私にとっても悪いことが。

 

 

以前の私ならばそれにおびえ、レースに出るのを避けていただろう。

 

 

だけど、今の私は違う。 私は逃げたくない。

私の目標はスぺちゃんに負けないこと。彼女の壁であり続けること。

 

 

 

 

 

なんだか、ここでこのレースを避けてしまったらそれはもうできないように思う。

ここで逃げてしまえば、この先、逃げてしまうことを許してしまいそうな自分がいる。

 

 

 

私がなりたいのは、そんな私じゃない。

 

 

 

 

 

不安でつぶれそうな、そんな顔をしているスぺちゃんをこちらに引き寄せ、抱きしめる。

 

 

 

「大丈夫ですよ、スぺちゃん。私に悪いことなんか起きませんし、起こさせません。だから安心して、私が勝つのをちゃんと応援してね。」

 

 

 

 

スぺちゃんは泣いていた。納まるまで少し時間がかかるだろう。

 

 

もうちょっとだけ、こうしていようか。

 

 

 

 

 

 

  ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

んじゃ、今回も実況プレイ、やっていきましょうか。今回はスズカ先輩が秋の天皇賞に出走するみたいで、その応援に来ています。ほら、スぺちゃんそんな不安そうな顔しないで、先輩大丈夫そうでしたよ。ほら毎日スズカ先輩のこと見てたでしょ、それで足を痛めたとか、ケガしたとかなかったですし、大丈夫だって。

 

実際、何か悪いことが起きる場合はこのゲームでは教えてくれますから、あんな日曜日なんて起きないに決まってます。私、あんなの見たくないですし。

 

ほら、そんな顔してたら起きないことも起きちゃいますよ。ほら! しゃんとして、全力で応援しましょ。

 

 

 

>「おーい、スぺー! そろそろ始まるから早く来いよー!」

 

 

 

ゴルシちゃんも呼んでますし、応援しに行きましょうね、ほら。

 

 

 

>「お~、すっごい顔してんなぁ。そんな顔してたら幸せ逃げちまうぞぉ!」

 

 

 

ほら、ゴルシちゃんも慰めてくれてますし、しゃんとしていきましょう。

さ、レースが始まりますよ。

 

全力で応援しましょう、スぺちゃん。

 

 

 

 

  ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

『さぁ、秋の天皇賞、栄光の盾を手に入れるのはどのウマ娘か。やはり、注目はサイレンススズカといったところでしょうか?』

 

 

『そうですね、秋シニア三冠のはじめということで、名だたるウマ娘が出走していますが、やはり彼女は格が違います。2番人気と大きく差を開いての堂々の一番人気ですからね。』

 

 

『まさにそうかと。宝塚記念をレコード勝ちで飾った、異次元の逃亡者。今回は一枠一番一番人気という幸先の良い形で出走となります。』

 

 

 

 

体の調子は絶好調、いつでも行ける。

今日も始まりから終わりまで、ずっと先頭に立ち続ける。

 

先頭の景色は譲らない。

 

 

 

 

『各ウマ娘、ゲートに収まりまして……、今、スタートしました!』

 

 

『サイレンススズカがスーッと上がってきて先頭をキープ! 期待に応えて早くも先頭!』

 

 

 

 

 

 

「うし、いいスタートだ!」

 

応援に来た他のスピカメンバーからも喜びの声が上がる。

 

 

 

 

 

 

 

『サイレンススズカ! いつも通り後続をグングン離していく! 影は踏ませない!』

 

 

『10バ身ほど後続と離れているでしょうか! かなり縦長の展開、まもなく三コーナーの手前、果たして1000mの標識をどのぐらいで通過していくのか!』

 

 

『1000mの通過タイムは54秒8! 54秒8です! 未だに速くなる! どれだけ速くなれば気が済むのか!』

 

 

 

 

 

「54秒8だって!」

 

「どんだけ速くなるんだ!!」

 

「「スズカ先輩! いけー!!」」

 

 

 

(スズカ先輩はやっぱり、すごい! これなら聞いていたことも…)

 

 

 

 

 

 

『何馬身離れているのか全く分かりません! 会場の盛り上がりは最高潮、これを見に来たんだ!』

 

 

 

 

 

 

気力も、体力も、そしてこの速度も

 

今までで最高。まだまだ私には先がある、走れるんだ!

 

 

 

 

 

『おっとー! さらに加速していく! 後続は全くついてこれない! 大欅を超えて、ラストスパートだ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(やった! 大欅を超えれた! 4コーナーを迎えられるんだ!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『さぁ、最終コーナーを超えまして、最後の直線です!』

 

 

 

 

 

 

最後の直線、少しだけ息を入れる。

さぁ、ここからだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………ッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

左足が、思うように動かない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……な、なんで……、コーナーは超えれたはずじゃ………。」

 

 

 

 

 

 

『サ、サイレンススズカ、サイレンススズカに故障発生です! なんということでしょう! 神はいないのか! サイレンススズカ大丈夫でしょうか!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(左膝に軽い痛みを覚える。いつの間にか、オーバーワークになってしまったのだろうか?とりあえず、走るのをやめて冷やして置こう。)

 

 

 

 

……あの時のか、多分速さに体がついていけなかったのだろう。

 

今朝のスぺちゃんの様子からやめておけばよかった。棄権しておけばよかった。

 

 

どこか冷静な自分がそう言っている。

 

 

 

 

 

 

諦めるわけないだろう、逃げられるわけないだろう。

 

 

 

 

このレースのあと、私の足がどうなっているのかわからない。

 

 

後続とはまだかなりの差がある。

幸い、まだ右足は残っている。

左足も、速度に乗ってるこの状態ならまだ走れる。

 

 

 

府中の直線は約500

 

あと、500。短くて、遠い。

 

 

 

せめて、せめて、このまま最後まで。

 

私だけの先頭を、私だけの景色を。

 

 

 

ここで走るのをやめてしまえば私は一生後悔する、これでおわりになってもいい。

 

ここからが、私の最後のレース、最後の直線。

 

 

 

 

スぺちゃん、ちゃんと最後まで見ててね。

 

 

 

 

 

 

未だ最速は、私だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

『サイレンススズカ止まりません! 故障した足で走っています! お願いだ、止まってくれ!』

 

 

 

 

『後続のオフサイドトラップ、キンイロリョテイが上がってきた! サイレンススズカはかなり減速していますがゴール目前! サイレンススズカが逃げ切るか、後続が差し切るか!』

 

 

 

 

 

 

足が痛い。

 

ゴールまであと何歩だろう。

 

よくわからなくなってきた。

 

 

 

 

 

 

『後続が全力で追いかけてきます、先頭との差はほんの5バ身。オフサイドトラップか、サイレンススズカか! 減速しているがサイレンススズカが有利か!』

 

 

 

 

 

後ろから来ている。

 

逃げないと

 

進まないと……

 

 

 

 

『サイレンススズカ、いま執念のゴールインです! 二着のオフサイドトラップとは1バ身差といったところ! それと救護班は何をしてる、早く来てくれ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

おわった

 

 

さいしょからさいごまでわたしがいちばんだった

 

 

 

 

『スズカ先輩! スズカ先輩! しっかりしてください!』

 

 

 

 

あぁ、すぺちゃんがだきかかえて、ねかしてくれた

 

ふふ、けさとははんたいね

 

 

 

ちゃんとわたしはちゃんとさいごまではしりましたよ、すぺちゃん。

 

 

 

 

 

  ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

病院の手術室前、ドラマなんかでよく見る風景。

 

自分がそちら側に立つなんて思ってもみなかった。

 

いつもは騒がしすぎる面々も口を閉ざしてうつむいている。

 

 

 

ランプが消え、担当医の方が出てくる。

 

みんな、おびえて何も言えない。

 

 

俺も悪い言葉なんて聞きたくなかったが、聞くしかないだろう。

 

 

「先生、スズカは大丈夫ですか、また走れるようになるんでしょうか。」

 

 

 

「正直、奇跡といってもいいでしょう。スズカさんは無事です。」

 

「ほ、ほんとですか!」

 

「えぇ、折れてからあれだけ激しい動きをしていたので、もっとひどくなっていてもおかしくはなかったはずなのですが、大丈夫でした。ちゃんと骨がつながって、リハビリすればまた走れますよ。」

 

 

「「「「「「よ、よかったぁ。」」」」」」」

 

 

 

みんな一斉に息を吐く、本当に良かった。

時間はかかるだろうけど、スズカの走る姿がもう一度見られるんだ。

 

あぁ、本当に良かった。

 

 




悩んだ末、こうなりました。
栄光の日曜日にするべきかと思い、そちらの方も書きましたが、現在投稿している方がいいのではないか、そう思いこうなった次第です。

自身の未熟な文章力でうまく表現できたかわかりませんが、『執念の日曜日』ルートとさしていただきます。


最後まで読んでくだざって、ありがとうございました。
これからもスぺちゃんもアルティメットロードは続いていきますので応援していただければ幸いです。

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