アルティメットスぺちゃん爆誕【実況プレイ風動画】   作:サイリウム(夕宙リウム)

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PART42

誰もいない部屋、グラスは今日、おハナさんとの話があるらしく帰りが遅い。

 

練習で汚れた服を着替え、顔を洗うためにマスクは外す。

 

 

自身の顔が目の前に映る。鏡の向こう側には弱い私。

 

 

そういえば最近一人でいる時間がなかった、"マスク"を脱ぐ時間がなかったことに気が付く。

 

 

 

心に封じたはずの感情があふれ出てくる。

 

焦り、不安、そして恐怖。

 

 

 

感情に押しつぶされそうになり、慌ててマスクをつけなおす。

 

ちょっとだけましになった。

 

 

 

 

今年いっぱいは日本で過ごし、来年から海外に、ヨーロッパに行く。

 

おハナさんと私が出した結論、それに不満はない。

 

 

彼女と戦えるのは今年だけ。

彼女を超えれるのは今年だけ。

 

 

もうちょっと、もうちょっとだけ頑張れ、エル。

 

 

 

 

 

 

 

 

【リギルトレーナー視点】

 

 

 

「……それでは、失礼します。」

 

 

「あぁ、しっかり休むように、エルにも伝えておいてくれ。」

 

 

 

グラスが退室する、少しだけ息を入れるためにいつの間にか冷たくなってしまったコーヒーを口に含む。

 

エルもそうだが、グラスも海外への思いが見え隠れしている。

つい最近まではシニアも国内で走ってもらうことを考えていたが、グラスに意思があるのならエルと同じように海外で走ることも考えないといけない。

 

 

目標があるのはいいことだ。彼女に勝った後のことまで考えているのは好感が持てる。

話を聞くに、例の彼女はシニア級は一年、国内で過ごしたのちに海外に出るというし、それ以前に海外に出ることで慣れておき、彼女と海外で戦おうとすることも考えているのかもしれない。

 

 

 

彼女たちは驚異的な速度で成長していっている。彼女たちだけ見ればこの世代の頂点を決めるのはこの二人のどちらかだけであるといえる。少なくともこれ以前の世代ならそうだった。

 

 

先日、校内にあるジムの前を通ったとき、スペシャルウィークが一人で練習をしているのを見かけた。

寮の門限まで時間があまりなく、片づけは私がしておくから早く帰るように、と言うと感謝を述べ慌てて帰っていった。それだけなら可愛らしいものなのだが、使用していた機具、よく自身のスピードを鍛えるために使うランニングマシンの設定を確認すると思わず声が出てしまった。

 

 

設定速度が速すぎた、とてもジュニアから上がったばかりの子が練習で使う速度ではない。少なくともエルやグラスには過度なトレーニングになるため、設定させない速度だった。機器についているタイマーから長時間やっていたこともわかる。

 

 

彼女はただ門限の時間に慌てていただけで、息は上がっているように見えなかった。

つまり彼女たちが走れないような速度を息を切らさずに走ることができるということだ。

 

 

 

焦りを感じた。このままでは間に合わないと。

 

私は目標の上方修正を余儀なくされた。

当たり前の話だった、こちらが成長すれば、あちらも成長するのだ。

 

 

 

二人の練習内容はかなり厳しくなってしまっている。何とかついてきてくれているが、どうしてもオーバーワーク気味になっている気がする。休ませるタイミングもよく考えないといけない。

 

精神的な負荷も取り除かねば……、私でこれなのだ。当事者たちの不安は大きいはずだ。

 

 

それとなく、友人と遊ぶように勧めてみることにする。

少しでも気が晴れればいいのだが……。

 

 

 

 

 

【カノープストレーナー視点】

 

 

『いや~、悪いですね。わざわざ日本まで来て指導もしてもらうなんて。』

 

 

『別にいいわよ。元々あの子のことは気にしていたけど、日本の資格なんて持ってなかったからね。』

 

 

『トレーナー免許を持つものが監督する場合、他地域の免許を持っていてもサブトレーナーに就任することができる。まぁ他にもありますが何とか通ってよかったです。色々と面倒事が起きそうなので偽名での活動は申し訳ないですが。』

 

 

『仕方ないでしょ、さすがに私がこっち来てるって知られたら色々とうるさいでしょうし。』

 

 

『世界最強ですもんねぇ。』

 

 

『ま、最近ちょっと怪しいけどね。私に勝てる子たちを探すために色々と出張しているとあの子みたいなヤバイ子は出てくるしね。』

 

 

『あなたもそのやばいのでしょうが……。それで、スペシャルウィークさんはあなたから見てどうです?』

 

 

『あら、そこは自分の担当の子を聞くのが普通じゃない?』

 

 

『自分の教え子のことはちゃんと把握していますよ、もうあんなことは引き起こさせませんし……。ま、あなたを呼んだのも一種の自信付けですしね。』

 

 

『そんなに軽く私を呼べるのはあなただけでしょ。まったく、こんなことならトレーナー資格を取るのは別の学校にすればよかったわ。そうすればあなたとの接点なんてできなかったし……。 それで、彼女についてよね。たぶん行けるとこまで行けるんじゃないの? 彼女が世界に出てくれれば結果は変わってくるかもしれないけど。』

 

 

『変わってくる、じゃなくて変えてやるでしょう。まだあなた現役ですよね。』

 

 

『ありゃ、ばれたか。』

 




南坂トレーナー
 トレーナー免許取得の過程でアメリカに留学、その時たまたま彼女と知り合った。自信を付けるためなんて言ってるが冗談であり、普通に指導してもらう予定。


赤いお姉さん
 アメリカの赤いお姉さん、"セ"から名前が始まる赤い英雄。南坂トレーナーとは腐れ縁。ちなみにまだ現役。最近は出走せず、世界中をめぐりながら強いウマ娘を見つけ出し、育成したりしている。選手としての目標は無敗であり続けること、トレーナーとしての目標は自分に勝てる子を育成すること。
 え?ウララ? ごめんわからないわ。

(アメリカ版アルティメットスぺちゃん。史実よりも強化されており、現在無敗記録を更新中。勝ちすぎて闇落ちしそうになったが、自分より強い子を育てればいいと考え直してトレーナーもしている。最近イギリスで"フ"から始まるウマ娘と出会ったらしい。)














あ! そうだ! トレーナーさんに言われてた三女神様へのお祈り忘れてた!
えんせい? に行く前にちゃんとしておかないとね!

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