アルティメットスぺちゃん爆誕【実況プレイ風動画】   作:サイリウム(夕宙リウム)

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PART48

次の日

 

 

トレセン学園、食堂。朝のこの時間帯は、生徒たちの憩いの場であるはずのこの場所に食べ物でできた山が乱立し、食堂職員の悲鳴が響き渡る。もともとウマ娘自体、普通の人より多く食べる上に、朝練帰りの子も多いので朝はその悲鳴と山の数が多い。

 

 

だが、今日は一段とそれが多い気がする。

 

というか目の前に反対側の人物が見えないほどの料理を盛った、山を吸引しているのではないかという速度で平らげている奴がいる。ほら、運ばれてきた時には見えなかった奴の顔が既に見えた上に皿から料理が消えようとしている。

 

 

我が学園が誇る(誇らないでほしい)フードモンスターが一人、スペシャルウィークだ。ちなみにまだオグリキャップという上がいることを忘れてはならない。

 

 

 

 

 

もぐもぐもぐもぐ……ごくん。

 

 

「すいませーん、おかわりいただいてもいいですか?」

 

 

「は~い、お待ちどおさま。こっちの食器は持って行ってもいいかい?」

 

 

「はい、お願いします!」

 

 

 

 

オグリキャップもそうだが、大食いの二人の料理は食堂職員によって運ばれてくる。

 

何でもオグリキャップの「トレーをもって料理を運んでいるうちにお腹が減るのでいくらでも食べられる。」という発言を基に、わざわざ運ぶ手間と奴らがお腹を減らした分の料理を作るのとどっちがいい? ということで運ばれるようになったそうだ。

 

まぁ食堂職員の方々はとてもやさしい方々ばかりだから、行ったり来たりするのが可哀そうだと思ってそうしているのだろう。オグリの言葉は冗談だ、……そう思いたい。

 

 

 

 

もぐもぐもぐ、もぐもぐもぐ……

 

 

 

「……なぁ、スペシャルウィーク。どれだけ食べるんだ?」

 

 

「きょほは、うつふぁよりふぉたふさんたふぇます!」

 

 

「うん、ちゃんと飲み込んでから喋ろうな。」

 

 

 

今日はいつもより彼女の箸の進みが速い。食べる量が多くなっている気がする。

 

スズカに頼まれてからスズカがいなくなってブレーキが利かなくなることを危惧し、食事量を直接確認した方がいいと思い時間があるときはこうして食事を共にしているが、やっぱり量が多い。

 

調理室の方から悲鳴みたいなのも聞こえてきているし、ここは食べるのをやめさせるためにも会話で時間を稼いだ方がよかろう。今のうちに休んでくれよ。

 

 

 

もぐもぐもぐ……ごくん!

 

 

「はい! 今日からはもっと食べることにしました! たくさん食べて強くなります!」

 

 

「……食べすぎると、また太って泣くはめになりそうだがいいのか?」

 

 

「大丈夫です! 食べた分だけ走るので実質ゼロです!」

 

 

 

悪魔のような言葉が聞こえ、軽いめまいのせいで会話が途切れてしまった。

その隙に、料理に手を付けようとしている。

 

マズい、時間をそれまで稼げていない。ここはなにか繋げねば……

 

 

 

「ま、まぁ考えているのならいい。それで何か理由があるのか? 急に増やしたように思えるが。」

 

 

「はい! もっと強くなりたいので、もっとたくさん食べて、もっとたくさん走ればいいと思ってやってみることにしました!」

 

 

「そうか、それはいいことなんだが、何かあったのか?」

 

 

「……はい、実は初めてレースで負けちゃいまして……。それで、何か変えないと! と思ったんです。」

 

 

 

 

負けた? スペシャルウィークが負けたのか……。

 

他のことに気を取られ過ぎて、あまり気にしていなかったがこいつはかなり強い。私も負ける気はないが、立ち止まっていると抜かされそうな恐ろしさがある。そんなこいつが負けた相手というから、高等部の誰かだろうが……。

 

 

 

 

「……それで、スズカ先輩に泣きながら謝っているときに、怒られちゃいまして……。『泣いて私に謝ってる暇があったら練習しなさい』って。それで目が覚めまして、まずは食事から始めてみたわけです。」

 

 

「そうか……。それで誰に負けたんだ? お前に勝てそうなのは高等部の奴らぐらいだろうが。」

 

 

「セクさんって方です。」

 

 

「セク?」

 

 

そんな奴、学園にいただろうか?

 

 

「セクってどんな奴だ?」

 

 

「えっとですね、背が高くて赤髪で……」

 

 

……ん? 赤髪? 

 

 

「……一緒に走ってた時は逃げをしていました! ん? なぁに……。あ、そうだ、ありがとう。セクレタリアトさんです!」

 

 

「セ、セクレタリアトぉ!?」

 

 

 

こ、こいつ今、セクレタリアトと言ったのか! あの赤い英雄と戦ったというのか!

なんて羨ましい……って! 日本に来てるの! ナンデ!?

来た理由は何なのか、何故誰にも知られずにトレセン学園に侵入出来てるのか?

彼女ほどのビッグネームだ。日本に来ているとしたら学園に情報が来ていないとおかしい。しかもスペシャルウィークは勘違いはするだろうが、嘘はつかないやつだ。

 

と、とにかくこれは私一人だけで対応してはいけない案件だ、会長たちと話し合わなければ……

 

私は生徒会室に急いで移動するために残っていた食事をかき込み、勢いよく立ち上がる。

 

 

「スペシャルウィーク!」

 

 

「ひゃい!」

 

 

「私は急用を思い出したのでこれで失礼する、今の話の内容は絶対に誰にも言わないように。あと食事はそれぐらいにしておけ、食べ過ぎだ。返事は?」

 

 

「りょ、了解しました、エアグルーヴ閣下!」

 

 

 

彼女の返事を聞き、足早に食堂を後にする。

 

解ってはいたが、世界は私にやさしくないようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん、スペシャルウィークか。おはよう。」

 

 

「あ、おはようございます。オグリキャップ先輩! 先輩も朝ごはんですか?」

 

 

「うん、朝練帰りだからおなか減った。そこ、座ってもいいか?」

 

 

「はい! ぜひどうぞ!」

 

 

その後、スぺはエアグルーヴの言いつけをちゃんと守り、おかわりをしなかったが、オグリキャップとスペシャルウィークが同じ机に向かい合って座ったせいで、食堂は阿鼻叫喚の騒ぎになってしまったという。

 

 

 

 

 

「お~! 今日も食べてますなぁ! スぺ君! そんなに食べたらスズカに怒られちまうぞぉ!」

 

 

「あ! ゴールドシップさん! おはようございます!」

 

 

「うむ、おはようなのじゃ。んでスぺ、ちょっと耳貸せよな。」

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

 

「……なるほど、URAは発表せずにいく方針なのですね、会長。」

 

 

「そうだ。と言ってもこの話が私のところに来たのもついさっきでな。上の方針としてはどこで漏れるかわからないので、学園にも伝える気はなかったようだ。」

 

 

「まぁ彼女ほどのビッグネームですから、来日していることが知られると厄介な記者たちが大挙してやってきそうですしね。話は解るんですが……。」

 

 

「私も同じようなことを言ったのだが、上としてもアメリカから『国外にいることをばらしたくない』というお願いがあったみたいでな、慎重にせざるを得なかったそうだ。」

 

 

「なら、仕方ない...のですかね...?」

 

 

「といっても、彼女がスペシャルウィークと練習でもレースをしたことは想定外だったみたいでな。慌ててこちらでうまくまとめてほしい、と話が飛んできたというわけだ。」

 

 

「うまくまとめろって、どうすれば……。」

 

 

「彼女の方にも注意というか、正体をばらさないように、という連絡は行っているようだし、所属しているカノープスでは口外しないようにしているようだから大丈夫だろう。」

 

 

「では、スピカの方は?」

 

 

「なぜかは知らないが、ゴールドシップの方から『口外しないように言っといたから大丈夫だぜ』と、今さっき連絡が来てな。しかもちょうどグルーヴが食事を終えた後にスペシャルウィークに伝えたそうだ。」

 

 

「……何者なんですかね、アイツは。」

 

 

「まぁ彼女のことだ。そういったもの、としてとらえておけば大丈夫だろう。……それで、話は変わるが、エアグルーヴ。セクレタリアトと勝負をしてみたくはないか?」

 

 

「急ですね。……したくない、と言えば嘘になります。」

 

 

「実はだな、彼女が帰国する時期は3月末の予定だそうだ。来日理由はカノープスでの指導であり、彼女が走ったのはスペシャルウィークとの一戦だけ。……わざわざ日本に来てもらったのに一度も同年代の私たちとレースをせずに帰るのは色々ともったいないと思ってね。帰国ギリギリになるが、3月末に模擬レースという形で勝負を挑もうと思う。」

 

 

「……なるほど。」

 

 

「あちらが受けてくれないと始まらない話ではあるが、場だけは整えたいと思う。表向きは高等部上位陣での技術交流会、裏ではセクレタリアトとの対戦。あまり人は呼べないが、あちらから許可をもらえた時に学園内で一般公開できるように撮影機器だけは準備しておこうと考えている。まだ企画段階で粗削りだがどうだろうか?」

 

 

「……いいですね。やりましょう。」

 

 

「同意してくれてありがとう。自分でもあまりよろしくないということは解っているのだけどね。」

 

 

「戦ってみたいという欲求を抑えきれなかった、と。」

 

 

「そういうことだ。」

 

 

「まぁ、私も同じ気持ちなので解ります。出走するメンバーは私が選びましょうか?」

 

「あぁ、実力者たちを集めてくれ。彼女への連絡と会場の準備は私がやっておく。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『へぇ、面白そうじゃない。こっちから挑もうかと思ってたけど手間が省けたわね。』

 

 

「ん~? セクさん、何見てるの?」

 

 

『ターボか、挑戦状だよ。』

 

 

「お~! 挑戦状! 見せて見せて!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ネイチャさん、聞いてもいいですかね?」

 

 

「ん、どしたのトレーナー?」

 

 

「いえ、すごく今更ですが、ターボさんって英語できましたっけ? ネイチャさんができるのは知ってるんですけど……。」

 

 

「あー、私も疑問に思って聞いてみたんだけど、言葉の意味はよくわからないみたいだけど何となくで話してるみたいよ。雰囲気で解るんだって。」

 

 

「……エスパーか何かですかね?」

 

 

「ま、ターボだから。でいいんじゃない? 私もそれで納得したし。」

 

 

「そういうものなんですかねぇ?」

 

 

「そういうものなんですよ~。」




誤字報告いつもありがとうございます。
はちみつもありがとうございます。

それと評価欄で一言付けれるようにしてみました。
よければよろしくお願いいたします。


アンケートのご参加ありがとうございました。
いる、いらない結構分かれていたので両方のに期待に応えられるように次回は模擬レースと皐月賞前の両方やっちゃいます。

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