アルティメットスぺちゃん爆誕【実況プレイ風動画】   作:サイリウム(夕宙リウム)

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PART51

北海道 日高

 

 

「写真を置いて、っと。おし、これで大丈夫かな。」

 

 

さ、二人ともスぺの大舞台が始まるよ。

一緒に見ようか。

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

皐月賞。

 

中山の芝、2000の旅路。

 

クラシックの初めにして、最も速いウマ娘が勝者と呼ばれるもの。

 

 

 

 

様々な者たちの思惑をはらみ、

 

 

 

「大丈夫ですか? ネイチャさん。」

 

「うん、いける。行ってくるねトレーナー、ターボ!」

 

「ネイチャなら絶対に勝てるぞ!」

 

 

 

「セイちゃん~、作戦の方は頭に入ってますか~?」

 

「うん、ばっちし。掴んでくるよ。」

 

 

 

「行ってきな、お嬢。」

 

「……はい!」

 

 

 

「勝ちに行け。」

 

「はい、もちろんです。」

 

「エルが世界最強だってこと、証明してやりマース!」

 

 

 

「おっしゃ、スピカ。行くぞー!」

 

「「おー!」」

 

 

 

 

 今、始まる。

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

「「「「スぺちゃん(さん)」」」」

 

 

 

「あれ、みんな。どうしたの?」

 

 

 

「せっかくですから宣戦布告でもしようかと思いまして。」

 

 

「そゆこと、負けないよ。」

 

 

「クラシック三冠路線の大事な初戦、勝負ですよ。スぺちゃん。」

 

 

「いくらスぺちゃんが強くても、ワタシが勝ちマース!」

 

 

 

 

「……うん! 私も負けないよ。勝負だね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ネイチャはいいの、何か話さなくて?」

 

 

「私? いやいいよ。彼女とは接点ないしね。それこそテイオーは言わなくていいの?」

 

 

「ボクはいつも言ってるようなもんだしね。大丈夫だよ。」

 

 

「そういうもんですか。」

(まぁ私としてはあそこにいる人たちに注目されることは避けておきたいし、話しかけない方がベストだよね。)

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

『さぁクラシック初戦の大一番! 皐月賞が始まります!』

 

 

『最も速いウマ娘が勝つといわれていますが、今回はどのようなレースになるとお考えですか?』

 

 

『今年は今までにない豊作の年、と言っていいでしょう。ジュニア級覇者のスペシャルウィークを始めとして、無敗中のウマ娘が合わせて7人もいます。トライアルで圧勝したエルコンドルパサー、グラスワンダー、セイウンスカイもそうですが、キングヘイローやトウカイテイオーも注目したいところですね。今回の人気順も出てはいますが、現在上げたウマ娘たちは非常に僅差ですし、そこまで参考になりませんね。』

 

 

『なるほど、大変予想が難しいレースということですね。ちなみに一番人気はスペシャルウィーク、二番人気にエルコンドルパサー、三番人気にトウカイテイオーとなっております。』

 

 

 

 

 

 

 

(ふ~む、ホープフルSで勝ったおかげか一番人気ですね。ま、人気なんてスぺちゃんにはそこまで関係ないですし気にせんでええでしょう。さ、久しぶりの公式戦、頑張りましょうぜ、スぺちゃん!)

 

 

 

! コクコク。

 

 

 

(見た感じライバル枠の皆さんは得意ステータスがD+かC、それ以外がDぐらいですかね。クラシック初期ではかなり強い方ですが、事故が起こらない限り大丈夫でしょう。それで今回大外の8枠18番ですから外からぶち抜いていきましょう。壁ができて前に行けない、なんてないように外を走ることを意識していきましょう。)

 

 

………?

 

 

(そういえば今回から【ゲートの支配者】解禁ですけど使います? ですか。う~んどうしましょ? コメ欄の方々から称号達成のためにもダービーで使った方がいい。ってご意見も頂いてましたし、そうしますか?)

 

 

……コク。

 

 

(あー、セクさんにプレッシャー返しされたからちょっと使うのが怖くなってる感じですか。確かにそのこと忘れてましたね。ではこのレース後にその感覚をリセットすることを目標に入れておきましょう。んじゃ、今日は普通に走りましょうか。……そういえば師匠以外の同じクラスの子と公式レースで走るのは初めてですかね。楽しんでいきましょう!)

 

 

「はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『さぁ各ウマ娘、ゲートに収まりました。』

 

 

 

(……あれ、プレッシャーがこない。トレーナーの話ならもう使ってもいい、って話なんだけど……。もしかしてまだ温存してるのかな? うん、なら好都合かな、まだアレを気にせずスタートする自信はないし。)

 

 

 

 

 

 

 

『いま、一斉にスタートしました。いいスタートを切れたのはセイウンスカイといったところか。』

 

 

 

(よし、うまくできた! わざわざゲートに縛られて練習したかいがあったよ。このままペースを乱さずに先頭を維持しなきゃ!)

 

 

(セイさんは逃げ、エルさんとテイオーさんは先行。グラスさん、スぺさんは速度を落としてるから差し。私は言われたとおりにグラスさんとスぺさんの前に位置できるように走る。壁になりつつ後半に位置が悪くて加速できない、なんてことがないようにしないと。)

 

 

 

『先頭を行くのは依然としてセイウンスカイ、3,4バ身後ろにエルコンドルパサー、トウカイテイオーが来ています。また後方集団にはキングヘイロー、グラスワンダー、スペシャルウィークが来ている。』

 

 

 

(う~ん、思いっきり真後ろに付かれてますネ。気にせず走るのが最適デスがやっぱり気になりまス。)

 

 

(ゴメンね、エルコンドルパサー。先行策で勝つために、最後まで脚を残さないとね。)

 

 

(スぺちゃんは……後ろですか。外側につかれてますし、ちょっとマズいかもしれませんね。前もキングさんがいますし、これは無理やりコーナーで抜かす必要があるかもしれません。)

 

 

 

 

『レース進行はセイウンスカイが飛ばしていましてかなりのハイペースといったところ。さぁ先頭がちょうど折り返し地点につきまして、先頭は依然としてセイウンスカイ。』

 

 

 

 

(ん、にゃぴ。そろそろ中盤ですね。ちょっくらペース上げてきましょう、スぺちゃん。行きますよ~。)

 

 

「はい、スペシャルウィーク、行きます!」

 

 

>【不沈艦、抜錨ォッ!】を発動!

>【逢魔時】を発動!

 

 

 

 

『おっと、スペシャルウィーク! 折り返し地点から爆発的な加速を始めたぁ!』

 

 

 

(ッ! スぺちゃん、思ったより仕掛けるのが早い! ……これは無理やりにでもついてかないと置いてかれる! ハイペースなせいで脚を残せるかわからないけど、ついて行かなければ!)

 

 

 

『スペシャルウィーク、キングヘイローを抜いた! グラスワンダーもそれに続くッ!』

 

 

 

(スぺさんだけでなく、グラスさんにまで! どうする? 作戦では最終直線まで脚をためる予定だけど、本当にこれで勝てるのか? 最後の直線だけで足りるのか?)

 

 

 

『キングヘイローも続いて加速していきます!』

 

『かなりのハイペース、そこに加速です。スタミナが最後まで残るか不安ですね。』

 

 

 

 

(………ここだ。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『スペシャルウィーク、徐々に速度を上げて先頭を抜かそうとしております。おっとここで先頭のセイウンスカイが最終コーナーに入ろうとしているところ!』

 

 

 

(後ろから来てますネ。セイちゃんが思いっきり飛ばしてるせいでそこまでスタミナが残ってませんガ、抜かされるわけには!)

 

 

(スぺちゃんが上がってきてる、そろそろボクも仕掛けないと……。前のレースで編み出した技、使うなら直線で。真後ろに居続けても位置が悪いし、前に出ないと!)

 

 

 

『ここでトウカイテイオーがエルコンドルパサーを抜いたぁ!』

 

 

 

「ッ!」

 

 

 

『スペシャルウィーク、スペシャルウィークここでさらに上がってきたぁ! 暴力的な加速ぅ! 彼女もエルコンドルパサーを抜いてトウカイテイオーと並ぶ、並ばない! 並ばない!』

 

 

 

(まだ、まだ直線で追い返せる、焦るな、焦るな! そこで仕掛けるんだ!)

 

 

 

 

(テイオーちゃんで終盤3人目ですかね? んじゃ会長のスキル、行っちゃいましょう! あとついでに固有の方も行っちゃいましょうか。)

 

 

>【汝、皇帝の神威を見よ】を発動!

>【シューティングスター】を発動!

 

 

 

 

『スペシャルウィーク、さらに後続を突き放し先頭のセイウンスカイに迫る!』

 

 

 

(マズい、予想よりもかなり速い! スぺちゃん対策で無理やりハイペースにしたせいでもうほとんど足が…。)

 

 

 

『スペシャルウィーク先頭に躍り出たぁ! そして加速はいまだ止まらず!』

 

 

 

(スぺちゃん、ギア上げますよ~。)

 

 

…コク。

 

 

 

>【空駆ける英雄】を発動!

 

 

 

 

『スペシャルウィーク独走状態、陰すら踏ませません! ああっと加速だぁ!』

 

 

『後ろからは何にも来ない! 後ろからは何にも来ない! 後ろからは何にも来ない!』

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

(足を回せ! もっと動け! もっと動け! ボクはまだまだいけるんだ! 大差負けなんてやらせるもんか!)

 

 

 

『ここでエルコンドルパサー、トウカイテイオーも加速し始めました! 2番手はいったい誰の手に!』

 

 

 

(負けない負けない負けない!)

 

 

(脚はまだ残ってる! せめてこの中で勝利を!)

 

 

 

『スペシャルウィークに連れられたグラスワンダー、キングヘイローも2番手争いに加わっている!』

 

 

 

(逃げろ、逃げるんだ! 動け、私の足!)

 

 

 

『セイウンスカイ、必死に逃げる! このまま逃げ切れるのか!』

 

 

 

 

 

 

 

 

(……うまくいった! バレなかった! これなら、これだけ脚を残せれば! 十分勝負できる!)

 

 

 

 

 

 

『………! 上がってきた! 上がってきた! ナイスネイチャが上がってきて、2番手争いに加わる! いつの間に上がってきたのか!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………え。」

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

『スペシャルウィーク、今独走でゴールイン! クラシック三冠のはじめを華々しい大差勝ちで収めました!』

 

 

『……大きく遅れまして2着にトウカイテイオー、3着にナイスネイチャ。 セイウンスカイ、グラスワンダー、キングヘイローはまとまってゴールイン、写真判定となります。』

 

 

『……今、掲示板に出ました! 4着にグラスワンダー、5着にキングヘイローとなりました!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「スピカでワンツーフィニッシュじゃん。桜花賞に続いてやってんねぇ!」

 

「二人とも、おめでとう。お疲れ様。」

 

 

「トレーナーさん。ありがとうございます…。」

 

「お、スぺ~? 勝った時はもっと無理やりにでも喜ぶんだぞ~!」

 

 

「ちょ! ゴールドシップさん! 持ち上げないでくださいぃ~!」

 

 

 

 

「お疲れ様でした、テイオーさん。」

 

「マックイーン。…………………クソッ! 次こそ、次こそ勝って見せるから!」

 

「えぇ、私もお手伝いします。あの技、もっと極めましょう。」

 

 

 

 

 

「ネイチャ~! 3着だったけどすごかったぞ~!」

 

「……ありがと、ターボ。出来ることは全部やったし、運もよかった。……でもやっぱ悔しいや。」

 

「ネイチャさん、それをうまくバネにしましょう。あなたならやれます。」

 

「うん、……ありがと。トレーナー。」

 

「あ! そうだ! セクさんもテレビ電話で一緒に見てたんだよ! それでねそれでね……」

 

 

 

 

 

「入賞おめっとさん、お嬢。」

 

「トレーナーさん。私は、私は……、もうしわ」

 

「謝んなや。」

 

「ですが、私は!」

 

 

「お嬢、誰にでも負けはある。だがな、俺に謝んのは頂けん。お前のことだから俺の経歴に傷がつく、なんて思ってんだろうが、そんなもんどうでもいい。勝てなかったのは俺の責任だ。」

 

「しかし……。」

 

「気にすんな、それよりも次のこと考えるぞ。ダービーまで時間がない。次こそは、だろ。」

 

 

 

 

 

「お疲れ様、セイちゃん。」

 

「……うん。」

 

「何かつかめましたか?」

 

「……うん、でも悔しい。」

 

「そうだね。今は、思いっきり泣いていいよ。」

 

「うん、ありがと。」

 

「次はもっと練習して、作戦考えて、今回得たものを絶対に生かしましょうね。」

 

 

 

 

 

「お疲れ様だ、グラス。いい走りだった。」

 

「……ありがとうございます。」

 

「これで終わりではない、次につなげれる負けだ。……私もできる限りのことをやろう。」

 

「……はい。私も、もっと頑張ります。」

 

「それでエルはどこに?」

 

「さっき、顔を洗いに行くと言っていました。」

 

「そうか、すまないが待っていてくれるか。行ってくる。」

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

逃げるように手洗いに駆け込む。

 

洗面台に両手をかけ、倒れそうになるのを防ぐ。

 

座ってしまえば立てないから、倒れてしまえばもう動けないから。

 

体重を前に預け、無理やり足を立たせ続ける。

 

 

 

このままじゃいけない、どうにかして切り替えないと。

 

顔を洗うためにマスクを外す。

 

マスクがあっても、マスクがなくても変わらない私。

 

 

溢れそうになる何かを止めるために無理やり顔を洗う。

 

手に貯めた水を顔に強く触れさせ、そのままにする。

 

手を顔に触れさせたまま。

 

 

手で押さえておかないと何か出てきてしまうような気がして無理やり抑える。

 

 

 

 

 

 

足音が聞こえた。

 

 

急いで外していたマスクをつけなおす。

 

たぶん、おハナさんだろう。

 

 

出来るだけ鏡を見ないようにその場から立ち去る。

 

 

 

「ごめんなさい、トレーナー! ちょっと目にゴミが入ってしまっテ洗いに行ってましタ!」

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

「勝つって、難しいね。今まではただ、走ることが楽しかったけど、みんないろんなものを背負って走ってるんだね。……勝てたとき、後ろを振り向いたらみんな、悔しそうだった、苦しそうだった。」

 

 

(……私に彼女たちの気持ちはわからないけど、スぺちゃんがそんな顔をするのは駄目だよ。スぺちゃんはみんなに勝ったから、このレースで走ったみんなの気持ちを背負う必要が出てくるんだよ。それはとっても大変でしんどいことだけど、とっても大事なこと。)

 

 

「そうだよね。それで私は星を背負うんだ。」

 

 

(星はキラキラしてまぶしいもの。スぺちゃんはみんなのためにも、背負わせてもらってるものをきれいに見せるためにも、思いっきり笑わないとね。)

 

 

「うん、私。頑張る。ウイニングライブ、思いっきり笑顔で頑張るよ。」

 

 

(いってらっしゃい、スぺちゃん。頑張ってね。)

 





誤字報告、はちみつ、いつもありがとうございます。

次回は皐月賞後の各陣営とスぺちゃんについてになるかと。
あと今回のレース解説なんかもやります。

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