アルティメットスぺちゃん爆誕【実況プレイ風動画】   作:サイリウム(夕宙リウム)

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PART55

「つまり、菊花賞。3冠阻止のためにダービーを使いたいということ?」

 

 

「うん。その作戦で行きたいと思う。どうかな、トレーナー?」

 

 

練習終わり、この時期の子たちにとっては明らかにオーバーワークとなる量のトレーニングを終わらせた後、セイウンスカイに真剣な顔で相談された内容はダービーを捨てるという決心だった。

 

 

「皐月賞でも、誰からも注目されてなかったナイスネイチャが伏兵として私たちを抜いていった。あれで解ったんだ。人は予想外のことが起きると動揺する。特にレースという極限状態にある時、その一瞬の隙は馬鹿にできない。だから、今度は私がそれを……」

 

 

「セイちゃん、本当にわかってるの。あなたにとってダービーはたった一度だけのレース。そんな選択は……」

 

 

「うん、解ってる。私にとって一生に一回だけの大事なレースだってことは。でも、でもね。トレーナーにダービートレーナーをあげられないのは申し訳ないけど私はスぺちゃんにどうしても勝ちたいんだ。同世代に比べてどうしても実力で劣ってる私がどうにかして彼女に勝つにはこれぐらいしないと、ね。」

 

 

「セイちゃん……。」

 

 

 

そうだ、トレーナーである私が何を弱気になってるんだ。彼女がここまで覚悟を決めて、ダービーをただ一つの一勝にかけようとしてるんだぞ。それを、それを、私は何をしているんだ。私がするべきはここで燻ることか? 超えられない壁の前で蹲ることか?

 

違う、違うだろ。私の教え子がどんな思いをもってこの決断を下したのかを考えろ。

 

 

私の、私のできることを、それ以上をあなたのために。

 

 

 

「えぇ、解りました。セイちゃんの決断、全力でサポートさせていただきます。任せてくださいよ~! 私の持てる限りを、私のすべてをセイちゃんのために使います。」

 

 

「トレーナー。うん、ありがとう。」

 

 

「気にしないでください! さ、今日はもう遅いですし門限も近いですよ。さ、早く帰って休んでおいで~。」

 

 

「……うん。お疲れ様でした、また明日ね。」

 

 

 

 

 

セイちゃんの顔が今にも泣きそうなことは解っていた。

 

私を心配させないよう、自分の気持ちに蓋をするように無理やり笑っていた。

 

 

彼女に二度とあんな顔をしなくて済むように。彼女が勝利をとれる道を探さなくては。

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

 

 

私は自身の思いを整理するために、東条トレーナーに頼み、学園の道場を貸し切ってもらった。対価として道場の掃除を任されたがちょうどいい。自分を見つめ直すのに掃除は最適だった。

 

 

道着で身を包み、座して薙刀を前に置く。

 

 

学園に来てからできていなかったが、私の精神統一だ。

 

 

 

自身の深層に潜り込み、本当に私が望むものを模索する。

 

 

日常の風景、友人たちとの交流、初めての勝利、圧倒的な敗北、悔しさ

 

 

思い浮かぶ余計な感情を排除し、根幹を探す。

 

ダービーウマ娘、…違う。 三冠、…違う。 海外GⅠ制覇、…違う。

 

 

 

 

私が望むものは、ただ一つの勝利。スペシャルウィーク、スぺちゃんに勝利すること。

 

 

彼女はいい友人であるが、同時にライバル。超える壁でもある。

 

忘れられないあの模擬レース。どうしても勝てない、超えられないと思わされた。

 

 

同時に私の闘争心に火がつけられた。私にとって挑むべき強者が現れたことは素晴らしいことだった。

 

 

 

それなのに私は何をしていた。ただ一度負けたぐらいでめそめそとして、その敗戦を後に引いた。

 

私は恥さらしだ。

 

 

 

あのような態度は挑む側として、レースをするものとして不適切。

 

勝者は決しておごらず、敗北したとしても首級がそのような態度ならば末代までの恥。

 

 

 

 

ゆっくりと息を吐き、座を解く。

 

立ち上がり、体に染み込んだ型をなぞる。

 

 

 

彼女との勝負は一度きりのものではない。

 

勝てるまで、勝つまで、私は挑み続ける。

 

 

そして、敗者となったときは敗者に相応しい態度を。

 

そして、勝者となったときは勝者に相応しい態度を。

 

 

 

 

型をなぞり終わり、構えを解き、ゆっくりと息を整える。

 

 

雑念は消えた。あとは邁進するのみ。

 

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

「……にしても変な被り物してんのに腕は化け物って何者なんだろうな。スピカの坊主も変というか異様な耐久力してるし、ウマ娘と同じように癖のある奴はトレーナも強いんかね。」

 

 

今日はお嬢の友人であるハルウララってやつとダートで併走練習を指示している。キングヘイローはダートはできないが練習にはちょうどいい。ハルウララもかなり高く能力がまとまっているし、練習相手としてはこれ以上ない相手だといえる。

 

 

「キングちゃん~! 早く早く~!」

 

 

「ウ、ウララさん。ちょっと待ってくださぃ…。」

 

 

苦手なダートとはいえこの時期のウマ娘としては非常に高いレベルで纏まっているといえるお嬢を楽々と追い抜いてまだ息切れなしか。……ちょっと休ませるか。

 

 

「お二人さん! そろそろ休憩だ、水分補給しとけよ。」

 

 

「は、はぃ。思ったよりきついですわね。」

 

 

「お~! 休憩だ~! お水お水!」

 

 

 

「にしてもハルウララ、だったか? お前さんも速いねぇ。さすがニューダートクイーンって言ったところか?」

 

 

「ほんと、すごいですよね。」

 

 

「……ぷはぁ! お水美味しい! ん? なにかウララのこと話してたの?」

 

 

「いや、あんさんがすごいなって話をしてたんだ。そうだ、すまんがお前とお嬢の分のスポーツドリンクを買ってきてくれないか? つりは好きに使っていい。」

 

 

そう言ってお嬢と話すためにウララに多めに紙幣を握らせ購買へ向かわせる。

 

 

「うん! わかった! 行ってくるね~!」

 

 

 

 

 

 

「それで、どうだ。うまくいけそうか?」

 

 

「……焦燥感、というのでしょうか。ウララさんのおかげで心は軽くなりました。ですが何かをつかめたかというと……」

 

 

「そうか。……ま、気にすんなや。実力はちゃんとついてきてる。気を張りすぎたら勝てるもんも勝てなくなるし、もう少し気楽にやってもいいんだぜ。」

 

 

……思ったより自信を無くしている。いや、それも仕方ない話なのかもしれないな。うまく自信を付けさせるためも短距離でGⅠ狙わせてみるか? NHKマイルは出走登録時期が過ぎちまったし、ダービーに出ることも考えると控えておきたい。なら夏明けのスプリンターズステークスだが……、それまでお嬢はもつのか? それ以前にあのバクシンオーが出走するのは確定している、必ず勝てるとは言い難いレースだな。と、なると難しいな。

 

あとはどこかと合同練習させる方法もあるが……、今のところ実力的にもウララが最適か? リギルやカノープス、緑川のとこでもできるように頼み込んでみるのもいいかもしれん。

 

 

 

まぁ色々考えてみたがウララとやらせるのが一番よさそうだな。適性はダートだが実力は申し分ないし、お嬢の精神的負担をおそらく無意識のうちに減らすように動いている。彼女のトレーナーに聞いた話だと近いうちにまた地方遠征に向かうみたいだが、それまではウチと合同練習できるように頼んでおこう。

 

 

 

「たっだいま~! はい、キングちゃん! スポーツドリンク買ってきたよ!」

 

 

「ありがとうございます、ウララさん。」

 

 

「はい、あと帽子のおじいちゃんにも!」

 

 

「お、おう。ありがとよ。……そっか、傍から見たらもうじじいなんだなぁ……。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ、おじいちゃんどうしたんだろ?」

 

 

「あ~、黄昏てますね。ああいう時は声を掛けると逆に傷つけてしまうのでそってしていただけると……。そういえば今日はウララさんのトレーナーさんが見えておられませんがどうされたのですか?」

 

 

「え~とね、今日は確かたづなさんとお出かけしてるって言ってたよ! あ、それと昨日は桐生院さんともお出かけしてた!」

 

 

「え……、それは色々と大丈夫なのですか?」

 

 

 

 

 




次回、ダービー。

無理に高く飛び上がり続けたコンドルは、星に何を思うのか。


傷つき、再び羽ばたくあなたは美しい。
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