アルティメットスぺちゃん爆誕【実況プレイ風動画】 作:サイリウム(夕宙リウム)
パタリ。
中にいるものを驚かせないようにゆっくりとドアを閉め控室から観客席に戻るため、移動し始める。
仕上がりは上々。彼女と張り合える、とまではとても言えないが食らいつけるまでは成長してくれた。そう、肉体面だけ見れば、だが。ほとんど私が関われない部分、精神的な面ではかなり危うい。この日までそれを解決してやることができなかった。同室のグラスは自身で何とか立ち治り、外側からでもうまく干渉できるまで回復してくれたが、エルはそうではなかった。私から言ってしまうと負担になってしまう可能性を考えルドルフやグルーブ、ヒシアマゾンに頼み込み、気分転換などを色々させてみたが駄目だった。
先ほども口は笑っていたが、目は怯えていた。
彼女が何に怯えていたのか、詳しいことは解らないが推測することはできる。
推測でき、その対応を行ったとしても取り除くことができなかった恐怖。
もう今の私には祈り、応援することしかできない。
どうか、どうか彼女の心が救われますように。
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鏡を見ながら勝負服を整え直す。
GⅠ、ダービーという晴れ舞台、キレイにしておかないといけない。
……最近は鏡を見ることが怖くて見れてなかったが今日ばかりはそう言っていられない。
無理やり顔を向け、鏡を覗く。
弱弱しく、今にも壊れそうな私がそこにあった。
こんなのは私じゃない。
マスクの紐をもう一度きつく結び直す。
鏡を中からこちらを見てくる、私でなく『私』はこういった。
「世界最強はこの私、エルコンドルパサー。」
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(いやー、ダービーてのはすごいですねぇ。人の集まりもやばいですし、よっぽど注目されてるなぁ。にしてもよかったですね、スぺちゃん。広告のチラシとかにスぺちゃんが走ってるのが使われてますし、今回も一番人気。)
「うん、本当にすごいよね。使ってもらえたのはありがたいし。」
(ま、今回もそこまで緊張せずに、いつも通り走れば大丈夫ですよ。前回より皆さん追いついてくるでしょうが本格的にヤバくなってくるのは菊花賞ぐらいから。)
「私はいつも通り気にせず走ればいいんだよね、……わかった。」
(……最近のエルちゃんたちのことで色々思うところがあるのは解るけど、今はレースに集中しよう。あとのことは終わってから、ね。)
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『さぁ、一国の宰相になるよりも難しいといわれるダービー制覇! その栄冠を手に掴むのは誰なのか! 最も運のよいウマ娘が勝つといわれる東京優駿ではありますが今年に限っては違います! 世代にたった一人であれば絶対的な王者になっていたであろう者たちが結集し、ダービーという王冠を手に入れようとしています!』
『一番人気には皐月賞ウマ娘、スペシャルウィーク。ジュニア王者でもある彼女はどういった走りを見せてくれるのか。二番人気にはトウカイテイオー、皐月賞では二着となりましたが今回はどうなるか! 三番人気にはエルコンドルパサー、前走の皐月賞では難しい結果となりましたが実力は確かです。』
『さぁゲートの準備が整い、続々と収まっていきます。』
(トレーナーにも言われたけど今回の目的は周りに私がついていけないと錯覚させること。前回の作戦でハイペースで逃げたことをうまく使って今回も大逃げする。私が大逃げしかできなくてついていったら後半の勝負で力尽きてしまう、私についていったら駄目だということを植え付けるんだ。)
「さぁ、私情を殺せ。」
(あ~、さすがに今回はかなり警戒されてるね。スペシャルウィークさんやテイオーに比べればましだけど視線が痛いや。やっぱり今回は前みたいに伏兵はできないか。ま、期待してなかったから大丈夫。今回は正真正銘私自身の実力で勝負する。)
「やってやる。」
(理解はしていましたがそこまで注目されてませんね。ま、いいでしょう。ウララさんがあれだけ頑張って地方で活躍しているのです。私が、キングが輝かなくてどうするのか。私の勝利を信じてくれた、応援してくれた人たちのためにも。)
「見せてあげましょう、王者というものを。」
(冷静に実力差を考えると未だ届かず、しかしながらそれに諦め全力で戦わないのは愚の骨頂。出走するからには本気で、全力で。)
「グラスワンダー、参ります。」
(マックイーンに手伝ってもらって出来上がった"あの技"、体に負担がかかりすぎるから使いすぎないように注意されたけど、出し惜しみをしてスぺちゃんは勝てる相手じゃない。元々ボクが考えていた"テイオーステップ"、それとボクの"負けない気持ち"で無理やり前に行く。本当は分けて使うようなものなんだろうけど一緒に使う。皐月賞の時はまだ出来上がってなかったけど今ならできる。)
「よし!」
(さ、今回も作戦は変わらず差し。3枠5番と内側からの出走ですが、進行としましては中盤まで後方。ここで無理に内側に行くぐらいならコーナーで外側に行ってしまうのも手です。ま、そこらへんは臨機応変に、です。それで中間地点超えてからは加速していく感じでいきます。スキルも忘れずに使っていきましょう。……あ、それとバ群に囲まれないように注意していきましょうね~。)
「(コクコク)頑張ります!」
『さぁ、各ウマ娘。全員がゲートに収まりました! 様々な思惑を背負ったダービーが、今、始まります!』
(あ、【ゲートの支配者】のトラウマ消しするの忘れてた。今回使えないじゃん。……ま、何とかなる……か?)
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『一斉にスタート! 前走の皐月賞と同じようにセイウンスカイ! いいスタート!』
(よし! うまく出れた! ここから前回よりも速度を上げていく! 前回より私は成長したんだ、速度を上げてもスタミナは持つはず!)
(セイさんは大逃げ。……前回のようにハイペースで進むと後半でスタミナが持たなくなる。周りもついていかないようですし私もそうしましょうか。)
『セイウンスカイがただいま独走状態! 他の面々はこのハイペースについていかず後方からレースを窺います。大きく離れて後続には先行策をとっているトウカイテイオー、エルコンドルパサーが来ている。』
(んー、さすがに同じことを二度もさしてくれないか。後ろに付かれちゃったや。でも今回は前と比べてこの集団のペースも遅いし、今のボクならスタミナは十分残せるかな。)
『後方集団にはキングヘイロー、スペシャルウィーク、ナイスネイチャ、グラスワンダーと固まってきている! 先頭のハイペースに飲まれず歩を進めていきます!』
ありゃ、セイちゃんがターボ師匠してますね。ターボエンジン搭載しちゃったのかな? ステータス見た感じこのペースで進んでいるとスタミナ切れちゃいそうですね。まぁ夏開けたら普通にこのペースで走り抜けそうですけど……。ま、今日はこのままゆっくりペースで行きましょう。
コクコク!
お、先頭が折り返し地点を通りましたね。んじゃ、そろそろ準備始めますよ~!
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(そろそろ、ですね。折り返し地点過ぎたころにスぺさんは加速し始める。)
(問題はついていくか、いかないか。)
(まぁここでついていかずに最終直線で差す、そのイメージが全く沸かないからやらないんだけど。)
『ここで後方集団が折り返し地点にたどり着き、ッ、ここでスペシャルウィークが加速! それにつられて後方集団も加速! 皐月賞と同じようにスペシャルウィークが後続を引き連れて前へと進みます!』
さ、ここからどんどんスキル使っていきますよ~!
>【不沈艦、抜錨ォッ!】を発動!
>【逢魔時】を発動!
(ッ! やっぱりここだね。……ここで抜かされないように速度を出すのもいけるけど、やっぱり最終直線で勝負するしかない。そこで全力を出すためにもスタミナはできるだけ残しておかないといけない。ボクの脚を、"技"を使うならそこだ。ここは堪えないと。)
『スペシャルウィークが率いる団体が先頭集団のエルコンドルパサー、トウカイテイオーを抜いて加速していく
! おっと、ここでエルコンドルパサーも負けじと加速していく!』
『スペシャルウィークを先頭とした集団がセイウンスカイに追いつこうとしています! かなりのハイペースで彼女の一人旅となっていましたが、ここで終わりとなってしまうのか!』
(作戦ではここで埋もれることで私からのマークを外して、私のイメージを大逃げしかできない注目しなくても大丈夫なコ、って変更させるのが目的だったんだけど……、ただで負けて、抜かされるなんて気に喰わない。)
『おぉ! ここでセイウンスカイ! 追い抜かれまいとここで力を振り絞り速度を上げてきた……、がここで抜かされた! 現在先頭はスペシャルウィーク!』
『現在スペシャルウィークが先頭! 最終直線に入ろうとしている! 後方に続いていた集団を引き離し独走だ! おっと、ここで静かに後方で待機していたトウカイテイオーがスタート!』
(よし! ここだ!)
【究極テイオーステップ】
【最強はボクだ!】
(最終直線こそボクが勝負すべきところ! スぺちゃんとの差はかなり離れてるし、加速もすごい。でも諦められるもんか!)
『トウカイテイオー、ぐんぐん速度を上げていく! スペシャルウィークに続いていた集団に迫り追い抜かそうとしている!』
「ハァ……ハァ……、くッ!」
(体力がキツイ。脚が全然残ってない。ハイペースで大逃げしたのは皐月でも同じだったけど、距離の差はやっぱりか。ダービーは皐月賞よりも長いってことは解ってたつもりだけど思ったよりキツイや。しかもスぺちゃんについてきたみんなは比較的体力が残ってるような感じ、多分直線じゃ私はついていけない。残している体力の差から絶対に沈んでしまう。……ここまで、かな。ハイペースで大逃げして、沈んでしまう。そう見せれたはずだし目的は達成できたはずだけど、悔しいや。)
「なんで………。」
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ん~、そろそろ最終直線ですね。既定の3人抜いてますし、スキル使っていきましょうね~。
>【汝、皇帝の神威を見よ】を発動!
>【シューティングスター】を発動!
>【空駆ける英雄】を発動!
ほいほい、スぺちゃん加速していきますよ~!
……ん、後続が皐月賞の時と比べてかなり近づいてきてますねぇ、これは夏を挟んだ菊花賞難しくなりますなぁ。
ま、今回は普通に大丈夫そうですね。
はい、ただいまスぺちゃんがゴールしました。後続と7バ身差で勝利です。
大差勝ちとはいきませんでしたが称号に必要な5バ身差以上であるため大丈夫ですね。
んじゃ、ウイニングライブに行ってみましょう!
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一着 スペシャルウィーク
二着 トウカイテイオー
三着 グラスワンダー
四着 キングヘイロー
五着 ナイスネイチャ
六着 エルコンドルパサー
七着 セイウンスカイ
結果はこのようになった。
実力だけを考えればエルはグラスよりも上、いくらこの世代の者たちが強かったとしても、運が悪かったとしても、掲示板にのるぐらいはできたはずだった。
だが、それは叶わなかった。
体は出来上がっていっているとしても精神は追いついていなかった。
レース直後、私は入賞したグラスをほめることよりもエルの方に駆け寄ってしまった。まだよかったのはグラスも彼女の異変を感じていたため私と共に彼女を心配してくれていたことだが。
エルは何も話してくれなかった。
そして………
「東条トレーナー! 東条トレーナーはいらっしゃいますか!」
「グラスか、どうした、そんなに慌てて。」
「エルが、エルが部屋にいないんです!」
レースの次の日、エルは学園から消えていた。
彼女にとって大事なマスクを残して。
次回、エルコンドルパサー。
折れたコンドルはもう一度空を目指す。