アルティメットスぺちゃん爆誕【実況プレイ風動画】   作:サイリウム(夕宙リウム)

65 / 102
PART57

 

 

 

 

私は何をしているのだろうか。

 

 

 

わからない。

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

「グラス、とりあえず落ち着け。」

 

 

「でもっ!」

 

 

「慌てたところでエルが見つかるというわけではない。とりあえず昨日は自室にいたんだな、その時から今に至るまでを話してくれ。」

 

 

 

おそらく、グラスの錯乱具合から学園側に連絡などはしていないだろう。

彼女の話を聞きながら学園と生徒会の方に連絡し、人手を集めておかねば。

 

 

 

「……昨日は就寝時には一緒にいたんです。それで起きたらとなりのベッドで寝ていたはずのエルがいなくて……、洗面台のところに彼女のマスクがありました。……あ、あと! エルの靴がなくなっていたので寮内にはいないと思うんです!」

 

 

「わかった。とりあえず学園側と生徒会の方に連絡を入れておいた。グラスはエルがいそうなところを探してきてくれるか。」

 

 

「は、はい!」

 

 

 

そう言ってグラスは飛んで出ていった。

 

 

 

……学外に出ていることも考えないといけない。

警察に連絡する必要もあるな。

 

 

 

そう考え私は電話を手に取る。

 

 

どうか無事でいてくれよ、エル。

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

 

(んじゃ、朝練いきましょうかね~。今年の夏合宿はセクさんの御好意でアメリカ行きが決定してますからそっち向けの調整とかもしておきましょう。ま、何をするのかと言いますと加重トレーニングの一時停止ですね。)

 

 

「え、やめるの! 確かに今日はスーツもおもりもしないように、って言ってたけど。」

 

 

(そうそう、まぁ、なぜかというと走法の調整が主になります。スぺちゃん、ダービーの時、体が異様に軽くなってませんでしたか?)

 

 

「そういえば確かにすっごく軽かったなぁ、羽が生えたみたいだった。」

 

 

(そうなんですよねぇ、スぺちゃんの走法は一般的なタイプ。ま、トレーナーさんやスズカ先輩に教えてもらってたのはそれなんですが、身体能力向上によって大跳びになりかけてるんですよね。スぺちゃんに合った走法は一般的なものが一番合っていたので今まではそれでよかったんですが、このままアメリカで走ってしまうと芝の違いと慣れない走法によってさすがのスぺちゃんでもケガをする可能性が出てきます。)

 

 

「ふぇ! ほんとう?」

 

 

(マジマジのマジなんですよね~、というわけでアメリカ合宿までに大跳び走法を身に着けるか自分流にアレンジする、のどちらかをしてしまいましょう。)

 

 

「それで今日は制限しないで走るんだね、わかった!」

 

 

(ま、詳しいところは大跳びの先輩であるテイオーちゃんやトレーナーさんに教えてもらいながらやっていきましょう。今日は自分がどうなっているのかを再確認していく感じですよ~。……ん、あれは?)

 

 

 

 

 

 

 

「スぺちゃん!」

 

 

「あれ、どうしたのグラスちゃん? すごく急いでるけど。」

 

 

(ありゃ、ずっと走ってた感じですね。息も絶え絶えですし、トレーニング用に持ってきていたお水をお渡ししましょう。ほらスぺちゃん、お渡しして。)

 

 

「飲みます?」

 

 

「わ、私は大丈夫だから。そ、それよりもエルを見てない?」

 

 

「エルちゃん? 見てないけど……。」

 

 

「朝起きたときからエルがいないの……、そうだ、屋上! ごめんスぺちゃん、エルを見たら連絡して!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………」

 

 

 

(あなたのせいじゃない。)

 

 

 

「でも! ……でもね。」

 

 

(きっかけはあなたが思っている通りかもしれない。そしたら、どうするの? 今、あなたがすることはここで立ち止まること?)

 

 

「……ううん、ちがう。」

 

 

(なら、探しに行かないとね。友達として、ライバルとして。)

 

 

「うん。」

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

周りを、自分を騙し始めたのはいつからだっただろうか。

 

 

私は「世界最強」だと『私』に言い聞かせた。

 

 

 

 

まぁ、もう終わったことだが。

 

 

 

 

今日の朝、マスクをしないまま鏡を見てしまった。

 

私が封じ込めていた『私』が、その感情が限界だったみたいであふれ出てしまった。

 

 

 

不安、焦り、そして恐怖。 苦しかった。

 

 

 

今の自分が本当に『私』なのか、という不安。

 

 

スぺちゃんたちに全く勝てない焦り。

 

 

自分が世界最強どころか何者にもなれず消えていくかもしれない恐怖。

 

 

 

 

 

全部あふれ出てきた。

 

 

 

 

 

 

気がつけば私は走り出していた。

 

ただひたすらにこの場所から、この気持ちから逃げたいと思った。

 

 

ただがむしゃらに走り続けた。

 

 

 

 

気がつけば、海。崖の上から水平線を一望できる場所にたどり着いていた。

 

 

 

 

私は、ただ、海を見ていた。

 

何かが変わってくれることを、どこか期待しながら。

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

 

いた! エルちゃんだ!

 

 

 

(スぺちゃん。先にグラスちゃんに連絡を送りましょう。……それとなんと声をかけるのか、考えてますか?)

 

 

 

………わからない。もしかしたら私の言葉がエルちゃんを傷つけてしまうかもしれない。

 

彼女の夢を阻む私なんて見たくないかもしれない。

 

 

 

 

(自分の思うまま、しっかりと思いを伝えなさい。大丈夫、あなたの思いはちゃんと伝わる。)

 

 

 

うん。

 

 

 

「……エルちゃん、隣。いいかな?」

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

 

もう日が沈みそうなころ、そこにいたのはスぺちゃんだった。

 

 

 

「スぺちゃん……。」

 

 

「よいしょ、っと。う~ん、夕日がきれいですね。」

 

 

「そう、ですね。」

 

 

「いや~、勧められてきましたけどいいところですね、ここ。好きになっちゃいました。」

 

 

「……なんで。」

 

 

「あ、そうだエルちゃん。のど渇いてません? さっき買ってきた……」

 

 

「何で来たんですか!」

 

 

 

なんで、なんでこんな私を追ってきたんですか。

 

私と対極にいるあなたが、

 

私みたいな嘘つきで弱くて何もできない落ちこぼれを

 

マスクで隠さないと何もできない私を

 

 

 

 

世代の頂点に立ってるすごいあなたが

 

 

 

なんで私なんかを見つけてくれたんですか。

 

 

 

 

「だって、友達ですから。」

 

 

「え……。」

 

 

「エルちゃんがどう思っているのかはわからないけど、私はね、エルちゃんと一緒に走るのが楽しかったんだよ。エルちゃんが一緒にいてくれたことはすごくうれしかったし、楽しかった。レースだけじゃなくてね、クラスで一緒に話してくれたり、遊んでくれたり、色々一緒に過ごしてくれた。」

 

 

「トレセン学園に来るまで、ウマ娘の友達がいなかった私は、すごく救われたんだよ。ウララちゃんに、グラスちゃんに、キングちゃんに、セイちゃんに、ターボちゃんに、そしてもちろんエルちゃんにも。」

 

 

「だから、さ。また一緒に走ろうよ。」

 

 

 

 

 

「でも……、マスクがないと何もできなくて、あっても何もできない私にスぺちゃんと一緒に走る資格なんて。」

 

 

 

 

 

「資格なんていらないよ。」

 

 

 

彼女が私の手を引き、立たせる。

 

 

 

「私は、エルちゃんと走りたいんだ。」

 

 

 

そう言って彼女は私の手を引き走り出す。

 

 

とてもゆっくり、ゆっくりと私の手を引くあなた。

 

 

それにつられて動き出す私の脚。

 

 

スぺちゃんがこっちを見ながら笑いかけてくれる。

 

 

 

 

 

 

 

なんだか暖かい、な。

 

それで、なんだか楽しい。

 

 

 

気が付けば、私たちは思いっきり走っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうだった。私は最初、走るのが好きだったんだ。

 

最強であることの夢を持つ前、ただ、誰かと走ることが好きだった。

 

 

 

目標を目指すうちに忘れていた根本を思い出した。

 

 

 

なんだか、がむしゃらに、むちゃくちゃに、ただ思うままに走っていると悩んでいたことが、苦しんでいたことが、馬鹿らしく思えてきた。

 

 

 

「スぺちゃん! 行きますヨ~!」

 

 

「お~!」

 

 

 

ただ、思いっきり走る。あの時、走ることを覚えたときのように二人で思いっきり走った。

 

 

 

 

走るのって、楽しいね。

 

ありがとう、スぺちゃん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

 

それから、色々大変だった。

 

 

思ったより私は遠くまで来ていたらしくおハナさんの車でやってきたグラスと、おハナさんに「どこまで行っているのか」と、泣きながら怒られた。

 

怒られちゃったけど、二人のやさしさが伝わってきてありがたかった。

 

 

 

たらふく怒られた後、グラスちゃんから部屋に置いてきたマスクを渡してくれた。

 

 

 

 

これまで、このマスクは私の仮面だった。

 

弱虫な自分を隠すためのマスクはいつしか心の内から湧き出てくる負の感情に蓋をするものに変わった。

 

 

 

でも、今は元の理由で、ううん、新しい自分であるために、もっと強い自分であるために。

 

 

そして彼女の隣を、その前を、その先を走る私になるために。

 

 

 

慣れたはずの動作が、どこか新鮮に思えた。

 

いつもよりマスクの紐を縛る手に力が入る。

 

 

さぁ、高らかに宣言しよう。

 

 

「ワタシが、ワタシこそが! 世界最強! 史上最強の!」

 

 

「エルコンドルパサーーーーーーーッ!!!!」

 

 

 

 

 

(マスクデータを公開します。)

(エルコンドルパサーが特定のイベントを経験したため固有スキルが変化します。)

(エルコンドルパサーの固有スキル【熱血☆アミーゴ】が【プランチャ☆ガナドール】に変化しました。)

 

(エルコンドルパサーが特定イベント『原初の思い その先へ』を経験したことにより、これまでに発生していた成長率低下、レース時確定調子低下が消去されます。)

 

(エルコンドルパサーの特定イベント『再臨! 飛翔! エルコンドルパサー!』が発生。現在スペシャルウィークのライバル枠として設定されているため、【対スペシャルウィーク〇】を獲得しました。)

(【対スペシャルウィーク〇】をすでに獲得しているため【対スペシャルウィーク◎】に変化しました。)

 

 

 

(お久しぶりですね。ここだけ見ればエルちゃんだけ強化されてるように見えますが実はダービー前の時にエルちゃん以外は勝負服入手時の星3固有スキルに切り替わってるんです。ちょっとタイミング的に入れにくいかなぁとおもってやってなかったのでここで言っておくわね。ん~、にしてもスぺちゃんも強くなってきてるし周りもいい感じ。彼女に任せてよかったわねぇ。……ん、そろそろ会議の時間か。3人もいるから1人ぐらいサボってもいいと思うんだけどなぁ。ま、仕方ないね。)




これでダービー編は終了となります。
次回からはアメリカ合宿編! お久しぶりなスズカ先輩やセクさんも出てきます。

ちなみにカノープスも一緒に行くみたいですねぇ

……書ききれんのかな?

ま、頑張っていきます。


あと、誤字報告、はちみつ(感想評価お気に登録など)ありがとうございます。
とても励みになります。


それと誤字報告などは感想欄ではなく専用の欄がありますのでお手数ですがそちらでしていただけるとこちらも対応しやすいのでよろしくお願いいたします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。