アルティメットスぺちゃん爆誕【実況プレイ風動画】   作:サイリウム(夕宙リウム)

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PART66

【ミスターシービー視点】

 

 

「なぁ、スズカ。あそこにいるちっこいルドルフみたいなのがトウカイテイオーでその横にいる葦毛がメジロマックイーンで合ってるよな?」

 

 

「えぇ、そうです。」

 

 

「そっか。……ん? スズカ。未来の三冠ウマ娘さんが呼んでるみたいだぞ、急に呼び止めて悪かったな。」

 

 

「いえいえ、大丈夫です。スぺちゃ~ん、そんなに呼ばなくても聞こえてるわよ~!」

 

 

 

そう言いながらスズカはスペシャルウィークのところへ向かっていった。

 

 

にしてもあれがテイオーとマックイーン、ね。確かにルドルフが目をつけるのもわかる子だし、メジロ家の最高傑作なんて噂されるのも解る。でも……

 

 

 

視線をテイオーとマックイーンからスズカとスぺの方に変える。

 

スズカに逃げのコツを教えてもらっているらしい彼女。

 

確かに皐月とダービーを勝ち、三冠に王手を掛けているだけはある。軽く見ただけだが、すでに完成しているといってもいい成長度の上にまだ底が見えていない恐ろしさもある。まだ日本にいたときに初めてルドルフを見たときの感覚と似ているが、それ以上かもしれない。そんな恐ろしさすら感じる奴だ。

 

 

 

私らのような三冠ウマ娘が出た年はそれ以外に目が行きにくくなる、っていうので『三冠が出た年はそこまで強い娘はいなかった』なんて抜かす奴は一定数いるが、今年はそんな奴らも押し黙るだろう。

 

 

世代が違えば三冠、無理だとしても最低一冠は取れる奴らがごろごろいる。はっきり言って異常だともいえるこの世代、そこの頂点に立ち続け、他と比べれば頭一つとびぬけているスペシャルウィーク。

 

 

ほんと、なんでこんなことになってんだろうね。

 

 

 

 

 

そして、わざわざ海外にまで来て練習しているあそこの二人。

 

トウカイテイオーは皐月、ダービー共に2着。今最もスペシャルウィークに対抗できると思われているウマ娘。しかしながら長距離のレースの出走経験が乏しく、長距離レースとなる菊花賞ではどうなるかわからない。

 

メジロマックイーンはクラシック三冠路線での出走はないものの、長距離重賞への出走経験が多く、そのすべてのレースで素晴らしい成績を収めている。メジロ家特有の天皇賞への思いは彼女にも受け継がれているようで、特に春の天皇賞に向けた調整をしているように見受けられる。経験値稼ぎとして神戸新聞杯からの菊花賞のルートをとるようである。

 

 

レース前のスペシャルウィークを映像でしか知らないのもあるが、どうもスペシャルウィークは調子に乗っている、いや気が抜けてきているというべきか。彼女が出走したレースすべてで圧勝しているのもあるだろうが、自身が負けるわけがないという自信を超えた何かがあるように感じられた。少なくとも私やルドルフとは違い、何をしてでも三冠を掴み取ってやる、という感じではなく、三冠など通過点と言っているかのような……。

 

 

まぁ直前に整えるタイプなのかもしれないが、今考える限りあの二人がひっくり返せるとすればそこの油断をついて、彼女が動揺しているうちにゴールしてしまうというのが道だろう。

 

 

それを成功させるために必要な実力を手に入れるために、ライバルと言える競い合える仲間と共に頑張っているのだろうが……。

 

 

 

「ッ!」

 

 

スパートを掛けるときに明らかにテイオーの左足がブレている。踏み込みの時に力を込めすぎているせいか、その力に足が耐えきれていない。合宿中に何度も見たが、彼女の関節の柔らかさは異様なほど。それは十分強みになるが今ではケガを誘発する原因になりかねない。今すぐにでもやめさせ、安静にさせておかなくては。

 

 

 

 

テイオーに向かって走り出そうとした時、彼女の瞳に目を奪われた。

 

 

決意と共にどんな手を使ったとしても目標を達成しようとする戦士の目。

 

 

私が戦って勝ってきたライバルたちと同じ目、執念の意思。

 

 

 

 

 

 

あぁ、こいつは駄目だ。私が言ったら逆効果になる。

 

 

GⅠ以外の重賞にしか勝てていない奴と三冠、そんな奴が今の彼女に声をかけてしまえばさらに追い詰めてしまうかもしれない。彼女の顔つきを見るにケガの可能性を把握していないのであろう、そんなときに横から急に出てきた奴が自身の思い当たらない不安を言ったとしても、それは効果がない。逆に舐められていると感じさらに厳しいトレーニングをし始めてしまうかもしれない。

 

 

やるならば違う方法で、少なくとも今のスパートを何度もやらせるとテイオーは壊れる。

 

 

私は手短に自分の感じたことをスピカトレーナーにメールで送った後、彼女たちのもとに向かうことにした。

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

「よ、お二人さん。調子はどうだい?」

 

 

「「シービーさん!」」

 

 

「よせやい、さん付けなんて。普通に呼び捨てでいいよ。」

 

 

テイオーさんとのレース形式での練習後、息を整えながら水分補給などを行っていた時にやってきたのはミスターシービーさんでした。日本のレース界でたった五人しかいない三冠ウマ娘、その三人目。現在アメリカで活躍しているということは知ってはいましたが私たちがお世話になるここに滞在しているとは知りませんでした。

 

一緒に練習できると知り、少しでも彼女の技術を盗んで帰ろうと思っていましたが向こうから話しかけてくれるとは驚きです。いったい何の御用でしょうか?

 

 

 

「いや~、二人の練習を見てたら昔を思い出しちゃってね、熱くなってきちゃった。それでさ、トレーナーにはこっちのサマードリームも終わったしあんまりハードな練習はしないように言われてたんだけど、二人と本気で走ってみたくなってね。どう、やる?」

 

 

 

私達の目指すべき先輩、その方からのお誘いです。それに二人で今度色々と教えてもらいに行こうと話していたところですからちょうどいいですわ。それに、断る理由が思いつきませんもの。

 

 

「ぜひ! こちらからお願いしたいくらいですわ。」

 

 

「うんうん! ボクたちから教えてもらいに行こうとしてたからありがたいよね!」

 

 

「よし! じゃあ早速走りに……、あ、お前らさっきまで全力で走ってて休憩中だったよな。う~ん。……そうだ。休んでた時に全力で走らせたらオーバーワークになってしまうよな。だからちょっと趣向を変えてやってみるか。……お前らの目標は打倒スペシャルウィークだろ?」

 

 

 

その名前を出されたとき、隣にいるテイオーの雰囲気が明らかに変わった。そういう私も彼女に及ばないながらも心のどこかでスイッチが入った音がする。

 

 

 

「お! いいねぇその感じ。あいつのやり方は先行もできるが基本は差し。ここにいる私も追い込みで二人とも後半にかけてレースをひっくり返すやり口だ。そんでこれから後ろから追い抜かされた時にどういった行動をとるべきか、という感じでやってみようか。どっちかというと思考メインの練習だから追い抜かされた時にスパートを掛けてついてくる必要はない。ただ頭を使ってどの道が最適なのかを探る。」

 

 

なるほど、思考メイン。後方からくる驚異にどのように対処するべきかを考える練習ですか。

 

 

「どうだ、こちとら三冠馬。こっちじゃ成績は振るわなくてもクラシックの若造に劣るなんてことはないぜ。……やるか?」

 

 

 

相手は三冠、そしてアメリカで戦い抜いてきた猛者。思考メインというわけですから追い込み、差しの作戦をとったときどのように動かれれば厄介か、そこも教えていただけるのでしょう。

 

 

 

こたえは勿論、YESですわ。

 

あなたももちろんそうでしょう、テイオー。

 





マックイーンがパクパクお嬢様のイメージしか出てこなくなっていたので起用。テイオーの詳しい描写は菊花賞前ぐらいになるかな?
シービーさんはアメリカでジャパニーズドラゴンガールと呼ばれるぐらいには有名で成績もいいはずなのですが、他のやべー奴らに囲まれているせいで自己評価が低めです。ちなみに日本ウマ娘は基本そう。
なんで海外魔境になってんの? という質問に対しては日本も70年代から00年代までのやべー奴らが集まってんだぞ、海外も同じことになってるのは明白じゃろうがい! と返答させていただきます。またせん馬が存在しようがないので史実よりも暴れ回ったウマ娘がいるとか……、まあ描写できるかは解りませんけど。

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