アルティメットスぺちゃん爆誕【実況プレイ風動画】 作:サイリウム(夕宙リウム)
「それで、お嬢。次はどうする?」
菊花賞での敗戦の翌日。私は練習の前にトレーナーさんからとわれた。
「お前さんも解ってるとは思うが今年残ったGⅠはジャパンC、マイルCS、有馬の三つ。ドリームシリーズの件で上から狙ってくる奴はいるだろうが、お嬢ならどれでも出走自体はできる。……だが、俺としてはどれか一つに絞って欲しいってのが本音だ。ただでさえオーバーワーク気味なんだ、これ以上の負荷はお嬢の今後を考えれば許可しにくい。」
深く、頷く。私はスぺさんのように体が異様に丈夫、というわけではない。トレーナーが言う通り、今の練習量を続けたまま二つのレースに出走するのは不可能なんだろう。
「お嬢のことだ、マイルには出ないんだろ?」
「はい。」
今年の成績、GⅠでの成績は負け続けだった。しかしながらそれが理由で皆との勝負を避けるのはキングのすることではない。
「と、なるとジャパンCか、有馬になってくるが……。俺としては有馬を推したい。このままのペースで行くと菊花賞の疲れが抜けきっていないままの勝負になる可能性が高い、距離は多少長くなるが出来るだけ完全な形で挑んだ方がいいと思っての話だ。」
……確かにこのままジャパンCに出走するのは難しい。準備期間が少なく、疲れを残したまま、そして成長できないまま挑むのは避けたい。
「……はい。それでお願いします。今度こそ、勝利を!」
今度こそ、今年最後の大舞台で。
私を思ってくれた人のためにも、私自身のためにも。
スぺさんに勝利する!
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「大丈夫、切り替えられる。まだ策はある。」
そう、自分に言い聞かせる。
全部を掛けた菊花賞。ダメだったけど、まだ何とかなる。ダメだったことが次につながる。
「幸い、まだ私の策はバレてない。もう一度見直したけど私の大逃げはいつものまま。バレてない、評判でもそういわれている。」
そうだ、あの時はとにかく前に進もうとしていたが、世間にはそれが私が“見せて”いた私と何ら変わらない。まだ私には道が残っている。
「……と、なると最大の問題はスぺちゃんのプレッシャー。ゲートが開く瞬間に叩きつけるあの暴力ともいえる技。どうにかしてあれを耐え切って先頭を維持し続けないといけない。」
と、なると今の私に必要なのはあのプレッシャーを気にせずスタートできる強靭な精神力とスぺちゃんの大逃げよりもさらに前で逃げ続け、スぺちゃんが後ろに下がらざるを得ないほどのスピード、それを維持するスタミナ。
「改めて上げてみると、やること多くてやんなっちゃうね、あはは…………、遠いなぁ。」
考えるとどうしても時間が足りない、けど私にとって時間は敵だ。
「どう考えても私じゃおいてかれる。どうしても伸びしろ、ううん成長の早さが足りない。」
私が単純な力量だけで勝負しない理由、それは自身とスぺちゃんとの力の差もあるけど一番の理由は成長速度の差だ。
私が一歩前に進むとすでに他のみんな、特にエルやグラスがさらにもう一歩前に進んでる。スぺちゃんはもともとの差が大きすぎてわからないけど、エルちゃんたちとの差が離れてないところを見るに速度は同じかそれ以上。
歩幅や速度が違う相手に挑み、勝つには策を用いるしか方法はなかった。
「トレーナーさんから渡されたデータ。これがホントになぁ……。」
データと作戦に重きを置いている私のトレーナーさんが用意してくれたもの。それは私達同世代、特に有力ウマ娘の現在の力量と成長速度についてまとめられたものだ。もちろん私のデータもある。
これを見ていると嫌でも思い知らされる。
これからさらに差が広がることを。
スぺ、エル、グラスの三人の成長速度が徐々に上がっていること、そして私とキングが遅れ始めていること。そして自分だからわかるどうやっても超えれそうにない壁の存在がもうすでに見えかけていること。またこの三人にそれが全く持って見えていないこと。
そうだ、私が置いて行かれるのはすでに“決まって”いる。
来年、シニアに入る頃じゃもう追いつけない、私は本当に有象無象に成り下がる。
私が求める基準に何とか辿り着きそうで、今までの策がピッタリ嵌ったときにだけ勝利を手に入れられるギリギリのラインが年末の有馬記念。そこが私のタイムリミット。
「やるしか、ないよね。」
まずは菊花賞で使い切ってしまった体力の回復、その回復の間に、他の強化を考えれば時間的に精神を鍛えておかないと間に合いそうにない。
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「二人ともジャパンカップへの出走登録、か……。」
「ハイ! グラスは一人にしてほしいみたいなのでワタシがまとめて言いに来ましタ!」
「……そうか。」
「ワタシもグラスも今の目標はスぺちゃんですが、いつかは世界に飛び立ちたいと思ってまス。なので世界からの色々な強い方が集まるジャパンカップは挑戦しがいがあります。スぺちゃんは有馬も出るみたいですガ、ワタシたちが全力で勝負できそうなのはどちらか一つだけ。なのでこっちにしましタ!」
「だが、いいのか? 知ってるとは思うがドリームシリーズの件で、ルドルフの出走が決まっている。」
「モチロン知ってます! でもそれが逃げる理由にはなりませんシ、会長さんと戦えるのはうれしいし、楽しみデス!」
「……了解した。エルの方の出走登録はこちらで進めておこう。だが……。」
「……グラスは多分。ワタシの時より難しいと思います。たくさん気にかけてくれたから何か返したいですけど、多分ワタシじゃ駄目なんだと思うんです。」
「……解決のカギになりそうなスペシャルウィークの方もスピカの奴に聞いたが、精神状態がいいとは言えないそうだ。おそらく今無理に合わせると、すれ違い爆発する。……とりあえずこちらでできる限りのことをしてみる。エルも無理をしないで欲しい。」
「はい、よろしくお願いします。」
スぺが取り返しのつかないところに行きかけているのは解っている。
だけど私にはそれを回避させる術はない。
私の契約とスぺの契約は別物。
私の契約はスぺの疑似トレーナーになることだけ。
それ以外の物は求められなかった。
スぺの目標や契約はスぺにしかわからない。
私の内容は伝えることができたが、スぺの契約は違う。
その内容を私は知らない。
私にできることはない。
私には縛りが多い。
出来ることはトレーナーとしてのことだけ。
それもすごく限定的。
なんとか例外も見つけるこができたがほんの少し。
私はほとんど見ていることしかできない。
私はあなたに触れられない。
出来ることは、
せめて、気づかせてくれる人のところに連れていくぐらい。
他人に任せることしかできない私を許して。
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次回はゴルシちゃんとスぺちゃんの回です。