アルティメットスぺちゃん爆誕【実況プレイ風動画】 作:サイリウム(夕宙リウム)
(なにこれぇ。……は? マジでどういうこと???)
ゴルシ先輩から手渡されたデータをお姉ちゃんに渡した後日。私が次に出走するジャパンカップについて特集を組んでいたレース情報誌が発売されているようなので買ってきた。
お姉ちゃんに頼まれたもので一緒に見てたんだけど、そこにはシンボリルドルフ会長と私の無敗三冠対決、それに先日の凱旋門でゴルシ先輩に勝ったブロワイエさんが出走登録をしたということが書いている。
雑誌では夢の三冠対決だ! って書いてあるけど……
(なして????? いや、まぁ仕方ないのかもしれんせんけどね。なんで? う~んどうしよう???)
まぁ自慢の姉は思いっきり錯乱しているが、いつも通りちょっとおふざけが入っているのも解るから大丈夫なんだろう。私たちが合わされば負けるレースなんてない。お姉ちゃんが言ってることは全部正しかったし、これからもそうなんだ。あとは私がお姉ちゃんの考えてくれているレベルまで早く辿りつくだけ。
「それで、お姉ちゃん。なにか練習とか変えた方がいいのかな?」
(う~んどうしましょう。やっぱりスぺは今年の有馬も走りたいんだよね?)
「うん、必要だと思うし、走っておきたいかな。」
(りょ。なら……、そうですね。有馬との連戦になるときつめのトレーニングやりすぎると故障の原因になり得ますし今やってるトレーニングのままでいいですよ。スキルレベルの経験値をうまく稼いでいきましょう!)
「うん、わかった!」
(ん~、なら私は普通にブロワイエの研究でも始めますかねぇ。スぺちゃんのメニューは出来上がってますしこちらを進めておいた方がいいでしょう。にしてもなんでブロワイエのデータだけ念入りに用意されてると思ったらこれが理由だったんか……。マジでゴルシって何者なんだ???)
「……あ、そういえば今日トレーナーさんに呼ばれてたんでした! お姉ちゃんちょっと席外すね。」
(ほ~い、いってらっしゃ~い。)
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「それで、何の御用ですか、トレーナーさん?」
「急に呼び出して悪いな。んでなんで呼び出したかっていうとスぺの今後についてちょいとばかし気になることがあってな。それの確認だ。」
「確認ですか?」
「おう。スぺの次走はジャパンカップ。その次に有馬記念、だよな。」
「はい、その予定です。」
「それでシニア級に入ってからは大阪杯、天皇賞春、宝塚記念の春シニア三冠。夏の間にKGVI & QES、凱旋門賞を挟んで、秋シニア三冠の天皇賞秋、ジャパンカップ、有馬記念に挑む、ってのでいいんだよな。」
「はい、この前ゴルシ先輩に言われて出した資料にもそう書いてあったと思うんですけど……、あ! もしかして私何か間違えてましたか?」
「いや、もらったもんはちゃんと書けてたんだがそれ以外に気になることがあってな。……このままの予定で行くと全く休みがなくなるだろ? そいつがちょっと気になってな。わざわざ書いて出してくれたからそのことは理解してると思うんだが……」
「はい、理解の上です。」
「まぁそれならいいんだが……、ま、そんなお休みが少ないスぺには大き目の休みを取ってもらおうと思ってな。有馬のあと大阪杯まで三か月近く間が開くだろ。なんで来年の正月にはスぺの実家に帰ってもらうことにしました! 拍手~!」
「え? えぇ……」
「ちなみに学校側の許可と、スぺの親御さんにも来年の正月は帰らせますって連絡してあるから変更はなしだぞ! ま、最近頑張ってるしゆっくりしてくるといい!」
「は、はぁ。わかりました。」
(なんだかすごいハイテンションだなぁ……。久しぶりだし、あっちでも走れるからまぁいっか。)
「んじゃ、連絡も終わったしもう帰ってもいいぞ。あ、あと最近オーバーワーク気味だからしっかり休んどけよ~。」
(明らかに最近のスぺはオーバーワーク気味。初めてのシニア級との戦いだから焦るのも仕方ないが、ケガだけには気を付けないと……、出来るだけ練習時に横にいるようにしなければ。……にしても急いで用意した帰郷計画だったが、思ったより何もなく受け入れられてよかった。最近のスぺを見ていると受け入れずに無理やりトレセンで練習しそうなもんだが、なにか心境の変化があったのか? ……まぁいい、とりあえずスぺの親御さんにできるだけ地元にいるときは練習させずに休ませるようにってことと、あとスぺのもう一人のトレーナーにも手紙書いておこうか。たぶんスぺに渡しておけばちゃんと届くだろうしな。)
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「では、お願いしますね、東条トレーナー。」
「あぁ、解った。ジャパンカップの出走登録はこちらでやっておこう。」
「あぁ、やっと一緒に走れるのですね! 今度こそ、今度こそはあなたの隣に! あなたの前に! ふふ、ふふふふふ。」
「……あの、なんだ。な、何かあればすぐに言うんだぞ。」
「えぇ! えぇ! 解っていますとも! それでは失礼いたしますね、私はもっと速くあらねばなりませんので。」
あぁ、レースが楽しみで、楽しみで仕方ない。どうにかなってしまいそうだ。
やっと、やっと私があなたの隣を走れる存在だと証明できる!
自分の体へのダメージなんか、痛みなんかもう感じない。
ただ、あなたの先に。アナタノマエニワタシガハシルトコロヲ
だから、待っててね。
スぺちゃん。
お、トレーナー! 手紙持ってんじゃん! ちょうどゴルシちゃん暇だから届けてきてやるよ!
あ! 後、次ジャパンパップみたいだぜ!