アルティメットスぺちゃん爆誕【実況プレイ風動画】   作:サイリウム(夕宙リウム)

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PART80

こにゃにゃちわ~! 投稿者ですよ~! スぺちゃんに走者呼ばわりされたのがいまだに受け入れられてなくて名乗りが変わらない愚か者ですタイ!

 

だって僕ちんRTA走者じゃないのに……。ま、そんなことは置いといて今日も元気にイクゾー!

 

 

 

んで、今日は何からといいますと、皆さまお待たせいたしましたのジャパンカップですね。個人的な思い入れも結構あるのでなんとしてでも、まぁ実況の目標的にも勝っていきたいレースです。

 

 

しかしながらちょいとばかし難しいレースになってくるのも事実。

 

今までスぺちゃんが走ってきたレースはどれもジュニア級、クラシック級と同じ世代同士で戦うものでしたが、このレースからは自分よりも上の世代とも戦わなければならなくなっていきます。今までスぺちゃんが【鉄人】からくる他の人よりも長く練習できた時間や小学生から積み上げてきた時間というアドバンテージが通用しなくなってきますし、単純にレース経験の多さからくるスキルの充実具合も危うい時があります。

 

 

でもまぁそんじょそこらのウマ娘では我らのスぺちゃんにはかなわないんですけど……、今回はちょっと話が変わってきまして……。

 

 

 主な出走者紹介!

現在無敗記録更新中! 世代No.1の無敗三冠ウマ娘! スペシャルウィーク!

 

未だ続く伝説のロード! 無敗三冠にして七冠ウマ娘! シンボリルドルフ!

 

欧州三冠、凱旋門連覇! 芝の本場、欧州の最強ウマ娘! ブロワイエ!

 

不退転、不死鳥! あとなんか最近雰囲気ヤベー! グラスワンダー!

 

史実ではレート国内最強の134! ここからの爆発力未知数! エルコンドルパサー!

 

 

 

 

…………なんじゃこのクソゲー???

 

こんなん勝てるわけないだろ! いい加減にしろ運営!

 

 

 

 

まぁそれでも勝たなければならないのがこのレース、頑張るのはスぺちゃんですがわたくしも微力ながら全力で、作戦もちゃんと考えてきたのでバッチし応援していきましょー! イクゾー!

 

 

「お~!」

 

 

 

ん、そろそろパドックへの移動みたいですね。んじゃ行きますよスぺちゃん。

 

 

「はーい。」

 

 

あ、それと怖い物みたさ、かもしれませんがスぺちゃん含めて先ほど挙げた方々のステータスを見ときましょうか。まぁ今見てもできること作戦の手直しぐらいしかできないんですけど単純に気になるので……、それではホイ!

 

 

【スペシャルウィーク】(絶好調)

 

>スピード:B+

 スタミナ:A

 パワー :A+

 根性  :B+

 賢さ  :B

 

>スキル

 【シューティングスター】Lv.4

 【汝、皇帝の神威を見よ】Lv.3

 【空駆ける英雄】    Lv.3

 【不沈艦、抜錨ォッ!】 Lv.3

 

 【ゲートの支配者:改】

 【食いしん坊】

 【逢魔時】 

 【プレッシャー耐性〇】

 【末脚】

 【率いるもの】

 

 

現在のスぺちゃんはこんな感じ、スキル系統はそこまで伸ばすことができませんでしたが、スピードはB+にできてます。まぁ一月しかなかったので仕方ないですね。あとなんか昨日まで色が薄くなってた【率いるもの】がアクティブ化されてますね。なんででしょ?

 

 

【ブロワイエ】(不調)

 

>スピード:S

 スタミナ:S+

 パワー :S+

 根性  :S

 賢さ  :S+

 

>スキル

 【Je suis les circonstances】Lv.6

 

 【コーナー回復】 

 【ハヤテ一文字】

 【一陣の風】

 【全身全霊】

 【差しのコツ◎】

 【プレッシャー耐性◎】

 

 

 

【シンボリルドルフ】(絶好調)

 

>スピード:A+

 スタミナ:S

 パワー :A+

 根性  :A+

 賢さ  :S

 

>スキル

 【汝、皇帝の神威を見よ】Lv.6

 

 【弧線のプロフェッサー】 

 【独占力】

 【好位追走】

 【先行コーナー】

 【逃げけん制】

 【先行けん制】

 【差しけん制】

 【追込けん制】

 【プレッシャー耐性◎】

 【神聖皇帝軍】

 

 

【グラスワンダー】(■■■)

 

>スピード:A

 スタミナ:B+

 パワー :A

 根性  :B+

 賢さ  :B+

 

>スキル

 【精神一到何事か成らざらん】Lv.3

 【■■■■■■■■■】

 

 【乗り換え上手】 

 【位置取り押し上げ】

 【独占力】

 【差し焦り】

 【末脚】

 【対スペシャルウィーク○】

 

 

【エルコンドルパサー】(好調)

 

>スピード:A+

 スタミナ:B

 パワー :A

 根性  :B

 賢さ  :B

 

>スキル

 【プランチャ☆ガナドール】Lv.3

 

 【直線巧者】

 【千里眼】 

 【スタミナキープ】

 【テンポアップ】

 【先行直線〇】

 【対スペシャルウィーク◎】

 

 

 

 

……………んんんんんん???????????

 

 

 

なにこれぇ?

 

 

 

 

 

 

と、とりあえず上から整理していきましょう。

 

まずブロワイエ。ステータスの方は欧州覇者というだけあって、それ相応のS乱立。スキルの方も金色スキルばっかですし、固有もLv.6。それにプラスしてプレッシャー耐性まで持っていらっしゃる。見た感じ作戦は前評判と同じように差しで、最終直線辺りでブッ飛ばしてくる感じですね、ハイ。唯一希望が持てそうなのは調子が不調気味ってところくらいでしょうか。

 

次にルドルフ会長。ステータスがS多めのお化け。最強に近い固有スキルもMAX。スキル君もいいところ持ってますし、それよりも特筆すべきなのはデバフ系スキルの多さ。全範囲に対してデバフ掛けてくるとか君ホントに皇帝?

 

それともっと意味不なのは同世代のグラスちゃんとエルちゃん。……君らいつの間にそんなに強くなったの? 菊花賞の時君らよくてB届くか届かないかぐらいだったよね?? なして???

あとスキルとしてスぺちゃん対抗用スキルがなんか知らないうちに生えてますし、あとグラスちゃんの調子のとこ塗りつぶされてますし、なんじゃこのレース!

 

 

と、とりあえずなんで同世代組がつよなってるか調べなければ、多分なんかのスキルが発動してるんだと思うんですけど……

 

 

 

 

! これですな。ルドルフ会長の【神聖皇帝軍】。効果の方は……

 

 

>【神聖皇帝軍】

自身の出走するレースにおいて、レースに他国籍の選手が出走しており、その選手の実力が自身より大きい、もしくは同程度の時に、自身を含めた自身の所属する国家に属する対象を大幅に強化する。【率いるもの】の完全上位互換。効果は効果が及んだ人数の分だけ増加される。

またこの効果は【率いるもの】系統のスキルを持っている者には効果が及ばない。一軍に二将もいらず。

 

 

 

 

……あ~、なるほど。グラスちゃんやエルちゃんが超強化されてる理由はこれみたいですね。会長のスキルで日本所属のウマ娘を底上げしてみんなでブロワイエやっつけるぞ~! っていうスキルみたいです。効果読む感じ会長も強化されてるみたいですね。と、いうことはブロワイエさんあのステータスが素なのね……。

 

 

まぁそんなことよりももっと面倒なのが【率いるもの】のせいでスぺちゃんにバフが掛かってないことですね。テキストとステータス見た感じ、おそらく【率いるもの】も自国出走者の数だけバフがかかるものみたいなんですけど会長に全部取られた上に、スぺちゃんはスぺちゃんで資格持ってるからバフの対象外といったところでしょうか。

 

おそらく、受け取れる対象が二人、この場合は会長とスぺちゃんがいて、バフの条件となる人はどちらかにしか所属できないという制限の中でスキルの格が上の【神聖皇帝軍】に全部持ってかれたという感じでしょうか。

 

今後スぺちゃんが成長すれば【日本総大将】みたいな感じで会長とも対抗できたんでしょうけど……、今は話しても仕方ないことですね。

 

 

 

 

ま、今まで壁みたいな壁がなかったですし、このぐらいの難易度の方が動画的にもありがたいよね! 多分ルナティックとかインフェルノみたいな感じだろうけど、私のスぺちゃんが負けるはずないんだ! わたくしの考えた作戦とスぺちゃんしかない固有スキル系統の多さで勝利してやる!

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

パドック入り。いつもと違ってお姉ちゃんはさっきからずっとぶつぶつ言っている。内容はこのレースでの私の動き方、作戦。

 

私が弱かったからお姉ちゃんに迷惑をかけてる。私が強くないからお姉ちゃんに本当は考えなくてもよかったことを考えさせてしまっている。

 

もっと、もっと死に物狂いで練習すればよかった。前に進めばよかった。

 

ゴルシ先輩に勝ったブロワイエさん、みんなが憧れているルドルフ会長、この二人を全く寄せ付けないぐらい私が強くならないといけなかった。

 

 

……今思い悩んでも何も変わらない。体の調子はいいんだ、あとはもっと集中すること。お姉ちゃんの指示を十全にこなせるようにしないといけない。ゲートに入る直前までには整えないと。

 

 

 

 

「すまない、少しいいだろうか。」

 

 

「! ルドルフ会長! ……どうしました?」

 

 

「いや、少しばかり君が入れ込み過ぎている気がしたのでな、声を掛けさせてもらった。あぁ、集中していたのならすまないことをした。」

 

 

「い、いえ。大丈夫です!」

 

 

「そうか、ならよかった。……多くは語るまい。悔いのない、いいレースにしよう。全力で行かせてもらう。」

 

 

「はい、私も全力で。」

 

 

「……ふふ。いやすまない、うれしくてね。欧州の覇者であるブロワイエと競い合えるのも楽しみだが、君と競い合えるのも非常に楽しみだ。……それとすまないが彼女、グラスワンダーに声をかけてやってくれるか?」

 

 

「グラスちゃん、ですか?」

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

ふふふ、ふふふふふ。あぁ、あぁスぺちゃん。

 

いつからこの時を待っていたのか、もうわかりませんね。

 

 

 

でも、そんなことはどうでもいいのです。

 

ただ、私と本気で走って欲しいだけ。

 

ただ、私のことをちゃんと見てほしいだけ。

 

 

ちゃんと私、強くなりましたよ。

 

ちゃんと私、あなたに届きますよ。

 

 

それに私、今日はとっても調子がいいの。まるで羽が生えたみたいに体が軽いの。

 

 

 

だからスぺチャン

 

 

モットワタシノコトヲミテ……

 

 

 

「グラス、ちゃん?」

 

 

 

「! ……スぺちゃん! あぁ、すみません。私としたことが気が付かないで……」

 

 

「ううん、いいよ。……それよりも大丈夫?」

 

 

「えぇ! えぇ! 大丈夫ですとも、心配させたようで申し訳ありません。……スぺちゃん?」

 

 

「どうしたの?」

 

 

「今日は、全力で、私と戦ってくれますか?」

 

 

「? うん、もちろん。一緒に頑張ろうね!」

 

 

 

 

……笑顔を持って返礼として、その場から立ち去る。

 

 

やっぱり見てくれてない。

 

 

スぺちゃんの目にはルドルフ会長とブロワイエさんしか映ってない。

 

ワタシなんて他の有象無象といっしょなんだ。

 

ワタシなんかスぺちゃんの視界に入らないんだ。

 

 

 

 

あぁ、あぁ。

 

 

本当に、タノシミデス。

 

イッショニガンバリマショウネ、スぺチャン?

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

『さぁ、ついに、ついに始まろうとしております! 今年のジャパンカップはヤバイ! この一言でこの東京競馬場に集まったのはなんと22万人! 限界までパンパンに人が集まっております! 指定席の方は法外な値段が付いてしまったようで、URA方も対応で色々と大変だったようです。まぁそんなどうでもいいことはおいておきまして、レースの方に注目いたしましょう!』

 

 

『一番人気に押されましたのはやっぱりこのウマ娘! 皇帝、シンボリルドルフ! 夢の七冠馬が今日、ジャパンカップのためだけにここ、東京競馬場に降り立ちます! 皇帝の伝説はまだ続きます、さぁ、次の八冠目へ!』

 

 

『二番人気は欧州覇者、ブロワイエ! 日本ということで一番人気を皇帝に奪われてしまいましたが、その実力は肩書以上です! 欧州三冠・凱旋門連覇! 彼女の新しい勝利の杯はジャパンカップでしょうか!?』

 

 

『三番人気に押されましたのはスペシャルウィーク! メイクデビュー、ホープフルS、クラシック三冠とここまで無敗記録を更新中の彼女。一番人気のシンボリルドルフと夢の無敗三冠勝負となりましたが未だ彼女はクラシック級。シニア級の二人と比べるとやはり不利に思われてこの人気となりました。』

 

 

『さぁ本当にどうなってしまうのでしょうか、新旧無敗三冠ウマ娘に欧州三冠ウマ娘、三冠だらけのレジェンドレース! もう実況なんてしてる場合じゃないかもしれません! さぁどうなる! 正直誰が勝ったとしても納得できるぞ!』

 

 

『さぁ、ゲートインが粛々と進んでおります!』

 

 

 

 

(……よし、決めた。勝負のしどころは中盤からの最終直線。一番注意すべきはルドルフ会長。ブロワイエは不調であることでの実質的ステータスの低下を考えれば会長よりは注目度を下げていいはず。)

 

 

「大丈夫、お姉ちゃん?」

 

 

(お!? 心配させてしまいましたか? 大丈夫ですって。んじゃ、作戦発表! 最初にゲートでプレッシャーかけまして、そのまま後方で差し位置でキープ。中盤過ぎたあたりからゴルシちゃんのスキルで加速しまして、最後の直線でドン! といういつも通りの真っ向勝負で行きましょう! 多分ここで練習してない小技に頼ったら負けます。タイマン勝負デイ! けっぱるべ~!)

 

 

「うん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お姉ちゃんが決めた作戦は私ができる最適解。私が持てるすべての技を出し切れる作戦になった。

 

大丈夫、大丈夫だ。私は勝てる、勝たなくちゃいけない。

 

 

 

(スぺ、【ゲート】はスタートを遅らせるんじゃなくてスタミナや精神力を削るために。)

 

 

 

ゆっくりと頷く。

 

 

ルドルフ会長やブロワイエさんは明らかに私より強い、出来ることは全部しないと。

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

『今、ゲートが開きました!』

 

 

 

私と一緒にスタートしたのは会長にブロワイエさんにグラスちゃん。ちょっと遅れてエルちゃん。あとは他のシニア級の人たち。本来ならゲートが開く瞬間に全力でやるけど、今日はゲートの瞬間じゃなくて、ゲートが開く少し前からプレッシャーを掛けて精神力を削る方法にしたせいか、スタート自体は前の菊花賞より普通になった。

 

 

ルドルフ会長とブロワイエさんに対応されたのは仕方ないかもしれないけどグラスちゃんにすでに対応されたのは驚いた。お姉ちゃんがグラスちゃんの様子がおかしいって言ってたのはこのことだったのかもしれない。エルちゃんも菊花賞の時よりも効いてないということは、やり方を変えたからといっても次はもう通用しないかもしれない。次は……、いや次のことは今考えるべきじゃない、今はレースに集中しないと。

 

 

ルドルフ会長とエルちゃんは先行、グラスちゃんとブロワイエさんは差し。私も全力を出すために差しの位置に下がる。後はこの位置を保ちながら折り返し地点まで体力を残しておかないといけないんだけど……

 

 

「ッ……」

 

 

アメリカ合宿でセクさんと練習したおかげかそこまできつくはないけどプレッシャーを掛けられた。出所は……たぶんルドルフ会長。軽く周りの顔色を窺うと全体的に速度が下がっている。影響を受けてないのはブロワイエさんくらいだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『現在シンボリルドルフは集団の中央より少し前といったところ、ブロワイエ、スペシャルウィークは後方で機を窺っている感じでしょうか。』

 

 

『今日は先行策のシンボリルドルフですが、これまで先行策を使ったレースでの彼女と見比べると若干位置が後ろ目ですね。これまでは自分でレースを引っ張る代わりに多くスタミナを使ってしまうという感じでしたが、これはスタミナをうまく残していますね。強敵であるブロワイエやスペシャルウィークを意識してのことでしょうか?』

 

 

『さぁ、レースは進みまして現在先頭が折り返し地点にに差し掛かりました。ペースは若干速めといったところ。そろそろ仕掛け始める子がいてもおかしくない状態です。』

 

 

 

そろそろ私も折り返し地点に到着する。

 

スピード上げても大丈夫だよね、お姉ちゃん?

 

 

 

 

>【不沈艦、抜錨ォッ!】Lv.3 を発動!

>【逢魔時】を発動!

 

 

 

 

ゴルシ先輩に教えてもらった加速をしながら【ゲート】の時と同じように周りにプレッシャーを掛けて前に進む。

 

 

 

 

 

『おぉっとここでスペシャルウィーク加速だぁ!』

 

 

 

 

 

あとはこのまま先頭まで走り抜けて、誰も追いつけないまで離してしまえばいい。

 

お二人がどれだけ強くてもここで全力を尽くして距離を稼げば抜かれない! 勝てるんだ!

 

 

 

ルドルフ会長を抜かして、前へ、さらに前へ!

 

 

 

 

『現在先頭変わりましてスペシャルウィーク! そしてそのまま最終コーナーへ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あぁ、また差が離れてしまいましたね。

 

 

 

ふふ、もう離しませんよ。

 

>【精神一到何事か成らざらん】Lv.3

 

>【独占力】を発動!

>【■■■■■■■■■】を試行!

 

>成功!

 

>【あなた(ワタシ)のためだけに】を発動!

>【独占力】の効果がスペシャルウィークに集中!

 

 

 

 

「なっ!」

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

 

様子見、まぁ正確にはブロワイエと勝負のために速度を落としてあえて後ろに下がったが……、すごいことになっているな。同じチームに所属しているとはいってもグラスワンダーのことを詳しく知っているというわけでもないし、彼女、スペシャルウィークとグラスワンダーの関係性もよく知らないが……

 

私とシービーのような関係なのだろうか? 明らかにグラスワンダーはスペシャルウィークにだけ勝とうとしている。しかしながらスペシャルウィークの方は気にかけてはいるが注目しているのは私やブロワイエ、といったところか。プレッシャー系統の技でスペシャルウィークの速度を落とし、その分だけグラスワンダーが加速する。

 

 

 

……いや、思うところがないと言えば嘘になるが今はこのレースに集中しなければ。

 

 

 

 

 

 

! この視線、ブロワイエか!

 

 

 

 

 

感じた視線の元に目を向けると欧州覇者がこちらを見つめていた。これは、挑まれている? いやこちらが挑む側か。まぁどちらにせよ勝負を仕掛けられているのは違いあるまい。

 

 

受けて立たせていただく!

 

 

 

 

 

>【汝、皇帝の神威を見よ】Lv.6 が発動!

 

 

 

>【Je suis les circonstances】Lv.6 が発動!

 

 

 

 

 

「『さぁ、競い合おうか!』」

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

 

『現在先頭のスペシャルウィークが減速……、あっと! ここで速度を落として後ろに下がっていたシンボリルドルフとブロワイエが始動! そしてその前にはグラスワンダー! 三人が一斉に加速して先頭に食らいつきます! ここでスペシャルウィークが最終直線に入ったぁ!』

 

 

 

まずいまずいまずいまずい! 体が重い!

 

後ろから射殺すような視線! 体に絡みつくようなプレッシャー!

 

だめだ、ここで減速したら間に合わなくなる!

 

背後から加速してくる足音がもう聞こえるんだ! どうにかして逃げないと!

 

 

 

こうなったら無理やりにでも……!

 

 

 

 

>【シューティングスター】Lv.4 を発動!

>【汝、皇帝の神威を見よ】Lv.3 を発動!

>【空駆ける英雄】    Lv.3 を発動!

 

 

 

『ここでスペシャルウィークも加速しますが……、後から追ってきた方が速い!速い! 四者今並びました!』

 

 

 

思ったより速度がでない! いや違う、私が遅いんだ! 周りが速いんだ!

 

 

 

『ここで先頭は入れ替わってシンボリルドルフ! ほぼ同位置にブロワイエ、グラスワンダー!』

 

 

 

 

どうすればいい! どうすればいいんだ!

 

もう私に残ってる技はない! 速度も最大限出てる!

 

なのに差が縮まらない!

 

 

 

 

『さぁ現在三名のデッドヒート! 優勝は誰の手に!』

 

 

 

 

 

…………………終わる? ここで終わるの?

 

こんなところで私は終わるの?

 

 

こんな、ところで…………

 

 

 

 

 

 

 

私はまた失うの?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

赤い、赤い炎が燃え盛る。

もう二度と見たくない、けど見ないといけない。

 

 

最後の、瞬間。

 

 

 

泣きじゃくる私の頭に大好きな姉の

 

 

燃えて、真っ黒になって、もう思い出せない暖かさを、力強さを

 

 

 

『ごめんね、スぺ。駄目なお姉ちゃんで。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやだ」

 

 

「いやだ」

 

 

「まだ終われないんだ」

 

 

「まだ速くなれるんだ」

 

 

 

 

 

 

頭にのせられていた手は、ゆっくりと地面に落ちる。

 

 

 

 

 

「う゛わ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

血のように真っ赤なサルビアはとうのむかしに灰だらけ。

火種は一体何なのか、

 

 

私は何をなせますか?

 

 

 

>【灰かぶりのサルビア】 発動。

 

 

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

 

その炎は思い返してみると、私が纏っていた青く、私の心の黒さを表したような黒く、深い青ではなかった。

 

 

私の物よりも黒く、本来の赤い炎のように赤く、誰に向けられたのかはわからないけどもっとドス黒い炎だった。

 

 

 

私の、ただ自制の心がなかったゆえに飲まれてしまった狂気は、

 

 

 

スぺちゃんの纏ったその炎への恐怖でかき消された。

 

 

レースが終わった後にかけてくれた言葉はすごくうれしかったけど、

 

 

 

あの恐怖は忘れられそうにない。

 

 

ただ、ただただこわかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……来た! 来た! スペシャルウィークが来た!』

 

 

 

あの走りは圧巻だった。私たち、シンボリルドルフ会長、ブロワイエさん、私が塊になって後方から先頭を走っていたスぺちゃんを抜かしたはずだった。あの時の私は、当時の私では出せないくらいの力が出ていたし、あの時に出走していたルドルフ会長は過去最高の仕上がりだったと聞いている。

 

そのまま、私たちはゴールになだれ込むと思っていた。

 

 

抜き去って、もう過ぎ去ったこととして油断していた、私は単にスぺちゃんの前を走れたことに歓喜していて油断していた私たちをまとめて抜き去ったのはスぺちゃんだった。

 

 

狂気に包まれていた私、プレッシャーに耐性を持っていたはずのお二人をまとめて引きずり落とすような死の恐怖。レースで死んでしまうなんて、あの状況を、あのジャパンカップの映像を見ている限りは考えられないんですけど確かに、私はそれを感じました。

 

 

 

『スペシャルウィークが来た! スペシャルウィークが来た! まとめて引っこ抜いて今ゴールイン!』

 

 

 

気が付いたら私たちみんなが抜かされていて、気が付いたら私たちもゴールしていて、その場すぐには何が起こったのか、その場にいた人は誰も解らなかったんです。私も、あの後色々このレースを見返して、スぺちゃん本人から聞いて、やっとわかったことなんです。

 

あの時感じた死の恐怖がスぺちゃんが私たちの前にいて、もう一着が決まっているという事実が私たちの前にあって、もう何が何だかわからなくなった。脳が恐怖のせいでそのことを記憶に残したくない、そう思ったのかもしれません。

 

 

気が付けば、レースが終わった後にはスぺちゃんが肩代わりしてくれたのか、私の狂気はなくなっていて、あのお二人もただ結果を受け入れて、『いいレースだった』というんです。

 

疑問に感じさせない、ただ負の感情をもっと大きな負の感情によって焼き尽くされたせいで、正の気持ち、いい気分しか残らなかったというべきでしょうか。言葉に表してしまえばとても不思議なことですが……

 

 

 

終わったあの瞬間は、何故か心は晴れやかでした。

 

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

 

『決まった! 決まりました! 勝者はスペシャルウィーク! 七冠ウマ娘の皇帝シンボリルドルフでもなく、欧州三冠にして凱旋門覇者のブロワイエでもなく、日本のクラシック級のスペシャルウィーク! 新時代の到来だァ!』

 

 

 

 

「ハァ……ハァ……」

 

 

 

何、今の……、いやそれ以上に体が痛い。たぶん今のはこれ以上使ったら壊れる、もう使っちゃダメなやつ。

 

あぁ、それ以上に体がだるい。ここで寝転がってゆっくり寝たいぐらい。

 

 

 

……でもまだパフォーマンスもライブも残ってるんだ。もうちょっとだけ頑張らないと。

 

 

と、とりあえず応援に来てくれた人たちにお礼しとかないと……

 

 

 

 

 

 

「スペシャルウィーク。」

 

 

「あ、ルドルフ会長。」

 

 

「あぁ、本当にいいレースだった。負けてしまったが全力を出せたせいか意外とすっきりした心持だ。ありがとう、楽しかったよ。」

 

 

「あはは……、こちらこそです。ありがとうございました。」

 

 

「む、レース直後にすまない。まだ色々話したいことはあるがまた今度にしよう。私としたことが君のことを考えずに私のことを優先してしまった、では。」

 

 

 

 

会長は……、ブロワイエさんに話に行ったのか。

あの人もこっちに来そうだったけど、フランス語解らないから助かるや。

 

 

 

あとは……

 

 

 

 

「グラスちゃん?」

 

 

「! スぺちゃん! わ、わたしは……」

 

 

「ううん、大丈夫だから。私、楽しかったよ。グラスちゃんと走れてうれしかった。」

 

 

「スぺちゃん……!」

 

 

「だから、さ。また一緒に走りたいって思ってもいい?」

 

 

「えぇ、えぇ! ぜひ! 私もスぺちゃんと走りたいです!」

 

 

「あぁ、よかった。」

 

 

 

 

 ーーーーーーーー

 

 

 

 

(スぺ! スぺ! 大丈夫!)

 

 

 

「…………あっ、お姉ちゃん? ごめん聞こえてなかった。……あれ? ここどこ?」

 

 

(控室ですよ。ホントに大丈夫? さっきから話しかけてもずっとボーってしてて、心配したんだよ!)

 

 

「アハハ、ごめんごめん。ちょっと疲れちゃって……。ごめんお姉ちゃん、ライブまでまだ時間あるよね? ちょっとだけでいいから寝てもいいかな?」

 

 

(そんなに疲れてるんだら休ませてもらう? 有馬もあるしお休みさせてもらってもいいんだよ?)

 

 

「ううん、大丈夫。ちょっとだけ疲れただけだから。それにライブ見に来てくれてるお客さんもいるから休めないよ。」

 

 

(……ホントに無理しないでね。よっしゃ、気にしないで寝ていいよ。時間になったらちゃんと起こすから。)

 

 

「うん……、ありがと……。」

 

 

 

 




サルビアの花言葉:「尊敬」「知恵」「良い家庭」「家族愛」



正直滅茶苦茶難産でした。
また感想とかでご意見いただいた後に変更するところもあると思います。
その時はまたご連絡しますね。

それとジャパンカップは前後編の予定なのでまだもうちょっとだけ続きます。
まあ実質後日談というか後始末というかそんなもんですが。


……にしてもグラスちゃんとの宝塚記念とかブロワイエ参戦したせいで開いてしまった来年のジャパンカップとか一体全体どうなるんでしょうね?
プロットすらもう使い切ったので先のことは作者である私ですら解りません。

ま、それ以前に有馬ですが。

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