エクセレクター艦内のエリア15区域。ラクリーマは広大な兵器開発・メカニック部門の研究エリアへ訪れていた。
「ようサイサリス、相変わらず精が出てるな!」
彼は奥の巨大なマシンが配置されているドッグで助手と話をしている一人の女性に声をかけた。白衣を纏い、金髪でポニーテールが印象的な、見たかぎりのび太達と同じ種族の綺麗な女性のようだが……。
「おう、ラクリーマじゃねえか。試作品のテストをしに来たのか?」
「まあな」
「結構たまってきてるから少しでも減らしてくれや。開発スペースが無くなる」
このサイサリスと言う女性の口調はまさに男性そのものだ。
「相変わらずこんな所に引きこもって研究してるねぇ。少しは外の空気吸ったらどうだ?」
「うるせえな。あたしゃ、兵器開発や研究に人生をかけてるんだよっ!」
ラクリーマはヘラヘラ笑い、彼女を馬鹿にするかのようにこう言った。
「へっ、オマエの場合『いかに大量の生き物を一撃でぶっ殺せるか』の研究じゃねえか?」
次の瞬間、彼女は彼の右足のスネに向かってスパナをぶん投げて直撃させる。
「ギャオオオッッ!!?」
「てめェはわたしの研究にケチつけにきたのか!?あ゛あ゛っ!?」
地球人における『弁慶の泣き所』が彼にもあるらしく、激痛のあまりスネを押さえ、尻餅をついてブルブル震えている。
「……こっ……この年増のオトコ女めっ……よりによって人の弱点をマジで狙いやがって……っキレイな名前と性格がまったく合ってねえじゃねえか……っ」
だが彼の前には恐ろしい形相でサイサリスが巨大なライフルの銃口をこちらに向けて構えている。
「そうか、ならこの最近開発したこの子の的になってみるか……ん?」
さすがのラクリーマも彼女のあまりの恐ろしさに手を上げた。
「いっいえっ……アナタ様の凄さに敵いませんですわ……ははっ」
「けっ!」
やっと痛みがなくなり、立ち上がると頭をポリポリ掻いて、彼女にこう聞いた。
「とっところで『アレ』の開発経過を見に来たんだけど、どうだ?」
「『アレ』か?ついてこいよ」
そう言われ彼女についていくと、隣の兵器開発エリアの中央には2つの何かおぞましい兵器が巨大なガラス管の中に入れられたくさんのチューブで連結されていた。
ひとつはまるで、熊のような巨大な特殊な金属の腕、手、爪、それを包みこむようなトゲトゲして禍々しい装甲。
もうひとつは……例えるなら戦艦の主砲。凄まじい全長とバスケットボール一つを軽々と飲み込めるほどの巨大な口径、それは人間には絶対に撃つどころか持つことさえもできなさそうな巨大な大砲だった。
「『ログハート』は完成に近いんだがな、『セルグラード』はまだ出力調整と反動吸収耐性ができてない試作段階だ。完成すれば銀河連邦相手でも真っ向から挑めるだろう」
「そうか、それは楽しみだな」
二人はその兵器をただ黙って見つめる。これは一体何なのか、一体誰がこんな代物を扱うのか?するとサイサリスは手で口を押さえてクスクス笑い始めた。
「クククっ……早くお前に使ってもらいたくて毎日、身体中がもう興奮してんだよ。どれほどの威力を発揮するか……あっそうだ、これが完成したらこの子達で破壊した、殺した相手のマシンや生き物の死体を収集してあたしの所へ持ってきてくれ、サンプルにしたいからよぉ、むふふふ……っ」
非常に逸脱した発言にラクリーマは苦笑いをする。
「あんまいい趣味してねえやな……」
「おい、なんか言ったか?」
「いっいやっ、なんでもねえよ!」
言葉を濁す彼は次にここで開発された試作の実弾、エネルギー系の各ライフルやショットガン、拳銃、マシンガン、ランチャーなどの重火器が配置された近くの射撃場に赴く。彼女の部下である開発スタッフから動作説明を聞き、それぞれ持ち構えて射撃テストを開始する。
地球でも使われているような形状、まさに近未来を思わせる流線型、エイリアンが使いそうな有機物が混ざったような形状などの様々な銃火器を何の問題なく余裕綽々で扱う彼は、何の問題もなくほぼ全弾ターゲットのど真ん中に命中させた。
「こいつは威力と速射性はいいがリコイルが酷くて精度がガタガタだ。それにこれは照準の位置が右に気持ち0.3ほどずれてるぞ。あとこれは――」
彼はそれぞれの試作品の欠点をスタッフに伝える。アマリーリスの運営や管理はユノンが担当しているのに対し、ラクリーマはここで開発された戦闘ユニットを含めた兵器、そして戦闘に関する全てを統括し、今行っている試作兵器の射撃テストも専ら彼の仕事である。
その様子を近くで見ていた見ていたサイサリスは手をパチパチ叩く。
「相変わらずえげつない腕だな。正直、お前相手に射撃で勝てる奴なんかいねえだろ」
「いや、そうとも限らねえぜ」
「どういうことだ?」
「それよりも、まだまだ改善の余地はありだな。これじゃあ戦闘員はまともに扱えられないぜ」
サイサリスやスタッフと結果と改善点、今後の開発計画などを真剣に話し合う彼が普段のくだらない、馬鹿ないたずらをしているとは思えないギャップを感じるのであった。
ここでの仕事が一通り終わった彼はサイサリスのデスクに散らばっている試作兵器やマシン、デバイスを持っていじっている。こんなマッドサイエンティストが開発した代物だ、どんな性能を持つのか分からない。すると、彼女はラクリーマの隣に移動し、こう呟いた。
「聞いたぞ、何でもここに侵入した地球人を受け入れて送り帰すんだって?珍しいな、お前は敵と判断した奴は見境なく殺しにかかるのにどんな風の吹き回しだ?」
「いいだろ別に。まあ、あの2つの完成を急がせてくれ。俺も早く使いたいからよ?」
ラクリーマは研究所から去ろうとするとサイサリスは大声で彼にこう告げた。
「『ブラティストーム』をたまには私に見せにこいよ。いくらアイツが造ったものでも使いすぎるといつ故障するかわからんからな」
「へいへいっ、気が向いたらな」
そう言い去ろうとする彼に、続けて彼女が声をかけた。
「あとその命知らずをなんとかしろよな。エルネスの遺志を引き継ごうとしてるかしらんが、身体を壊してみんなはもちろん、ユノンちゃんにまで心配かけるようなことはすんじゃねえぜ。みんなはあんたを頼りにしてんだからよ」
「けっ、そこはよけいなお世話だ」
まるでまじめに聞いてないかのように笑みを浮かべると、彼はそのエリアから去っていった。
「ちっ、人がせっかく心配してんのに……」
彼女はまた舌打ちをかました――。
◆ ◆ ◆
銀河系外宇宙。地球人にとっては全くの未知なる宙域。まるで見たことのない星や小惑星郡、銀河が所々見えている。その宙域、なにやら亜空間の穴が発生している。
次の瞬間、「ドンッ!」とその穴から巨大な金属物体が超高速で飛び出した。それはドラえもん達を乗せたエミリア達の宇宙船であった。その内部では。
「うへえ~~っ。もうだめだぁ~~」
「気持ち悪すぎて、マジでヤバ……うっ!」
ドラえもん達は初めてのワープホール空間内で体験した異常な重圧、加速力、スピードに身体中がへなへなに崩れて今にも死にそうな様子だ。エミリア達は三人が気の毒すぎて口を開けたまま震えていた。
「やっぱりキツかったかしら……?」
「けどっ……アタシたちも始めはあんな感じだったし……まあ大丈夫じゃない……ははっ……」
宇宙船は徐々に安定した速度を保ち始める。それに伴って内部の重力も少しずつ安定してきていた。
「あと一回ワープするわよ。そしたらヴァルミリオンに到着するわ」
またワープすると聞いて、三人の顔は徐々に青ざめていく。
「もうやだやだやだ~~っ!」
「母ちゃ~ん!!俺はもういやだ~ぁ!」
喚くジャイアン達二人をよそにドラえもんはエミリアに質問した。
「ところでエミリアさん、ヴァルミリオンって何ですか?」
エミリアはニコッと笑い、ドラえもんの方へ振り向いた。
「銀河連邦の、あたし達の部隊の母艦よ。まあ……見ればわかるわ」
「ふふっ、アナタ達地球人は初めて見るだろうから腰を抜かすかもね?」
腰を抜かす?その意味が分からずドラえもんの頭の中はクエスチョンマークでいっぱいだった。
「さあ行くわよ。あと一回だから辛抱してね」
エミリアが左のレバーを力いっぱい押し込む。ミルフィの端末操作で前方にまたワープホール空間の入り口が発生した。
「ちょっ……まだ心の準備がぁ!」
「もうどうにでもなれぇっ!!」
大声で叫びまくるスネ夫とジャイアンにドラえもんを含む、エミリア達はそろそろ呆れてきたのか沈黙し始める。そして、宇宙船はまたワープホール空間へ入っていった――そしてドラえもん達がついた先は。
「みんな着いたわ。ようこそ、これがヴァルミリオンよ」
「「「なっ……なんじゃこりゃああああああっ!!?」」」
三人は驚愕の声を上げまくる。その大きさは、エミリアの宇宙船からの視界から端から端まで見えない。それどころか、自分の正面に見える一部分の装甲の大きさは自分達の乗る宇宙船の何百倍、いや何千倍の大きさがあるか全く予想つかない。
むしろ、この一部分で大都市1つは入りそうだ。宇宙船の目の前にある物体は、それは想像もできないほどの全長を誇る、エミリア達、銀河連邦の超大型旗艦『ヴァルミリオン』であった。
「ヴァルミリオンはアナタたちの住んでる島国よりもデカいのヨ!」
「にっ日本よりぃぃっ!!?」
あまりにも衝撃的事実、日本列島よりも大きいなんて……三人の空いた口が塞がらない。
「ふふっ、驚いた?じゃあ帰艦するわよ」
宇宙船はフルスピードでこの艦の後ろへ向かう。果てしない長さの胴体が横に写っている。その異様な光景で三人は沈黙している。
「偵察機型式ー0475685XTFーエミリア大尉、ミルフィ中尉、帰艦しました”」
エミリアがモニターに向かって帰艦報告をすると、
『型式認証しました。お疲れ様です、エミリア大尉、ミルフィ中尉』
モニター越しから声が聞こえ、同時に前方にある巨大な装甲がゆっくりと上に向かって開き始めた。
「アレが後部ハッチよ。中に入ると偵察機専用格納庫があるわ」
「ひぇ~~っ、なんて技術なんだ……」
「これじゃあ地球が何十年たっても同じものが造れるか分かんないなぁ」
「いやぁ、僕の時代でもさすがにここまでは造れない代物だぁ……」
さすがは銀河連邦と言ったところか。何故なら先進種族の科学の粋を集めて造られた偉大な産物なのだから。
「なら入るわよ。全員、衝撃に備えてっ」
宇宙船はハッチにつくと、ゆっくりとした速度で入っていった。長く、辺りは赤くライトアップされた通路を通り抜けると、一大都市はすっぽり入るほどの広大な空間を持つ格納庫へと到着した。
「オーライ、オーライ!!」
下で作業員が宇宙船を元の位置まで誘導している。それに伴い、微調整移動をする。そして元の位置に配置し、完全に停止。エミリアは操縦幹を離し、立ち上がる。
「着いたわ。降りるわよ」
全員が立ち上がり、宇宙船の外へ移動する。すると、作業員が駆け寄りエミリアに向かってビシッとした態度で敬礼をした。
「エミリア大尉、ミルフィ中尉、偵察ご苦労様でした。んっ……この子達と青いタヌキみたいな……?」
「ぼっ僕はタヌキじゃな~~~いっ!!22世紀のネコ型ロボットだ~あっ!!」
タヌキ呼ばわりされて大声で反論するドラえもん。その彼を必死で抑え込むスネ夫とジャイアン。
「まっ……まあちょっとしたことがあってねっ……それより提督は?」
「提督なら今、中央デッキにいます。何か重大な事実があったそうなのですが?」
「重大な事実?」
作業員の発言が非常に気になるエミリアとミルフィ。二人はドラえもんの方へ振り向きこう言った。
「今からヴァルミリオンの艦長、カーマイン提督のいる所へ向かいます。少々かかるけどついてきなさい」
「「「はっはいっ!」」」
さっきまでとは違い、キビキビとしたエミリアの口調に三人同時にビシッと返事をする。
5人は近くに配置されていた円盤のような乗り物に乗り込む。
そのまま真っ直ぐの通路へ入り、速度約70キロ程度で進んでいく。体が露出しているのにそのスピードで進んでも風に煽られることは全くない。これもこの乗り物で何か技術が働いているのか。
「……エミリアさん、そのカーマイン提督ってどんな人なんですか?怖いですか?」
スネ夫がそう聞くとエミリアは優しい笑みを放ち、三人を見た。
「あたし達の直属の上官で優しくて素晴らしいお方よ。仕事には非常に厳しい人だけど心配しないで」
「アタシ達が誇る、本当に尊敬できる人ヨ」
二人の話を聞いて、安心感丸出しにする三人。
「よかったぁ……怖い人だとどうすればよかったかぁ……」
「なんだスネ夫、びびってんのかよ?」
「そっそうゆうワケじゃないけどさぁっ!」
スネ夫はそう否定するが、それをうかがわせるような表情は隠せてないのがよくわかる。
「さあ、艦内でもワープを繰り返して中央デッキへ向かうわよ!」
5人はテレポーターを使い、各エリアを渡っていく。そして十数分後……五人は中央デッキへたどり着いた。
「「「………………」」」
三人はあまりの凄さに言葉を失った。周りはさっきの円盤の乗り物がさらに巨大化したような物が広大な空間にいくつも浮かんでいる。その円盤は左右上下移動をしながら乗っているたくさんの人達を運んでいる。
装置や機械は見たところなさそうだが、上空にはまるで3Dのような映像が空間上に浮き出ている。
地球人から見たら、一体どうなっているのかと言いたくなるほどであった。5人は動く円盤に乗り移りながら更に奥に進んでいくと、赤色のビシッとした軍服を着用した男性が上空の映像を見ている。
「提督っ!」
エミリアが叫ぶと、その男性がこちらへ振り向いた。
見たかぎり地球人の中年男性と全く大差ない姿をしている。が、その顔から威厳と正義感溢れるオーラがひしひしと伝わってくる。どうやらこの人物が艦長、カーマイン提督のようだ。
エミリアとミルフィは彼の円盤に辿り着くとすぐに向かい、目の前に立ち、ビシッと敬礼をする。
「エミリア大尉、ミルフィ中尉、ただいま帰艦致しました!」
「おかえりエミリア、ミルフィ。ご苦労であった」
カーマイン提督は優しい笑顔を見せた。するとエミリアが間を入れず、彼にこう質問した。
「ところで作業員に聞いたのですが、重大な事とは?」
すると彼はさっきの笑顔とはうってかわって真剣な表情へ変えた。
「うむ。どうやらあのアマリーリスが太陽系のある銀河系へ向かってきているというのだ」
それを聞いた全員が驚愕する。エミリア達、ドラえもん達にとってはこれほど都合のいいことはなかった。
「そっそれは……もしかして地球を狙ってるということでしょうか?」
「間違いない。あの銀河系内で知的生物が生存しているのは地球ぐらいだからなっ……ん?」
彼はエミリア達の後ろにいるドラえもん達の存在に気づいた。
「エミリア、ミルフィ、あの子達は一体?」
エミリア達は急に焦りだし、顔を苦笑いしながら口を開いた。
「あっ……あの子達は地球人で……ワケがありまして……っ!!」
「そっそうですっ、ちょっと事情がっ……!!」
カーマイン提督は被っていた赤色の正帽を持つとエミリアの頭に軽く叩いた。
「馬鹿者っ!!」
「ひいっ!!」
「うひぃっ!」
彼は並々ならぬ恐ろしい形相でエミリア達を大声で叱りつけた。その声と威圧感も尋常ではなく、彼女達はもちろん、後ろにいたドラえもん達、回りにいる部下達も一気に彼に注目した。
「お前とあろう者が、自ら『異星人文化干渉法』を違反してどうするんだ!?お前の部下達にどう示しをとるつもりだ?」
「……そっ……それは……っ」
エミリアは何も言えなかった。彼の言うことに間違いなどなかった。するとミルフィはエミリアを弁護するかのようにこう言った。
「ですが提督、あたしたちもあの子達もワケがありましてっ……けっしてエミリア大尉だけの責任ではっ!!」
「ミルフィは黙っとれっ!」
「ひいっ!」
ミルフィも彼には逆らえなかった。一方、後ろではドラえもん達も何やら嫌な予感を感じとっていた。
「……なんかヤバくないかな……?」
「う……うん……っ」
「エミリアさん……どうしたんだろうな……っ」
三人はいつの間にかひそひそ話をしていた。
すると彼は帽子を被り、エミリアに対してこう言った。
「理由はどうあれ、違反した者はどうなるかわかっておるな?
処分が決まるまで自室謹慎だ。ミルフィもそれなりの覚悟をしておくように……以上だっ」
「……っ」
「……はいっ」
そう言われ、二人は静かに彼から去っていく。
「えっ…エミリアさん……」
「俺達……どうなるんですか……?」
ドラえもん達は彼女に心配そうに声をかけるもただ何も言わず、うつむきながら三人から去っていく。
しかし、エミリアは両手をこれでもかと言うくらいに握りしめて、ぶるぶる震えている。彼女から感じられるのは悔しさなのか失望なのか、それとも怒りなのか……。
「……エミ……リア……っ」
ミルフィはドラえもん達と共にトボトボ去っていくエミリアを悲しい目で見ていた。
一体何が起こったのだろうか?ただ、全員に感じたことは『唖然』と言う言葉、ただ一つだった。