大長編ドラえもん のび太の宇宙大決戦   作:はならむ

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Part.11 エミリアの過去①

「おっ、俺達をここからだせぇっ!」

 

ここはヴァルミリオン艦の留置所エリア内の留置室。逮捕した罪人や捕虜、反乱分子達を本部隊へ送致するために一時的に閉じ込める場所である。

三人はあの後、カーマイン提督の命令により隊員に連れられていった場所がここであった。

 

「僕たちっ……どうなるのかなぁ?」

 

「……わからない。けどあの様子だとタダごとじゃあなさそうだ」

 

一人で空しく抵抗しているジャイアンをよそに、座ってショボくれている二人。

しかし三人共、共通していたのは何の説明もないまま、ここに入れられたと言うことに対する怒りと疑問だった。

 

「なあドラえもん、このまま俺達は黙ってていいのかよ!ここから抜け出す道具を出してくれよ!」

 

「落ち着いてよジャイアン!ここから抜け出してどうしようって言うんだよ?」

 

「決まっているじゃんかよ。カーマイン提督に直接会って頼み込むんだよ、俺達も参加させてくれってなっ!」

 

ジャイアンのその発言に仰天するドラえもんとスネ夫。

 

「むっ、ムチャいうなよ!もし僕らが抜け出してここの人達に見つかっちゃったらどうするんだよ!?」

 

「僕は絶対反対だからねっ!」

 

二人は断固拒否するが、それでは引き下がれないのが彼の性であった。

 

「なんだとォ、俺達になにも教えてくれないでこんなとこに閉じ込めるあいつらが悪いんだぜ?」

 

「そっそれだよ、僕の言いたいことは!」

 

「「え?」」

 

理解できないスネ夫とジャイアンにドラえもんは二人にこう説いた。

 

「去っていく時のエミリアさんはいつもと何か違ってた。しかもカーマイン提督の叱り方も尋常じゃなかった。これには何か深いワケがあるんだよ。

それを何も知らない僕らが今何を言ったって聞いてくれないと思うんだ……せめて、あの時の状況を教えてくれる人がいてくれれば……っ」

 

「…………」

 

三人はその場で沈黙する。確かに今は完全に『井の中の蛙』状態で手も足もでなかった

せめて少しだけでも教えてくれる人がいてくれたら……。

三人はそう気がして仕方がなかった。

 

しばらくすると、

 

「……みんな、大丈夫……?」

 

突然、ドア越しから聞いたことのある声がしてくる。

三人はそれに気づいてすぐドアに向かい、耳を傾けた。

 

「みっミルフィちゃんなの!?」

 

「ここにいても大丈夫なのか!?」

 

声の主はミルフィだった。しかしいつもの彼女らしい明るい声ではなく、非常に暗く悲しい声だった。

 

「うん、アタシは何とか。話をさせてって言って警備員を下がらせたの。みんな……ごめんねっ、こんなことになったのも全部アタシ達の責任だヨっ……」

 

「違うよ、元々ここに来たいと言い出した僕らが悪かったんだよ、ミルフィちゃん達は悪くないよ」

 

深く謝罪する彼女に対して、代表して彼女を励まそうとするドラえもん。

 

「なあ、教えてくれ。あの時エミリアさん達に何があったのか?しかもどうして俺達に何の説明もないのにここに閉じ込めるのか?」

 

「そうだよそうだよ!あと僕らはこれから一体どうなるんだよ?」

 

「ちょっと落ち着いてよ二人とも。ミルフィちゃんに失礼だよっ!」

 

彼女に質問責めを行うスネ夫達二人をたしなめようとするドラえもん。すると、ミルフィのほうからしずかに口を開いた。

 

「……わかったヨ。この後アナタ達は今までの記憶が一切なくなるんだからこの際、話してあげるわ……っ」

 

「えっ?」

 

するとミルフィは三人にこう説明した。

 

「あたし達はね、黙ってたけど本来アナタ達地球人には逢ってはいけない立場なの。『異星人文化干渉法』に基づいてねっ」

 

「異星人……文化……干渉法……?」

 

「なっなんなのそれっ?」

 

――異星人文化干渉法とは、『銀河連邦の定めた法律の一つで主に発展途上惑星や未開発惑星において、まだ発展希望のある種族が存在する場合、その種族の自力の発展を尊重し、先進種族の科学技術等の文明、文化を持ち込まないと言う法律。

厳密にはその種族と接触により文化に影響を与えるものと考えられているため接触はおろか、目撃される、感知されるのも禁止である(例え、事故で対象惑星に不時着しようと例外ではない)。

この法を破ると重刑に処せられる。その対象となるかならないかの基準は全て本隊が取り決めている』というものだ。

 

「何だって……っじゃあ……っ?」

 

「俺たちと話すどころか会っただけで?」

 

「そこでアウトってこと……?」

 

ミルフィは小さな声で返事を返す。

 

「うん。アタシたち偵察部隊の任務は地球とかの対象惑星に他の先進種族や知的生物が介入しないか確め、発見した場合はすぐに本艦に連絡し、捕まえて取り締まるのが本来の目的……それをアタシ達自らが破ったこととなる……」

 

あまりにも厳すぎるその法に納得する三人ではなかった。特にジャイアンは……。

 

「こんな無茶苦茶なことあるかよぉ!エミリアさん達のはどうみても事故じゃねえか!!」

 

「落ち着いてジャイアン、ここにはここの法律があるんだ。僕らがどうこう言っても仕方がないよ!!」

 

するとスネ夫はミルフィにこう聞いた。

 

「じゃっ……じゃあ、その法を破ったらどうなるの?エミリアさん達は……?」

 

その核心的な発言にミルフィはしばらく黙ったあと、こう言った。

 

「……エミリアとあたしはその法を違反したことで一番重い罰を受けるのは当然、責任者のエミリア。

多分、本隊で軍事裁判がかけられて、良くて階級降格、下手したら懲戒免職、または逮捕されて懲役になりかねない。あたしもほとんどの行動が制限されるかも……っ」

 

三人はその凄まじさに唖然とした。なぜそこまで酷いのか理解出来なかった。

 

「おいミルフィ、俺らを出して提督に会わせてくれ。エミリアさんとミルフィを許してくれるように頼み込んでやる!もしダメって言われたらこの俺がぶん殴ってやるっ!ミルフィだって助かりたいだろ!?」

 

彼の大胆かつ乱暴な発言を聞いた全員はびっくりして飛び上がる。

 

「そっ、そんなことしたら、かえって立場が悪くなるじゃないかぁ!?」

 

「乱暴もいいとこだよぉ!」

 

二人が彼を静めようとする中、ミルフィは身体をぶるぶる震えてついに怒りを彼にぶちまけた。

 

「かってなこと言わないでヨぉ!!」

 

ミルフィのキレた声を初めて聞いて萎縮する三人。彼女の瞳から涙が浮かび上がっている。

 

「タケシ君、ここはアナタがいつもいる地球じゃなく、ここは銀河連邦、アナタ達の地球で言う……警察であり軍隊なのヨ。

 

もし提督にむかってそんなことをしたらどうなると思うっ?

危険人物としてあなたは即死刑、一緒に行動したドラちゃん達にまで何らかの刑に処せられてあなた達地球人の印象が本当に悪くなるのヨ!

アナタの勝手な行動で全員を陥れるなんてドラちゃん達にとっても絶対もってのほか、そんなのあたしはもちろんエミリアも絶対望んでないし、彼女自身の顔に泥を塗ることになるのヨ、それでもいいの!?」

 

「……」

 

ついに何も言えなくなるジャイアン。今気づけば今までの発言は非常に自分勝手で回りを一切考えないことばかりだ。

さすがの彼もそれもわからないようなバカではない。

 

ミルフィも言い過ぎたのか、シュンとなり目を瞑る。

 

「ゴメンナサイ……ちょっとカッとなってしまって。アナタ達の気持ちは本当にありがたいわ。私だって……たった一人のパートナーであるエミリアを裁判沙汰にしたくない。けど、これは銀河連邦が定めた法律なのヨ。

これを違反したエミリアはもちろん、その直々の上官でかつ艦長であるカーマイン提督、その艦に所属する隊員全員にも恥をかかせたのと同じになるの。

 

アナタ達はまだ子供だから分からないかもしれないけど、軍隊では自分勝手な行動をする兵士が一人でもいるだけでその部隊は全滅してしまうだけでなく、隊全体に影響を及ぼす危険性は非常に高いの。だからアタシ達の処遇は決して間違っていないの、そこだけはわかってちょうだい……」

 

「ミルフィちゃん………」

 

ドラえもん達はそれに気づいてしまった。ここは地球と違い、自分たちの思い通りに行くところじゃない、銀河連邦という正真正銘の軍隊だということを。わきまえた行動や発言をするべきだったと特にジャイアンは思うのだった。

 

するとドラえもんは思っていたことをミルフィにこう聞いてみた。

 

「ねえミルフィちゃん、一つ聞きたいことがあるんだけどいいかな?」

 

「……どうしたの?」

 

「エミリアさんのことなんだけど、そのアマリーリスって組織と何かあったの……?今思い出したんだけど地球で僕がタイムテレビで見てた時の一緒に見たあの人の表情と言い方が非常に怖かった。

かなりの恨みや怒りを持っているとしか思えないし……もしよかったら僕達に教えてくれないかな?」

 

「それは…………その」

 

ミルフィはその質問に答えづらいのか、しばらく沈黙したが、コクっとうなづくと静かに口を開いた。

 

「……いいヨ。何があったか教えてあげる」

 

◆ ◆ ◆

 

その頃、エミリアは自室に待機していた。彼女はデスクに置いてあった写真立てを持ち、中の写真をたたひたすらに見続けている。

その写真には、二人の睦まじき恋人が仲良く抱きつき合い、笑顔で写っていた。見るかぎり、その女性の方はエミリア本人のようだが……?

 

「…………っ」

 

彼女のサングラスの下から一滴の雫が流れ出す。それは涙であった。

彼女も軍人とは言え、いち女性である。泣きたい時には泣いてしまうのは性ではあるが、彼女は仕事上、誇り(プライド)があるため普段は滅多に泣かなかった。

そんな彼女が泣いているのはなかなかないことだった。

 

その時、ドアのチャイム音が鳴り、涙を拭いドアを開けるとそこに立っていたのは彼女を叱りつけたカーマインであった。

 

「……提督?」

 

彼はさっきの怖い表情とは異なり申し訳なさそうな表情をしていた。

 

「エミリア、さっきは人前で叱って本当に悪かった。だがわかってくれ、あれはーー」

 

「わかっております。あれは私の独断で招いたことですから……それでご用件は?」

 

「久々にお前と話したくなってな。お前の好きな飲み物を持ってきたし、落ちついてここは階級を忘れてお互い人間同士で話したいと思うのだが、大丈夫か?」

 

「……本当にありがとうございます。もちろんよろしいですわ、ではこちらへ」

 

彼を自室のソファーへ案内すると彼はスッと座り込み、持参した飲み物のボトルを前のデスクに置いた。

彼女も彼の前のソファーに座り込む。

しかし、彼女はもの悲しい表情で顔を下へうつむいている。

それを見て、カーマインは軽くため息をついた。

 

「……気にするのなら無理に話さなくてもよいが、良ければ地球の偵察中に何があったか教えてくれないか?いつもより遅く帰還し、地球人の子供達をここに連れてきた理由も……」

 

「……わかりました」

 

エミリアは地球であったことを全て彼に打ち明けた。自分たちの偵察機が自分達の不注意で地球に不時着したこと、ドラえもんという未来から来たロボットの持つ不思議な道具のお陰で偵察機を修理できて無事、帰艦できたことを。そして、なにより重要なことはその彼らの友達がアマリーリスの本拠地にいることも。

 

「……そんなことがあったのか……。なんと悲惨なことであろうか……」

 

「…………っ」

 

二人に静寂で重々しい雰囲気に包まれる。確かにそうゆう理由なら今までの出来事に全て辻褄が合う。彼はそう思った。

 

「なら彼らは私達と協力してアマリーリスにいる友達を助けたいというのだな?」

 

「……はいっ、しかしここで私の不甲斐なさでこんなことになったことに深く反省しております。やはりあの時は断固としてあの子達がついてくるのを止めさせるべきだったのです」

 

カーマインは腕組をして、深々とソファーに背もたれる。少し黙りこんだあと、彼女に対してこう言った。

 

「実は別部隊の連絡により、今アマリーリスがこちらに向かってきているということで作戦を作成しているのだが……今回の作戦ではお前を外そうと思っていた」

 

「……え、どういうことですか」

 

――その理由を彼は少し黙った後こう言った。

 

「ホントは言いたくはないがお前、まだ立ち直ってないだろう?あの時の惨劇からな……」

 

「…ううっ………」

 

その言葉で彼女はあの忌々しい記憶が蘇ろうとしている。思い出すだけで怒りと憎しみ、そして悲しみの三大負の感情が自動的に沸き上がり、もう何がなんだか分からなくなる。

 

そう……それはあの時、三年前に遡る――。

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