大長編ドラえもん のび太の宇宙大決戦   作:はならむ

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Part.13 エミリアの過去③

数時間後、ヴァルミリオン艦内の中央デッキでは。

 

「てっ、提督っっ!!」

 

オペレーターが慌てて彼を呼び、すぐに駆けつける。

 

「どうしたっ!?」

 

「そっそれがっ!?」

 

オペレーターの顔を見ると非常に青ざめた表情で、ただならぬ状況であることを物語っていた。

 

「先ほど本隊から連絡がありまして数時間前、セクターεの第4惑星モーリスが突然、正体不明の異星人組織によって強襲を受けたということですっ!!」

 

その瞬間、その場にいた全員に衝撃と緊張が走った。

 

「な、何だとお!!?」

 

あの冷静なカーマイン提督でさえ驚きと焦りを隠せなかった。

あのエミリアが今、故郷であるその惑星に帰省していたのだから……。

 

「それで被害状況は!?」

 

「はっはいっ!!今調べます………これはっ!?」

 

オペレーターが急いで3Dスクリーン状のコンピューターで状況を確認すると、恐るべき事実が発覚した。

 

「信じられませんっ!惑星モーリスの……全大陸の3分の1が消滅、惑星の中心に巨大な空洞が発生しているそうです!エネルギーランクは……S級のエネルギー質量を観測したっ!?」

 

「なっ……ということはNPエネルギーか!」

 

「間違いありません。そんな破格な威力のエネルギーを生み出せるのはそれ以外考えられません!」

 

「なっ……なんということだっ……エミリア……っ」

 

その事実を知ったカーマインは絶望し、頭を押さえる。

 

「どうにかしてエミリアと連絡はとれないか!?」

 

「……駄目です、直接でも一向に繋がりません!!」

 

「彼女が所持している通信機は!」

 

「むっ無理です。ここからセクターεまで約220万光年離れています。大尉が常に所持している通信機の送受信範囲はせいぜい50万光年が限界ですよ!」

 

「くうっ……っ!」

 

中央デッキ内はエミリアの安否についてざわめいていた。

ヴァルミリオン所属で提督直々の部下で尚且つ、優秀で期待されていたエミリアにもしものことがあったら……。

もうこのデッキ中は緊迫な空気と焦り、そして絶望で満たされた。

 

「各員落ち着け、起こったことは今さらどうにもならん!それより今はモーリス内の生存者、及び彼女の安否の確認を優先しろ!」

 

彼の一喝により、周りの兵士は正気を取り戻す。さすがはこのヴァルミリオンの艦長だ。

 

「近くにいる救援部隊は?」

 

「はいっ!現在セクターεへ向かっているとのことです。ですが、もうその組織の反応はないとのこと!」

 

「……私はこれからモーリスに向かう。宇宙挺の用意を早く!」

 

「提督が自ら!?危険です、おやめ下さい!」

 

「彼女は……エミリアは私の大切な部下だ、誰がなんと言おうと私が彼女を迎えに行く!」

 

「わ、わかりました。只今宇宙挺の手配を!」

 

彼はもう彼女が生きていること、ただそれだけを願い、デッキから去っていった。

 

一方、その事件は当然艦内でも放送され、エミリアの同僚や後輩たちは……。

 

「うっ……うそでしょ………っ」

 

絶望と悲しみのあまり、頭が真っ白になり立ちつくす者や、

 

「いやぁぁぁぁっエミリアがぁぁぁぁっ!!エミリアぁぁぁぁ………っ!」

 

 

その場で泣き叫ぶ者までいたのだった。ましてやパートナーであるミルフィには知らせを聞いて、いてもたってもいられなかった。

 

「あたし、提督に会ってくるわっ!!」

 

「ミルフィっ!?」

 

皆の元からなりふり構わず走り去って行った。

 

「エミリア……お願い……無事でいて……っ」

 

彼女も悲しみのあまり泣きたくてしょうがないがそれを押し殺し、今は彼女が生きていることだけを願って、カーマインの元へ向かっていた。

 

「提督っ!!」

 

「ミルフィ!?」

 

偶然二人は遭遇し、お互い駆け寄る。

 

「提督、エミリア大尉は!?」

 

「……私は今から惑星モーリスへ向かう。もし先の救援部隊が彼女を発見できなければ私ひとりでも探すつもりだ」

 

「提督、もしよければアタシも同行させてください。提督と共に捜索したいです!!」

 

しかし彼は苦渋の表情でミルフィを見つめる。

 

「ダメだ。S級クラスの質量のエネルギーが惑星に撃ち込まれたんだ、エミリアも巻き添えを食らって消し飛んだ可能性が高い。

直撃圏内から離れていたとしても万が一、願ってない姿で発見された場合、彼女のパートナーであるお前には見せたくない。ここに残ったほうがいい」

 

彼なりに彼女への気遣いから出た発言だが、ミルフィはそこで黙っていられるわけではなかった。

 

「お願いしますっ!私は……私はエミリア大尉のパートナーですっ!彼女の生死がわからないのにただここでじっとしていられませんっ!同行させてください!」

 

ミルフィは彼に深く顔を下げる。ただならぬ思いを感じたのか彼はその小さい体を持ち上げて、彼女の顔を見つめた。

 

「……ミルフィがそこまでいうのなら……同行を許可する。ついてきなさい」

 

「提督……っ、ありがとうございますっ!」

 

こうして二人はすぐに宇宙挺のある格納庫を向かい、すぐに乗挺。カーマインは操縦席、ミルフィはとなりの助手席に座り込む。

 

「目標、セクターεの第4惑星モーリス、もしかしたらまる数日かかるかもしれん。私の不在中、本艦を頼むっ!」

 

『了解。提督、叶うなら必ずエミリア大尉を帰艦させてください。これは本艦にいる隊員全員の願いです』

 

「分かっている。だから皆に伝えて安心させるように言ってくれ!」

 

『ええっ。提督も無理はなさらないでください。ではカタパルト射出します』

 

宇宙挺は射出され、宇宙空間に出ると、進路を惑星モーリスの方向へ超高速で駆け抜ける。

 

「ミルフィ、ワープを繰り返し約数時間で惑星モーリスへ向かう。前方へNPエネルギーを収束開始」

 

「了解っ!!」

 

彼女はすぐさまコンピューター端末を使い、キー入力する。

すると前方にワープホール空間の入り口が発生した。

 

「中に突入する。衝撃に備えよ。エミリア、どうか無事でいてくれよ……!」

 

彼らの乗る宇宙挺はワープ空間へ突入していった。二人の考えは全く同じ、彼女の生存を信じて……。

 

◆ ◆ ◆

 

その頃、惑星モーリスでは見るもおぞましい地獄絵図と化していた。惑星自体がエクセレクターから放たれた主砲と光子ミサイルが残した巨大な痕が宇宙軌道上からよく確認出来る。

 

惑星内はさらに凄惨な状況だった。直接主砲の直撃下でなかった場所も超衝撃波と膨大な熱量で広範囲の殆どの町、大都市が壊滅的被害を受けていた。

 

しかし、一番気になるところは死体である。主砲の直撃により消し飛んだ人はもちろん、直後で発生した衝撃波や熱量による外傷や全身火傷で命を落とした人はまだわかる。

 

しかし、中には鋭利な刃物で真っ二つにされたような遺体や首のない遺体、さらにドリルかなにかの突貫物で体全体を抉られたような遺体、身体中、銃で撃ち抜かれたような遺体、明らかに主砲によるものではない不自然な遺体があちこちに散乱している。

 

それは主砲直撃後、ラクリーマ率いるアマリーリス戦闘員による大虐殺が行なわれた証拠である。

 

そして、ヤゴの町では……。真っ赤に燃えさかる町の中、レイドの実家はすでに破壊されており、倒壊ではないものの見るかげもない状態となっていた。しかしその家の瓦礫の隙間から人の手のような物が飛び出し、カチャカチャと音を立てた。そこからズリズリと這い出る一人の女性が。

 

「あ……ああ……っ」

 

エミリアだった。右手だけで這いずりながらも彼女は何とか無事であった。吹き飛ばされた直後、周りの家具が彼女の周りに集まり、体はもちろん、奴らから守ってくれたのだろう。

しかも、その瓦礫もボロボロだったので、彼女一人でも容易に出てこられたのである。

 

「いっ……痛い……っ」

 

と言っても、全身打撲や切り傷、火傷でボロボロで至るところから出血し彼女の左腕は激痛を発し、全く動かない。どうやら骨折してしまったようだ。

 

「…………眩しいっ……サングラスは……っ?」

 

光に弱い彼女は火炎が発する光があまりにも強く、もはや目を開けられない状態だった。彼女は必死で手当たり次第サングラスを探す。しかしそんな小さい物は瓦礫に埋もれてしまい見つかるハズがない。

 

「はあっ……はあっ……っ熱い…………っ」

 

痛みと周りの火災の熱が彼女の残り少ない体力を容赦なく奪う。このままではいつ意識がなくなってもおかしくはなかった。

一体何が起こったのか、周りがどうなっているのかわからない。しかし、あたりになにかが燃えてむせるような匂いが立ち込めるのがわかったので火災が起きているのはわかった。

 

そして次第にこう考えるようになった。

 

『タダゴトではない』と。

 

「レイドぉ……助けてよぉ……熱いよぉ……どこにいるのよぉ……お願いだから返事してよお!!」

 

彼の名を泣きながら必死に叫ぶが返事が全く返ってこない。

 

「ううっ……だっ誰かいないの……誰かいるなら返事してぇぇ!!」

 

こんなに叫んでも人の声も聞こえない。聞こえるのは燃えさかる炎の音だけで、エミリアは段々と最悪な予感を感じた。

 

“誰も生きていないのでは”と。

 

しばらく手探りをしていると……。

 

「……?」

 

何やら不気味な柔らかい感触と共に、手が濡れたような触感を味わった。生々しい音と共に粘着性のある感触に気持ち悪さを覚える。目が使えないエミリアは手の臭いを嗅ぎ、それは何かを確かめてみた。

 

「う……え……」

 

生臭く鉄のような生理的不快感を催す臭いがする。指をこねてみると次第に液体が凝固していく。そう……それは人の血液であった。

 

「これ……これって……あたしの触ったモノって……もしかしてぇ……」

 

エミリアの触ったモノ……それは内臓どころか体の真ん中がミキサーでぐるぐる粉砕されたかのように見るも背けたくなるような無残な姿に成り果てた死体だった。

 

それを想像しただけで彼女の顔は青ざめていき、挙げ句の果てには……。

 

「ああっ……あ……ぐっ……げぇぇっっ!」

 

エミリアはとっさに口を押さえたが時すでに遅し、その場で嘔吐してしまう。

 

「はぁ……はぁ……うぐうっ!!」

 

さらに嘔吐し続けるが、しばらくするともう何も口から出てこない。胃にぐっと激痛が走る。骨折した患部の激痛と気持ち悪くなる一方で意識が段々と朦朧としてくる。

 

(あたし……死ぬのかな……っ。レイド……どこにいる……の?だれか……助けてっ……)

 

エミリアは涙を流し、そのまま意識を失ってしまった。

 

◆ ◆ ◆

 

「……エミリア……エミリアっ!!」

 

「…………っ!」

 

彼女は目を覚ますと一気に起き上がる。辺りを見渡すと記憶のある前の場所とは違い、とても空気の澄んだ、四角い空間の一室のベッドの上にいた。

 

「エミリアっ大丈夫!?」

 

「てっ提督……?ミルフィ……?」

 

エミリアはそこにカーマインとミルフィがエミリアの横に座っていた。

 

「……あたしは一体っ……つぅ……」

 

エミリアは左腕を見ると包帯と三角巾で固定されている。他の火傷や打撲等のケガはここの医療技術のおかげで治療がすでに完了していた。

 

「ここは救援部隊の所有している艦内のメディカルルームだ。崩壊したヤゴの一角の廃墟でお前が倒れているのをここの部隊が発見してな、私たちはモーリスに着くなりお前を保護、救助したことを聞いてここに来た。よかった、お前は助かったんだ……」

 

「エミリア……前腕部骨折だけは治らなかったけど……無事でなによりだヨ……」

 

エミリアは全く理解出来なかった。廃墟?救援部隊?ヤゴの町が崩壊?一体何が起こったのか全くわからない。

 

「どっどうゆうことですか……?ヤゴが崩壊したとか……全く何がなんだか分かりません、教えて下さい!」

 

二人はあの時、惑星モーリスに何が起こったか全てエミリアに話した。

 

「…………………」

 

それを聞いたエミリアは恐怖と悲しみのあまり、顔を青ざめ体をぶるぶる震わせていた。しかし、さらに追い打ちをかけるようにカーマインは彼女にこう告げる。

 

「……本隊が調べた結果、惑星モーリスを強襲した組織は『アマリーリス』という名前だそうだ。惑星内のほとんどが壊滅、生存者もお前を含めて数えるくらいしかいなかったらしい……」

 

「そんなあ……じゃあ……あたしやレイドの両親も、友達も、知り合いも……っ」

 

「……」

 

アマリーリス……あの時調べた組織が今度は自分の故郷を襲ったなんて……信じられない……いや信じたくない、故郷のこともあるが、何より結婚を控えた自分たちの幸せな時間が一撃で崩壊するなんて……。

 

「…………レイドは……っ?レイドはどこっ!?」

 

「……」

 

その質問に二人とも沈黙する。何も喋ろうとしない彼らを見て、エミリアは何かを悟ったのか、さらに表情が深刻になっていく。

 

彼女は青ざめた顔で震える右手で彼の手を掴み、強く揺さぶり始めた。

 

「提督っ、レイドはどこですか!?生きているのですかっ!?教えて下さい!!」

 

しかし彼らは何も言わずにただ黙っている。しかしミルフィは瞳に涙を浮かべている。これは……?

 

すると彼が静かに口を開くと震えるような声でこう言った。

 

「エ、エミリアが倒れていた隣と近くに……三人の遺体が発見された……っ。しかしその遺体は……撃ち抜かれたような痕跡と、何やらドリルのような回転物によって見るも無惨なズタズタな状態だったらしい……身元不明だが……隣にいた遺体はお前と歳の近い青年だったそうだ……っ」

 

彼女は耳を疑った。三人の遺体……自分の触ったあの不気味なものは……まさか……。

 

「そんな……あたしが……触ったあれは……ああっ!!」

 

彼女は顔を酷く歪ませ右手で頭をぐっと押さえ、そして。

 

「い や あ ぁ ぁ っ っ ! !」

 

……彼女はついに悲鳴を挙げて錯乱した。

 

「落ち着けエミリアぁぁっ!!」

 

カーマインとミルフィは必死でエミリアを押さえようとする。が、彼女はまるで子供のように泣き叫び、わめく。

 

「あたしのレイド返してよぉぉっ!!なんでよぉぉっ!!」

 

故郷を滅ぼされ、最愛の恋人までも失った……信じがたい悲しい現実。落ち着かせようとする二人の顔も悲しみに溢れて、ミルフィは涙を流していた。

 

「どうしましたかっ!?」

 

この叫び声を聞こえ、救護隊員がすぐに彼らの元へ駆けつけた。彼がその場で見たものはベッドの上で泣きわめくエミリアを必死で押さえ込むカーマイン提督とミルフィの姿だった。

 

「すいませんが医師の方に頼んで鎮静剤の用意をっ!!」

 

「はっはいっ!!」

 

隊員は急いで医師を呼びに去っていった。

一方、彼女の錯乱はさらに加速していく。

 

「あ゛あ゛あ゛ーーっ!!いやあああっ死んじゃやだぁぁぁっ!!」

 

「エミリアお願いだから落ち着いてヨぉぉっ!!」

 

必死に押さえているミルフィの願いも今の彼女には聞こえていなかった。

 

「レイドがいないならいっそのことあたしも死なせてええーー!!」

 

その瞬間、カーマインは本気で彼女の頬に平手打ちをかました。彼の顔は今、怒りに満ちている。

 

「馬鹿者ぉぉっっ!!」

 

「ひいっ……!?」

 

「ああっ……っ」

 

エミリアは彼の威圧に鎮まりかえる。ミルフィも驚き、その場で立ち止まった。

 

「お……お前は助かっただけでも幸いなのに自分から死にたいだとぉ……?それでも私の部下かっ!?」

 

静寂とした雰囲気に包まれ、彼は彼女にさらに話を続ける。

 

「お前の気持ちは痛いほどわかる……だがこうやって泣き叫んでも彼は戻ってきやしない。それに死にたいなど自暴自棄の言葉を吐くんじゃない。

彼氏が死んだから自分も死ぬ?ワガママもいいとこだ。私はともかくお前の無事を願うものたち、ここにいるパートナーのミルフィにまで心配をかけるな」

 

エミリアはミルフィの方を見ると、彼女は悲しみに暮れ、何も言わず涙をただ流している。

 

「ミルフィ……」

 

「…………」

 

するとカーマインはエミリアの肩に手をおいてこう言った。

 

「エミリア、ヴァルミリオン艦長である私が今から発する命令に従うように」

 

「……提督……?」

 

「『生きろ』。お前にはちゃんと帰るところがある。彼、ご両親、友人……惑星モーリスで犠牲になった人達の分まで生きて人生を全うしろ。これが私の命令だ」

 

「提督……っ」

 

エミリアの瞳から大粒の涙が溢れる出す。彼はそんな彼女の右手をぎゅっと握り締めていつもの優しい笑顔で彼女を見つめ、こう言った。

 

「私やミルフィ、いやヴァルミリオン艦の全員がお前を絶対守る。だからそんな悲しい顔をするな」

 

彼女はうつむき、涙がポタポタ落ちる。彼の温かい優しさに触れたのか……彼女はまた泣いてしまった。

 

「……うっ、ううっ……ああああああ……っ」

 

「エミリア………っ」

 

二人のやり取りを心配でたまらないような目で見つめるミルフィ。

 

「……アタシもあなたのココロの支えになるからもう悲しまないで……っ」

 

「ミルフィ……っ」

 

その励ましにエミリアは彼女を右手でぎゅっと抱きしめた。

 

「ごめんね……っ。あたし大尉になったばかりでしっかりしないといけないのに……恥ずかしいトコ見せちゃったわね……」

 

「エミリア…………っ」

 

そんな中、やっと医師と助手数人が三人の元へ駆けつけてきた。急いで走ってきたのか息が切れている。

 

「はぁ…はぁ…おやっ、落ち着きなさいましたか?」

 

「ええっ、お騒がせして誠に申し訳ありませんでした」

 

「そうですか、それは本当によかった。また何かあったらお呼びください。すぐに駆けつけますから」

 

「本当にありがとうございます」

 

医師達は安心すると笑顔で去っていった。提督は安心したのち、立ち上がると彼女達に向けてこう言った。

 

「エミリアにはしばらく休暇を与える。その怪我と心身を完全に癒してまた元気な姿で仕事に励んでくれ。ミルフィはそれまで艦内オペレーターとして頑張ってもらう。数日ここで休んだら帰艦しよう。本艦にはそう伝えておくから安心しなさい」

 

「……はいっ」

 

「了解」

 

二人はやっと多少落ち着いた表情で返事をする。こうして悪夢のような1日にやっと終わりを告げたのだった。

 

そして数日後、心身共に怪我を負ったエミリアはカーマイン、ミルフィと共に帰艦した。

 

彼女は休養するよう言われ、自室に戻る途中、どれほどの隊員が彼女とすれ違うたびに憐れんだことだろう……。

エミリアは俯きながら顔すら上げず、何も言わず、その息が詰まりそうなくらいに重い雰囲気を纏い、決して彼女に声をかけられる状態ではなかったと言う。

 

エミリアの部屋前を通ろうとすると、彼女のすすり泣く声が部屋から静かに聞こえてきたと言う人も。同僚や部下も彼女を元気にしようと、励まそうとお見舞いに行ったり、遊びに誘ったりもした。しかし、それでも以前よりも明るさを失ったと言う。

 

しかしそうしている間、その組織『アマリーリス』は数々の銀河に押し入り、さまざまな惑星や宇宙船を襲撃していた。

しかし奴らとは全く出くわさない。

これが不思議でならない。いつ、どこに現れるもやもさっぱり不明で次第に銀河連邦にとっては頭の痛い存在となってきた。

 

「セクターγ宙域にある惑星ロパが謎の組織に襲撃を受けたとの本隊から知らせが……生存者は怪我人に含めて数十人。こちらもまたS級の質量を観測したとのこと……」

 

「ええっ!!そんなぁ……」

 

中央デッキ内で何人かの隊員が驚愕と絶望の声を上げた。彼らはその惑星出身であった。

 

「ああ……あっ……故郷に恋人が……っ」

 

「私の家族がぁ……ううっうああっ!!」

 

彼らは絶望し、その場で泣き叫ぶ。近くにいる者はすぐに慰めようと、落ち着かせようと必死であった。

直接ではないが彼らもエミリアと同じ苦痛や悲しみを味わされたのである。

 

「…………」

 

カーマインは額に手を押さえて絶望した。

 

……次は誰の故郷、同種族に惨劇が起こるか分からない。明日になったら自分の故郷かも知れない状況……。

最早、誰にも予測不能で本当に全宇宙は危険にさらされようとしていた。そして、銀河連邦本司令部は宇宙全域に駐屯している各部隊、加盟惑星に緊急発足。

 

『なんとしても各惑星に侵略している謎の組織アマリ―リスを徹底的に捜索、感知し、発見した場合は直ちに本部に連絡、対処せよ』

 

そして各部隊はそれぞれ次の標的になりそうな惑星を予測して、その周辺を警戒を開始。

 

しかし、それが読まれているのか予想外な惑星に姿を表し、侵略。駆けつけてみればすでにもぬけの殻だったりと。

 

さらに惑星全域を侵略したりすれば、逆に何区域だけを襲撃してだけで、そのまま逃亡と明らかにこちらを挑発しているようなやり方さえあった。次第に加盟惑星から、まったく逮捕できない銀河連邦に対して「一体何をやってるんだ!?」などと批判の声も上がり、信用などの問題も出てきた。

 

連邦はもはやどうすればいいのか分からない状況であった。

 

しかし、これだけは言える。

 

『必ず逮捕しなければならない。それは全宇宙の平和や秩序を守る者として、そしてその誇りにかけて、どんな手段を持ってしても奴らの暴虐を止めなければならない』

 

……そしてエミリアは部屋で一人静かにコンピュータを操作し、アマリ―リスの情報を徹底的に調べていた。眉間にしわを寄せて、憎しみを込めた恐ろしい形相をしながら……。

 

(許さない……絶対に許さない……こんな酷いことをする悪魔どもを私は死ぬまで一生恨んでやる。目の前に現れたら、この手で……仇を討つ!!)

 

◆ ◆ ◆

 

「そっ……そんなことがあったなんて……」

 

「エミリアさん……っ」

 

ミルフィからエミリアの過去を聞かされ、言葉を失うドラえもん達。

凄惨な事実に彼女が受けたであろう衝撃と悲しみ、アマリーリスに対しての怒りも混ざり、非常に気分が悪くなるのだった。

 

「あれから数年経ってエミリアも回復したし、故郷に訪れて亡くなった人達の弔いもしたわ。だけどそれと同時にそのアマリーリスも以降ますます知名度を上げて、今や特一級指名手配にまでになった。これは今までにないほどヨ。

奴らには頭のいい仲間がいるのか私達銀河連邦が駆けつけてくるまえにはもういなくなっているのヨ。これは綿密な時間計算、戦略を考えないと不可能なことヨ」

 

「のび太としずかちゃんは……そんな奴らの本拠地の中にいるってのかよ……っ」

 

「大変なことになってきた……っ」

 

ことの重大さに気付き、段々恐怖に襲われる三人。

 

「……けど……アナタたちにはもう関係なくなるわ。そろそろあたしも戻らないといけないし……サヨナラ……っ」

 

悲しい顔をしてそこから去ろうとするミルフィにドラえもんは最後にこう聞いた。

 

「ミルフィちゃんっ、僕たちはこれからどうなるの!?」

 

彼の問いに彼女は立ち止まると振り向いてこう告げた。

 

「心配ないわ。アナタたちは私達の勝手で連れてきたから、何の罰を受けることなく地球へ帰れるヨ。けど『異星人文化干渉法』にある通り、アナタたちは知りすぎてしまった。これからアナタたちには記憶操作で今までの記憶を全て消してもらうわ。

つまりあたし達とは始めから会わなかったことになるのヨ」

 

「何だって……それじゃあ……ここのコトやのび太達の居場所も……」

 

「全て消されるって……こと?」

 

そしてミルフィはまた振り返り、最後にこう告げて去っていった。

 

「本当にごめんなさい……」

 

その言葉の前になすすべもなく三人はその場で固まる。

そして周りには重苦しい雰囲気に包まれたのだった。

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