大長編ドラえもん のび太の宇宙大決戦   作:はならむ

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Part.16 戦闘訓練②

「よし、なら画面を出すぞ」

 

レクシーは椅子の肘掛けに設置してある四角いボタンを押すと三人の目の前に巨大な立体映像が現れる。それを見ると数十メートル離れた場所にいるラクリーマと戦闘員が何やら話している姿が映し出されている。どうやらこれからの訓練内容を伝えているようだ。

 

「クククッ、あいつらマジで嫌そうだな」

 

レクシーは今から訓練を受ける戦闘員を見て笑っている。

 

「なんか……あの人達の顔色がおかしいよ」

 

「どうしたのかしら?」

 

のび太達二人もそれに気づいた。戦闘員全員がもうやる気がなさそうにへなへなしていた。映像を拡大し徐々にラクリーマ本人の声が大きく聞こえてくる。

 

「……というわけで、今からは対多人数戦闘訓練を開始する。2チームに分けてそれぞれ役割を決めてくれ。状況は言った通りだ!」

 

「…………」

 

何故か部下達は黙り込んでいる。それを見た彼は徐々に苛立ちを募らせる。

 

「てめえら返事しねえかっ!!嫌なのかオラァ!?」

 

「へっへいっ!!」

 

彼の一喝に反応して戦闘員達はとっさに返事をする。

 

「ちっ、ビクビクしやがって。訓練が嫌な奴がいるなら今すぐ出ていっていいぞ。だがそんな奴は二度と俺にそのツラ見せんじゃねえ!」

 

しかし部下達は必死に首を横に振る。

 

「なら早くチームを作りやがれ!!早くしねえとチーム決める時間がねえぞ!」

 

そう言われ、彼らはすぐにチーム分けを始めた。そんなやり取りを見てのび太達はラクリーマの過激さに唖然としていた。

 

「うわあ……キツいこと言うなぁ……ちょっと言い方がヒドくない?」

 

しかしレクシーは頭をポリポリかきながら二人にこう諭した。

 

「しゃあねえよ、遊びでやってるわけじゃねえんだし。あの人も好きであんなこと言ってるわけじゃねえ、ここにいる戦闘員全員のために言ってるだからな……あっ、そういう俺も戦闘員だった」

 

するとのび太はレクシーにこう訊ねた。

 

「ラクリーマって普段この中で何の仕事をしてるんですか?」

 

「リーダーは元々俺達と同じ戦闘員から成り上がった人だからな。そんなわけで侵略作戦の計画作成以外では俺ら戦闘員の戦闘指導や鍛練を担っている。あの人も仕事の時は戦闘指揮官になるから、自分の訓練がてら、自ら参加して部下を指導するんだ」

 

「へえっ、ラクリーマも……」

 

「確かにあの人達と混ざってもホントに違和感がないわねぇ」

 

二人は妙な納得感を得る。

 

「それ以外ではアマリーリス全体の統括、エクセレクターの全搭載武装や格納庫でお前らに見せた戦闘ユニット、俺達戦闘員の装備品の管理、武器や装備品の開発における総責任……とまあ戦闘面に関わることは全てあの人の管轄だ。ユノンさんとは別ベクトルで忙しい人だな」

 

「……ラクリーマさんも大変なんですね」

 

「そりゃあアマリーリスの総リーダーだからな。俺達みたいにただ命令聞いてその通りに動けばいいってわけにはいかないし何から何まで自分で考えて組み立てねえといけねえんだ。しかしまあ、あの人以外じゃ俺含めてここのリーダーに絶対務まらねえわ」

 

ーーそんな中、やっとチーム分けが終わり、全員がラクリーマに注目する。

 

「終わったか。各人アーマー、プロテクターをちゃんと装着できているか、手持ちの武装に異常がないか最終確認しとけよ!」

 

全員が彼の指示に従って、全員が身の回りを確認し始める。

しばらくすると全員が彼に向かって親指を突き上げる。それは確認終了を意味する合図だ。

それを見たラクリーマはそのチームリーダーに目を合わせて向こうの広い場所へ指を指した。そのチームは一斉に指した方向へ移動する。

 

「お前らはここに待機、なお俺も途中で参戦する。だがどこのチームに加担するかはあえて教えねえ、俺も全力で行くからそのつもりでな!」

 

するとラクリーマは一番端に移動し、耳に装着していた通信機に手を当てて、話し出した。

 

「準備完了した。戦闘訓練を開始する。戦闘シミュレーター起動、想定場所は市街地」

 

『了解。想定場所、市街地ーー』

 

次の瞬間、二人は目を疑った。今まで何もなかった広い模擬戦場が一瞬で家やビルなどの建物が出現、一気に尽くされ、本物さながらの街へと化した。これは実体なのか、はたまた虚像なのか?

 

「うわああっ、これはスゴいっ!!」

 

「一体こんなのどうやって!?」

 

驚くばかりである。実際もうさっきまでいた2つのチームが完全に建物に隠れてしまい見えなくなっている。

ラクリーマは端の壁に寄りかかりニヤリと笑いながら、通信機を通して全員にこう告げた。

 

「なら戦闘訓練を開始する、制限時間は30分。スタート!!」

 

彼が訓練開始の合図を告げた瞬間、

 

「うおおおおっっ!!」

 

「おおおおっっ!!」

 

2チーム全員が一気に走りはじめる。総勢百人は裕に越えていよう2チームとも、二手、三手に別れて建物の間に溶け込んでいく。

 

そして各人がそれぞれの建物に配置し、各チームリーダーの指示で動き、そして!!

 

「うぐうっ!!」

 

「きえっ!」

 

この中は完全に合戦状態と化した。建物や壁を利用して狙撃を行う隠れ蓑戦法を使う者や迂回して挟み撃ちにしようと行動する者、タッグを組んでライフルを構えて直接敵陣に突撃する者……銃火器を駆使して遠距離戦法を使用する者、ナイフや格闘などの白兵戦法を駆使する者、さまざまな多種多様な戦法を使い、この訓練の幕が上がった。

男達は真剣で必死な思いを胸に大量の汗を流しながら、訓練ではあるけれど本当の戦闘さながらの迫力を醸し出している。無論、そんな熱き男達の戦いぶりにのび太としずかは誰も死なないか心配しつつも心のそこから感心するのであった。

 

「かっ、かっこいいなぁ……」

 

「ええ…っ。スゴい熱気が私たちのところにも伝わってくるわ。けど……あれって全部本物の武器なんですよね?あの人達大丈夫かしら……?」

 

心配を口にするしずかに対し、レクシーは腕組みしながら口を開く。

 

「大丈夫だ。身体中にみっちりアーマーとプロテクターつけてンだろ?あれは特殊合金を使用してるからあの程度の攻撃じゃあ一切通用しねえのさ。衝撃耐性もバッチリだから余計な心配すんな」

 

「よかったあ……」

 

それを聞いて彼女は幾分安心感を得る。

 

「けど訓練ってようは練習でしょ?たかが練習なのにあそこまで本気でやるのかなぁ……」

 

のび太の疑問にレクシーはフッと鼻で笑い、こう説いた。

 

「当たりめえじゃねえか。これは侵略時に起こりうる交戦を想定してやってんだ。侵略される側だって黙ってやられるわけなく抵抗してくんだし、それにやられねえ為だよ」

 

「…………」

 

やっぱり侵略って言葉に引っ掛かるのび太。まあしょうがないことだが……。

 

そして半分の時間が経った時、ラクリーマがついに首を回しはじめ、腕を振り回した。

 

「そろそろ俺も行くかな!」

 

そう言うとラクリーマは全速力で走り始め、物凄いスピードで入り汲んだ道を駆け抜けていき、そしてついに戦闘区域に到着する。

 

「よっしゃ、俺はこのチームに参戦だ。お前らは俺を中心にして左右に展開、俺が注意を引き付けるから回り込んで狙い撃て。建物や遮蔽物を有効に生かして行動、戦闘せよ!」

 

ラクリーマの指示と共、彼の加担したチーム全員は彼の指示通りに行動を開始する。

 

「やべぇ、いきなりラクリーマさんが敵かよぉ……っ!」

 

「じょっ冗談じゃねえぞ!」

 

一方、もう1つのチームはラクリーマが参戦したことにより動揺し始めていた。

 

「来たぞ、リーダーだ!」

 

見学場所では三人はついに彼の参戦に注目し始めた。

 

「お前ら、リーダーを囲んで攻撃するぞ!」

 

そして相手チームの複数人が彼に向かってくる。どうやら接近戦に持ち込もうとしているようだ。しかし彼はそれに臆することなく自分からも進んでいくーー。

 

「手加減はしねえぜ、戦いは常に先手必勝!」

 

ついに彼らはかち合う。部下達は銃器のグリップやメリケンサックのような武器で一斉に四方から殴りかかる。が、ラクリーマは余裕で素早く掻い潜り、彼らの包囲陣を抜け出した。

 

「なっ!」

 

間を入れず彼はぐっと構え、その鍛えぬかれた筋肉から繰り出される気の入れた右拳のストレートが部下の顔に直撃。「ゴキャ!」と下手したら頭蓋骨を陥没しかねないほどの勢いと共に鈍い音が聞こえ、部下は苦痛に帯びた表情で吹き飛んだ。

さらにその丸太のような太く堅い筋肉の足による全力を込めて振り抜いた蹴りが相手の腹部に直撃し、アーマーを着こんでいるにも関わらず「ぐえっ!」と悶絶して身体がくの字に折れた。

 

「うらぁ!」

 

二ィッと狂喜の笑みを浮かべて両手を合わせてハンマーのように全力で脳天から叩き込み、力ずくで地面にねじ伏せた。

これでもいつも鍛えている荒くれ者達であるにも関わらず反撃の隙も与えず、彼の恐るべき戦闘力を前に歯が立たなかった。

 

「てめえらそれでも毎日鍛えてんのかァ!?」

 

彼らは特殊合金製アーマーを身につけているにも関わらず、瞬時に『隙間』を見つけてピンポイントで攻撃している。なんと言う視野の広さを持っているのか……?

 

「ぐはぁ!!」

 

瞬時に相手の懐に飛び込み彼の放った右ボディーブローが相手に直撃し、泡を吹いて悶絶し膝が折れて地面に崩れ落ちる。見るからにかなり苦しそうである。

今度は敵が手持ちのコンバットナイフをラクリーマへ向かって振りかぶったが義手でがっちり受け止めていなした。その時に生じた隙を見逃さず彼は相手の顔を軽くジャブをかまし怯んだ隙に顔をグッと掴み、勢いに任せてそのまま地面へ顔を叩きつけた。

なんて剛腕なのだろうか……もしこれがのび太であったなら間違いなく地面にめり込んで顔がザクロのように潰されていただろう。

 

「あわわわ………」

 

のび太達はその凶悪な強さに呆然としている。しかしそんなものはまだ序の口、このあとさらに驚く光景を目にすることとなる。

 

「よし、後はお前らでここを制圧しろ。俺は別の場所を掻き回してくる」

 

通信機で味方チームにそう命令し、彼はまた走り出して他の敵の密集地に赴く。

建物の角から敵の数を確認するとすぐさま飛び出して姿を晒した。だが彼はすぐ建物の壁を蹴りあげて、所謂三角飛びの要領で隣の建物にまた三角飛び、そしてまた三角飛び、とまるで忍者のように建物の上まで駆け上がっていき空中で鳥のように華麗に舞いながら左義手『ブラティストーム』を突き出すと手首から4つの銃口のついたギミック……そう、しずかに怪我を負わせた内蔵武装の一つ、小型NPビーム砲を突出させ、約40m先の真下にいる4人に狙いを定めて発射された青白いNPエネルギーの光線が瞬く間に突き抜け、全弾直撃した。

 

「ぐわっ!」

 

エネルギー出力を最小限に弱めていたのか貫通せずに後方へ吹っ飛んだだけであったがそれでもその威力だ。

軽やかに地面に着地した彼に休まず4人の敵が追い討ちで突撃してくるがさらにそこからバク転やとんぼ返りで回避し後方へ行くと、まるで踊るかのように左右に高速ステップを繰り出して相手を翻弄する。

そこからまるで野猿のように機敏に、そして縦横無尽に駆け回りながら4つの銃口を展開、彼らへ向かって4門一斉に光線を発射し、寸部狂わず全て命中した。

 

「「「「がはっ!!」」」」

 

直撃した四人は一斉にその場に倒れる。これも出力を弱めていたので衝撃だけで済んだのだった。

 

「うそ……な、なんであんなに速く動けるの……?」

 

下半身ならまだしも上半身まで盛り上がった筋肉の塊であるラクリーマだが、普通は素早さが落ちそうであるがそれどころか脚力、瞬発力、反射速度、俊敏性がトップアスリート以上の機動力を持ち、例えるならまさに『猛獣』である。

 

「ぐわはははははっ!!」

 

それ以降も敵側の止まない攻撃を余裕で掻い潜り、受け止め、そして重い一撃で次々に沈めるラクリーマはこの通り、その外見に違わぬ怪力と獣のような高い機動力、そして様々な武器、火器を詰め込んだ左義手『ブラティストーム』を引っ提げてのび太とほぼ同等の卓逸した射撃能力から繰り出される高い命中精度……さらには味方を常に指揮しながらこれだけのことをやってのけている彼がアマリーリス最強の存在と言われる由縁がまさにこれである。

 

「終了、ここまで!!」

 

制限時間が過ぎてラクリーマの声と共に周りの建物は一瞬で消え去り、何もない最初の広い空間に戻った。

 

「はあっ……はあっ……」

 

「ぜえっ……ぜぇ……っ」

 

死力を尽くしたのか、戦闘員達はかなり疲れはててぐったりしている。しかし、そんな彼らを気にせずラクリーマはすぐに全員を集めて何かを話し出す。

 

「見ただろ、あれがリーダーの実力だよ」

 

「あんなの……誰も勝てないよ……」

 

「ええ……」

 

一方、見学サイドではのび太達は驚きのあまり開いた口が開かなかった。強そうとは思っていたがまさかこれほどだったとは……と、まさに驚愕だった。

 

「驚くのはまだ早いぜ。これはリーダーにとっちゃあ肩慣らしにもなってねえんだからよ」

 

「えっ?」

 

モニターを見ると、ラクリーマは何やら部下に指差して何かを言っている。聞こえているのだが二人は全く理解出来ていない。

 

「今何を言ってるんですか?」

 

「さっきの戦闘訓練の評価だ。各チームの良かった所、悪かった所を指摘してるんだよ」

 

「へえっ」

 

評価が終わり、ラクリーマは戦闘員をまた集めてこう言い出す。

 

「なら引き続き戦闘訓練を実施する。内容は同じだが想定場所を変更する!」

 

「はっ……はい……っ」

 

休憩させる暇も与えず、また訓練続行を宣言する。

 

 

「すぐに前とは違うチーム分けと役割分担を決めろ。出来るだけさっきと同じ奴と組まないようにな」

 

急いでまたチーム分けを開始する。そんな光景に二人はある疑問点が思い浮かぶ。

 

「休憩はしないのかな?」

 

「あんなにぐったりしていてあの人達は大丈夫かしら」

 

その問いにレクシーはまた溜め息をついて話し出す。

 

「ここからだよ。本当の地獄は……」

 

「?」

 

そしてすぐにチームが決まり、1チームを向こうに移動させ、ラクリーマはまた端に移動する。

 

そして、

 

「訓練実施する。想定場所は草原地帯だ」

 

『了解』

 

今度は建物などの巨大な障害物は一切なく、あたり一面にのび太の身長くらいはある青草が生い茂っている。

2チームは上半身だけはもう飛び出ているので遠くからでも互いが分かりすいようになった。

のび太としずかはこの『戦闘シミュレーター』の凄さにもはや呆れ果てている。

 

「あはっ、ちょっと僕もあの中に入ってみようかなぁ」

 

「のび太さんっ!?」

 

そう言うとのび太は即座に立ち上がった。しかし、

 

「やめろっ!」

 

出ていこうとしたのび太にレクシーが叱咤する。

 

「お前、今から訓練始まるってのに何もつけずにいくつもりか?死ににいくようなもんだぜ。

あと訓練の邪魔をすんな。もし無断に入ってリーダーに見つかってみろ、あの人はガチギレするぞ」

 

その言葉にのび太はさすがに空気を読まなかったと思ったのか、静かに椅子に座る。

 

「カンベンしてくれよ。ここで何かやらかしたら怒られるのはお前だけじゃなく俺もなんだからな?くだらねぇことで人を巻き込むのはくれぐれもやめてくれ」

 

「うん……」

 

のび太は深く反省する。ここで自分の身に何かあったら自身ともかく、しずかにもレクシーにも迷惑がかかると痛烈に感じたのだった。

 

 

「のび太さん……」

 

シュンとなっているのび太を心配するしずか。

 

そんな中ついに、

 

「なら戦闘訓練実施する。制限時間はさっきと同じだ。スタートっ!」

 

訓練開始の合図と共にチームは行動を始める。

 

それぞれのチームはガサガサと草を分け入り、向こうへ移動したチームはそれぞれ四手の組みに別れ、挟み撃ちをしようとしているのか四方向から相手チームへ忍びよる。一方、片方のチームはその場から動かず各員、それぞれ向かってくる組の方向へ向いて迎え撃とうとしている。

 

ーーさきほどのように合戦へと発展する。しかし今回は銃器は使わず、ナイフや格闘などの近接攻撃が主体で進んでいく。

だがラクリーマはそんな彼らを腕組みをしながら段々と険しい表情になっていくが………。

 

「……やべえな」

 

「えっ?」

 

レクシーが突然、そう言う。彼の表情もラクリーマのように非常に険しい。一体何があったのか……?

 

……訓練も中盤に差し掛かろうとしたその時、

 

「てめえらそのまま止まりやがれっ!」

 

ラクリーマの馬鹿でかい声が辺りに響き渡り、それと同時に全員の動きが止まる。

 

「訓練を一時中止する。一旦リセットだ」

 

そう言うと生い茂っていた一面の草原は一瞬で消えて何もない空間に戻り彼はすぐに戦闘員の元へ向かう。しかしその顔は怒りに満ちた表情であった。戦闘員全員が息を切らしながら、そして怯えているかのような表情でラクリーマへ視線を集中して到着を待つ。

 

「いきなりどうしたんだろ?レクシーさん、なにかあったんですか?」

 

「…………」

 

のび太は質問するが、レクシーは珍しく何も説明せずにただ映像を見つめている。

 

二人はそんな彼を見て、ただ事ではないと感じたのか深刻な表情へ変えて、再び映像に注視する。そしてラクリーマが到着するなり戦闘員達をぐっと睨み付ける。腕組みをして右手の人差し指をトントンと叩きながらしばらくした後、口を開いた。

 

「……今の訓練中、少しでも手ぇ抜いていた奴は正直に手を挙げろ。まあ、あげなくても俺は分かるがな」

 

ラクリーマの問いに、手を恐る恐る挙げていく人物が一人二人と段々増えていき、最終的にはほぼ半数近くが手を挙げていた。ということは約半数の戦闘員が手を弛めていたことになる。

 

「……分かった。手を下げろ」

 

それを見たラクリーマは目を瞑り、沈黙し始める。だが数十秒後、再び目を開けると彼らにこう言った。

 

「手を抜いた者はさらに訓練続行、それ以外はレクシーとのび太達のいる見学室で休憩及び、見学してろ。わかったか?」

 

「………………」

 

また黙り込む彼らにラクリーマはついに憤怒した。

 

「てめえら、また返事なしか!?そんなにやる気ねえんだったらさっさとこっから出ていきやがれっ!!」

 

なんと彼はとっさに手を挙げた一人の戦闘員の首元をぐっと掴むと引っ張り出してそのまま地面へ叩きつけたのだった。

 

「ううっ!!」

 

戦闘員は体を震わせて立とうとする。その震えはくやしい思いからなのか、疲れはてて動けないという意味なのかはわからない。

 

「お前のような腰抜けはここにはいらねえよっ!戦闘員なんかやめて雑用係でもすりゃあいい。てめぇらもそうだ、俺のやり方が気に入らねえ野郎はこいつと仲良く雑用してやがれっ!」

 

彼ら含めて、その場にいる全員に罵言を吐きまくる。その異様な一連のやり取りにのび太達も信じられないかのように顔を青ざめて見ていた。

 

「ヒドすぎる……っ!」

 

「ああっ……」

 

さすがにここまでするのはやりすぎではないのかと二人の考えは一致していた。するとのび太もムッとした顔で立ち上がり、そこから飛び出していった。

 

「ちょっ、のび太待て!!」

 

「のび太さんっ!!」

 

レクシーとしずかも慌てて立ち上がり、すぐにのび太の後を追いかける。

 

「…………」

 

のび太の怒りは頂点に達していた。こんなやり方はあまりにも可哀想すぎる、彼の優しさがラクリーマの乱暴なやり方に黙っていられなかったのだった。

 

「ラクリーマ!」

 

「のび太?」

 

ラクリーマ達はこちらに走ってくるのび太に目を向ける。彼自身もそこに辿り着くと、さくほどラクリーマによって倒された戦闘員の前に立って庇いはじめた。

 

「なんでこんなヒドイことをするの!?この人だって頑張ってたじゃないか!?」

 

その姿を見た全員がギョッとなった。

 

「「のび太(さん)っ!!」」

 

レクシー達ものび太の元に辿り着くとすぐさま彼を抑え着けた。

 

「リーダー、話の邪魔させてすいません!あとでこいつにみっちり言い聞かせるんで許して下さい!」

 

彼はのび太に代わり、ラクリーマに必死で謝りはじめたが当の本人は抑えこまれながらも必死で訴えた。

 

「悪口言って投げ飛ばして、そんなのただのイジメだよ!しかも休ませないでみんな疲れきってるのにあんまりだぁ!」

 

「のび太ぁ!まじでやめねえとお前ただじゃすまなくなっぞ!」

 

「のび太さんやめて!」

 

しずかさえものび太を止めようと介入しはじめ、辺りは異様に思い空気に包まれた。

 

「レクシー、のび太を放せ!」

 

「へっ?」

 

怒っているどころか冷静に話すラクリーマに唖然とするレクシー。

 

「ちいとのび太と話をしたい。放してやれ」

 

彼の命令に戸惑いながらもコクッと頷き、すぐにのび太から手を離した。

 

「…………」

 

「…………」

 

互いに向き合ったまま何も話さない両者。そしてそんな二人を心配そうに見守る全員。一体ここからどんな事態へと発展していくのであろうか……誰も予測できなかった。

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