早速家に戻ったのび太は共に暮らしている22世紀の未来からやってきたネコ型ロボット、ドラえもんに先ほどの件について頼み込んでいた。
「はぁ?銀河系の外宇宙旅行だって?」
「頼むよ~!ドラえもんだけが頼りなんだ!!みんなに写真を撮ってくるって言っちゃったんだよ~!」
その馬鹿馬鹿しいのび太の理由にドラえもんは目を押さえて呆れ返っていた。
「出来るか出来ないか、よく考えてから言ってくれよ!」
「ほんとにお願い!」
のび太は土下座までして頼み込む。非常に情けない。
「全く君は……のび太君、銀河系の外に出るのに一体どれだけの時間がかかると思ってるんだ!こんな暑い時にこれ以上暑くさせないでくれ!」
今は8月の真っ盛り、今日も非常に暑い日である。
無論、のび太達小学生は夏休みである。
「そうだ、どこでもドアで一気に銀河系外に出れば…?」
のび太は閃いたかのようにポンっと手を叩き、聞いてみたがドラえもんはさらに呆れ返る。
「あのねえ、どこでもドアは最大で10光年しか行けないの!それに空気のあるところで宇宙とつないじゃったらどうなると思う?ものすごい吸引力でここにあるもの全てが宇宙に投げ出されるんだよ!」
「じゃあ前に使ったことがある宇宙救命ボートは?」
「あれはドラミに点検に出してもらってるよ。そもそもあれは非常事態に使うものだから普段は使いたくないんだ!」
「はぁ……これだけ聞いてもだめかぁ……」
自分の思いつきを否定的に返答されて、溜め息をつくのび太。
「諦めるんだね。お~暑い暑いっ!下で冷たい麦茶でも飲んでこよ~っ」
そうゆうとドラえもんは部屋から去っていった。
「……」
のび太はやるせなさと暑さも相まって、もうどうでもよくなってきたようだ。
「もういいや!どうせ僕は誰からも旅行に招待されない不幸な少年さ!」
寝転んだ。次第に無気力となり段々まぶたが重くなってしまい、しまいにはいびきをかき、のび太はその場に寝てしまっていた。
◆ ◆ ◆
一方その頃、太陽系の木星付近の軌道上には地球の戦闘機をさらに洗練したようなデザインを有した謎の宇宙船が地球に向けて進んでいた。
その宇宙船のコックピットには操縦幹を握る、白と青、黄色を基調とした軍隊の物を思わせるロングコートを着用するバイザーサングラスのような眼鏡を装着した女性とピンク色のモフモフした毛に覆われた丸っこい形をした可愛らしい生物が何やら会話をしていた。
「ミルフィ、数時間後には地球に到達するわ」
「あ~あ、これで地球を監査するのも何百回目ヨォ?いいかげん飽きてきたわ」
その生物の発言に対し、女性は叱咤する。
「馬鹿なこと言わないの。これも大切な仕事なんだから。あたし達はこの銀河系と太陽系周辺に異星人が侵略していないかどうか、確かめる偵察任務を任されてるのよ」
「はいはい、エミリア『大尉』は本当にマジメですね~。だいたい全宇宙の中でもこんな辺境銀河系の、さらに中にある有人惑星になんか誰も侵略する気にならないヨっ」
「ミルフィっ!!」
「わっ……分かったヨ……」
二人は一呼吸置いて、今度はこんな会話をし出した。
「ねぇエミリア?地球人が銀河連邦に加入する日はいつだと思う?」
「まだ太陽系どころか火星にすら有人で行くのは無理そうだから少なくとも銀河系外を出るぐらいに技術の進歩がなきゃねえ。そう考えると数百年後から数千年後ぐらいじゃない?」
「ひえっ~っ!それまでに地球人は存在しているのかねぇ……っ」
「ふふっ、まあ銀河連邦もそこまで存在しているかどうかね。
さあっ、話はそれまでにして地球軌道上の偵察にも専念するわよ。ミルフィ、ソナーを」
「アイアイサー!」
この二人は一体何者であろうか。ただ会話から察する辺り、地球人に敵対する者ではなさそうだ。
◆ ◆ ◆
夕方。のび太は未だにのんきに寝ている。するとドラえもんが夕食の知らせを伝えに部屋に戻った。
「のび太君、ごはんだよ。起きて!」
「……う…んっ、ドラえもん……?」
のび太を揺さぶると少しずつ目を開けてきた。
「のび太君、もう夕方だよ。それにしてもよく寝るねぇ」
「夕方……もうこんな時間か」
「ごはんの支度ができたからママが君を呼んでこいってっ!」
「そっかぁ。じゃあいこっか」
二人は立ち上がると夕食を食べに、一階へ降りていった。
「ごちそうさま」
食べ終わったのび太の食器にはまだごはんやみそ汁、おかずが残っている。それを見たママは当然黙っているはずもなく、
「のび太、ちゃんとご飯を残さず食べなさい!」
「だって暑くて食欲ないんだもん。それに昼寝から起きたばかりだからお腹に入らないよ」
「せっかく作った料理がもったいないでしょ。それに食べないと夏バテ起こすわよ」
「明日はちゃんとご飯食べるから今日は許して」
と、忠告を聞かず席を後にするのび太にママは呆れている。
「全く、そう言ってまた残すんだから。少しはドラちゃんを見習ったらどうかしら?」
複雑な表情で黙々とごはんを食べるドラえもんだった。
……その夜、のび太のパパも帰宅し一家団欒で今のテレビを見ていた。するとこんなニュースが。
『次のニュースです。今日の〇〇時〇〇分に××県××市××街の路上で男性が血まみれで倒れていると通報がありました。
この男性は、すぐ近くの病院に搬送されましたがまもなく死亡が確認されました。
この男性は刃物で腹部を刺されたと思われる外傷があり、警察はこれを殺人事件として調査を進める方針です。この男性の身元確認を……』
その不吉なニュースに全員、寒気を感じた。
「いやね……こんな真夏に……」
ママを頬に手を当てて心配そうな表情をとった。
するとのび太はパパに顔を向けてこう言った。
「パパ、なんでこんなことが起きるのかな? 人を殺すなんてっ……」
「さあねぇ……余程の恨みか衝動的なのかわからないけど殺人は絶対にしてはいけないことだよ。どんな理由があってもね」
「………」
雰囲気が何となく重くなり、ドラえもんはのび太にこう言った。
「のび太君、そろそろ上に行こうよ」
「うん」
のび太は頷くと二人は二階に戻っていった――。
◆ ◆ ◆
それから数時間後、先ほどの宇宙船が地球間近まで接近していたが、何やら宇宙船の挙動がおかしい。
『ヴィーーッ!!ヴィーーッ!!』と船内では大音量のサイレンが鳴り響き、二人に衝撃が走っていた。
「ひゃあああっっ!!後部搭載スラスター部損壊ッ!!制御が効かないヨっ!!」
「ミルフィ!あんたがよそ見しているせいでこうなったのよ!」
「うるさぁいっ!エミリアだってあのときちょっぴりうたた寝してたじゃないかァ!」
――何が起こったのか説明すると、5分前、宇宙船は順調に推進していたのだが会話であった通り、二人のふとした不注意が災いし、ちょうど宇宙船の重なる位置に進んでいた隕石が後部の推進スラスターの一つに衝突、破損したのだった。
「喧嘩してるヒマはないわっ!この推進軌道だと地球圏に突入するわ!?ミルフィ、覚悟して!」
「うええん!死ぬんだったら最期に恋人を探すんだったヨォぉ!!」
二人が焦りに焦っている内に二人を乗せた宇宙船はそのまま引力作用により大気圏に入っていった。
「「いやああああっ~~~っ!!」」
宇宙船がまるでロケット花火のように火吹を上げて地球に落ちていった。しかも地球のどこに落ちたかというと……。
◆ ◆ ◆
夜中12時過ぎ、のび太達はぐっすり熟睡していた。のび太が寝返りをうったその時、『ズドォォーン!!』という小学校の近くにある裏山の頂上付近で何か巨大なものが衝突したような大音量の騒音がした。
「う……んっ……?」
のび太がその音に目が覚める。しかし、かなり眠たそうな顔をしていて半分意識があるかどうかわからなかった。
「のび太君……一体なんの音……?」
ドラえもんもふすまを開ける。のび太と同じなのか眠たそうな顔をしている。
「さあっ……。ふぁぁっ……あう……。」
二人は何事もなかったかのように自分の布団に戻っていった。