大長編ドラえもん のび太の宇宙大決戦   作:はならむ

21 / 61
Part.21 二人

なんやかんやで壁の修理が終わり、ラクリーマとのび太の二人はプラントルームの中央にあるベンチで黄昏ていた。ラクリーマは傷だらけでまだ制裁された所が痛いらしく、絆創膏を至るところに張り付けていた。

 

「ちっ、にしてもあいつら、ただ風呂場に入ってだけで本気でボコりやがって……手加減てモンを知らねえのか?」

 

その横ではのび太はため息をついて酷く落ち込んでいた。

 

「ああっ……しずかちゃんに嫌われちゃったかも……っ」

 

ラクリーマはそんなのび太を、まるで悪そびれてないかのようにニカッと笑う。

 

「いい経験になったじゃねえか。なかなかよかったろ?」

 

「よかったじゃないよ!!僕は何にも悪くないのにしずかちゃんにビンタされるし、壁を修理させられるハメになるし、どうしてくれんのさあ!?」

 

「うるせえ!てめえも何だかんだでハナ血噴き出してニヤついてたクセに言える立場かコラァ!」

 

実に情けない。下らない口論へ発展するが、元はと言えばラクリーマが全ての原因である。

 

「こんなしょーもない口喧嘩してても仕方ねえや。これで止めにしようじゃねえか!!」

 

「ちょっ、それで終わらすつもり!?」

 

「うるせえなぁ。なら『俺がワルかった。許してください』。これでどうだ?」

 

「くぅ……っ」

 

その謝罪の言葉からは全く誠意が感じられない。のび太は納得できるハズがなかった。

 

「本当にしつけぇヤロウだな。なら俺がしずかに謝っといてやるよ。それでいいだろ?」

 

「わかったよ……っ」

 

渋々、承諾するのび太。ラクリーマは溜め息をついてのび太に対して不満そうな目付きで見つめる。

 

「けっ、こっちはお前らを地球に無償で送るってのに、なんだその態度は?」

 

「なっ!?」

 

「あ~あっ、ユノンの言う通りやっぱり地球に送んのやめよっかなぁ?」

 

彼の約束を放棄する発言に、のび太はその場で慌てふため始める。

 

「じょっ、冗談はやめてよぉ!その時はどうなるんだよ!?」

 

「まあ、てめえらはここにいても役立つことしなさそうだし……まあ死ねや」

 

「! ?」

 

顔色が一瞬で真っ青に。いくらなんでも無茶苦茶だ。

 

「クカカカッ!!冗談だよっ!」

 

「…………」

 

高笑いするラクリーマに対して、のび太は顔を膨らまして冷ややかな視線を送った。

 

「しかしなぁ、ただ送るのもこっちには全く利益ねえし……なら条件つけようか!」

 

「条件……?」

 

そう言うと、ラクリーマは腕組みをして考え込む。一方、のび太の方はあまりいい気じゃなく、心配そうな顔をしている。

 

もともと地球侵略を計画していた極悪組織、アマリーリスの頂点に立つ男だ。とんでもない条件をつけてくる……のび太はそう思っていた……その一分後。

 

「よっしゃあっ、決まったぜ!!お前らに2つの約束を果たしてほしい」

 

ラクリーマは顔を上げて、のび太の方へ向くと不敵な笑みを浮かべる。

 

「2つの……約束……なっ、何?」

 

「まずは第1……っ」

 

のび太は息を飲む。あからさまに無理なコトを言われたらどうしようか……。

 

「俺はともかく、あいつらに地球のうめぇメシ、食わせてやってくんねぇか?」

 

「え……っ?」

 

「どうした?無理か?」

 

「な、なんか凄く以外……ラクリーマのことだからもっとメチャクチャなコトを言われるかと思った」

 

「ああっ、地球に興味持ってる奴は沢山いるからな。そんかわり、たらふく食わせてやれよ、あいつら大食いだからな」

 

意外にものび太にでも出来そうなことだった。ただ人数分的には無理があるが、そこはドラえもんの道具を使えばなんとか出来そうだ。

 

「もうひとつは……俺個人の頼み事だ」

 

「え?」

 

「地球の花や、植物を少し分けてくれ、どうだ?」

 

「どっ、どうして?」

 

ラクリーマは周りに元気に生い茂っている花や植物を見渡す。その時の顔は普段の彼からは全く考えられないような穏やかな表情をしていた。

 

「地球の植物を、ここの仲間に加えてやりてぇんだよ。別に地球の生態系を崩すほど持っていかねえからよ?」

 

「…………」

 

「この二つを果たすと約束すれば、お前としずかをちゃんと地球へ送りかえす。どうだ?」

 

のび太はそれを聞いて段々奮いだち、笑顔になり、そして得意満々な表情とラクリーマをグッと見つめた。

 

「わかったよ!!それでいいなら僕にまかせて!!とびきりのおいしい料理食べさせてあげるし、かわいい花を探しだして渡すよ!」

 

「それは楽しみだな。期待してんぜ大将!」

 

ラクリーマはのび太に向かってとびきりの笑顔でガッツポーズをする。仲良く話し合うこの二人は生まれは違えど、端から見るとまるで仲のいい兄弟だ。それは誰が見ても承認するだろう。

 

「ラクリーマを見てるとなんか毎日が楽しそうだね」

 

のび太はそうボソッと口にする。

 

「本当にそう思うか?」

 

「うん」

 

「それはありがとよ」

 

するとラクリーマはズボン(というよりタイツ)のポケットに手を突っ込み、姿勢を正すと上を見上げる。

 

プラントルームはいつも明るいわけではない。

ちゃんと植物が育つように、朝夕夜になるよう照明が設定されていて地球さながらの朝焼けや、夕暮れが再現できるのである。

今はちょうど夕方あたりで、この室内は夕焼け色に染まっていた。

 

そうした中、ラクリーマは静かに口を開く。

 

「けど、それは違うな」

 

「えっ、違うの?」

 

「ああ、こんな楽しくできる時間はほんの僅かなだけだ。俺らは様々な銀河、星々、たまに他の種族の宇宙船を巡っては侵略、略奪を繰り返す、いわば海賊行為をやっている。ほぼ毎日はそれに費やしてるっていっても過言じゃねェぜ?」

 

「…………」

 

「大体、今はお前らを地球に送るためだけに動いているからこんなに自由な時間があるが、俺とユノンはいつも徹夜してまで侵略や交戦の作戦を練っているから寝てねえんだ」

 

「……徹夜してまで大事なことなの?」

 

「前に言わなかったか、これは仕事、生活のためだって?やるからには当然、効率のいい方法を考えねえといけねぇし極力、最短で低消耗、仲間の犠牲を出したくねぇしな?」

 

「…………」

 

実際、のび太はあまり想像できていなかった。そういう行為をしたことのないためか、それとも単に理解出来なかったか、あるいは……。

 

「犠牲を出したくないって……侵略してるってことは住んでいる人達の物を奪ったり殺したりするんでしょ?なんか……言ってることが矛盾してるような気がする」

 

「けっ、そんなの敵は敵、味方は味方だろうが。俺ら以外にも同じような奴らは宇宙にわんさかいるぞ」

 

「けどさぁ……」

 

ラクリーマは息を入れ直して、顔を下げているのび太のこう説いた。

 

「あのよ、俺達だってむやみやたらに侵略してるわけでもねえよ。向こうと話が通じるなら交渉だってしてるぞ。まあ……ほとんど脅しだがな」

 

「そうなの?」

 

「何回も言うが俺らだって生活がかかってるんでな。侵略だってただでできるわけじゃねえし利益出ねえことばかりしてるんじゃ俺らはジリ貧になってのたれ死だ。だから最小限の労力で物資を奪うに越したことはねえんだ」

 

そう、彼はのび太にこう説く。

 

「それによ、侵略は一概に全て悪いワケじゃねえんだ」

 

「……どうゆう……コト?」

 

「教えてやろうか。『移民』だ」

 

「移民?」

 

彼に自信げな表情でそう言った。

 

「……この宇宙にはな、異常気象、天変地異、戦争……何らかの理由で故郷の惑星をなくし、宇宙をさ迷っている種族がゴマンといるんだ。俺らは惑星を移住する気はない、謂わば海賊だ。

 

『俺らが侵略し、根こそぎ取る。しかし惑星自体は無人になり、肥やしとなる。そしてさまよっている移民種族がその惑星を見つけ、移住する』。

 

つまり、俺達はそいつらが移住できるよう、一役買ってるってワケだ」

 

……なるほど、ある意味では一理ある考えだ。しかし、それには数々の問題が出てくる。

 

『そのために狙った惑星に生存している者、全てが犠牲になってもよいのか?』

 

『引っ越してきた移住種族が住む惑星をもう襲わないと言いきれるか?』

 

……などなど、挙げるとキリがない。

 

「移民……コーヤコーヤ星を思い出しちゃった。ロップル君やチャミー、あとクレムちゃんやモリーナさんやあそこに住む人達は今、元気かなぁ?」

 

コーヤコーヤ星。以前、のび太達が行ったことのある『ガルタイト』と呼ばれる鉱石が採掘できる開拓途上惑星で、そこに移住した少年、ロップルとそこに住む人々と仲良くなり、友情を育んだ。

 

そしてそのガルタイトを狙う悪徳企業『ガルタイト鉱業』の悪巧みにより一時、惑星崩壊の危機に遭うも、のび太達の活躍により、その危機は救われたのだった。

 

そう言えば、ロップルたちも他の惑星から移り住んだ移民種族だ。

 

「ほう、コーヤコーヤ星を知ってるのか?地球から相当離れた惑星だぜ」

 

「えっ、ラクリーマ知ってるの?」

 

「ああっ、ガルタイトが採れる惑星だろ?行ったことはねえが話は聞いてる」

 

するとのび太はおそるおそる彼にこう質問した。

 

「……まさか、コーヤコーヤ星を襲うワケないよね?」

 

「へっ、襲わねえよ。あんなとこ、襲ってもなんの利益になんねえし。ガルタイトなぞ、せいぜいBランクのエネルギーしかならねえからな。ニュープラトンさえあれば事足りる」

 

「ニュー……なんかよくわからないけど……襲わないんならよかったぁ……」

 

のび太は安心し、大きなため息をついた。しかし、

 

「だがな、今後、俺らに一目置かれるような発展をすれば……侵略するかもな」

 

その言葉が、のび太の一瞬で顔色を変えた。

 

「やっやめてよ!!あそこに友達がいるんだよ」

 

「……友達だと?」

 

……のび太は彼に教えた。コーヤコーヤ星のことを、ロップルたちのことを、全てうち明かしたのだ。

 

「………そうか」

 

「…………」

 

二人の会話は止まり、静かになった。

ただ聞こえるのは、機械によって植物に与える水を振りまいている音だけだった。

 

「ワリィが……たとえ友達がいようが、そこまでは守れねぇな」

 

「ええっ!?どうして!?」

 

「こっちにもやり方ってもんがある。お前にどうこう言われる筋合いはねえし変える気もねえ。所詮、全ての生き物は繁栄したらいつかは必ず没落する。そんなもんだ」

 

 

「ーーーーっ!」

 

のび太は、今にも泣きそうな顔をして彼にこれでもかというくらいに睨み付けた。

 

「なんだ、文句あんのか?」

 

「……くくっっ!」

 

それとは逆に、ラクリーマは平然とした態度をとっている。

のび太はさらに怒りを募らせるのであった。

 

「ーーなら、取引すっか?」

 

「……取引?」

 

突然、ラクリーマはのび太の右腕を掴み、ベンチ上に押しつけたのだ。

 

「うわ!」

 

鈎爪を突出させ、その右腕へ向けた。銀色の光を放った鋭い爪が照明によってさらに輝きを放っている。

 

「てめぇの右腕を切り取って俺に差し出せば、コーヤコーヤ星には近づかねぇと約束する。これで手を打とう」

 

「ええっ!?」

 

のび太は目が飛び出るほど、驚愕した。

 

「右腕が嫌なら左腕、それも嫌なら片方の目ん玉か足でもいいぜ。それでも嫌ならしずかに代わってもらう」

 

「むっ、むりだよぉ!!」

 

ラクリーマはまるで鬼のような形相で、彼に悪夢のような選択を押しつけた。

 

「それでも嫌なら、俺を今すぐ殺すか。ある意味そっちのほうが手っ取り早いか。最も、その場合は俺もお前を容赦なく全力でぶち殺すけどな!」

 

「あ……ああっ……」

 

「俺はこのまま待ってやる。時間はいくらでもあるから好きなだけ考えろ。ちなみに逃げたらどうなるか……わかってんだろうな?クックック……っ」

 

ラクリーマはニヤニヤ笑いながら鈎爪を構えている一方、のび太はあまりの恐怖でガタガタ震えている。

 

……決められるワケがない。

 

どっちを転んでも地獄だ。自分が苦痛を食らうか、もしくはしずかに……いや、これは男として 、いや人間として最低な行為だ。

殺そうにも、その時はラクリーマは本気で襲いかかってくる。

あの訓練で見た通り、この男の戦闘能力は桁違いだ。射撃を抜いたら能力など軒並み以下であるのび太には天と地が転ばない限り、勝ち目はない。

 

逃げたら間違いなく……。

 

もう完全に八方塞がりな状態である。

 

「お前、そんなに大切ならここまでする覚悟があるんだろうな?さぁ、どうする?俺はどちらでもかまわんぞ」

 

彼の眼を見ると、冗談で言ってるようには思えない。

 

『本気だ』

 

痛烈に感じさせる。

 

「へっ、ただ五体のどれかを捧げるだけで、その友達はおろか、コーヤコーヤに住んでいる奴らの存亡の脅威が一つ減るんだ。

そう考えたら安い取引じゃねえか?もし俺がお前の立場なら、喜んで右腕を差し出すがな」

 

見せられる度胸の違い。子供だろうが大人だろうが関係ない。

 

「きっ……決められないよぉ!」

 

「…………」

 

のび太泣きべそをかきながらそう回答した。

 

「……フフッ、こえェだろうなぁ。まだ子供のくせに身体の一部を失うかもしれねぇなんて……考えられねぇだろうな。

だがそれはのび太が決めたことだ、俺はお前からその『決意表明』をもらえばそれで済むがな」

 

ラクリーマの笑みはさらにのび太を追い込むことになる。

 

「なんで……こんな……」

 

「なんでかって?クククッ……」

 

彼は震えるのび太にこう答えた。

 

「『こんなこと』を平然とやるのが俺たちなんだ。わかってんのかのび太?」

 

夕陽の陰に隠れたその彼の顔はまさに悪党そのものであった。だがラクリーマは取り押さえていたはずの右腕を離し、鈎爪も引っ込ませた。

 

「あれ……やめるの……?」

 

「こんなんじゃあ全く決まらなそうだ。もういい」

 

「じゃ……じゃあ……?」

 

「もちろん、取引不成立だ。何にも変わらねえぜ」

 

「ううっ……」

 

彼はまた泣き出してしまう。ラクリーマも彼の泣き顔を見て、とても情けなく感じるのだった。

 

「けっ、俺はこんな泣き虫に早撃ち負けたのか、情けねェぜ」

 

「…………」

 

今度はどんよりとした空気が二人を包む。しかし、ラクリーマにとって、そんな雰囲気が耐えられないのであった。

 

「あ゛ーーっ、こんなしみったりぃ話はやめようぜ!そうだ、お前らに聞くの忘れてたが……どうやってエクセレクターに乗り込んだんだ?」

 

「それは……っ」

 

のび太は彼に経緯を全て話した――。

 

「未来からきた……ロボットだと?」

 

「う……うん……」

 

正直信じてもらえないだろうとは思っていたのび太だが、彼の反応は違った。

 

「ま、まじかあ――――――!!!!」

 

「えっ?」

 

ラクリーマは非常に興味津々な表情で聞き、もう深紅の瞳がさらに輝きを放っている。

 

「未来から来たロボットかぁ。そりゃあいい、俺もぜひ会ってみてぇな!のび太、地球に寄ったらぜひ会わせてくれ!!」

 

「うっ、うん……」

 

「イイ奴だな、お前はよお!!くああ、楽しくなってきやがったあああっ!!」

 

のび太の首に腕を掛けて、引き寄せる彼は幾分の年下であるはずののび太が恥ずかしくなるほど、子供のようにはしゃぎまくっている。しかし、これこそが本来の彼の姿なのである。

 

「そのドラえもんてのは、友達なのか?」

 

「うん。ケンカしちゃうこともあるけど、僕の大切な親友だよ!」

 

のび太のはきはきした声からは、嘘ではないことを物語っていた。

 

ラクリーマはそんなのび太を何か暖かい眼で見つめる。

 

「……ラクリーマ?」

 

「……」

 

彼はとある思い出を追憶していた。

 

◆ ◆ ◆

 

5年前、まだ宇宙海賊だった頃。キャプテンであったエルネスは難病にかかり、もう余命幾ばくもない時。複雑な表情のラクリーマは彼の部屋で看病しながら話をしていたーー。

 

「なあラクリーマ、俺が死んだ後の後釜についてだがーー」

 

ベッドに臥せているエルネスはずっと真上を見ながらこう口にした。

 

「そんな生きるのを諦めたように言うなよ、お前らしくないぜ。エルネス以外に宇宙海賊のキャプテンは務まらねえよ。だから最後まで生きる希望を持て、サイサリスがどうにかしてくれるからーー」

 

「いやっ、自分の身体だから分かるんだ。俺はもうじき死ぬ。それにあいつももう分かってるはずだ、あれだけ最善を尽くしてもどうにもならないってな」

 

「…………………」

 

表情に影を落とすラクリーマ。そんな彼を落ち込ませまいとニヤッと不敵の笑みを浮かべるエルネス。

 

「気にすんなラクリーマ。俺達だってこれまで沢山の命を奪ってきたんだ、俺らだけ死なないってそんな都合の良いわけがないんだ。生き物はいつか死ぬ。早いか遅いか、運が良いか悪いかーーこれは運命だ、それはお前らも例外ではない」

 

「け、けどよ……!」

 

「それによ、俺はもう後継者を決めているからもはやこの世に未練はないんだ」

 

「後継者だと……?」

 

「おうよ。ラクリーマ、お前がやるんだ」

 

それを聞いて彼は仰天する。

 

「お、俺かよ!?冗談がキツいぜエルネス、俺は戦うことしか能のない人間だぜ?そういう器じゃねえよ」

 

「いや、俺はお前を拾ってきてからずっと見てきたが、お前は誰よりも無限大の可能性を持っている。サイサリスのヤロウやラン、部下はお前になら必ず従い、助けてくれる。だから自信を持て!」

 

「エルネス…………」

 

「だから仲間を、サイサリスを、ランを絶対に大事にしろよ!お前の兄であり、そして親友からの最後の約束だーー」

 

◆ ◆ ◆

 

「……ラクリーマ?」

 

「おっ、おおっ!?どうした?」

 

のび太の呼びかけに反応し、慌てて返事を返す。

 

「ぼぉーっとしてたけど、どうしたの?」

 

「いっ、いやなんでもねえ。そろそろ俺は行くわ。お前はまだここに居たいならゆっくりしてな」

 

「うん。そうする」

 

ラクリーマは立ち上がり、のび太に背を向け、歩き始めるーーすると、

 

「のび太?」

 

「え、何?」

 

彼は顔を振り返り、歯を剥き出して不敵の笑みを浮かべてこう言った。

 

「取引不成立とはいったが、終了とは言ってねえからな。その気になったら俺んとこに来な、その時は喜んで取引してやる」

 

「え……っ?」

 

「もし俺を殺したかったらそれでもいいぜ。部下から銃を借りるなりなんなりして……いつでも殺しにこい。ちなみに俺にはビーム、レーザーの類いは一切効かねえから実弾銃を使え。俺は逃げも隠れもしねえからよお」

 

「ラクリーマ……」

 

「確かに射撃に関してはお前のほうが上かもしれん、だがそれ以外はお前に負けるとは全く思っちゃいねえからよ。もし俺に本気で勝ちたいと思うならどんな手ぇ使っても自分の土俵に持ち込むことを考えろよな」

 

何をここまでこだわるのか、のび太には全く理解できない。彼の真理は全く図りしれないーーその時だった。

 

 

《ズ ド オ オ オ ッ ! !》

 

 

「うわああああっ!」

 

「なっ、何事だ!!」

 

突然、艦内に激震が発生する。

 

『緊急事態、緊急事態。各員戦闘準備!リーダー、副リーダーは直ちにブリッジへ集合、繰り返すーー』

 

サイレンと共に放送が入り、艦内に緊迫が走る。

 

「のび太、お前はここから動かずじっとしてろ。ここは安全だから心配するな!」

 

ラクリーマはのび太をそこに置いて、すぐにプラントルームから飛び出していった。

 

(敵か……もしくは何かが衝突したか……?)

 

一体何が起こったのだろうか。しかし、彼はこんな状況にもかからわず笑っていた。

 

「まあ何にせよ、ワクワクしてきたぜ!」

 

まるで何か楽しみ一つを見つけたかのように。だが、今はそんな暇などない。

 

――彼は嬉しそうにひたすら目的地へ走っていった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。