大長編ドラえもん のび太の宇宙大決戦   作:はならむ

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Part.23 それぞれの思い

ーーその頃、ヴァルミリオンのお偉方専用の応接間ではカーマインと一人の男性が対談をしていた。

 

「……ご協力感謝いたします」

 

「いえいえ。あのアマリーリスの進路を捕捉したと聞いて、嬉しい限りです」

 

その男性は白色のカーマインと同じ軍服を着用しており彼は遥か遠い宙域に位置する銀河連邦の本隊から派遣されたアマリーリス撲滅編成隊長である。

 

「カーマイン殿、私だけでなく、先行部隊の隊員をこの艦内に招待していただき、ありがとうございます」

 

「めっそうもございません。その隊員達は今どこに?」

 

「今、本艦の隊員にヴァルミリオン艦内を案内されています。長い道のりでしたので、休憩がてら自由行動を取らせたので」

 

「そうですか。ゆっくりしていってください」

 

「ありがとうございます。私達の後に続いて対アマリーリス編成部隊がもうすぐで到着いたしますので、短い期間中ですが……」

 

「ええっ、こちらこそーー」

 

二人は笑顔で握手を交わした。二人は豪華なソファーに座り、雑談している。

 

「しかしながら、我々銀河連邦が総力を挙げても捕らえられなかったあの謎の極悪組織、アマリーリスを今回でついに逮捕できるかもしれないまたとないチャンスをついに……」

 

「ええ、ただ……我々銀河連邦の部隊がここの駐屯していることを向こうも恐らく知っているとは思います。しかし自らこちらに近づいているのは気がかりです」

 

「確かに……いや、まあ向こうから進んで来てくれるのならいいに越したことはありませんか」

 

「そうですが……実は何か妙に胸騒ぎがしてまして。アマリーリスの宇宙船らしきものからSランク級のエネルギーを観測してますからーー」

 

ーー二人は黙り込む。そして部隊長はカーマインにこう聞いた。

 

「カーマイン殿、もしアマリーリスと対峙した際、彼らは素直に投降するとおもいますか?」

 

「さあ……分かりません。流石に向こうも我ら銀河連邦の戦力を知らないわけがないはずです。私自身としては無駄な抵抗はせず大人しく投降してほしいと心から願っていますーーが」

 

「もし投降に応じなければ…………」

 

カーマインは間を置き、ふうと息を吐いてこう答えた。

 

「もしも戦闘になれば……両勢とも、多大な犠牲は避けられないでしょうーー」

 

彼は複雑な表情であった。

 

◆ ◆ ◆

 

「…………」

 

何もない空間でエミリアは精神統一をしている。

静寂で、暗闇の空間の中心部で神経を研ぎ澄ましている。

 

突然、四方八方の空間から丸いモノが総計50個ほど出現し、瞬時に彼女は腰の両端に装備している二挺の白銀の拳銃を取りだした。

 

『スタン、スタン』とタップを踏み、柔軟な足腰の筋肉を駆使した、まるでダンスのような軽やかな身のこなしは見るものを魅了する、所謂『ガン=カタ』と呼ばれる動きである。

 

しかし、そこから放たれる光線は丸いモノ、的を的確に捕らえていた。

 

「ふっ、ふっ、はっ、はっ、はっ――」

 

息でリズムで刻み、さらにスピードアップ。こんな美人からは、とても想像できない動きだがとても美しい。

 

直撃した全ての的はその場で消滅。それはたった10秒間の出来事だった。

 

「あと一つ!」

 

彼女は立ち止まると、二挺の銃を直列に連結。二挺の拳銃が、まるで長身のライフルへ変化した。

 

「………………」

 

最後の一番離れた的に照準を合わせ、息を潜めトリガーを引く。発射されたピンポン玉の光弾が徐々に野球ボールほどの大きさに膨張し、的へ向かって駆け抜けた。

 

ーーそして貫通、光弾はそのまま先の壁に直撃し、そのまま消滅した。

 

「…………」

 

その場で銃を下ろし、連結を解除。元の二挺に戻る。それと同時に『パチパチパチパチ!』と後ろのガラス越しの見学室ではドラえもん、ジャイアン、スネ夫が眼を輝かせて握手をしていた。

 

「すっすげえっ!!」

 

「さすがエミリアさん!あんな銃さばき見たことないよ!」

 

三人の横にいたミルフィはエヘンっと誇りそうな顔をしている。

 

「これでもエミリアは戦闘訓練ランクA+なのヨ!」

 

「それってスゴいの?」

 

「当たり前ジャン、最大ランクはSだけど、この艦内でそのランクをもつ隊員は数人ぐらいしかいないわ。ましてやエミリアは女性だから、本艦の全隊員達を比べても上位クラス、女性隊員の中ではダントツトップよ!」

 

「エミリアさんはやっぱりスゴいやぁ。で、ミルフィは?」

 

スネ夫の質問に彼女は瞬間、顔を赤くしてそうボソボソとこう言った。

 

「……D……」

 

「で……でぃー?ぷっくく……っあははははっ!」

 

「こんな丸っこい体じゃ何にも出来ないもんな!わははは!」

 

「二人とも、笑っちゃミルフィちゃんに失礼だよ!」

 

スネ夫とジャイアンはヒイヒイ笑い出した。

 

「何よォ!アタシはオペレーション担当なの!戦闘出来なくても、十分やっていけますゥ!!」

 

……そんな話をしている矢先、エミリアが戻ってきた。

彼女は顔中に汗をダラダラ流していた。

 

「ふう、やっぱりこの訓練は疲れるわね……ちょっとバテた」

 

彼女は訓練で動きやすいようにラクリーマのような黒い全身タイツのような戦闘スーツを着用していた。ちなみに胸がぺったんこなのが残念だが、とてもスレンダーな体格をしている。

 

「あらタケシ君、どうかしたの?」

 

「エミリアさんて……全くおっぱいがなーー」

 

瞬間、失礼な発言をしたジャイアンは顔をプンプンした彼女に『ポコっ』と軽く叩かれた。

 

「た、タケシ君、それは女性に対してものすご~く失礼な発言だから気をつけなさい……っ」

 

「………………」

 

そんな中、スネ夫がエミリアの二挺拳銃に興味を持ち、今にも欲しそうな顔をしている。

 

「エミリアさん、その2つの銃、カッコいいですね!」

 

「えっ?ああっ、これね?」

 

彼女は銃を三人の前に差し出した。2つともグリップ含めて白銀で、違う点は一つは重量感がありそうな大型拳銃で、もう一つも大型だがシャープで銃身が長い。

 

特撮やアニメでヒーローが使う銃器のように機械的で単純にカッコよく、男子ならすぐ欲しがることだろう。

 

「フフっ、持ってみる?」

 

頷くと、彼女はスネ夫の手に直接握らせた。

 

「かっ……軽い。持ってる感じがしない……」

 

「すっスネ夫、俺にも貸せ!!すげえ、わたあめみたいに軽いぞ!」

 

見るかぎり、一挺4、5キログラムはありそうな重厚なそれらは想像できないくらいに軽量であった。子供で、ましてや腕力の低いスネ夫でさえ手を踊らせながら持っているのでその軽さが分かる。

 

「これね、あたし専用の銃なのよ。軽いから扱いやすいと思いがちかもしれないけど、これがなかなか上手くいかないのよね」

 

「そうなんですか?」

 

「ええっ、試しに的に向かって撃ってみる?ホントは一般人に持たせたらダメなんだけど……まあ、持ち主のあたしがいるし許可するわ」

 

「「はっはい!」」

 

「なら、最初は誰が撃つの?」

 

ミルフィを除いた三人は互いの目を見つめ合う。

 

「……ここはもうジャンケンで決めようか?」

 

「そうだな、さすがにここで取り合いしたら撃たせてもらえなくなりそうだし……」

 

「……て、ちょっとまってよ!考えたら僕、グーしか出せないよ!」

 

「ならドラえもんは抜けだな!!」

 

「…………」

 

あんまり納得のいかないドラえもん。しかしまあ、手の形に問題があるので何とも言えないが。しかし、そんなやり取りに見かねた彼女は、

 

「順番で撃たせてあげるから、早く決めなさい」

 

その言葉を聞いた三人、特にスネ夫とジャイアンは即座にエミリアの前に出始めた。

 

「なら僕から先に!」

 

「いいや、俺が最初だろ!!」

 

「ジャイアンばかり自分勝手すぎるよぉ!」

 

「うるセェ!俺が始めに決まってンだろ!」

 

「「「…………」」」

 

予想通りのことが起きて、エミリア、ミルフィ、ドラえもんの三人は呆れて言葉が出ない。

 

「取り合いするのなら撃たせてあげないわよ!!」

 

「「あっ……」」

 

……とりあえず、順番はスネ夫、ジャイアン、ドラえもんという形になり、最初のスネ夫が彼女に連れられて訓練場に入場した。

 

 

「ならスネ夫君。向こうにある的を狙ってみましょう。命中したら的は消滅するから判定は当てるだけよ」

 

エミリアの指を指す方向に約50m離れた先に2つの的が平行に並んでいる。

 

「ワクワクしてきた……よおし!」

 

スネ夫は渡された二挺を的に向かって構えた。

 

(軽いなぁ。これなら僕も扱えるかも……でも扱いにくいなんて)

 

そう考えながら両手を真っ直ぐ前に固定し、ゆっくり的に照準を定め引き金を引き、発射した。2つの銃口から蒼白く細い光線が瞬く間にはるか奥に到達した。

 

「ーーあれ?」

 

とっくの間に着弾したと思われたが的が消滅していない。

ということは命中していないのであった。

 

「…………」

 

「スネ夫、なにやってんだよ。あんなのも当てられないのかよ!!」

 

戻ってきたスネ夫は首を傾げていた。

 

 

「エミリアさん、この二つ銃口曲がってませんか?」

 

「そんなことないわ。じゃあ次はタケシ君ね、渡してあげて」

 

「よっしゃ、まかせとけ。俺が当ててきてやる」

 

スネ夫は渋々渡すとジャイアン大ハリキリで腕を回していた。

 

その隣でミルフィは微笑している。

 

「フフフ、あの銃の本質に気づくかしら……?」

 

「…………」

 

ドラえもんはそう呟く彼女を見て、何かを考えていた。

 

 

「当たらなかった。どうなってんだこりゃあ……」

 

「ジャイアンも全く命中してないじゃないか!!」

 

案の定、的に命中せず、やる前とは一転して少し落ち込んだ様子で戻ってきた彼も首を傾げている。

 

「なら、最後はドラちゃんね」

 

ドラえもんはジャイアンから渡される。見た感じ、そんな指もない丸い手でどうやって撃つのか不思議だが構造上、指があるかの如き動作が出来るのである。

 

「…………」

 

そしてドラえもんは訓練場に入り、銃を構える。

 

(もしかしたら、ドラちゃんなら……)

 

二人とは違う真剣な顔が集中しているとエミリアにはわかった。

 

「「ああっ!!」」

 

ドラえもんは2つの的の右側の的が瞬間、消滅した。

 

その瞬間をこの目でみたスネ夫とジャイアンは驚きを隠せなかった。

 

「さすがドラちゃん、初めての一回で当てるなんて」

 

「エヘヘ。何となくこの銃の特性がわかったんです。確かに扱いにくいですね」

 

二人は戻り、その場の三人は駆けつけた。

 

「ドラえもん、どうやったの!?」

 

「俺たちに教えてくれ!」

 

「この銃、軽すぎてフワフワしてるだろ?だから的を狙っても知らず知らずに腕が上に上に上がっちゃうんだよ」

 

「「へっ?」」

 

「つまり、凄く軽くて逆に腕が固定しにくいから照準が定まらないんだ。二人はもうすこしそれを考慮して狙わないから照準がずれて当たらないんだよ」

 

エミリアとミルフィは笑顔でドラえもんに拍手した。

 

「ドラちゃんは頭がいいわね。大正解よ!」

 

「未来のロボットはやっぱり敵わないヨ!ステキー!」

 

「エヘヘ……ゴロニャーん…」

 

誉められて人目気にせずデレデレしている彼を尻目に、

 

「ちぇっ、ホントはポンコツロボットのくせに……」

 

「あんなにデレデレしちゃって……」

 

二人は嫉妬していた。

 

「この二挺は特殊な金属素材を使ってるから非常に軽量で丈夫、かつ特殊なのよ。わたしはこの二つを『テレサ』、『ユンク』と呼んでるわ」

 

「銀河連邦では優秀者にその人の象徴として、本人が使いやすいデバイスや武装、戦闘ユニットを開発、受領されるようになってるの。エミリアは確か…大尉になってすぐにもらったんじゃない?」

 

ドラえもんら三人は納得し頷いていた。

 

「……エミリアさんはやっぱり優秀なんだなぁ」

 

「ドラえもん、今度はエミリアさんにひみつ道具を使わせてあげようよ!」

 

「そうだね。そうだ、タケコプターなんか……」

 

ドラえもんはポケットからタケコプターをエミリアに差し出した。

 

「これは……地球であなた達が使った道具ね」

 

「はい。『タケコプター』って言って、頭に着けて念じると空を飛べるようになるんです」

 

「へえっ。初めて使うけど大丈夫かしら?」

 

「どうぞどうぞ。さっきのお礼です」

 

エミリアは早速、訓練場に入り、頭上に着けて黄色い小さなプロペラが回転を始めたーーが、

 

「きゃああああっ!」

 

「「「「うわああああっ!」」」」

 

上体を倒しすぎたせいで地面に引きずられるように走っていき、慌てて彼女を止めようと全員が駆けつけるが、遅くも頭が壁に激突し、エミリアはそのままピクピク震えている。

 

「エミリアさん、大丈夫ですか!!」

 

「ううっ……やっぱり難しいわね……未来の道具は……」

 

ドラえもん達は心配しつつも、こう思っていた。

 

『今のは……まるでのび太だ』と……。

 

 

(もしかして……エミリアさんて不器用……?)

 

 

今、エミリア除く全員が同じことを考えていたのだった。

 

◆ ◆ ◆

 

その後、彼女のタケコプターの飛行テストは失敗に終わり、5人はエミリアの顔の傷を治しに治療室へ向かっていた。

 

「いたたたっ……」

 

「エミリア、大丈夫?」

 

「大丈夫よ。まさかあんなことになるとは……っ」

 

顔の頬が擦りむけて赤くなっている顔を見るかぎり、かなり痛そうだ。

 

「いやあ、びっくりしたぁ~。いきなりあんなことになるなんて……」

 

「しょうがないよ。初めてつかったんだし……」

 

「ふふっ、けどすごく興味深いわ。もしよかったらまた出してくれないかしら?」

 

「いいですよ。けど今度は安全な道具を出しますよ」

 

「こんどはエミリアさんでも扱えるような物を出せよな!」

 

「でもってどうゆう意味よ!」

 

「アハハハッ!」

 

全員の笑い声が通路に響き渡った。

 

「お疲れ様です!」

 

「ご苦労様!」

 

「「「お疲れ様でーす!!」」」

 

兵士とすれ違い、全員が互いに敬礼をした。三人はこれでもかと言うくらいに大きい声で返す。

 

「おっ、君たちいい声してるね。ここに入る資格あるよ!」

 

「ホントはですか!」

 

「ああっ、ところでエミリア大尉、その顔の傷はどうしたんですか?」

 

「ちょっ、ちょっとね!」

 

「早く治してくださいね。あなたのその美人顔が台無しですから」

 

「台無しって、失礼よ!」

 

「ああっ、すいません!!ではこれで失礼しました!」

 

兵士はそそくさと去っていき、彼女は彼を嫌な目で見つめていた。

 

「もう!」

 

……すると、

 

「これはこれは、エミリア・シュナイダー殿ではないか?」

 

振り向くと、二人の男が我が物顔で立っていた。一人はキツネをそのまま人間にしたような男、もう一人はまるでゴリラのような顔つきで肌の黒い、身長2mあるかないかの大男がその男の後ろにいた。

 

「…………」

 

エミリアはキツネの男をグッと睨み付け、男は彼女に対してニヤニヤしている。

その一方、ミルフィとゴリラの男は何か懐かしむような顔で互いを見つめていた。

 

「こっ、コモドスじゃない?」

 

「ミルフィか!」

 

二人は笑いながら、かけより手を繋いだ。

 

「前期教育以来じゃないかぁ!元気にしてたか?」

 

「うん!コモドスこそ元気?」

 

「ああっ」

 

二人はワイワイ話していると、

 

「ミルフィ、みんな、行くわよ」

 

「えっ!?」

 

エミリアは突然、無愛想となり、彼らに背を向けた。

 

「エミリアさん?どうしたんですか?」

 

「…………」

 

ドラえもんの問いに全く答えず、さっさと行こうとする。さっきまでと雰囲気が違う彼女の表情に4人は突然、恐怖した。

 

「おいおい、久々に会ったってのにそれはないんじゃないか?」

 

男がそう聞くと、エミリアは立ち止まった。

 

「何よサルビエス。あんたに話す言葉なんてなにもないわ」

 

「ちっ、いつからそんな偉そうに言えるようになったんだ。しかも……そんな下等生物を率いれて遠足でも行くのか?」

 

徹底的に彼女含めた5人を軽蔑するサルビエスという男。エミリアと一体どんな関係が――。

 

「クククッ、相変わらずそのメガネがないと何も出来ないのかぁ?無様なもんだなぁ」

 

「てめぇ、よくもエミリアさんを馬鹿にしやがったな!」

 

「ジャイアン!!」

 

黙ってもいられなくなったジャイアンはサルビエスに襲いかかろうとしたが、もの一人の男、コモドスが彼の前に出る。

 

「はなせぇ!」

 

「…………」

 

さすがのジャイアンもコモドスの並外れた怪力の前に歯が立たず、掴まれてしまう。

 

「ケケケッ、これくらいにしておけコモドス」

 

「……はい」

 

コモドスは彼をまるでドッチボールのように前へ投げつけた。

 

「ジャイアン!!うわあああっ!」

 

ドラえもんとスネ夫は彼を受け止めようとしたが、勢いが強すぎて、三人は吹き飛ばされた。

 

「みんな大丈夫!?」

 

「いたたっ……っ」

 

「…………」

 

エミリアは怒りの表情を露になり、拳をギュッと握りしめた。

 

「俺様に逆らうからこうなるんだよ。大体、お前みたいな奴がよく大尉になれたもんだな。なあ『泣き虫モグラ』ちゃん?」

 

「…………」

 

「エミリア、『泣き虫モグラ』ってどうゆう……」

 

サルビエスは突然、高笑いし彼女に指を指し、こう話し出した。

 

「ヒヒハハハ、教えてやろうか?こいつはな、俺と入隊、前期教育は同じなんだが、いつもこいつのおかげで連帯責任かけられたんだよ!!」

 

「エミリアさん……?連帯責任って」

 

「…………」

 

エミリアの心にその言葉が鋭い刃の如く、奥まで突き刺さった。

 

「いっつもトロくてドジばっかしてたから俺たち仲間に多大な迷惑をかけてたんだぜ?

基本装備品を装着するのに一人だけてこずって集合時間には間に合わないし、行進訓練で違うことするし、挙げ句の果てには訓練中に教官に怒られて、その場でワンワン泣き出して……訓練の進行を邪魔してたな。だから『泣き虫モグラ』ってな」

 

ーーエミリアは、入隊時は会話の通りの女性だったのだ。彼女にとっては決して思い出したくない過去の一つである。

 

「今回の標的、アマリーリスなぞに故郷を滅ぼされて……モーリアンとはさぞかしノロマで貧弱だったんだろうな、ヒァハハハ!!

そんな種族に比べたら、我が種族『フォクシス』はあらゆる種族の中で最も気高く優れた種族だな」

 

『レイシスト』。彼を一言を表すならそれである。

 

「けけっ、悔しいか?だが所詮、モーリアンとはこんなもんだ。土臭くて、鈍重で、マヌケで……」

 

「……何よ。言いたいことはそれだけ?」

 

「はあっ?」

 

彼女はサルビエスの前に移動すると、胸ぐらをグッと掴んだ。

 

「ぐうっ!」

 

「確かに……私は同期の仲間には多大な迷惑をかけたわ。どうしても上手く行かないし、途中で何度も退職しようかなと考えたりもしたわ……」

 

さらに顔同士が当たりそうなくらいに引き付けて、彼の目をその怒りを込めた視線を送った。

 

「けど、周りの人々に支えられて、励まされて私は必死こいて頑張った。人一倍、いや二倍くらい努力したわ。あたしも努力してここまで辿り着いたのよ。あんたみたいに……人を馬鹿にすることしか考えない奴に分かるワケがないじゃない」

 

エミリアは胸ぐらを放し、その場で低くドスの利いた声でこう言い放った。

 

「ナメんなよ、クソヤロウ」

 

「…………」

 

エミリアは彼に背を向けて去っていく。

 

「行きましょう」

 

「エミリアさん……」

 

「……みんなに見苦しい所見せて悪かったわね」

 

5人はエミリアの指示通り、行こうとする。その中でミルフィとコモドスは互いに悲しい目で見つめあっていた。

 

「コモドス……」

 

「…………」

 

一方、サルビエスは歯ぎしりを立て、エミリアに対して怒涛の怒りを起こしていた。

 

「ちぃ、モーリアンふぜいが……生意気にぃ……」

 

「大尉、我々ももう行きましょう……」

 

コモドスがそう促すが、彼はギロッと睨み付ける。

 

「おいコモドス、誰に命令してるんだ?いつからそんなに偉くなったんだ?」

 

「…………」

 

「まあいい、どいつもこいつもムカつく奴らだぜーー」

 

悪態をつきまくるサルビエスにオドオドしているように見えるコモドス。二人はどのような関係があるのだろうかーー。

 

◆ ◆ ◆

 

ーーその後、仕事でエミリア達と別れ、ドラえもん達三人は休憩所で落ち込んでいた。もちろん、あの二人とのイザコザについてで。

 

「あの時のエミリアさん……怖かったね」

 

「ああっ。けどあんな奴に馬鹿にされたら」

 

「なんか……ここも色んな人がいるんだね……」

 

銀河連邦内でも様々な種族や人種がいる。

しかし、それが全て友好的な人物だけでなく、中にはサルビエスみたいな思考の人物もいる。

 

それを強く思い知らされる三人なのであった。

 

「あら、あなた達いたの?」

 

エミリアが三人の元へ現れる。

雰囲気が重い彼らに優しい笑顔で一人ずつ頭を撫でた。

 

「ごめんなさい。サルビエスの言っていたことは気にしないでね。あいつは元からあんな感じだから」

 

「けど、あんなに馬鹿にされて悔しくないんですか?」

 

「……悔しいわ。けどね、気にしててもしょうがないでしょ?あなた達は何も気にしなくてもいいのよ」

 

「けど……」

 

そう言う彼女も気にしているか、どこか浮かない表情をしていた。

 

「……エミリアさんて、どうして銀河連邦に入隊したんですか?」

 

「入隊動機?」

 

ドラえもんの問いに、彼女は恥ずかしそうに指をコネコネしながらこう答えた。

 

「……人の役に立ちたかったから。わたし、泣き虫でドジだったから鍛え直したいって思いもあったけど。

あたしでも役立つ仕事は何かなって考えた末、これに決めたわ。

幸い、故郷も連邦に加盟していたからすぐに志願できたの。親も彼氏もはじめは反対してたけど、行きたいと押し通したら承諾してくれた」

 

彼女はさらに話を続ける。

 

 

「けどね、現実は厳しかったわ。あいつが言ってたことは本当よ。あたしのせいで連帯責任になって罰を与えられた数は多すぎて数えられないわ。

同期生はあたしを冷たい目で見てた時もあった。あたしは情けなくなって、何度も泣いたこともあったの。

 

けど、親や彼氏、仲良しの同期に励まされて死にもの狂いで頑張った。自由時間や休日を使って勉強や自主練習した日もあった。そうじゃないと迷惑がかかるから……」

 

三人が真面目に話を聞いている。本当は彼女は元から優秀ではなかったのだ。下手したらのび太に匹敵するくらいの不器用である。『大尉』という階級になるのにどれほどの努力をしたのか計り知れない。

彼女は「人の役に立ちたい」という願いを叶えるため、本当に苦労していたんだなと思うと無性に涙が上がってくるのであった。

しかし、次第に彼女は体をブルブル震わせていた。

 

「けどサルビエスなんかよりも一番許せないのは……人の全てを虫けらのように踏み潰し、奪うアマリーリスを……わたしは絶対許さない!」

 

その怒りようは尋常ではなかった。あんな悲劇が起きれば誰でも憎悪するは無理もなかったのだが……。

 

「ところでミルフィちゃんはどうしたんですか?」

 

「あっ……ミルフィは今、オペレーターとしての作業をしているわ」

 

……その頃、ミルフィは中央デッキのコンピューターの前で、本業であるオペレーターの仕事をしていた。

 

 

「はあ……っ」

 

「ミルフィ中尉どうしたのですか?」

 

「いやっ、なんでもないヨ。引き続きアマリーリスの進路を追跡及び、この宙域に到着する時間を確定させるわ」

 

「了解しました」

 

後輩オペレーターと連携を取り、真面目に仕事をする彼女は何かギャップがあり、いい意味で違和感がある。

 

 

(コモドス……どうしてあんな人の付き添いをしてるの?)

 

彼女も浮かない顔をしていた――。

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