大長編ドラえもん のび太の宇宙大決戦   作:はならむ

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Part.24 ユノン

『あたしは……なんのために生まれてきたんだろうーー』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちきしょっ!!また男に逃げられたぁ……ひっくっ!」

 

 

とある街の片隅のアパート。壁にはラクガキやシミだらけで、もはや『綺麗』という言葉は合わないような建物の一室内では。

 

「酒がなくなった……。あんた、今すぐ買ってきな」

 

家の中は酒の瓶やゴミに溢れ返り、足の踏み場もないほどであった。酒のニオイや生ゴミのニオイが混ざり、今すぐにでも気絶しそうなほどの臭気に満ちている。

 

そんな部屋の一室から一人の薄汚れた少女が涙を浮かべて酒に溺れている女性を見つめていた。

 

「まっ……ママッ……っ」

 

女の子の身体はアザだらけであった。強く殴られた痕や煙草の火を押し付けられたヤケド、刃物か何かに中途半端に切りつけられた痕……汚れた衣服で隠れていない部位を見ても、数えるとキリがない。何をしたらこんなことになるのかと思うくらいであった。

 

「ひいっ!!」

 

母親と思われる女性は空き瓶を少女へ向けて投げつけた。直接は当たらなかったものの、割れて飛散したガラスの破片が辺りに散乱し、彼女にまた恐怖という思念が込み上げる要因ともなった。

 

「さっさと買ってきなさいよぉ!!」

 

母親は彼女の元に行くと酔っているか、躊躇せず彼女を蹴る、殴るの暴行をこれでもかというくらいに与え始めた――。

 

「ごめんなさいぃぃぃっ!!ごめんなさい!!ごめんなさい!!ごめんなさい!!ごめんなさい!!ごめんなさいごめんなさい、ごめんなさい――!!」

 

少女はただそれだけを発しながらひたすら暴行に耐えている。しかし、母親は彼女に向かって唾を吐き、頭上に付着した。なんという親なのだろうか。

 

「怯えやがって……。そんなにあたしのことが怖い?誰のおかげで生活できるとおもってんだァ!?」

 

母親は彼女の長い緑の髪をグッと掴み、無理矢理顔を合わせる。

 

「あんたがいると男は作れないし、作っても逃げられるし、とんだ疫病神だよ!」

 

しかし恐怖のあまり、彼女はおもらしをしてしまう。

 

「まァたおしっこなんかもらして……たくもお!!」

 

下半身がびしょびしょになった少女は羞恥と悲しみ、そして恐怖で、涙と鼻水でもう顔がグシャグシャな状態だった。

 

「なんでこんな手間のかかる子を産んだんだ……っ?こいつの父親は逃げちまったし、たくっ、育てるあたしの身にもなってよお!」

 

すると少女は震えるような声で母親にこう言った。

 

「おサケ……かってきますから……いうことききますから……もうたたかないで……おねがい……します……っ」

 

その言葉を聞いて母親は掴んだ髪を離し、少女はそのままうずくまった。

 

「ふん……、さっさと買ってきな。お金はないからいつも通りツケておくようにいいなさいよ?」

 

「…………ひくっ………」

 

彼女は、母親から下僕のように扱われていた。こんな母親でも他に身寄りがいないため、いなければ生きていけない。従う以外、道はなかった。

 

 

ーーある日のこと、母親は男を捕まえたらしく、キレイに部屋を掃除して連れ込んだ。

母親は珍しく上機嫌で満面の笑みを浮かべていた。

少女はそれを見るたびにこう思っていた。

 

『この笑顔が……もう消えないでほしい』と。

 

 

母親にニコニコしながら、外に買い物に行った。

どうせ、男からもらった金だろうに。部屋の中には一人で静かにしているその少女と男の二人、何か嫌な雰囲気だ。

 

「いいものあげるからこっちにおいで……」

 

「……?」

 

男が隣の部屋から少女を呼び、トコトコ彼の所へ向かう。人見知りなのか、初めは壁越しに隠れなからその男を覗いていたが非常に気のよさそうな笑顔で信用したのだろう。

なんの疑いなしで出向いていった。しかし、

 

「!?」

 

突如、男は彼女の口元を押さえて、押し倒す。その優しい笑顔は徐々に悪魔のような凶悪な笑みと化した。

 

「へへっ、あのバカ女に金を貸した代わりだ!よく見ると可愛い顔してんなぁ、こいつは楽しみがいがあるってもんだ!」

 

(こわいっ……こわい!!こわい!!)

 

少女の表情は青ざめ、ぶるぶる震えている。助けをよぼうにも、力ずくで口を押さえていて声が出せない。

それ以前に、助けを乞おう人さえもいなかった。男は……彼女の服の中にその汚ならしい手を突っ込んで、耳元でこう呟いた。

 

(緑色の長い髪、かわいいよ、名前は確か…………っ)

 

(や……め……て……っ)

 

その発達しきれてない幼稚な身体中を否応なしに触られ、全身をナメクジがはい回ったような強烈な嫌悪感、そして吐き気が襲い、大粒の涙を浮かべて……そして。

 

 

「ユノンちゃん♪」

 

 

(や め て え ぇ ぇ ぇ ぇ ぇ っ っ ! ! )

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

「…………!!?」

 

ユノンは自室のベッドからすぐに起き上がる。身体中が汗でびしょびしょであった。

 

「……がっ……はっ……っ!!」

 

異常な嫌悪感に自分が押しつぶされそうとなり、息が出来なくて喉元をグッと押さえ彼女はすぐに立ち上がり、デスクに向かうと引き出しを開いてあるものを取り出した。

 

「~~~~~~っ!!」

 

……あるものとは、ナイフであった。

 

それを左手首にグッと押し当てる。だが、

 

「あ……ああっ……っ」

 

彼女はまるで地震を受けているように激しく震え、顔をひきつった。自分の今やろうとしていることの過ちを認識したのだ。

 

「あ゛あ゛ーーーーっ!!」

 

ナイフを床に叩きつけ、彼女のその場で座りこみ、震える両手で顔を押さえた。

 

「あたし……なにまたやろうとしてんのよ……やめると決めたじゃない……っ」

 

ゆっくり立ち上がり、ふらつくようにソファーへ移動するなりドサッと座り、体育座りをして静かにうずくまった。

 

「…………」

 

ノースリーブ状のインナーを着ている彼女は露出している左腕の手首を確認する。

その綺麗な素肌の内側をよく見ると、何やら刃物か何かで傷つけた痕らしきモノが所々ある。

 

「…………」

 

その切創は明らかに不自然だ。まるで✕のような形もあれば、平行でしかも一定の間でできているものもあった。

 

これはどうみても他人から切りつけられた傷ではない。

 

「なんでまたあの夢を……っ」

 

普段以上に暗い顔をしている。彼女の目が揺れている。そんな状態が数分間続いた。

 

「…………」

 

ふとユノンは立ち上がり、隣の青い壁へ向かうと、静かに触れた。

 

すると、壁がまるで自動ドアのようにゆっくり開き、中から冷風が一気に彼女を包む。

 

開ききったそれは、何段もの棚に――『酒』と思われる液体の詰まった瓶や壺が何種類にも綺麗に統制されて並べられていた。

 

彼女は上から二段目の右端にある瓶を取ると、それをもってソファーの前にあるデスクに静かに置いた。

 

『トクトク……っ』と持ってきたグラスに静かに注ぐ。液体の色はまるで鮮血のように明るい赤色で、地球で言う、赤ワインのようである。

 

ある程度コップに入れ、それを時間をかけて口の中に含む。

 

「……ふう」

 

安心し、妖艶な声と共に息を漏らすと、今度は勢いよくグビグビ飲み始める。

 

彼女は組織内でも有数の酒飲みであり酒豪でもある。強さはラクリーマより劣るが、組織員と引けを取らない程で、酒に対するこだわりは他の追随を許さない。

 

彼女の唯一の楽しみである酒は、各惑星の侵略時に入手しているのである(それらはラクリーマや部下に頼んでいる)。

 

その日の気分で酒の味を変えているあたり、多種類持っていることが伺える。

 

「…………」

 

段々、彼女の顔が赤くなってくる。彼女はこの時、いわゆるほろ酔い時が至福の時なのである。

さすがに毎日は仕事に支障をきたすため、非番な日に好きなだけ呑むようにして、それ以外の日は呑まないようにしている。

 

宴会などを嫌い、一人晩酌を好むユノン。

邪魔されたくないため、この時に人が部屋、いわゆるテリトリー内に入ってくることを極度に嫌うのである。

それが例えラクリーマであろうと絶対に許さない。

なので、組織員は彼女の非番時には部屋に近付こうとしないのである(最も、ラクリーマはそんなのお構い無しに部屋へ入り、彼女からこっぴどく制裁されて、放り出されるのはもはや名物である)。

 

 

……ゆっくり、ゆっくりと時間をかけて飲んでいるのだが、「ハァ……っ」と幸せな一時なはずなのに、不安らしげにまたため息を吐く。

 

(情けない……。あんなクソ親と同じく、酒でしか満たせないなんて……)

 

コップの残りを飲み干すと立ち上がり、クローゼットからいつも着ている青い着物のような上着を取り出した。

 

すぐに着用し、そのまま部屋から出ていった。

 

◆ ◆ ◆

 

現在、あのアンノウン達がエクセレクターの装甲をボロボロにし、修理をするため約2日間だけ、その場で停滞していた。

無論、のび太としずかにそのことを話し、二人はしょうがないと快く納得してくれたのだった。

 

そんなに問題こそはないのだが……先で待ち構えているであろう銀河連邦艦隊を考慮しての決断だった。

 

「…………」

 

ここは艦内の喫煙所。ユノンただ一人がゆっくり煙草を吸っている。

 

実は、意外にも喫煙者はユノンを含めて、十数人くらいしかいなかった。

 

『煙草は俺たちみたいに肉体労働者には毒すぎる』というラクリーマ本人の指示によるものであった。

 

証拠に、喫煙者はオペレーターなどの頭脳と神経を使う者たちで限られている。

 

 

「フゥ……」

 

彼女の口から吐き出される煙はたちまち天井の換気扇に吸い込まれていく。

 

それを見ながら彼女はぼーっとしていた。

 

(そういえば喫煙するようになって何年経ったかしら……。確か、大学に入る前から吸ってたから……7年くらい?)

 

彼女は短くなった吸いがらを灰皿に捨て、喫煙所を出た。

ポケットに手を入れて、長い通路をひたすら歩いていく。……しばらく歩いていると前方から仲の良い部下が歩いてきた。二人で通路内に響き渡るような笑い声で話をしている。

 

「「あっ、お疲れ様です!」」

 

「…………」

 

互いに軽く挨拶し、すれ違う。その時――。

 

「……そいつさぁ、配線の修理中に手を滑って、手首切っちゃったんだとよ!!」

 

(!!?)

 

その会話が耳に入り、その場で立ち止まった。

 

「うわぁ……バカだなオイ。どう間違ったらそうなるんだ?」

 

「でさ、めっちゃ血が流れて大変だったんだぜ!」

 

二人はそのまま去っていった。しかし、彼女はそのまま立ち止まり、何故かブルブル震えている。

 

「てっ……手首を……切った……っ」

 

(ドクン……ドクン!ドクン!)

 

心臓の鼓動が強くなるにつれて、彼女の顔も青ざめていきーー。

 

「――――――っ!!」

 

彼女はなりふり構わず一目散にその場から走り、急いで自分の部屋に入った。

 

「…………っ!!」

 

彼女はドアに寄りかかり、頭を押さえてその場でうずくまった。その時の彼女の表情は、いつもの冷静さを完全に失い、何かに恐がっているようにも見えた。

 

(ヤバい……また切りたく……ダメよ、ダメ!!またやったらあの頃のあたしに――!!)

 

抑えきれない危険な欲望が彼女の脳内を駆けめぐり、もう何がなんだかわからない状態だ。

 

「ううっ……!!」

 

そしてあの壁に手を当てて、あの酒の貯蔵庫を開けると手当たり次第に酒をかき集め――。

 

「うぐ……うぐ……はぁ!!」

 

なんと瓶ごとそのまま飲み干していくではないか。あの冷静の彼女の姿はどこにいったのであろうか……。

 

“まだ……まだ忘れられない!!飲まないとぉ!!”

 

それから一升、二升とただの空き瓶を作っていくユノン。一体どうしたのだろうか?

 

◆ ◆ ◆

 

その頃、ラクリーマはというと、彼女の部屋へ向かっていた。

何か言いたそうな顔をしているが――。

 

「ラクリーマさん、どこいくんですか?」

 

通りかかった部下に話しかけられて足を止める。

 

「おう、ユノンの部屋にな」

 

「……ユノンさんの部屋はやめた方がいいんじゃないですかぁ?あの人非番だから、酒飲んでるんじゃ?」

 

「いいじゃねえか。俺が行くのは勝手だろ?」

 

「けどですね……あなた、毎回ユノンさんの部屋に行っては追い出されてるじゃないですか」

 

「けっ、こっちは用事があるんだ。それなのに追い返すあいつがおかしいんだよ」

 

「そうですけどね……。まあ、気をつけて下さいな」

 

「ああ、それじゃな」

 

そう言い、彼は手を振り去って行く。

 

「けど、ラクリーマさんらしいや!」

 

部下はそんな彼に呆れつつも、暖かい目で見つめていた。

 

一方、ラクリーマは考えごとをしているのか、うつ向いて通路を歩いていく。

 

(……あいつを怒らせとくと色々めんどくせーから謝っとくか……、元々俺がワリィし)

 

そう考えながら、彼女の部屋へたどり着く。

 

「ユノン、いるか……うっ!」

 

部屋の中は酒の匂いで充満している。酒に強い彼でさえ、思わず鼻が押さえてしまうほどであった。

 

「さっ、酒くせえ……。あいつなにやって……おわあ!!」

 

彼は目を疑った。デスクには酒が入っていたと思われる空き瓶が何本も倒れていて、ソファーには彼女が顔を真っ赤にして、泥酔状態となっていた。

 

「おい、大丈夫か!!」

 

暑いのか、下着だけになっていて、あまりにもはしたない姿になっている彼女にすぐに駆け寄った。

すると彼女は目を開けて、虚ろな瞳でラクリーマを見つめた。

 

「あら~~来たの~っ♪ウレシイわぁ~♪」

 

「お前、なんだこれは……?」

 

さすがの彼も、この部屋の惨状と彼女のへべれけ状態にはもはや、呆れて言葉が出なくなり、手を額に押さえていた。

 

「ウフフ……いいじゃないのぉ♪ラクちゃん、まさかあたしを襲いにきたのぉ?」

 

「らっ……、ラクちゃんだとォ?お前なぁ……っ、いくら非番だからって量を考えろよな……」

 

「いいでしょ~~!あたしの楽しみはこれしかないんだからぁ。それを否定されちゃあ、あたし泣いちゃいますよ~っ」

 

「…………」

 

もうらちがあかない。ラクリーマは寝かそうと彼女を持ち上げた。

 

「んふ~~♪いい気分……♪」

 

「へいへい、そりゃよおござんした!」

 

彼はお姫様のように抱き抱えて、ベッドへ運ぼうとする。ご機嫌なのか、パンツからはみ出ているシッポをフリフリ振って彼の腕にぺしぺし当たっている。

 

「エヘヘ……ラクちゃんて、意外と可愛い顔してんのねぇ。お姉ちゃんがナデナデしてあげまちょ~かあ?」

 

「うえっ、お前が姉貴とか、気持ち悪くなってきた……っ」

 

そして彼女をベッドの上に下ろし、寝かそうとする。

 

「なぁ!!」

 

その時彼女はラクリーマをグッと引き込み、彼を倒した瞬間、寝返って彼を下にし、彼女がのし掛かった状態になった。

 

「お前……本気なのか?」

 

「フフっ、今日はあたしを好きにしてわよ……ウヘヘッ……っ」

 

「……それは非常にウレシイが、俺はそんな酔っぱらいとヤる気になれないんでね、お前の酔いが醒めたらな!」

 

「へ~~えっ、たらしでヤリ○ンのラクリーマが拒否るなんて……あたしの処女奪ったのもあんたなのに……」

 

「だっ、誰がヤ○チンじゃあ!?」

 

いい加減うざくなり、彼女をどかそうとするが、完全に足や手を絡みつかせて離そうとしない。

 

「おい、離せ!もう寝やがれ!!」

 

「フフっ、せっかく来たんだし、楽しもうよ~~っ♪ん~~……」

 

「まじかよ……っ」

 

彼女は唇をラクリーマに顔に近づけ、そして……、

 

(ペロッ…)

 

「へっ?」

 

(ペロペロペロペローー)

 

「うわあああっ、くすぐってえ!!」

 

突然、彼の顔中を舐め始めたのだった。その様はまるで犬のよう……考えたら、彼女は犬だ。普段の彼女からは考えられないほどの醜態を晒している。

 

「ちょっ、酒くせえし、きたねえし、いい加減にぃ――」

 

しかし彼女は止めようとしない。次第に彼の顔は唾液まみれに――。

 

「どっ、どうしたんですかリー……ダァァァァッ!」

 

偶然、そこを通りかかり声を聞きつけたレクシーはすぐに駆けつけてきたが、二人の状況の前に、顔が真っ赤で大声を出してしまった。

 

「しっ、失礼しやした!!」

 

「おっ、おいレクシーまて、こいつを止めてくれぇ!!」

 

『最中』だと勘違いし、彼は急いで部屋から飛び出していった。

 

「レクシーさんどうしたんですか?」

 

「そんなに顔を赤くして……中で何が……」

 

「いっいや、今すぐこの場から去ろう!!」

 

彼はのび太としずかと一緒で、二人を引っ張って猛スピードで去っていった。数分後。

 

「く…………っ」

 

彼女はやっと離し、満足したのかポワポワしていた。が、ラクリーマの顔は彼女の唾液だらけでふやけており完全に不機嫌となり、タイツでゴシゴシと唾液を拭う。

 

「ちぃ、こんなことなら来なけりゃよかったぜ!!」

 

「えっ、もう行っちゃうの?」

 

彼は今にもキレそうな顔で起き上がり、ベッドから降りた。彼女もそれに反応して起き上がる。

 

「晩酌の邪魔して悪かったなぁ!!今すぐにでも去ってやらぁ!」

 

突然、彼女は彼の腕を掴み、引っ張り始める。

 

「おい、またか!!そろそろ俺もキレ……ん?」

 

彼は振り向くと、彼女はさっきの陽気な表情とは一転して、瞳が震え、非常に悲しそうな表情になっていた。

 

「……そんなさみしいこと言わないでくだちゃい……」

 

「おっ、おい?」

 

「ラクちゃんは……あたしから去るなんてユルさないでちゅよ~……っ」

 

彼女はラクリーマを見つめる。しかし彼女はまるで寂しそうに暗い雰囲気で見つめていた。

まるで……捨てられて、自分を見つけてくれた新たなご主人に『行かないで』と眼差しを送る子犬のように――

 

「いなくならないで…………」

 

「ユノン……?」

 

彼女はそのままうずくまり、ブルブル震えている。

 

「だいっ、丈夫か……?」

 

ーーその時、

 

「うっ……うえっ……気持ち悪い……吐きそう……」

 

「なぁ!?」

 

彼女は両手で口を押さえている。これはまさか――。

 

「ちょっとまてぇ、その場で吐くなぁ!」

 

彼はすぐに彼女を抱き抱えるとすぐに部屋のトイレへ向かった。

 

「おええええっ!!」

 

トイレから聞きたくもない汚ならしい声と音が響きわたった。

――どうやら間に合ったようだ。

 

やっと終わりを告げ、ユノンはそのまま爆睡。彼女をベッドに寝かせ、周りの瓶をせっせと片付け始めるラクリーマ。あんな目に遭いながらも、彼女を放っておけないのは彼の優しさか……。

 

全てが終わり、部屋を出る彼の顔は腑に落ちない顔をしていた。

 

「ユノン……」

 

しかし、彼は前の壁に移るとその場でうずくまった。彼の額から脂汗が流れ、身体を抱えて震えている。

 

(くう……っ、身体中がいてえ……これしきのことでぇ……)

 

彼は必死で立ち上がり、息を整えて壁を伝って歩き出した。その一歩一歩がぎこちない歩き方であった……。

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