大長編ドラえもん のび太の宇宙大決戦   作:はならむ

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Part.31 真実

ユノンは運ばれてすぐさま、心配する部下達が見守る中、サイサリスの元、即座に輸血、傷の治療が始められた。

失血死が心配されたが幸いにも、発見した時間が比較的早かったため、懸命な治療の末、なんとか一命をとりとめることに成功した。

その後、部下達を安心し、解散した。

しかし、そのメディカルルームには痛みがやっと収まり、駆けつけたラクリーマとサイサリス、そして心配して駆けつけてきたレクシーとのび太としずかが、静かに眠るユノンを見つめていた。

 

「くそっ、ユノンに何があったんだ……。いきなり手首を切るなんて……そんな自殺まがいなことを……」

 

一方、サイサリスはずっと彼女の左手首を見続けている。

 

「……」

 

「どうしたサイサリス?」

 

「なあラクリーマ、最近彼女に異変が見られなかったか?」

 

「いや、特には……どうした?」

 

サイサリスは彼女の腕を持ち、皮膚を見えるように着替えさせた服の袖をめくり、全員に見えるように注目させた。

 

「これを見なよ」

 

その場にいる全員がユノンを腕を近づいて見ると……。

 

「なんだこの無数の傷は……?」

 

ラクリーマ達は目を疑った。それは無数の切り傷の痕が至る所に浮き出ていた。近づいてみるとよくわかる。ついさっき作った新しい傷とは違い、古い年季のはいった傷が圧倒的に多い。しかも、明らかに自分がつけたとしか言い様のない不自然な切り方だ。

 

「リストカットだよ」

 

「リストカット?なんだそれ……」

 

「知らねえのか?まあ確かにお前には無縁なものだな。まさかこんなことをしてるなんて……」

 

手首自傷症候群(リストカットシンドローム)。

文字通り、『手首を切ること』で、自傷行為の一つである。派生として腕を切ることを『アームカット』、脚を切ることを『レッグカット』とも言うことがある。物、場所、人などに不満や本音をぶつけにくい内向的な人、うつ病患者、特に女性にその傾向が多い。

 

動機については三種類あり、一つ目は何かしら愛情に飢えていて、それをして、注目されて誰かに愛されたい、かまってほしいという欲求から。

二つ目は、それにより生きているという存在意義(アイデンティティー)を作るため、または快楽、安心感を持たせるため。

3つ目は現実を逃避する人格(解離した別人格)が作用していることから始まる行為などがある(リストカットした記憶がない、気づいたらできていたなどがある)。

それらの原因が、子供の時に親から愛情を受けずに成長した、虐待を受けた、トラウマになるような出来事があったなど、過去に受けた精神的な傷から来ることが多い――。

 

サイサリスは『ハァ……』とため息を吐いた。

 

 

「……厄介だな。はっきり言ってユノンちゃんは心の病気だ。

ウイルスとか病原菌などから来る肉体的な病気なら、薬治療や栄養補給、安静にしてればほぼ絶対に完治するが、精神的な病気だと、下手したら一生治らねえかもしんねえぜ」

 

全員が絶句した。リストカットは一般的に病気だと認知されないこともあるが、精神的な面から来る立派な病気だ。例え治ったとしても、また精神が不安定になれば再発する可能性が非常に高い。

 

この場合、これに限らず精神病系統には薬物治療、カウンセリング治療を施すのが一般的に効果的なのだが、結局は患者本人が乗り越えなければ意味がないのである。

 

「俺、あいつの腕を掴んだ時、切り傷があったからそれを見たら突然豹変した。何か怯えているようにも見えた」

 

「そうなのか。彼女からしてみたら絶対見られたくなかったんだろう、それで錯乱したというワケか」

 

ラクリーマはこれで今までに思い当たる疑問を思い出していた。それは彼女の行動や仕草についてであった。

 

(そういえばユノンが常に長袖しか着なかったし、あいつリストバンドをしてたのは知っていたが風呂場でもつけてたことにも疑問だったが……まさかこれを隠すためか……)

 

ラクリーマは苦渋な表情を浮かべた。

 

「ちぃ!!ユノンとて悩みか何かあったんなら、なんで俺に打ち明けてくれなかったんだ!?……だがそれ以上に俺が情けねえ!!こいつがこんなになるまで気づかなかった俺が一番情けねえぜ!!」

 

「ラクリーマ……」

 

「リーダー……」

 

ラクリーマは責任を感じていた。ほぼ一緒に行動していながら彼女の心情を察知してやれなかったことを。そして彼女のことが好きである彼からしたらなおさらである。

 

「お前のせいじゃねえよ。この子はあたしらと違って内向的だしそれに羞恥心ってもんがあるだろ。

『リストカットしています』なんて、たとえあたしでも人前で言えねえよ」

 

「くっ、せめて原因がわかれば何らかの対処ができるのによ……っ」

 

「サイサリスさん……。ユノンさんを救う方法はないんですか?」

 

サイサリスは目を閉じて、数秒間、また目を開けて顔をラクリーマに向けた。

 

「こうなったら最終手段だ。アレを使おう」

 

「アレってなんだ……?」

 

「ちょっと待っててくれ。開発エリアからあるものを持ってくる」

 

サイサリスは立ち上がると、メディカルルームから去っていった。

 

……数分後、戻ってきた彼女の手に球体のような水色の機械が2つ、ひとつは野球ボールほどの大きさで、もうひとつはドッチボールほどの大きさを持っている。

 

「なんだこれは?」

 

「これは人の精神を映像として具現化する機械だ。これで彼女の心の闇を引っ張り出せる」

 

「本当にできるのかそれ……?」

 

「ああ」

 

サイサリスはユノンにその野球ボールほどの機械を両手で持たせる。

 

「これからユノンちゃんの精神を読み取り、もう片方のこれからその内容を空間モニターで映写してくれる。その内容から適切な治療法を考えよう」

 

「お前、すげえな……」

 

「へっ、作成にはホントに苦労したよ。まあ、こんなデバイスがあっても面白いと思ってな」

 

苦労したとはいえ、そんな代物を作り出すとはサイサリス恐るべし……。

 

「……ラクリーマ、これを使う前に一つ忠告しておくぞ。これを使うとここにいる全員がユノンちゃんの全てを知ることになる。お前、その意味がわかるか?」

 

「……どういうことだ?」

 

「彼女の人に見られたくない部分まで映像化されるんだぞ。

見ている間はユノンちゃん自身には影響はないが……あたしらはともかくお前、どんな内容でも彼女の全てを受け入れられる覚悟があるか?」

 

ラクリーマは何の迷いなく頷いた。

 

「ああっ!全てを受け入れる覚悟はとっくの間に出来てるぜ!大事な仲間だからな!」

 

「ならいい。あとお前ら三人にも約束してほしい。どんな内容だろうと、決してユノンちゃんに失望したり、軽蔑するなよ。守れねえのなら今すぐここから出ていけ」

 

レクシー、のび太、しずかも状況を受けて止めて、約束すると言う意味で首を縦に降った。

 

「よし。なら読み込むぞ。あと、この事はあまりユノンちゃんに言わないほうがいいかもしんねえぜ。ここからは彼女のプライバシーの領域だ、もし知られたら――」

 

「…………」

 

そして、読み取り終了の合図と思わせる『ピピピッ……』と機械音が聞こえ、サイサリスはそのデバイスをユノンの手から取り上げた。

彼女は次に、もう一つのデバイスの頂点に触れると、一気に花の蕾が咲いたかのように動作、変形。

先ほどの読み込んだデバイスをその中に入れるとまた、閉じて丸型に戻った。

 

「よし、これで動機がわかる」

 

全員に不安と緊張感が走る。そして、サイサリスはデバイスの横にあるボタンを押した――。

 

デバイスの頭上に膨大な青い粒子が拡散、停滞し映像らしきものが映った。――が、

 

「二人とも見るな!!」

 

すかさずレクシーがのび太としずかを体で覆い、映像を遮った。ラクリーマとサイサリスも目を震わせている。

そこに映し出された内容とは……。

 

◆ ◆ ◆

 

《ガシャアアアッ!!》

 

そこはどこかのアパートである。その一室では、一人の女性と男性が壮絶な口喧嘩を繰り広げていた。次第に家具や食器を投げ合い、辺りはその破片で散乱し凄惨な状況である。

その隅っこの部屋で必死に耳を塞ぎながら耐え忍んでいる少女の姿が。

……そう、小さい頃のユノンである。痩せ細り、汚れたその身体からはろくに食事、入浴させてもらっていない荒んだ生活であることが分かる。

 

そして皮膚には異常なまでに生々しく、痛々しい傷やアザ、切傷、そして火傷が多数……多分身体中いっぱいであろう。彼女は暴力を受けているのがよく分かった。

 

……これらが日常茶飯事であった。ケンカをしている女性がユノンの母親である。母親に男運がないらしく、いつも男に寄り添っては最終的に逃げられる、または喧嘩の末に暴力を振るわれるといったことが度々であった。その度に酒に溺れ、悲しみや怒り、ストレスの捌け口に向けられたのが――。

 

「いたい、いたいよぉいたいよぉォーーっ!!!」

 

聞こえてくるのはユノンの痛々しい悲鳴であった。

 

「まだ泣くかこのお!!」

 

彼女が泣くたびに一発、一発と本気に近いビンタが飛び乾いた音が響き渡った、次第に彼女の柔らかい両頬には赤いアザができた――それでもワンワン泣くのを止まらないユノンに対し、

 

「ギャアッッ!」

 

タバコの火をユノンの顔に押し付けた。いわゆる『根性焼き』である。

 

『泣いたらまた叩かれる、殴られる』

 

必死で泣くのをこらえている彼女を突然、母親は優しく抱き抱えた。

 

「ユノンごめんね……。またあんたにこんな酷いことを……あたし最低だね…………」

 

震える声と鼻をすする音が母親から聴こえる。彼女は自分の犯した過ちに気づいて泣いていたのだった。

ユノンは母親の服にギュッと握りしめ、また瞳に涙を浮かべ――。

 

「……なかないで………ママは……わるくないの……」

 

悪くないはずのユノンが謝ってしまった。また暴力を振るわれるのを恐れているのもあるが、それ以上にこんな母親でもやはり『愛されたい、見捨てられたくない』と思う子供の心境なのであろう――。

しかし、その願いとは裏腹に、これがほぼ毎日繰り返されられるために、結局は負の連鎖は止まらないのであった――。

そして……この日。

 

「ユノン!!こっちおいで!!」

 

ある日、母親はユノンを呼び出す。彼女の前には見知らぬ男性がいた。また、何処からか引っかけて来たのだろう。

 

「こんにちわ……」

 

「…………」

 

笑顔が似合い、柔らかな口調で喋る辺りは、見る限り優男のように思える。

しかし、ユノンは怯えたように身震いし、素早く部屋の奥へ隠れた。

 

「ご……ごめんね!!あの子人見知りなの!!」

 

「いいんだよ。まだあんなに小さいんだから」

 

二人は笑い話になるが、ユノンからしてみれば男を連れてくる……恐怖そのものであった。

 

何故なら今までにも沢山の男性を連れ込んでいた。

そのあとのやりとりは、大体二人が酒を呑み、酔い始めて男が母親の身体をイヤらしく触り、そんな母親もまんざら嫌でもなく、寧ろ喜んでいる。その行き着く先は……。

 

 

 

「ああっんっ……あっあっ!!んいいっ!!いいよォっ!!もっとおま〇こ突いてェーーっ!!」

 

 

ユノンは寝室でこの場面を何度も目撃したことがあった。

二人とも裸になり男の大きくなった局部を母親は口で奥までくわえむしゃぶり、四つん這いになって高らかに喘いでいる。

 

その時、男は彼女の後ろで気持ちよさそうに腰を前後に振っているのを……。

ユノンは隣の部屋で耳を押さえて目を瞑る。まだ純粋で何も知らない何をしているのか分からなかったがこれだけは感じていた。

 

『得体の知れない嫌悪感に襲われる』

 

そして結局は、何かトラブルで大喧嘩、果てに苦痛が苦痛を呼ぶ虐待シナリオへ行き着くのであったから――。

 

「長い緑色の髪……かわいいよ……」

 

(やめ……てぇ……っっ)

 

……その日、母親が連れ込んだ男に押し倒されて、その汚い手で身体中を触られ、弄ばれて――、

 

「ぐっ……ゲェェェッ!!」

 

彼女は男が一瞬、口を押えてた手を放したと同時に、嘔吐物が吹き出し、男の手に付着した。

 

「うわあああっ、汚ねぇっっ!!吐きやがった!!」

 

男はすぐに立ち上がると、手を洗うために水道へ向かった。

その時、ご機嫌だった母親も帰宅し、異臭と男の慌てように目の色を変えた。

 

「と、どうしたの!?」

 

「おっ、お前んとこのクソガキが俺の手にゲロ吐きやがったんだよ!!」

 

「! !」

 

「せっかく、寂しそうだから遊んでやろうとしたのに……もうこんなとこいられるかぁ!」

 

「ああっ、ちょっと待ってよぉっっ!!」

 

男はドアを乱暴に蹴り飛ばして出ていってしまった――。

 

「…………」

 

震えたまま立ちすくむ彼女は数秒後、怒りに満ちた顔である方向に見つめた。

無論、自分の娘である。

 

「…………ぶぇっ……きもちわるいよぉ……ママ……たすけてぇ……っ」

 

嘔吐物で上着と床を汚し、口を押さえて倒れてるユノンの姿が見えた。涙を浮かべて、震える声で自分に助けを求めている。が、

 

「ユノン、吐いちゃったの?ならキレイにしないとねえっ!!」

 

母親は乱暴にユノンの首もとを掴むと引きずって行く。……ついた場所はどうやら風呂場のようだ。しかし浴槽に張る水を見ると透明どころか酷く黒ずんでいて、ぬめりや髪の毛などのゴミや汚れが所々浮かび上がっていて清掃していないと思われる有り様だ。

 

――最後の入浴から一体、どれだけの日にちが立っているのだろうか。そんな状態の浴槽に、なんと母親はユノンを裸にさせてその汚水に体を浸かせた――。

 

 

ヌルヌルする浴槽の底、冷たく臭いが酷い汚れた水の感触がユノンにさらなる不快感と嫌悪感が一気に襲った。

 

「うえっ……げぇっっ!!ゲホっ!ゲホっっ!」

 

その場にまた嘔吐してしまった。しかし、母親はそれを見過ごすハズがなかった。彼女の頭を掴むと、母親は顔を水の中に押し込んだ。

目、耳、鼻、口……必死にもがくユノンの顔の穴という穴全てに汚水が入っていく。ゆっくり顔を引き揚げると鼻水や涙とも言える液、さっきの汚水が混じったその顔は激しく咳き込みうめき声を上げて死にかけに近い表情を浮かべていた。

 

「言わないの?ほら、『ありがとう、ママ』は?」

 

しかし、その返答に返ってきた返事は……。

 

「……し……しんじゃう……」

 

その言葉が母親の癪に触り、さらなる怒りを呼んだ。

 

「あんたホントにムカつくガキねぇ!!誰のせいでこうなったんだぁ!!」

 

ユノンを浴槽から出すと、床に押し倒し、そして!!

 

「あんたみたいな親不孝のガキなんかもういらない、今すぐ殺してやる!!」

 

「ぐ……ぇっ」

 

最悪の事態が起こった。母親が自分の娘の首を両手で締めたのであった。その腕と手に伝わる強さは完全に殺気を込めている。

 

“ころ……され……る………どうして……あたしが……わるい……から……?”

 

泡を吹き始め、窒息し意識のなくなりかけた時に、母親が放った一言……それは。

 

「あ ん た な ん か 産 ま な き ゃ よ か っ た ! !」

 

そして彼女の意識は闇の中へ沈んでいった――。

 

……ユノンは目覚めた時にはとある白い壁に包まれた部屋のベッドの上で寝ていた。ここは病院のようである。

 

彼女は奇跡的に生きていた。どうやらあの後、運よく気づいた人が警察に通報してくれたみたいだ。母親は逮捕されて、事情聴取を受けているらしい。

しかし、『あの子のせいで人生を狂わされた』、『産みたくなかった』などと供述した末、もうユノンとは会いたくないと――。

 

偶然、それを耳にしたユノンの心にトドメを刺された。それはヒビの入り、脆かったガラスが一気に粉砕されて跡形もなく崩壊したように。

あんな人間でもたった一人の親であり、愛されたかった彼女にとってはもう親に捨てられたと。彼女は知ってしまったのだ、孤独になるということを……。

 

(もう……ひとりぼっちなんだ……ママにすてられたんだ……)

 

……そして彼女はその日から心を閉ざしてしまった。

 

 

退院後は施設へ入った。虐待で出来た傷や痕はドグリス人の医療技術のおかけで綺麗さっぱりなくなり、前の生活と比べたら段違いに良くなったが、それだけでは彼女の心までも良くなることはない。彼女の同年代の子どころか誰とも接しようとしなかった。

片隅でずっとうずくまっていて、その様子を見ていた人々や施設員の証言では『いつも今にも泣きそうなくらいに悲しい顔をしていた』、『接しようとするとひどく怯えて逃げていく』、『警戒心がとても強く、誰とも心を開こうとしない』など。

 

しかし、彼女も勇気を出して友達と接し、遊ぼうとしたことはあった。

だが、彼女は一人になることを拒み、仲良くなった子だけに執拗に付きまとうために次第にうざがられて結局彼女から離れていく。その度に彼女の心をさらに傷つけることとなった。

 

(みんな……あたしがきらいなんだ……だからみんなあたしからはなれていくんだ……)

 

心がボロボロとなり、それからはもう彼女は誰とも自ら関わることをしなくなった。

そんな彼女がそのまま成長したことにより心情や境遇、さまざまな葛藤に伴い、更なる闇も広がっていた。その過程で生んだ行動の一つがそう、『リストカット』である。

 

『プッ……プツ……』

 

彼女はもはや自分を傷つけないと『存在意義』を生み出せないほどに心が病んでいた――。

 

(あたしはなんのためにうまれてきたの……?くるしいよ……いまにもきえてしまいそうだよ……。だれかぁ……たすけてよぉ……)

 

◆ ◆ ◆

 

映像はここで終わっている。

 

「………………」

 

その内容に誰も声を発することなど出来なかった。

 

「これじゃあ心が病んでもおかしくねえな……っ」

 

「…………」

 

……彼女が普段人と関わらない、関わろうとしないのは、子供の頃に受けた心の傷もあるが『本当は孤独を嫌い、誰かにかまってもらいたい、一緒にいたい心情を裏返した形』なのでは。または誰かと一緒にいても突然捨てられてまた孤独になるのを恐れているのでは……。

 

 

『いなくならないで……』

 

 

彼女が酔っていたあの時に放った言葉の疑問が理解できたような気がする。あれが彼女の本音だとすれば……。するとラクリーマは何かを決意したかのようにコクっとうなづいた。

 

「くくっ、めんどくせえ女だなユノンは。こうやって自分から閉じこもって……挙げ句の果てには自分自身を傷つけることしか生きる意味を見いだせなくて……俺ら戦闘員なんか生きるために嫌でもケガしてんのに……バカな女だ」

 

突然、彼女を罵るような言い方をし出すラクリーマに全員が疑うような目をして彼に注目した。

 

「おい、わたしの忠告を忘れたのか?罵るなんてやめろって言ったハズだ!!」

 

しかし、その顔から反省するどころかむしろ当然な表情をしている。

 

「ひっ、ひどいよラクリーマ!!」

 

「そうよ、いくらなんでもユノンさんにあんまりよぉ!!」

 

のび太としずかもラクリーマに非難の声を浴びせた。

 

「ラクリーマ、今すぐここから出ていけ……今すぐだ!てめえみてぇな約束破りはもう――」

 

「だが!!」

 

突然、彼の大きい声がサイサリスの声を掻き消した。

 

「そんな女を好きになった俺は……こいつ以上のバカだ」

 

「おっ……お前……」

 

「言っただろ、とっくに受け入れる覚悟は出来てるってな。さっきの内容を見て、俺はもっとこいつのことが好きになった。決めたぜ、俺は一生、こいつの重いもんを背負って幸せにしてやる!」

 

怒りを露にしていたサイサリスや非難をしたのび太達は彼の決意にまた沈黙した。だが、サイサリスは徐々に笑い始め……。

 

「クククっ、カッコつけやがって。だが現実は大変だぞ?」

 

「けっ、心配は無用だ。で、少し二人っきりになりたい。お前ら出ていってくれないか?」

 

「……わかった。みんなここから出ていこう、あとはこいつに任せる」

 

彼女の言葉に従って、のび太達はメディカルルームから出ていった。

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